日本文学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/13 08:44 UTC 版)
定義
日本文学の定義を何に求めるかについては諸説あり、文学作品の言語、創作者の国籍、発表された地域、文学の形式など多くの要素が考えられる。日本語を母語としない外国人の小説家・詩人が日本語作品を書くこともあるし、日本人の小説家・詩人が日本語以外の言語で作品を書くこともある。例えば西脇順三郎は日本語と英語、多和田葉子は日本語とドイツ語の双方で作品を執筆している。このように国籍や居住地と言語とが一致しない場合もあることを考慮し、日本語文学という呼称が使われることもあるが、この場合伝統的な日本文学に根ざしてきた漢文・漢詩の扱いが曖昧になる。日本文学を国文学と呼ぶこともあるが、国文学[注釈 1] と日本文学との同一性には議論がある[2]。
時代区分による分類
歴史学のように政体の変遷に注目することが必ずしも相応しいわけではないが、目安にされることが多い。また、以下のように、上代・中古・中世・近世・近現代という区分が一般になされるが、研究者によって異論もあり、中古を設定しない場合もある。近代と現代を分離するか否かについても諸説あり、定まっていない。
丸谷才一は勅撰集により日本文学史の歴史区分を行うことを提示した。
上代文学(飛鳥時代・奈良時代の文学)
奈良時代まで。中国大陸から漢字が輸入され、漢文と、自分たちの話し言葉に漢字を当てはめた万葉仮名が使われるようになった。『古事記』(712年)『日本書紀』(720年)のような史書や『万葉集』のような歌集が生まれた。
中古文学(平安時代の文学)
平安時代。漢詩漢文が引き続き栄えるとともに、初の勅撰和歌集である『古今和歌集』が編纂され、和歌が漢詩と対等の位置を占めた。当時の公式文書は漢文であったが、平仮名の和文による表現が盛んにはじまり、紀貫之の『土佐日記』が書かれたのに続き、清少納言の随筆『枕草子』、紫式部の『源氏物語』など古典文学の代表作と言える作品が著された。
中世文学(鎌倉時代・室町時代・安土桃山時代の文学)
鎌倉時代から安土桃山時代まで。藤原定家らによって華麗な技巧に特徴がある『新古今和歌集』が編まれた。また、現代日本語の直系の祖先と言える和漢混淆文によって多くの作品が書かれた。鴨長明の『方丈記』、兼好法師の『徒然草』などがこれにあたる。作者不詳のものとして『平家物語』が挙げられる。また、猿楽の発達が見られた。
近世文学(江戸時代の文学)
江戸時代。お伽草子の流れを汲み、仮名草子や井原西鶴らの浮世草子がうまれた。また、歌舞伎や浄瑠璃が興り、近松門左衛門などが人気を博した。俳諧が盛んになり、松尾芭蕉、小林一茶といった人々が活躍した。
近現代文学(明治・大正・昭和・平成・令和時代の文学)
明治維新後、文明開化による西欧文明の輸入と近代国家の建設が進められ、いわゆる「文学」という概念が生まれた時代。西欧近代小説の理念が輸入され、現代的な日本語の書き言葉が生み出された。坪内逍遥の『小説神髄』の示唆を受けて創作された、二葉亭四迷の『浮雲』によって、近代日本文学が成立したとされる。日本文学は、中国・朝鮮の近代文学の成立にも大きな影響を及ぼした。なお、近代と現代を分離し、戦前の文学を「近代文学」、戦後の文学を「現代文学」として分ける場合もある。
形式
注釈
出典
- ^ “ノーベル賞”. 京都大学. 2023年5月16日閲覧。
- ^ 秋山虔「日本語・日本文学研究-これからの百年-」全国大学国語国文学会夏季大会 2008年6月7日 和洋女子大学 全国大学国語国文学会夏季大会基調講演
- ^ “上代文学会”. jodaibungakukai.org. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “萬葉学会|MANYO SOCIETY”. manyoug.jp. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “中古文学会”. chukobungakukai.org. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “和歌文学会 | TOP”. wakabun.jp. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “中世文学会”. www.chusei.org. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “日本近世文学会”. www.kinseibungakukai.com. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “俳文学会”. www.haibun.org. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “歌舞伎学会 | 日本学術研究支援協会”. jarsa.jp. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “日本近代文学会”. amjls.jp. 2022年1月12日閲覧。
- ^ “昭和文学会公式website. | 昭和文学会公式website.”. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “日本社会文学会[日本社会文学会について]”. ajsl.web.fc2.com. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “和漢比較文学会【表紙】”. wakan-jpn.org. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “日本文学協会ホームページ”. nihonbungaku.server-shared.com. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “解釈学会”. 解釈学会. 2019年11月15日閲覧。
- ^ “日本の古典研究を支える書誌学の世界:[慶應義塾]”. www.keio.ac.jp. 2019年11月15日閲覧。
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