日本の精神保健
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生涯有病率 | 12ヶ月有病率 | ||
---|---|---|---|
気分障害 | 全体 | 6.5% | 2.3% |
うち、大うつ病性障害 | 6.2% | 2.1% | |
うち、気分変調性障害 | 0.7% | 0.3% | |
不安障害 | 全体 | 9.2% | 5.5% |
うち、特定の恐怖症 | 3.4% | 2.3% | |
うち、全般性不安障害 | 1.8% | 0.9% | |
うち、社会恐怖 | 1.4% | 0.7% | |
うち、PSTD | 1.4% | 0.6% | |
物質関連障害 | 全体 | 8.5% | 1.5% |
うち、アルコール乱用 | 8.4% | 1.4% | |
うち、アルコール依存 | 1.2% | 0.3% | |
うち、薬物乱用 | 0.2% | 0.0% | |
うち、薬物依存 | 0.0% | 0.0% | |
間欠性爆発性障害 | 2.1% | 0.7% |
また日本はOECD諸国の中で最も少子高齢化が進んでおり、世界のどの国も経験したことのない速度で人口高齢化が進行しているため[3]、それに伴う認知症への政策対応が急務であるとOECDは勧告している[4]。
医療制度
都道府県は精神保健福祉法に基づき、精神保健福祉センター(第6条)、精神医療審査会を設置する(第12条)。また都道府県立の精神科病院を設置するか(第19条の7)、厚生労働大臣の指定する適合条件に適した精神科を有する国立、都道府県立、もしくは地方公共団体立の病院を、その代替として指定しなければならない(第19条の8)。またナショナルセンターとして独立行政法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)が存在する。厚生労働大臣は申請に基づいて医事拘禁の権限を持つ精神保健指定医を指定することができる(第18条)。
都道府県および保健所設置市は、精神保健についての相談指導等を行わなければならず(第47条)、配置資格として精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)が存在する(第48条)。また、精神障害についての正しい知識の普及のための広報活動等を通じて、精神障害者の社会復帰及びその自立と社会経済活動への参加に対する地域住民の関心と理解を深めるように努めなければならない(第46条)。
人口10万あたり 精神科医[5] |
人口10万あたり 精神保健師 [5] |
1000人あたり 精神病床数[6] |
入院費用に占める 精神疾患割合[7] |
60歳以上の 認知症罹患率[8] | |
---|---|---|---|---|---|
日本 | 11.1人 | 106人 | 2.69床 | 10.36% | 6.1% |
OECD平均 | 15.6人 | 50人 | 0.68床 | 9.38% | 5.5% |
全精神病床数 | 入院患者数 | 措置患者数 | 措置率 | 病床利用率 | |
---|---|---|---|---|---|
2000年 | 358,597 | 333,328 | 3,247 | 1.00% | 93.0% |
2005年 | 354,313 | 324,851 | 2,276 | 0.70% | 91.5% |
2007年 | 351,762 | 317,139 | 1,849 | 0.60% | 89.5% |
2008年 | 350,353 | 314,251 | 1,803 | 0.57% | 89.1% |
2009年 | 348,129 | 321,681 | 1,741 | 0.56% | 89.8% |
2010年 | 347,281 | 311,007 | 1,695 | 0.55% | 89.6 % |
2011年 | 345,024 | 306,064 | ... | ... | 89.1% |
非自発入院
精神保健福祉法を根拠とし非自発入院の制度を持ち、インフォームドコンセントが成立しない場合は、資格を取得した精神保健指定医によって介入が可能である[10]。
地域保健
精神疾患の可能性のある者を見かけたならば、誰でも、保健所を通して指定医診察・保護を申請することができる(第22条)。
また、警察官は、精神障害のために自身を傷つけ、又は他人に害を及ぼすおそれ(自害他害のおそれ)があると認められる者を発見したときは、取りあえず警察署、病院、救護施設等の適当な場所において保護すると同時に(警察官職務執行法第3条第1項)、直ちに、その旨を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない(第23条)。 検察官は、精神障害者又はその疑いのある被疑者又は被告人について、不起訴処分をしたとき、又は裁判が確定したときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通報しなければならない(第24条)。
しかし、独居であり訪問や受診を頑なに拒否している事例など、保健所では介入困難な事例も多く存在している[11]。
疫学
日本における精神疾患の患者数で、通院患者において2011年において多いものは、うつ病と統合失調症である[12]。近年の外来において著しい増加がみられるのは、うつ病と認知症(アルツハイマー型)である[12]。ただし認知症の数自体は他と比較して多くはない[12]。1996年の約218万人から2008年の約323万人へと約48%増加した[12][注釈 2]。
総数 | 0-14歳 | 15-34歳 | 35-64歳 | 65歳以上 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
うち7 0歳以上 |
うち 75歳以上 | |||||||
V .精神及び行動の障害 | 282.3 | 1.1 | 15.6 | 128.4 | 136.6 | 105 | 73.9 | |
統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 | 174.1 | 0.2 | 9.7 | 97.3 | 66.5 | 44 | 24.2 | |
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) | 29.1 | 0.1 | 1.9 | 11.5 | 15.5 | 12.5 | 9 | |
神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害 | 5.6 | 0.2 | 1.1 | 1.8 | 2.5 | 2.1 | 1.8 | |
その他の精神及び行動の障害 | 73.5 | 0.6 | 2.9 | 17.8 | 52 | 46.3 | 38.9 |
総数 | 0-14歳 | 15-34歳 | 35-64歳 | 65歳以上 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
うち 70歳以上 |
うち 75歳以上 | |||||||
V .精神及び行動の障害 | 221.2 | 9.2 | 41.7 | 113.0 | 56.4 | 43.3 | 31.7 | |
統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 | 60.6 | 0.2 | 11.5 | 39.4 | 9.3 | 5.5 | 3.0 | |
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) | 74.5 | 0.1 | 13.3 | 41.5 | 19.1 | 14.5 | 9.9 | |
神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害 | 47.4 | 1.0 | 12.0 | 22.0 | 12.3 | 9.1 | 6.2 | |
その他の精神及び行動の障害 | 38.7 | 7.8 | 5.0 | 10.2 | 15.6 | 14.2 | 12.6 |
自殺率
2014年の10万人あたりの自殺率は20.9人であった[1]。2000年から2013年の間に6.3%減少したが、しかしOECD平均と比べ高い状況にあるため、未だ要注意国であるとOECDは指摘している[15][1]。
日本の高度救命救急センターに救急搬送された自殺未遂者において、80%以上についてDSM-4基準に基づく精神疾患が認められている[16]。
児童青年期
精神衛生法では、児童青年を対象にした規定は存在していない[17]。
ある研究では、引きこもり(6か月以上自宅に滞在)を理由として精神保健福祉センターにカウンセリングに訪れた16-35歳のうち、その80%は精神疾患が診断され、その33%は統合失調症もしくは気分障害、32%は一般的発達障害もしくは精神遅滞、34%はパーソナリティ障害もしくは適応障害であった[17]。厚労省はひきこもり地域支援センターを都道府県および主要都市への設置を進めている[17]。
精神疾患の初回発症は10代~20代前半に集中し、精神保健的介入が最も必要な若者層が、最も支援を求めたがらないとされている。また低年齢群ほど自らの精神障害を認識しにくい。 若者のみならず、その周辺の支援者(家族、学校関係者、友人など)、さらにはコミュニティ全体のメンタルヘルスリテラシーを高める啓発活動が重要となる。このため諸外国では、ノルウェーやオーストラリアなどで、若者を中心とした啓発活動を行い、症状の早期発見と悪化の解消に努めている[18]。
人口高齢化に伴う認知症の増加
日本の人口高齢化はG7各国で最速のペースであり、2050年の日本は80歳以上人口が16.5%を占めると予想されている[4]。一方で欧州の統計では80歳以上人口の2人に1人は認知症を罹患していたため、認知症への政策策定が急務であるとOECDは報告している[4]。
2010年には、日本での認知症患者数は約462万人(65歳以上人口の15%)、その前段階の軽度認知障害(MCI)は約400万人(13%)と推定された[19]。厚労省は2012年に「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を策定し、社会的入院からの脱施設化を行い、コミュニティ支援施策などを進めようとしている[20][21]。
2014年では、認知症患者数は約500万人、社会的費用は14.5兆円と、国民医療費全体の三分の一を占めていると推計された(厚労省認知症対策総合研究事業)[22]。また2035年には22.9兆円に膨らむ見込み[22]。
注釈
- ^ 国立精神・神経医療研究センター (2007, pp.4,12. 表2)。数値は性別、年齢分布による重み付け補正後を使用した。 なお、「こころの健康についての疫学調査に関する研究」の3年間にわたる調査は統合失調症を対象外としている。調査に用いたWHO-CIDIが統合失調症等に対しては低い妥当性しか持たないためとしている(国立精神・神経医療研究センター 2005, p. 4)。WHO-CIDIとは、WHO統合国際診断面接:WHO-CIDI2000であり、非専門家(正規の診断を下せる精神科医以外の意味であり、保健師、看護師等の医療関係者が担当)による構造化面接方法である。
- ^ 2011年度は福島の数が除外されている。
- ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(省令) 第百二十八条
指定短期入所生活介護事業者は、指定短期入所生活介護の提供に当たっては、当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない。指定短期入所生活介護事業者は、前項の身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。 - ^ 厚生省保健医療局長通知「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」の「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の説明」によると有機溶剤などの産業化合物、アルコールなどの嗜好品、麻薬、覚醒剤、コカイン、向精神薬などの医薬品など
- ^ DSM-IVでは通常の精神疾患は1軸に分類される一方、知的障害やパーソナリティ障害(精神病質)は2軸に分類されて区別されている。知的障害は療育や教育、福祉の分野で議論されることが多く、日本の法律上も知的障害者福祉法等が別途規定されている。精神病質は、犯罪を犯した場合の犯罪精神医学(司法精神医学)や刑事処遇論の領域で問題となる場合が多い。
- ^ 精神病質はパーソナリティ障害とほぼ同義である。
- ^ 小松川狂疾治療所は1846年(弘化3年)に現在の東京都江戸川区西小松川町に接骨医の奈良林一徳が開いた私立の精神科診療所である。のちの加命堂脳病院[65]。
- ^ 石丸癲狂院は1818年(文政元年)頃、漢方医の石丸周吾によって現在の大阪府豊中市熊野町2丁目に開院した私立の精神科診療所である。後に石丸病院となり、第二次世界大戦中に軍に接収されて閉院となった[65]。
- ^ 癲狂の「癲」は「抑うつ、無感情、言語錯乱、わけもなくよく笑う、目がすわりじっとしたまま」など、「狂」は「興奮、怒り罵る、騒ぎまくる」などの症状を言を指していた[68]。
出典
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