日本のタクシー 運賃

日本のタクシー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 00:53 UTC 版)

運賃

タクシーの料金メーター(画像はJapanTaxi(現・Mobility Technologies)製)。
内部の不正改造を防止するために封印シールと封印付きワイヤーで封緘されている。

運賃はかつて、同一地域同一運賃制度に従い、原則として同じ地域では会社を問わず同じ運賃であったが、1993年(平成5年)にこの制度が廃止されている。現在では、地域ごとに定められた金額を上限とする一定の範囲内であれば、各社の裁量により運賃を自由に決めることができる。たとえば、2017年(平成29年)2月現在、東京都区部における一般的な普通車初乗り運賃は410円であるが、400円や300円とする会社も見られる。1997年(平成9年)には初乗距離短縮運賃制が一部会社で導入された。これは、初乗り運賃を安くする代わりに初乗り運賃が適用される距離を短くするもので、一定距離を走行すると通常の運賃と同額になるが、初乗り運賃の高さから敬遠されがちな短距離利用の促進を狙っている。

個人タクシーでは消費税法に基づく事業者免税点制度が適用されることから(売り上げが規定値以下のため)消費税の納税義務を免除されており、その分、法人タクシーよりも運賃が安くなっている地域もある。

基本的な運賃料金システム

通常のタクシーの運賃・料金は以下で構成される。

基本運賃

距離制運賃
初乗運賃
乗車してから一定距離までは定額の運賃となる。これが初乗運賃である。
加算運賃
一定距離を走行するごとに、一定額の運賃が加算される。2002年(平成14年)の規制緩和以降、事業者が自由に設定できる。
時間距離併用制運賃
一定速度(時速10km)以下で走行していたり、停止していたりする間は、走行距離の代わりに経過時間を一定基準の計算法により距離に換算し、運賃が加算される。このため走行経路が渋滞していると、移動距離の割に高額な運賃となってしまう。旅客の都合により乗っていたタクシーを待たせる場合もこの運賃が適用される。
地域によっては、高速道路では時間距離併用制運賃を適用しない。途中下車できない高速道路上の渋滞で運賃加算を防ぐため。運転手は高速道路の入口にある「自動車専用」の標識を通過次第、タクシーメーターの高速ボタン(ない場合は支払ボタン)を押して距離加算のみ設定し、出口の標識を通過次第解除する。
時間制運賃
乗車契約した時間だけで決まる運賃。観光地の名所回りなどの場合によく使われる。単に「貸切」と呼ばれることも。
定額制運賃
出発地点と到着地点が決まっていれば、走行距離や走行時間にかかわらず一定額となる運賃で、主として空港連絡の場合などに使われ、羽田空港国際線や成田空港など一部ではルートを指定される。但し、距離制運賃のほうが割安と判断された場合は、適用されないこともある。
貸切制運賃
時間、距離に関係なく、例えば、「乗務員の一日の売り上げで見込まれるであろう最低補償を客が“運賃”として負担することによって、乗務員と乗務員の運転する車を一日借り上げる」手法。常連客を抱える個人タクシー事業者や、マスコミ関係の顧客を持つ事業者、観光目的等で一回の移動距離が長い地方部や観光産業が盛んな地域のタクシー会社に見られる。

割増・割引運賃

深夜割増運賃
22時(一部大都市圏では23時)から翌5時まで通常2〜3割加算される。加算はメーター表示に加算されるのではなくてメーターが上がる距離が短縮される。よって初乗り金額には変更はない。この時間帯は、表示灯に青く「割増」と表示されることから「アオタン」とも言われる(花札用語(青短)からの転用)。
冬季割増運賃
北海道や東北、北陸信越地方などで、冬季の道路状況が劣悪になることに鑑みて、特定の地域を走行するタクシーにおいて、厳冬期間に限って終日加算される運賃。通常2割加算される。
障害者割引
障害者障害者手帳を提示することにより、地域にもよるがおおむね運賃が1割引となる場合が多い。
遠距離割引
一定運賃以上の利用した場合、一定額が割り引かれる。
5,000円以上の運賃の5割引(通称「ゴーゴー割」、「ゴーゴー運賃」)や5,000円以上3割引、9,000円以上1割引など事業者によって様々。遠距離割引を採用していない事業者もある。
往復割引
事前予約で往復で利用する旨を伝えた場合「往復割引証」が発行され、復路が1割引になる。
免許返納割引
高齢ドライバーによる交通事故の急増を受け、高齢者の運転免許証自主返納を促すため作られた制度。免許を返納すると発行される運転経歴証明書を提示すると運賃が1割引になる。

車種による運賃の違い

以上の運賃体系のほか、タクシーの車両は車種によりクラス分けがされており、クラスによって運賃が異なっている。初乗り運賃だけでなく、運賃が加算される走行距離なども異なる。

概ね以下の4種類に分類されているが、この分類は必ずしも全国共通ではなく、特に大型車と特定大型車の区別がない地域や、これらと中型車を同一とする地域は多い。分類方法が道路交通法と異なる事に注意。東京23区武三地区、京都市域地区など一部では車種別運賃が廃止され「普通車」区分に統合されている。中型車と小型車のみ統一した地域でもその区分名を「普通車」としている場合が多い。

特定大型車
普通自動車及び小型自動車で乗車定員7名以上の車。ワゴン車・ワンボックス車を用いるジャンボタクシーなどはこれに該当する。グランエースハイエース(ワゴン10人乗り、コミューター14人乗り コミューターは2ナンバー扱い)、アルファードヴェルファイアエルグランドエスティマ(7人乗り)など。
大型車
普通自動車(3ナンバー車)で乗車定員6名以下の車。LSシーマフーガセンチュリーセルシオクラウンマジェスタクラウン(ロイヤルシリーズ/アスリート)、マークXレジェンドなど。エスティマ(8人乗り)、プレサージュオデッセイなどのミニバン(3列目シートは撤去、実質ステーションワゴンに近似している)もある。
中型車
小型自動車(5ナンバー車)のうち、自動車の長さが4.6メートル以上で乗車定員が6名以下の車。クラウンセダンクラウンコンフォートセドリックNV200バネットなど。2000cc以下の3ナンバー車を含む場合もある。かつて中型タクシーはコラムシフトを備えた前部座席がベンチシートの6人乗り(乗客は5人まで)の車種が主流であったが、現在ではクラウン(セダン、コンフォート共)に定員6名設定のモデルがなく、セドリックも2009年(平成21年)9月の改良でベンチシート仕様が廃止されたことから、現在では中型タクシーのほぼ全てが5人乗り(乗客は4人まで)となっている。小型車との乗車定員の差は事実上なくなり、後部座席の居住性に差がある程度の違いのみとなっている。
小型車
小型自動車(5ナンバー車)のうち、自動車の長さが4.6メートル以下で乗車定員が5名以下の車。コンフォートクルーなど。キューブウィングロードファンカーゴラクティスカローラフィールダーシエンタジャパンタクシーシャトルなどの小型トールワゴン、および小型ステーションワゴンもある。過去にマークII( - X80系)やローレル ( - C32) は、小型車の規格に合わせ、張り出しの少ないバンパーを装着し、全長を4.6メートル未満に抑えたタクシー仕様車を販売していた。一方、地域によって中型と大型の区分に若干の差異があったため、マークIIやローレルの6人乗りが中型車扱いとなることもあった。

コンフォート生産中止以降はプレミオカローラアクシオグレイスなどセダン型でもさまざまな車種が採用されている。

乗車定員には乗務員も含まれるため(研修等で助手席に添乗員がいなければ)、実際に乗車できる乗客の数は乗車定員より1名少ない数となる。

地域により中型車の多い地域と、小型車の多い地域、中型車と小型車が半々程度の地域がある。概ね首都圏・近畿圏・中京圏の三大都市圏は中型車が多いが、例外的に京都市和歌山市では中型車と小型車が半々程度である。北海道・東北・北陸・四国・九州・沖縄では小型車が多い。

料金など

迎車料金
電話やアプリなどで車を呼んだ場合にかかる料金。迎車料金無料の会社もあるが、通常概ね300円から420円程度の迎車料金(事業者によって異なる)がメーター運賃の他に加算されるか、スリップ制といい地域の設定により概ね1km〜2kmの範囲内(おおよそ初乗りの範囲内)で迎車中にメーターが設定された距離まで動き、設定以上の距離を迎車回送した場合もメーターは設定された距離で止まる。実車にした際に止まった位置から加算を開始する。
待料金
配車後、客の都合で待機する場合、概ね10分以後に加算される料金。基本料金から爾後料金が加算される。
迎車料金無料の車両はこちらも無料。
その他
高速道路など有料道路を通った場合、運賃の他に高速料金が加算される。客を降ろした後に営業区域に戻る為、復路の高速料金を求められることもある(概ね実車距離が50kmを超えた場合など)。

支払方法

現金
最も一般的な手段。安全面やサービス向上などの関係から、現金以外の支払方法も増えている。他の決済手段や他の交通機関での現金払いと違い、収受は完全に手で行われる。
チケット(タクシーチケット)、福祉タクシー券、商品券
タクシー会社または無線グループ、お得意先顧客(大口利用する事業体が発行し、タクシー会社または無線グループ側では得意先券と呼ばれる)、クレジットカード会社が発行する。チケットは金額欄を乗客が下車時に記入するもので、着服や不正防止のため、乗務員の記入が禁じられているほか、メーターや決済端末から「チケット」や「未収」といったボタンを押して日報上も現金と区別させている会社もある。広義的には金額があらかじめ設定されたクーポン券や、地方公共団体が発行する金額が決められた福祉タクシー利用券も含まれる。有効期限があるものや、使用金額上限が設定されているものもある。金額が書かれているものの場合、運賃が表示金額以内ならお釣りが発生するが、福祉タクシー券だけの利用にはお釣りは出ない。上限が設定されているものについては、上限金額を超えた分については、現金や他のチケットなどで支払う必要がある。あるいは、チケットによっては複数枚の利用が可能な場合もある。福祉タクシー利用券の場合、地域によっては金券式ではなく後日運賃の何割かを還付する券であることもある。商品券は自治体あるいは商店街連合会等が発行するもので基本的にお釣りは出ない。いずれの場合も券の発行者とタクシー会社あるいは無線グループが契約していないと使えないので、乗車前に確認が必要。有効期限の確認も必須である。
クレジットカード
カードリーダー信用照会端末(まれにインプリンタの場合もある)が搭載された車両は利用限度額(カード側だけでなく、事業者によっては機器側に上限がある場合もある)まで利用できる。電波の通信状態や決済先のメンテナンス時間帯などには利用出来ない場合がある。
デビットカード
銀行口座から直接料金が決済されるもの。カードリーダー端末が搭載されている車両で使用できるが、ほとんど流通していない。クレジットカード同様、電波通信状態により、少々時間がかかったり決済が行えない場合もある。券面に国際ブランドのあるデビッドカードは、クレジット決済で可能。
メンバーカード
タクシー会社または無線グループがお得意様に発行している。クレジットカードと違い、タクシー乗車専用の為、複数台の配車タクシーに、乗車時(メーターを実車にした際)に事前登録しておけば、一枚のカードで複数台の支払いが完了する。サインや暗証番号が必要か不要かはカードの種類による。
電子マネー
車載の端末にPASMO、SuicaiDなどの電子マネーや電子マネーアプリを搭載した携帯電話をかざすと、支払いが完了する。サイン不要。
QR・バーコード決済
車内に掲示されたバーコードを携帯電話で読み取り、支払い金額を入力し決済する。または顧客の携帯電話でQRコードやバーコードを表示して車載カメラに映す。サイン不要。
配車アプリ決済
配車アプリとクレジットカードを紐付け設定しておくことで、降車時に端末の読み取りや提示、サインを不要とする事例も現れている。

運賃改定

営業区域内の7割以上のタクシーが値上げ(値下げ)申請すると、国土交通省はその審議に入る。特に東京地方では、物価安定審議会を開催し、値段の妥当性を審議をする。

東京地区運賃値上げ
東京地区(23区・武蔵野市・三鷹市)においては、2007年(平成19年)12月3日に、初乗り運賃が2kmが660円から710円へ運賃改定が行われた。マスメディア報道では「値上げ」だけが強調されたが、午後11時以降に乗車する利用では、反対に1割値下げとなった。これは深夜割増の適用時間帯・割増率が「午後11時以降3割増し」から「午後10時以降2割増し」になったからである。このときに中型と小型の区分は廃止された[21]
2014年(平成26年)4月1日には、消費税増税に伴い、初乗り運賃が730円に改訂された。
さらに2017年(平成29年)1月30日に、初乗り運賃の組み替えが行われ、初乗りが1,052mに短縮され、初乗り運賃が410円に改定された。加算幅も従前の280mもしくは105秒で90円から、237mもしくは90秒で80円に変わり、2kmから6km程度であれば据え置きであるが、2km未満であれば値下がり、6km以上の利用では逆に値上がりとなった。
2019年(令和元年)10月1日にさらなる消費税増税により初乗り運賃が420円に改定。加算幅は233mもしくは85秒で80円。
2022年(令和4年)11月14日に消費税増税や運賃組み換えを除けば上記の2007年(平成19年)以来15年ぶりとなる純粋な値上げを実施。初乗り1,096m500円、加算幅は255mもしくは95秒で100円となり、初乗り距離が短いことを除けば2017年(平成29年)の初乗り組み換え以来乖離していた周辺の区域(東京の三多摩各区域や千葉・神奈川・埼玉の隣接各区域、2020年(令和2年)2月1日に初乗り組み換えで概ね約1.2〜1.4kmで500円、加算約260〜300mで100円となっていた)と似た運賃制度に回帰することとなった。
新潟地区における価格カルテル問題
新潟県では、同県内のタクシー事業者25社が、2009年から価格カルテルを結んで運賃を値上げしていたなどと公正取引委員会から認定され、課徴金納付命令と排除措置命令を受けた[22][23]






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