日本のタクシー
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形態
介護・福祉タクシー
タクシーの利点の一つが「旅客をドア・ツー・ドアで輸送できる」という点である。1976年、熊本県自動車交通労働組合が春闘の一環として、重度障碍者等の運賃を2割引にし、乗務員が車椅子の折り畳みなどを援助する福祉タクシーの導入を提唱。会社側も導入に同意した記録が残る[16]。その後は、身体障害者や高齢者など、移動に大きな制約を伴う人々を対象にするタクシー事業者が増加した。中には、運転手にホームヘルパー(2級以上のヘルパーは乗降介護が出来る)、救命講習などの公的資格を取得させている事業者もある。車椅子を積載できるタクシーには8ナンバーの特種用途自動車の登録となっているものもある。
本業がタクシーではない介護事業者(特に訪問介護・居宅介護事業者)が、介護サービスの利用者を病院などへ移送することを目的に、一般乗用旅客自動車運送事業(患者等輸送限定)という種別の許可を受けることも多くなってきている(「介護タクシー」)。このうち、介護保険や支援費制度を適用しない場合をケア輸送サービス、適用する場合(通院等乗降介助)を介護輸送サービスといい、運賃の収受方法に差がある。
自家用有償旅客運送のタクシー
道路運送法第78条による自家用有償旅客運送として(詳細は廃止代替バス#80条バス参照)、陸運局の認可を受けた白ナンバー車両でタクシー事業を行うことができる。上述の介護・福祉輸送でこの形態をとるものがある。
NPOタクシーも参照。
地域防犯・防災の役割を担うタクシー
タクシーには「24時間365日、地域内のあらゆる場所を走行し、無線により連絡手段を確保している」という特性がある。この特性を活かして、非常時には警察無線とも連携を取り合う体制を築いている地域もある(犯人が犯行後タクシーを使用して逃走した疑いがある場合は暗号による一斉手配が無線で流れる。)。最近ではコンビニエンスストア等と提携してその敷地の駐車場に止めて旅客、無線待ちをしつつ、店舗の防犯を兼ねている地域もある。東京都では子供の安全の確保を目的として「タクシーこども110番」制度を警視庁や業界団体と共同で展開している。また、災害の被災現場の生の状況を都の災害対策本部やマスメディアに提供する「防災レポート車」の制度を都の地域防災計画として組み込んでいる。
運転代行業
タクシー事業者が運転代行業を兼業する例は古くから地方で数多く存在するが、タクシー事業の多角化に加えて、2004年(平成16年)の法改正によりタクシー同様普通二種・中型二種・大型二種運転免許のいずれか(中型二種は2007年から施行)を取得した者でなければ代行運転に従事できなくなった(法律自体は2002年に施行されたが、二種免許義務化は2年間の猶予期間が設けられていた)ため、運転代行業に参入するタクシー事業者がさらに急増している。
荷物の運搬
人ではなく、コンピュータなどの保守用部品、データメディアなど、近距離の小物の輸送を引き受けているタクシー事業者もある(バイク便、あるいは赤帽などと似た使い方であるが、タクシーは旅客運送業であり、貨物だけの輸送は認められていない。貨物だけを輸送しようとする場合、基本的には事業者が有償貨物運送許可を取得する必要があり、荷物等の輸送を引き受けるにあたりこの許可を取得している事業者が後述の特例措置に伴う出前等に参入する例もある)。
以上のほかにも、日用品の買い物代行や、子供の幼稚園や小学校への送迎など、様々な種類のユニークな事業があり、最近では同じタクシー事業といえども地域や事業者により、多角化の方向を示しているといえる。
一方、貨物の運送は条件付きで規制緩和が進み、2017年(平成29年)11月1日には、旭川中央ハイヤー(北海道旭川市)と佐川急便が共同で、乗り合いタクシーを利用して戸別配送も行う貨客混載の事業を開始した[17]。
2019年コロナウイルス感染症による特例措置として物資の配送が認められ、特例期間中限定ではあるものの出前に参入する事業者もある(なお、大手等のグループや無線協同組合単位で参入する場合は提携事業者や加盟事業者も必要な認可を得る必要がある)。
注釈
- ^ (有償運送) 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
- ^ それらに加えて規模の大きい都市においては、大きい幹線道路の左端にタクシーの乗り場専用レーンが設けられている場合もある。
- ^ 地域によっては申し出さえすれば、(条件が許す限りではあるが)順番の変更が受け入れられる場合もある。誘導係員がいない場合は、先頭から順に使えるか確認していって使用できる車まで移動する方が(トラブルを避ける意味でも)望ましい。
- ^ 都内の大手タクシー会社では、グループに自動車教習所や提携教習所があり、ここで二種免許取得のための教習が可能。
- ^ 「この期間を終える前に退職した場合、取得費用を返還しなければならない」という書面契約を行う場合がある。
- ^ 1970年代に個人タクシーで用いられたマークII(X10系まで)やスカイライン(C10・C110・C210系)などでは、下級グレードを中心に後部座席のヘッドレストを装備していない車種が多かったため、基準を満たすためにメーカー・ディーラーでヘッドレストの後付けが行われていたと推測される。
- ^ プリウス(20系:185/65R15、30系・50系:195/65R15)、ノア・ヴォクシー・エスクァイアおよびセレナ(195/65R15)、ノート(185/65R15、ただしE13系は標準だがE12系以前はオプションホイールまたは社外ホイール装着時)等の例がある。
- ^ 京成グループに所属するが、車体や行灯にはK'SEI GROUPロゴを掲出していない(公式サイトには明記)。
- ^ ウォルト・ディズニー・カンパニーとの関係により京成グループ統一行灯を使用せずK'SEI GROUPロゴの掲示もしていない。また、その関係で京成タクシーホールディングス傘下ではない(が共同配車体制は敷かれている)。
- ^ 京成グループであるが、独立性が高くK'SEI GROUPロゴは用いていない。
- ^ 京成グループであるがタクシーの車体にはK'SEI GROUPロゴを使用していない。
出典
- ^ a b c タクシーの再編が加速 『日本経済新聞』 平成23年6月17日東京夕刊
- ^ タクシー自働車広告、『日本全国諸会社役員録. 第21回』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ a b 齊藤俊彦 『くるまたちの社会史』中央公論社〈中公新書〉、1997年、119-120頁。ISBN 4-12-101346-8。
- ^ バス、タクシーのガソリン使用全面禁止(昭和16年8月21日 朝日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p81
- ^ ガソリン券の闇取引根絶措置(昭和15年9月21日 朝日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p81 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
- ^ タクシー料金倍額に値上げ(昭和15年8月29日 朝日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p82
- ^ 代用燃料車への改装願いが殺到(昭和16年9月3日 東京日日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p82
- ^ 決戦に備えて旅行を大幅制限(昭和19年3月15日 毎日新聞(東京) 『昭和ニュース辞典第8巻 昭和17年/昭和20年』p783
- ^ 社団法人東京乗用旅客自動車協会・タッくんミニ情報2012年3月 No.230
- ^ a b 浅井建爾 『道と路がわかる辞典』(初版)日本実業出版社、2001年11月10日、250頁。ISBN 4-534-03315-X。
- ^ 運輸政策審議会 「今後のタクシー事業のあり方について」(平成5年5月11日答申第14号)
- ^ 運輸省, “平成8年 運輸白書 第6章 人と地球にやさしい車社会の形成へ向けて 第2節 利用者ニーズに対応した車社会の形成へ向けて 1 自動車旅客輸送の活性化” (プレスリリース) 2012年10月6日閲覧。
- ^ 運輸省, “タクシーの活性化と発展を目指して ~タクシーの需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について~” (プレスリリース), 運輸省運輸政策審議会自動車交通部会答申 2012年10月7日閲覧。
- ^ 「突然新型メーター採用 近距離割増料はタダ」『朝日新聞』昭和45年(1970年)3月1日朝刊、12版、15面
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- ^ 青鉛筆『朝日新聞』1976年(昭和51年)8月2日朝刊、13版、23面
- ^ 貨客混載 タクシーが荷物も宅配 北海道・旭川で全国初 毎日新聞(2017年11月1日)2017年11月7日閲覧
- ^ 「NEKO MOOK1903 特装大全」p.66 ネコ・パブリッシング 2013年3月発行 ISBN 978-4-7770-1403-3
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- ^ “訪日外客統計の集計・発表”. JNTO(日本政府観光局). 2017年11月13日閲覧。
- ^ 敦賀のタクシー会社:脱原発議員の配車拒否し謝罪 - 毎日新聞(2014年1月15日付)
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- ^ 国内初、電気自動車タクシー登場 8月にも愛媛県で 47NEWS 2009年7月13日(Internet Archiveのアーカイブ:2009年7月22日収集)
- ^ タクシー乗降口の高さ規制廃止 国交省 - レスポンス、2011年3月31日
- ^ タクシー車両の基準緩和等について 国土交通省 報道発表資料 平成27年6月12日
- ^ ただし北海道小樽市のこだま交通では以前、ブルーバード(U14系)の4WD車や[1]、スバル・レオーネやレガシィの4WD車を導入していた。
- ^ サービス/製品一覧 - トーシンテック株式会社
- ^ タクシー無線局の構成 電波博物館 (電波適正利用推進員協議会)
- ^ タクシー無線のデジタル化 第48回移動体通信研究会 平成17年度(目黒会)
- ^ a b c d e ディジタル・タクシー無線機とそのシステム RFワールドNo.7 2009-09 pp.53-54(CQ出版)
- ^ 沿革 移動無線センターについて(移動無線センター)
- ^ 世界に先駆けタクシー無線のデジタル化がスタート 〜タクシー事業者4社にデジタル化の変更許可〜 関東総合通信局 報道資料 平成15年11月19日(Internet Archiveのアーカイブ:2007年10月22日収集)
- ^ (有)大東タクシー様 旅客運送(移動無線センター)(同上:2009年10月27日収集)
- ^ モバイルクリエイト、タクシー自動配車システムでMVNOとして全国展開へ日本通信、MVNEとして地域発のMVNOを支援 日本通信 ニュースリリース 2009年6月19日(同上:2017年12月25日収集)
- ^ アナログタクシー無線局等のデジタル化について 総務省電波利用ホームページ(国立国会図書館のアーカイブ:2016年1月5日収集)
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- ^ 「規制緩和で収入激減」タクシー運転手の訴え認めず 大阪地裁 産経新聞 2009年3月25日
- ^ MKタクシー「違法運賃」で国交省に申請 「公定幅運賃」下回る - 産経ニュースwest、2014年3月28日
- ^ [「値上げ強制は損害」 500円タクシー、国を提訴 朝日新聞 2014年4月29日
- ^ タクシー運賃幅は「違法」 エムケイなどが国提訴 - 産経ニュースwest、2014年5月1日
- ^ 運賃規制でタクシー会社提訴 - NHK福岡NEWS WEB、2014年5月8日
- ^ タクシー乗り場:乗り入れ排除は独禁法違法 大阪高裁判決 毎日新聞 2014年10月31日
- ^ 「またオオカミタクシー 客の少女を監禁」『朝日新聞』昭和44年8月27日夕刊、3版、11面
- ^ “ウーバーの性的暴行被害、2年間で5981件”. CNN (2019年12月6日). 2020年9月29日閲覧。
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- ^ 孫社長「危機的な状況だ」ライドシェア事業への国の規制を批判 - NHKニュース
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- ^ “オールラウンド仕様車”. ヤマハモーターパワープロダクツ. 2020年10月7日閲覧。
- ^ “狭い路地行く電気自動車タクシー、福山・鞆で全国初の営業運行”. 産経新聞社 (2019年4月18日). 2020年10月7日閲覧。
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