新JIS配列 新JIS配列の概要

新JIS配列

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/27 06:21 UTC 版)

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1986年、通商産業省により「仮名漢字変換形日本文入力装置用けん盤配列」JIS C 6236 として標準化され、後にJIS X 6004と改名されたが、1999年に廃止された。

配列図

歴史

1986年当時最も普及していたJISかな配列には問題点が指摘されており、それに変わるものとして考案された。しかしJISかな配列が廃止されることなく併存し続けたため、パーソナルコンピュータ用としては普及せず、1999年には「使用実態がない」としてJIS規格上からは廃止された。例外的にワープロ専用機のオプションとしては複数のメーカーが採用していた。

現在では専用キーボードは存在しないが、親指シフトと同様にエミュレータを用いて再現されている。

設計思想

制定に当たっては、高等学校教科書9教科(9冊)の延べ130万文字や天声人語(16万語)などの資料をn-gramデータとして集計してから用いた。また、実在の人間にとって「無理なく・すばやく」操作できる入力法を設計するために、女子大学生7名を対象として延べ約380万文字分の「指の運動特性」調査を行った。入力の過程で得た運動特性データは、配列を設計・選別するための打鍵速度データとして使われた。

新JIS配列は日本語入力の分野において、「数百万字クラスの大規模n-gramデータを、数百万打鍵クラスの大規模運動特性データによって仮想打鍵する」ことにより、無数に存在する配列候補から「各種の要求を満たす、評価の高い配列」を、現実的な設計期間で選び出せる設計手法が利用された先駆けでもある。

成果物による入力速度を客観的に評価・比較でき、かつ人間の動作能力を子細に渡るまで反映させることができることから、この考え方は後に設計された多くのかな入力法にも受け継がれている。

コンピュータの計算能力が向上するにつれて、事前の候補絞込みをなるべく避けて「より広い範囲の候補」から配列を選別することが可能となるため、さらに高い性能を持つ配列が見つかる可能性もある。しかし新JIS配列の設計時点では、コンピュータの計算能力が高くなかったために、無数に存在する配列候補のうち「高速に入力できる大まかな条件」を満たすグループのみを初期候補として選別し、その中から計算と手動評価によって配列を選び出している。

シフト方式

新JISかな配列は、シフトキーとして「小指位置」または「親指位置」[1]を使用し、シフト方式としては逐次シフト[2]もしくは普通のシフト[3]を採用した。また、文字キーだけでなくシフトキーをも対象に含めたうえで、両手による交互打鍵を積極的に使う仕様とした。

新JISかな配列は、より操作回数が少なく済む「親指シフト」と比較されがちだが、「親指シフト」については一部の専門家から、「親指シフトの同時打鍵ロジックでは設計上、シフトを伴う打鍵が連続する場合について、ロールオーバー打ちができない[4]」という点が疑問視されていた。このような主張をする人達にとっての最良打鍵法は、(親指シフトが目指した)省打鍵性よりも、交互打鍵性をより重視することだとされている。同様の主張はM式キーボードを開発した森田正典も行っており、こような考えを追求した例が大岩元が開発したTUT-Codeにおける半濁音の入力であり、交互打鍵の4打で1文字のかな「ぱ」「ぴ」「ぷ」「ぺ」「ぽ」を出力する。

一方で新JISかな配列では、指の運動機能から計算して、最も速く打つことができる入力法を選別するというアプローチを採用した。計算結果から、大枠として「行わなくてもよいムダな交互打鍵」によって総打鍵時間が増加することを避けるために「頻度の高い文字は1打鍵で打ち、そうでない文字のみを2打鍵で打つ」ことが有効であるとされ、省打鍵性と交互打鍵性をミックスさせる入力法が選び出されることとなった。

大枠が決まったあとの細かなチューニングとして、「1打鍵で打つ文字同士」「1打鍵で打つ文字に絡む2打鍵で打つ文字」「2打鍵で打つ文字同士」のそれぞれに限って、交互打鍵性を高めるために、左右に振り分ける文字のグループを計算により決定した。こうすることで、総打鍵時間が短く交互打鍵率も高い入力法を設計することができ、結果としてもっとも素早く入力できると考えられた。

こうした設計の結果、新JISかな配列は「ロールオーバー打ちが可能」かつ「可能な限り交互打鍵率を高める」条件を満たせることとなった。

新JISかな配列では、仕様を守ったままでも、既存のキーボードから物理的な変更を一切加えることなく実装できる特徴を持つため、メーカーとしては金型が流用できるというメリットもあった。このため一部のワープロメーカーから「50音かな・JISかな・新JISかな・Qwertyローマ字」などの組み合わせで、複数の入力方式に対応するワープロ専用機が出荷された時期もあった。

特徴

  • 計算上の打鍵時間を徹底的に短くするために「2打鍵操作を嫌って1打鍵を優先」し、かつ(複数の被験者から得られた)実測値の積み上げによる打鍵時間がもっとも短くなるよう配列が選別されているために、高速な文字入力が行えると考えられる。結果として(ローマ字入力などとは異なり)よく使う仮名については「あ・い・う・え・お」以外であっても1打鍵で入力でき、また打鍵時間が遅くなるような悪運指は低出現頻度にしか使われない。
  • 専用のキーボードは不要。一般的なQwerty(JIS/ANSI)キーボードに、ソフトウェアを組み合わせるだけで利用できる。
  • (打鍵ミスを減らすために数字段を検討から外したことに伴い)英字モードに変移させなくても「数字」を直接入力できる。
  • 小指シフトもしくはセンターシフトを含めての交互打鍵性が確保されており、片手に連続して負担がかかる事が起きにくい。

  1. ^ 規格書では、キーボード最下段の中央に設置し親指で操作するセンターシフトも認めていたが、実際の製品ではセンターシフトを採用した例はなかった。
  2. ^ まずシフトキーを押して、その押したシフトキーを離してから目的のキーを打つ方式。たとえばローマ字入力で「か行」を入力するためには、まず"K"を打ってから"A","I","U","E","O"のいずれかを打つが、ある意味この最初に打った"K"も「か行」を入力するための逐次シフトキーといえる。
  3. ^ シフトキーを押しながら目的のキーを打つ方式。キーボードの左右端についている「Shift」キーが持つ挙動であり、一般的に馴染み深い方式である。
  4. ^ 親指シフト(後のNICOLA)では、シフトキーを離すタイミングの遅れによる「誤判定」を防ぐことが重要だと考えられたため、あえて「シフト操作中のロールオーバーをキャンセルする」ように設計した。http://www.ykanda.jp/oasgif/oya-1.jpg http://www.ykanda.jp/oasgif/oya-2.jpg を参照のこと。なお、「シフト操作中のロールオーバーが悪影響を及ぼさない」と考えられる入力法(たとえば超漢字Vの、TRONかな入力法)では、「シフト操作中のロールオーバーはキャンセルしない」ように設計されている。こうしたシステムでは、誤判定が起き得ることと引き換えに、ロールオーバー打ちはできる。
  5. ^ 1980年代前後に設計された「親指シフト」でも、同様に「電卓」にシールを貼る形で実験が行われていた。http://www.ykanda.jp/oasgif/oya-01.jpg を参照のこと。
  6. ^ エスリル ニューキーボード − NISSE


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