新潟県中越沖地震 地震像

新潟県中越沖地震

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/02 11:15 UTC 版)

地震像

北西-南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型の地震で、京都大学の研究グループの解析では3つのアスペリティの破壊によるものと推定されている[4]。この地震の震源域では、200年以上地震が発生していない空白域であった[G 7]

震源が海底下にあるためこの地震による断層のような明瞭な変位は地表に現れていない、しかし陸域観測衛星「だいち」に搭載されている合成開口レーダー (PALSAR) による干渉SAR解析を行った結果、震源から15 km東に離れた西山丘陵の活褶曲の向斜軸に沿って幅 1.5km 長さ 15km の帯状隆起域が検出された[5]。この隆起は、活褶曲が成長した証拠と考える研究者がいる[5]

発生要因

活動した断層の位置

この地震については、発生当初から、新潟県中越地震能登半島地震との関連性がマスメディアを通じて広く報じられた。これら3つの地震は、断層のずれ方のタイプ(横ずれを伴う逆断層)、断層にかかっている圧力の方向(西北西-東南東方向の圧縮)、規模 (M6.8 - 6.9)、震源の深さ (11 - 17km)、地質学的な地震の分類(直下型地震)などがほぼ同じで、震源の距離も近い。しかし、圧力の方向や深さは断層型の地震であればよくあるものであり、3つの地震は同じ断層で起きたものではないため、「独立した地震」として扱われている。これと似たように、距離的に近い地域で短い期間に大地震が発生した例に、1920年代の北但馬地震北丹後地震や、2016年の熊本地震がある。

だが、新潟県中越地震や能登半島地震が今回の地震の引き金となった可能性もあると考えられている。この2つの地震が起きた事によって、新潟県中越沖地震を引き起こした断層にかかる圧力(応力)に変化が起き(圧力が増すことも減ることもある)、今回のタイミングで地震が発生したのではないかとの見方もある。ただ、新潟県中越地震の後の周囲の地殻への応力変化 (ΔCFF) の推定に関しては、気象庁では圧力が減った[G 8]、産業技術総合研究所活断層研究センターでは圧力が増した[N 2]などとなっており、意見は分かれている。

また、断層は北東-南西に延びる逆断層であることはすぐに判明したが、断層の傾く向きは北西側に沈むのか、南東側に沈むのかで意見が分かれた[N 3]。北西側に沈む場合、柏崎刈羽原子力発電所のある断層南東側は、断層が地表から浅い所にあることになり、原発の安全対策の欠陥がさらに大きくなることから注目された。2008年になり、南東側に沈むものであるとする結論が東京大学地震研究所産業技術総合研究所などから出され、見解は統一されつつある。

これと関連して、過去100年余りの一連の地震活動の傾向や近年のGPSによる観測をもとにした研究により提唱されている日本海東縁から近畿地方北部にかけての新潟-神戸歪集中帯に沿った地域で発生した地震で、かつ1828年三条地震と1964年新潟地震の間にあった空白域を埋めた地震でもある[N 4][G 9][G 10]


  1. ^ 被害額1兆5000億円に=中越沖地震で-新潟県推計[リンク切れ] 時事通信社 2007年(平成19年)7月23日19時22分
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  3. ^ 新潟県中越沖地震 動いた断層どちら[リンク切れ] 中日新聞2007年8月21日
  4. ^ 中越沖地震:(その2止) ひずみ蓄積し多発 「中越は活動期」証明[リンク切れ] 毎日新聞 2007年(平成19年)7月17日
  5. ^ 中越沖地震:自動車メーカー一時操業停止 工場復旧遅れ[リンク切れ]MSN毎日インタラクティブ、2007年(平成19年)7月18日の記事。
  6. ^ 中越沖地震:アレルギー症状悪化 被災地で対応策取れず[リンク切れ] 毎日新聞、2007年7月28日
  7. ^ Earthquake Spills Water At Japanese Nuclear Plantワシントンポスト』、2007年(平成19年)7月16日
  8. ^ 交通機関が各地で寸断[リンク切れ] YOMIURI ONLINE 2007年(平成19年)7月16日の記事
  9. ^ 被災地にクーラーなど提供=米[リンク切れ] 時事通信社 2007年(平成19年)7月18日 19時12分
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  3. ^ 「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震」について(第3報) (PDF) 。気象庁、2007年(平成19年)7月16日16時00分。
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  5. ^ 2007年7月16日10時13分ころ新潟県上中越沖で発生した地震について(第2報)。気象庁、2007年(平成19年)7月16日。
  6. ^ 主な震度観測点における最大加速度値 地震調査委員会、気象庁資料
  7. ^ 2007年新潟県中越沖地震についての 地震学からの考察 (PDF) 原子力安全基盤機構 NISA・JNES 2007 シンポジウム事務局 - WARPによるアーカイブ
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  10. ^ PLANT-5 刈羽店の再開に関するお知らせ』(プレスリリース)株式会社PLANT、2011年12月21日https://www.plant-co.jp/ir/pdf/145/press20111221.pdf 
  11. ^ TEPCO:プレスリリース | 新潟県上中越沖で発生した地震の影響について(午後1時現在)。東京電力、2007年(平成19年)7月16日。
  12. ^ a b c d e f g h i j k NEXCO東日本10年史編集委員会『東日本高速道路株式会社10年のあゆみ』2016年、92-100頁。OCLC 950959259 
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  22. ^ 登坂淳一 - オリコンTV出演情報
  23. ^ 鎌田實 いのちの対話 (前9:05に同じ) <新潟県中越沖地震関連ニュースのため途中中断> - NHKクロニクル
  24. ^ 赤江珠緒 - オリコンTV出演情報
  25. ^ 平成21年度エリアマネジメント推進調査報告書えんま通り商店街 (PDF) - 国土交通省.2021年5月10日閲覧。
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