文化人類学 概要

文化人類学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/04 04:24 UTC 版)

概要

人類学は一般に、人類の進化生物学的側面を研究する「自然人類学」と、人類の社会的・文化的側面を研究する「文化人類学 」(Cultural Anthropology) 、「社会人類学」 (Social Anthropology) などに大別される。文化はゴードン・チャイルドの定義に取って代わられ、文化が包括的な用語になり、文明は特定の分野を意味する用語となった[1]。文化人類学の名称はアメリカにおいて用いられ、イギリスおよび多くのヨーロッパ諸国では「社会人類学」の名称が用いられてきた。他のヨーロッパ諸国や日本においては民族学英語圏での Ethnologyドイツ語圏での Ethnologie)の名称も用いられている(民族学を一分野とする場合も多い)。民俗学Folklore)もまた隣接分野として共通の研究テーマを共有することが多い。

自然人類学」は、文化人類学や言語人類学、考古学と同様、重要な学問であり人類を進化の過程によって形作られてきた生物学的側面から捉える[2]。 それに対して、「文化人類学」は自然の対義としての文化から人類を研究しようとする学問分野である。文化とは、進化の過程を経て形成された遺伝的な形質のことではなく、人類が後天的に学習した行動パターンや言語、人工物の総体を指している。したがって文化人類学の隣接科学には言語学考古学があり、アメリカの学部ではこれらの学問に加えて自然人類学をあわせて総合的に教育されている。

より狭い意味で文化人類学は民族社会間の文化や社会構造の比較研究としても理解されている。社会人類学や民族学という名称は文化人類学という用語とほぼ同義である。ブロニスワフ・マリノフスキによる1914年のパプア調査以後[注 2]、この分野では数ヶ月から数年に渡って研究対象となる社会に滞在し、その集団の構成員の一員として生活する参与観察の手法を用いることが一般的となった。ライモン・パニッカーは、文化を成長、発展、革新そのほか多数に分類している[3]

  • 文化の定義
  1. 古典的・日常的文化:産業化な文明に対して、人間の精神面での向上などによち定義づけられた文化[4]
  2. 人類学的文化:人間と、自然や動物との差異から成立した文化。
  3. 社会学的文化:複数の社会や、その成員との関わりで成立した文化。

注釈

  1. ^ 広義の人類学は自然科学人文科学社会科学の諸領域にまたがる学際科学といえる。しかし日本学術振興会は、それらの学問分類において人類学を自然科学に、文化人類学人文科学に分類している。他方、研究や教育の現場では文化人類学の隣接学問としての社会学との類似性や共通点から社会科学のひとつであると主張するものもいる
  2. ^ 実際の人類学的フィールドワークの起源はさらに古くケンブリッジ大学では1898年にトレース海峡に調査隊を派遣し、親族研究法の基礎をつくったW.H.R.リヴァースらが参加している。
  3. ^ 1926-2021。著書「タテ社会」の人間関係で有名な女性学者。東京大学名誉教授だった

出典

  1. ^ Magolda, Peter M. (March 2000). “The Campus Tour: Ritual and Community in Higher Education”. Anthropology & Education Quarterly 31: 24–46. doi:10.1525/aeq.2000.31.1.24. 
  2. ^ Department of anthropology anthropology.indiana.edu 2024年4月4日閲覧
  3. ^ Panikkar, Raimon (1991). Pathil, Kuncheria. ed. Religious Pluralism: An Indian Christian Perspective. ISPCK. pp. 252–99. ISBN 978-81-7214-005-2. OCLC 25410539 
  4. ^ 太田好信『民族誌的近代への介入—文化を語る権利は誰にあるのか〔増補版〕』人文書院、2009年。 
  5. ^ Lowie, Robert Harry (1883-1957), anthropologist” (英語). American National Biography (2000年). doi:10.1093/anb/9780198606697.article.1400373. 2022年3月4日閲覧。
  6. ^ Macionis, John (1944–2011). Sociology. Gerber, Linda Marie (7th ed.). Toronto, Canada: Pearson Prentice Hall. ISBN 9780137001613. OCLC 652430995 
  7. ^ Rhodes, Lorna A. (2001). “Toward an Anthropology of Prisons”. Annual Review of Anthropology 30: 65–83. doi:10.1146/annurev.anthro.30.1.65. 
  8. ^ Levitsky, Steven; Murillo, Maria (2009). “Variation in Institutional Strength”. Annual Review of Political Science 12: 115–33. doi:10.1146/annurev.polisci.11.091106.121756. 
  9. ^ Cultural relativism World Problems and Human Potential 2024年4月4日閲覧
  10. ^ 山路勝彦編著『日本の人類学 植民地主義、異文化研究、学術調査の歴史』関西学院大学出版会 p.457
  11. ^ About anthropology fieldwork discoveranthropology.org.uk 2024年4月4日閲覧
  12. ^ 文化人類学会がアイヌ民族に謝罪 沖縄タイムズ 2024年4月3日閲覧
  13. ^ (中公新書・1979年、1990年改訂版)祖父江孝男 『文化人類学入門』 中央公論社<中公新書>(増補改訂版)、1990年、ISBN 4121905601






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