数値解析 研究分野

数値解析

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/09 03:28 UTC 版)

研究分野

数値解析は、解こうとしている問題によっていくつかの分野に分かれる。

関数の値の計算

補間: 気温の観測値が1:00には20℃、3:00には14℃だったとする。このデータを線型補間すると、2:00の気温は17℃、1:30の気温は18.5℃となる。

補外: ある国の国内総生産が毎年平均5%伸びていて、昨年の値が1000億ドルだったとする。ここで補外すると、今年は1050億ドルとなる。

回帰: 線型回帰では、n 個の点が与えられたとき、それら n 個の点のなるべく近くを通る直線を求める。

最適化: レモネード売りがレモネードを売っている。1杯1ドルでは、1日に197杯売れる。1杯あたり1セント値段を上げると、1日に売れるレモネードは1杯減る。1杯を1.485ドルにすると売り上げが最大となるが、1セント未満を使った値段は付けられないので、1.49ドルにすると一日の最大売り上げ 220.52 ドルが得られる。

微分方程式: ある部屋で一方からもう一方へ空気が流れるように100個の扇風機を配置し、羽根をそこに落としてみる。何が起きるだろうか? 羽根は空気の流れに従って漂うが、非常に複雑な動きになるかもしれない。その近似としては、羽根が漂っている付近の空気の速度を1秒おきに測定し、シミュレートされた羽根が1秒間は測定された方向にその速度で進むと仮定する。このような手法をオイラー法と呼び、常微分方程式を解くのに使われる。

最も単純な問題は、関数のある点での値を求めることである[注釈 3]。単純に数式に値を代入する直接的な手法は、効率的でないこともある。多項式の場合、ホーナー法を使うことで乗算と加算の回数を減らすことができる。一般に、浮動小数点演算を使うことで生じる丸め誤差を予測して制御することが重要となる。

補間、補外、回帰

補間が役立つのは、ある未知の関数のいくつかの点の値があるとき、それら以外の中間点でのその関数の値を求める場合である。単純な手法としては線型補間があり、既知の点の間で関数が線型に変化するとみなすものである。これを一般化した多項式補間はもっと正確となることが多いが、ルンゲ現象に悩まされることもある。その他の補間手法としてはスプラインウェーブレットといった局所化関数を使うものがある。

補外は補間とよく似ているが、未知の関数の値が判っている点の外側の点について値を求めることをいう[20]

回帰も類似した手法だが、既存のデータが不正確であることを考慮する。いくつかの点とその値があり、それらデータが誤差を含みつつ何らかの関数に従っているとして、その未知の関数を決定する。このための手法として、最小二乗法がよく知られている。

方程式、方程式系の解

基本的な問題のひとつとして、与えられた方程式の解を計算する問題がある。その方程式が線型か否かによって手法が分類される。例えば、 は線型だが、 は線型ではない。

線型方程式系

線型方程式系を解く手法については研究が進んでいる。標準的な直接解法としては何らかの行列分解を使うものがあり、ガウスの消去法LU分解対称行列エルミート行列に関するコレスキー分解、非正方行列に関するQR分解がある。反復解法としては、ヤコビ法ガウス=ザイデル法SOR法共役勾配法[21]があり、大規模な方程式系でよく使われる。

非線形方程式

非線型方程式には求根アルゴリズムが用いられる(根とは、関数の値がゼロとなる変数の値を意味する)。関数が可微分で導関数を導き出せる場合には、適切な初期値から開始してニュートン法が利用されることが多い[22][23] [24]。他にも線型化などの手法がある。

固有値と特異値

固有値分解特異値分解も重要な問題である。例えば、Spectral Image Compression[25]特異値分解に基づいたアルゴリズムである。これに対応した統計学のツールを主成分分析という。例えば、World Wide Web上での話題トップ100を自動的に抽出し、各Webページをどの話題に属するか分類するといった作業で使われる。

最適化問題

最適化問題は、与えられた関数が最大(または最小)となる点を求める問題である。解には条件として何らかの制約を課すことがよくある。

最適化問題はさらに、関数や制約の形式によっていくつかに分類される。例えば、線形計画問題は関数と制約条件の式が共に線型である場合を扱う。線形計画問題の解法としては、シンプレックス法や内点法などが挙げられる。

制約条件付きの最適化問題を制約条件のない問題の形に変換するためにラグランジュの未定乗数法が用いられる。

積分

数値積分(数値的求積法)では、与えられた領域に於ける定積分の値を求める[26]。一般的な手法としては、ニュートン・コーツ系の公式(中点法やシンプソンの公式)やガウスの求積法[27]二重指数関数型数値積分公式[28][29]などがある。これらは分割統治戦略に基づいて、大きな領域についての積分を小さな領域の積分に分割して値を求める。これらの手法は領域が高次元であると計算の手間が膨大となり適用が困難になるので、高次元の場合には計算量が領域の空間次元にあまり依存しないモンテカルロ法や準モンテカルロ法などのサンプリング平均により定積分の値を推定する手法がよく用いられる[30][31]

微分方程式

数値解析では、微分方程式常微分方程式偏微分方程式)を(近似的に)解く問題も扱う[32][33][34]

偏微分方程式を解くには、まず方程式を離散化し、有限次元の部分空間で計算を行う[32][34]。そのような手法として、有限要素法[35][36][37][38]差分法、特に工学分野で使われる有限体積法[39]などを挙げることができる。これらの手法は関数解析学の定理などに基づいている。これら各種の離散化近似手法により生じた有限自由度の連立代数関係式を何らかの手段で解くことで、求めたい微分方程式の解の近似を得る。


注釈

  1. ^ ピタゴラスの定理によれば、各辺が2メートルの正方形の対角線の長さは メートルとなる。
  2. ^ これは という方程式についての不動点反復法である。この方程式の解には もある。 なので、反復は常に右方向に向かう。そのため、 では収束するが、 では発散する。
  3. ^ 特殊関数の値を求める方法、零点を求める方法も盛んに研究されており、[19]が詳しい。

出典

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