揺さぶられっ子症候群 問題点

揺さぶられっ子症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/18 03:53 UTC 版)

問題点

病気[6] や低位転倒/落下(つかまり立ちから後ろに転倒、ソファーからの落下など)[7][8] でも、SBS(揺さぶられっ子症候群)によるものとされる症状と同様の症状が生じる場合がある。

病気や低位転倒/落下が原因だが、揺さぶられっ子症候群や虐待による頭部外傷と判断されて、大人(保護者)が逮捕・勾留・起訴・有罪にされたり、児童相談所に子供が一時保護され、その後も法的判断により月単位、年単位の長期間、家族が隔離・接触禁止にされる事例も発生している[9]。いわゆる「揺さぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome)」として乳児が「硬膜下血腫、脳浮腫、眼底出血」の3症状があると児童虐待が疑われるが、小児脳神経外科医からは「3兆候イコール虐待」と判定すべきではないとの主張がある[10]。判決では親族に実刑判決が出たのちに、無罪となる事例が出ている[11]

SBS説の起源はガスケルチ(A. N. Guthkelch)の1971年の論文[12] と言われているが、そのガスケルチが2012年の論文[13] ではSBSを巡る議論に懸念を表明している。

カフィー(J.Caffey)の仮説は1970年代から1980年代にかけて展開し、やがてSBS理論に変化。「硬膜下血腫や網膜出血は、子どもが揺さぶられることにより生じうる」という仮説が、その後「子どもが揺さぶられれば硬膜下血腫や網膜出血が生じる」と逆転した理論に代わった。SBSは、もともとは「仮説」として提唱されていた。[12]

SBS理論をリードしてきた著名な小児虐待医のキャロル・ジェニーは、2008年に全米SBSセンターで開催されたシンポジウムで「SBSの発見者は誰だと思いますか?私は、ノーマン・ガスケルチだと思います」とガスケルチを紹介し、観客はスタンディング・オベーションでガスケルチを迎えたとされている。SBS理論の提唱者と称されるガスケルチの懸念があるのであれば、その指摘を踏まえてSBS/ AHT理論の十分な検証が行われるべきではないか。ガスケルチが提案した「第三者による正しい理解のための検証」の試みのひとつが、スウェーデンの2016年SBU調査報告書[14] であると考えられる。[13]


  1. ^ “「孫殺し」で逮捕された祖母が逆転無罪になった理由”. presidentonline. (2020年2月19日). https://president.jp/articles/-/33058 2020年5月2日閲覧。 
  2. ^ AllAbout記事「揺さぶられっ子症候群」
  3. ^ 平林あゆ子「「揺さぶられっ子症候群」と保育:乳幼児保育に関わる人々の認識度(第1報)」『名古屋女子大学紀要 人文・社会編』第52巻、名古屋女子大学、2006年3月、91-99頁、ISSN 0915-2261NAID 120005696027  p.98 より
  4. ^ 参考:東京くらしねっと「要注意!揺さぶられっ子症候群」 東京都生活文化局消費生活部生活安全課
  5. ^ 厚生労働省 子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第6次報告)資料1 死亡事例集計結果
  6. ^ 裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面”. www.courts.go.jp. 2020年2月2日閲覧。
  7. ^ 明日はわが身? 子どものケガでお縄頂戴!?”. 岩崎書店のブログ. 2020年2月2日閲覧。
  8. ^ 資料検索 - 龍谷大学図書館”. library.ryukoku.ac.jp. 2020年2月2日閲覧。
  9. ^ 【虐待冤罪の全貌】「揺さぶり」疑われて家族が離れ離れに…5年に及ぶ刑事裁判の結末は…「ザ・ドキュメント 引き裂かれる家族 検証・揺さぶられっ子症候群」【2023年ギャラクシー賞受賞】
  10. ^ “【通崎好みつれづれ】児童虐待と冤罪”. 産経新聞. (2020年4月9日). https://www.sankei.com/premium/news/200409/prm2004090006-n2.html 2020年5月1日閲覧。 
  11. ^ “揺さぶり虐待疑われた祖母に逆転無罪! 他のSBS裁判にも大きな影響”. yahoonews. (2019年10月28日). https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20191028-00148597 2020年5月1日閲覧。 
  12. ^ a b Sasakura, Kana (2017年11月27日). “SBS(揺さぶられっ子症候群)とは?~その2(SBS理論の起源)”. SBS(揺さぶられっ子症候群)を考える. 2020年3月6日閲覧。
  13. ^ a b Sasakura, Kana (2017年12月25日). “SBS(揺さぶられっ子症候群)とは?~その5(ガスケルチの懸念)”. SBS(揺さぶられっ子症候群)を考える. 2020年3月6日閲覧。
  14. ^ AkitaMasashi (2017年11月23日). “スウェーデン政府機関(医療技術評価協議会)報告書を研究すべき。”. SBS(揺さぶられっ子症候群)を考える. 2020年3月6日閲覧。


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