掩蔽
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 09:03 UTC 版)
概要
通過 (transit) や食 (eclipse) と比べると、掩蔽は近いほうの天体が大きく見え、遠いほうの天体を完全に隠してしまう場合に使われる。対照的に、通過という用語は、近いほうの天体の見掛けの大きさが遠いほうの天体よりもずっと小さい場合に使われ、そのような例として水星と金星が太陽面を通過する場合がある(太陽面を通過する場合は特に太陽面通過や日面経過などという)。食とは一般に、ある天体が別の天体の影に入るような場合を指す。この3つの現象は、朔望の結果の中で目で見られるものである。
掩蔽が起こっているときにはいつも、食も起こっている。地球から見たときの月による太陽の、いわゆる「食」(日食)を考えてみるとよい。この現象では、月は物理的に地球と太陽の間に動いてきて、明るい太陽の円盤の一部分あるいは全てを遮ってしまう。この現象は普通「食」と呼ばれるが、この言い方は厳密に言えば誤用である。なぜなら月は太陽を「食」していないからである。月は太陽を「掩蔽」しているのである。月が太陽を「掩蔽」するとき、月は地球の表面に小さな影を投じ、それによって月の影が部分的に地球を食する。つまりいわゆる「日食」は実際には(1)地球から見た場合の太陽の月による「掩蔽」、そして(2)月の影による地球の部分的な「食」、からなるのである。
それに対して、月の「食」(月食)は実際に真の食である。月は地球の後ろの空間に投影された影へと動いていき、地球の影により「食された」と言われる。月の表面から見て、地球は月と太陽の間をまさに通過していき、従って月面の仮想の観測者から見ると太陽は遮られ「掩蔽」が起きたことになる。繰り返すが、全ての「食」は「掩蔽」を伴うのである。
- ^ W. B. Hubbard et al. (1997), “Structure of Saturn's Mesosphere from the 28 Sgr Occultations” (PDF), Icarus (Elsevier) 130 (2): 404–425, doi:10.1006/icar.1997.5839 2012年7月20日閲覧。
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