情報 記録としての情報

情報

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/15 11:18 UTC 版)

記録としての情報

記録は情報の特化した形態の1つである。記録とは、経済活動や取引の副産物として生み出され、その価値が認められて保持されている情報である。その主たる価値とは、その組織の活動の証拠としての価値だが、情報としての価値から保持されることもある。記録管理は記録の完全性を保証し、それらを必要なだけ長期間に渡って保持することを目的とする。

記録管理における国際標準として ISO 15489 がある。その中では記録を「組織または個人が法律上の義務に従って、または業務上の取引において、証拠として作成し、受け取り、維持する情報」と定義している。International Committee on Archives (ICA) は電子的記録に関する国際組織であり、記録を「何らかの活動の開始・遂行・完了の各段階において生成・収集・受信された特定の記録情報であり、十分な内容と構造を有していて、その活動の証拠となるもの」と定義している。

情報と記号学

Beynon-Davies[30][31]は、記号および信号-記号系における情報の多面的概念を提唱した。記号自体は記号学における4つの相互依存したレベル、層、分野、すなわち語用論意味論統語論・Empiricsにおいて考慮される。これらの4つの層は、社会と物理世界や技術世界を接続する役目を担っている。

語用論は、通信やコミュニケーションの目的を扱う。語用論は、記号の発行と記号が使われる文脈とを接続するものである。語用論が注目するのは、コミュニケーションを行おうとする者の意図である。言い換えれば、語用論は言語と行為を結びつける[32]

意味論は、コミュニケーション行為によって伝達されるメッセージの意味を扱う。意味論はコミュニケーションの内容を考察する。意味論は記号の意味を研究するもので、記号と行為の関係を研究するものである。意味論は記号とそれが指す概念や指示物の関係、特に記号と人間の行為の関係を研究するものである。

統語論はメッセージを表現する際に使われる形式を扱う。統語論はコミュニケーションにおける記号体系の論理や文法を研究する分野である。統語論は記号や記号体系の内容よりも形式を研究する分野である。

Empiricsはメッセージを伝達する信号、通信媒体の物理特性についての研究である。Empiricsは通信路とその属性(例えば、音、光、電子など)を研究する分野である。

Nielsen (2008)[33]では、辞書における記号学と情報の関係を論じている。そこで提唱された lexicographic information cost という概念は、辞書を使う際に目的の項目を見つけるのにかかるコストと、その項目に書かれている内容を理解して情報を生成するのにかかるコストを指すものである。


Shu-Kun Lin は新たに情報を「データ圧縮後のデータ全体」と定義した[34]

出典


  1. ^ a b c d e f g h i j k l m デジタル大辞泉
  2. ^ a b c d e f g h i j 安西祐一郎「情報」『岩波 哲学・ 思想事典』1998年。 
  3. ^ a b 関連項目: エピジェネティックス細胞記憶
  4. ^ L. Floridi, Information - A Very Short Introduction (Oxford University Press) provides a short overview.
  5. ^ a b 坂本賢三「情報」『世界大百科事典』平凡社、1988年。 
  6. ^ 酒井清 改訳 (1881年11月15日). “佛國歩兵陣中要務實地演習軌典(再版)”. 国立国会図書館デジタルコレクション. 内外兵事新聞局. 2019年8月14日閲覧。
  7. ^ 小野厚夫: 情報という言葉を尋ねて(1). 情報処理学会誌, Vol.46, No.4, pp.347-351, 2005.
  8. ^ 軍事領域における訳語の変遷と原状は、高井三郎『知っておきたい現代軍事用語--解説と使い方』アリアドネ企画、2006年、42-45ページ、「〔情報、情報資料、諜報〕intelligence, information, espionage」参照。
  9. ^ 「高度情報化社会の諸相 歴史・学問・人間・哲学・文化」p5 折笠和文 同文舘出版 平成8年9月20日初版発行
  10. ^ 情報という言葉の語源とその周辺について2024年7月7日閲覧
  11. ^ Information Theory2024年7月7日閲覧
  12. ^ 「高度情報化社会の諸相 歴史・学問・人間・哲学・文化」p6 折笠和文 同文舘出版 平成8年9月20日初版発行
  13. ^ 情報という言葉を尋ねて(1)同(2)同(3)
  14. ^ https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/knowledge/relationship/genes_and_genomes.html 「遺伝子・ゲノムとは」 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT) 2024年7月15日閲覧
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  17. ^ 『ATOM 原子の正体に迫った伝説の科学者たち』 近代科学社、2010 ISBN 4764950111
  18. ^ 「情報理論 改訂版」p2-3 三木成彦・吉川英機 コロナ社 2000年1月13日初版第1刷発行
  19. ^ 「情報理論 改訂版」p3 三木成彦・吉川英機 コロナ社 2000年1月13日初版第1刷発行
  20. ^ 法令用語と判例における「情報」 - 法政大学 白田秀彰
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  22. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p101-103 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  23. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p31 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  24. ^ 「情報社会と情報倫理 改訂版」p1−4 梅本吉彦編著 学陽書房 令和2年1月25日発行
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  27. ^ 「高度情報化社会の諸相 歴史・学問・人間・哲学・文化」p46-49 折笠和文 同文舘出版 平成8年9月20日初版発行
  28. ^ https://www.mext.go.jp/content/20200608-mxt_jogai01-000003284_003.pdf  「第2章 情報活用能力の育成」文部科学省 令和2年6月 2024年7月15日閲覧
  29. ^ 「高度情報化社会の諸相 歴史・学問・人間・哲学・文化」p86-87 折笠和文 同文舘出版 平成8年9月20日初版発行
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  31. ^ Beynon-Davies P. (2009). Business Information Systems. Palgrave, Basingstoke. ISBN 978-0-230-20368-6
  32. ^ Witzany G. (2010) Biocommunication and Natural Genome Editing. Springer: Dordrecht
  33. ^ Sandro Nielsen: 'The Effect of Lexicographical Information Costs on Dictionary Making and Use', Lexikos 18/2008, 170-189.
  34. ^ Shu-Kun Lin (2008). 'Gibbs Paradox and the Concepts of Information, Symmetry, Similarity and Their Relationship', Entropy, 10 (1), 1-5.






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