性行為
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/01 21:36 UTC 版)
避妊
性交を行うが妊娠を望まないときは、なんらかの手段を用いて避妊を行う事がある。避妊は、様々な方法や道具が存在する。受胎調節のこと。
社会学・文化人類学的分野
言葉
「性交」「セックス」という言葉を口にすることに抵抗感を持つ人は多く、様々な言い換えが行われている。
表現例
- 初めて性交を経験することを男女ともに初体験(はつたいけん、しょたいけん、英語: First sexual experience)と呼ぶ。特に断りがなくても、「初体験」という言葉だけで性交を意味する場合が多い。
- 「やる」「する」などの代動詞、指示代名詞の「あれ」(It)が文脈上性交を意味する場合もある。
- 「まぐわう」(“目交う”から来たという説あり)、「寝る」、「愛し合う」とも表現される。「(異性と)寝る」と言う場合、しばしば性行為を伴うことを意味する。英語でも "Go to bed" (「ベッドへ行こう」)と言った場合、単に「就寝する」の意味ではなく、性行為の可能性を含んだ意味になる。また、"Sleep with" も同様である。"Make love" も元来は「求愛する」という意味だったが、現在では「性交する」の意味で使われる場合がほとんどである。
- 夫婦同士による性交は子作りや夫婦の営み、夫婦生活などと言われる。
- 歌謡や文学では「朝を迎える」「夜を越える」等の遠回しな表現も多く用いられる。
- 本来人間以外に対して使われる「交尾」を、俗語として人間の性交をさして使うこともある。
日本特有の表現
文学表現
- 季節を意味する「春」は、色情、淫欲、売淫なども意味し(春情、売春、「春を鬻ぐ」、「春を売る」など)、転じて性行為そのものを指す場合がある[8]。
- 古くは「枕を交わす」「情を交わす」といった奥ゆかしい言葉もあった。その他「肌を合わせる」「体を重ねる」「抱く」など、性交を示す言葉はいくつか存在する。
- 「聖書」の日本語訳では「知る」という言葉が性行為を意味する。「アダムは妻エバを知った[9]。」など。
俗称・スラング
- 日本では未婚の男女間の性行為にラブホテルが用いられることが比較的多いため、男女が性的関係を持つことを婉曲的に「ホテルに行く」と言うことがある。
- 主に学生の隠語で、A・B・C・D・Eという言葉があった。それぞれキス・ペッティング・セックス・妊娠・妊娠中絶を意味した。
- より抵抗感の少ない「エッチする」という言葉が使われている例がある[注 2]。また、単に「シよう」「ヤろう」と言う言葉でも場合によっては性交を意味する。一方で、より低俗・卑俗な表現として「パコる」や「ファック」が用いられることもある。
- 性風俗店などで、フェラチオなどの性交類似行為と区別して、性交そのものを「本番」と称する。
- 19世紀半ばのイギリスで生まれた性行為を指す隠語である「ジギジギ (Jig-a-Jig)」は、形を変えつつイギリスの影響下にあった海外諸国に広く伝播し、その由来を他国になすり合う現象が起きている。また、インドネシアで使われているkici-kiciの起源は日本語であるという語源解釈が広く行われている[10]。
- 特にインターネットにおいて、ベッドの軋む音や喘ぎ声を組み合わせた「ギシギシアンアン」(「ギシアン」とも略される)が用いられる。
神話における性交
- 古事記ではイザナギとイザナミがそれぞれの身体の違い(原文では、「余ったところ」と「足りないところ」と書かれている)に気付き、挿し塞いで子供(日本の島々)を作ったとある。
- 日本書紀には神々(イザナギとイザナミ)は鶺鴒(ニハクナブリ)が交尾する様をみて、子を成す方法を知ったとある。こういった伝説のため、古来日本では結婚と鶺鴒の縁は深い。セキレイは結婚と交接を象徴する鳥となっている。
性行為に関わる民俗(性風俗)
日本の性風俗
- 一部の農漁村においては、かつては夜這いという風習があった。夜間、他人の家に押し入り、未婚の女性と性交を行う行為である。複数の男と関係を持った娘が妊娠した場合、その娘は子の父親として若衆宿の好きな男性を指名し、指名された男性はそれを受け入れることが求められた。将来の夫婦(許婚)など双方の家族が暗黙の了解のもとに行っている場合もあった。この習慣により村の団結が強化された。
- 古くは筆下ろし、水揚げといって年頃になった若者に、遊郭で実地の性教育をほどこす風習があったという。13歳など一定の年齢に達した男女に対し、大人が相手をして性教育をしたとされる。当然、結婚まで処女・童貞を守るという発想はなかった。ただし武士の娘は処女性が求められた。
- 江戸時代は、男女間の性行為は厳しい規則があった。夫婦関係にない男女間の性交は、不義密通と呼ばれ、「御定書百箇条」では不倫の現場を押さえた夫が、妻と相手の男を殺しても罪にならないとされた。この場合、女性の不貞に対しては厳しい制裁が課せられたが、男性のそれには寛容であった。しかし相手が人妻の場合は別で、表沙汰にするのは外聞が悪いということで実際には金銭で片を付けることが多かった。刑罰としては数日間晒し者にされて、遠島もしくは江戸所払いなどに処せられた。
欧米圏の性風俗
- 西欧では領主が初夜権を持っていたと言われる(結婚初夜に新婦と初めて性交するのは新郎ではなく、領主であった)。ただし、この初夜権は、ほとんどの場合、新郎が代価として金銭などを支払うことによって領主から買い取ることが通例となっていたため、実質的には新夫に対する一種の「結婚税」としての性格を持っていたと言える。
性交と結婚
- 結婚制度は性交を社会的に管理する役割を持つとともに、夫婦間の結びつきを強め、家族機能を保障する側面も併せ持っている。本能のままに行動していては、子の養育などの責務を果たさない者が増加する恐れがあるからである。
- 結婚しているにもかかわらず、配偶者以外の異性と性交をすることを姦通(やや遠まわしに「不倫」)と言う。2015年までの韓国、第二次世界大戦敗戦までの日本のように、結婚している者が配偶者以外の異性と性交を行った場合、姦通罪に問われる国もある。 ただし、韓国の姦通罪は男女共に罰せられたが、日本の旧刑法における姦通罪の場合、罰せられるのは女性のみであった。
- 夫婦が性交を行う頻度は当然各々違うが、国によっても差異があるようである。Durex社のGlobal Sex Surveyでは、日本人の性交回数は、諸外国と比較すると少ないとされている。近年は、性交がほとんどない夫婦をセックスレス夫婦と呼ぶことも多い。厚生労働省の調査によると、1ヶ月以上性交渉のない夫婦をセックスレスとみなした場合、日本の夫婦のうち、実に32%がセックスレス状態にあるとのことである。ただし、日本の夫婦においては精神的なつながりが希薄との統計的な資料は存在しない。
- 結婚した夫婦が一度も膣性交(膣への陰茎の挿入)をしていない状況を未完成婚という。
人間の性交体位
- コンドームメーカーのDurex社の調査によれば、世界で最もよく行われる体位は騎乗位で全体の29%。続いて後背位が28%、正常位(正しくは通常位、対面男性上位)が20%となっている。
- 現代日本では、男性が女性の上から被さる形の正常位の体位がその名の通り一般的と考えられているが、後背位が日本古来の性交の姿だったと考えられている。
- 日本では四十八手という体位のバリエーションがある。中国でいう房中術は、単なる体位や技術ではなく、男女の「気」を高める一種の健康法という要素があるという。
健康
ハーバード大学医学院によると、身体的な愛情と性的な親密さは体に良いとされる[11]。
ストレスを和らげ、幸福感を促進するホルモンであるオキシトシンのレベルを上げるとされる[11]。
性行為は女性の健康にとって重要である。新陳代謝を活発にし、免疫力を高める効果がある。頻繁な性交は、心臓発作のリスクを減らすことと関連している。膣の潤滑性、弾力性、健康を維持するのに役立つ[12]。
性行為は男性にとっても適度な運動である。全体として、フォックストロット、掃除、卓球、ゴルフをするためにコースを歩くのとほぼ同じである。週に2回を超えて性行為をした男性は、月に1回未満の性行為をした男性よりも心血管疾患を発症する可能性が45%低かった。 週に3回以上オルガスムを報告した男性は、射精の頻度が少ない男性よりも死亡率が50%低かった[13]。
さらに、心臓発作から数か月以内に通常のレベルの性的活動に戻ることが、生存率の改善に関連している。健康状態の改善や配偶者との良好な関係など、健康の改善に関連する他の要因を反映している可能性がある、と研究者は述べた[14]。ケーゲル体操を行うことによって、男性も女性も、骨盤底筋を鍛えることで性的健康を改善することができる[15]。
注釈
- ^ 『古事記』にも見られる大和言葉「みとのまぐはひ」に当て字でない翻字としての漢字を当てれば「御陰の目合」。「みと」の「み」は敬語の「御」、「と」は男性・女性の象徴部・陰部、すなわち性器のこと。したがって「みと」は「御陰」で、性器に敬語を冠した語形である。「まぐはひ(目合)」すなわち「目と目を合わせて愛し合うこと」と同じように、「みとのまぐはひ」は、互いの「みと」を合わせて愛し合うことをいう。ここから転じて「御陰の目合」の意味が「目合」の第2義になり、やがて「御陰の目合」のほうは死語になった。
- ^ エッチの語源は「変態(へんたい)」もしくは「破廉恥(はれんち)」をローマ字表記した場合の頭文字 "H" の日本語慣習音の一つ「エッチ」であるとされている。また、「エッチする」という言葉を放送に乗せて初めて使ったのは明石家さんまもしくは島田紳助であったといわれている。
出典
- ^ 「性行為」『広辞苑』 岩波書店、第5版、p. 1465
- ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “性行為”. コトバンク. 2019年12月18日閲覧。
- ^ 三省堂『大辞林』第3版. “性行為”. コトバンク. 2019年12月18日閲覧。
- ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “性行為”. コトバンク. 2019年12月18日閲覧。
- ^ 平凡社『世界大百科事典』第2版. “性行為”. コトバンク. 2019年12月18日閲覧。
- ^ “平成29年7月13日から刑法が一部改正されました”. 北海道警察本部. 2017年10月18日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b “第193回国会(常会) 刑法の一部を改正する法律案”. 法務省. 2017年10月18日閲覧。
- ^ 三省堂例解新国語辞典「春」の項
- ^ 新共同訳聖書 創世記4章1節
- ^ 月刊みんぱく編集部 1996, pp. 263–264.
- ^ a b “Sex matters”. Harvard Health Publishing (2015年6月). 2018年7月31日閲覧。
- ^ “For women, sexuality changes with age but doesn’t disappear” (英語). Harvard Health (2014年2月13日). 2021年12月13日閲覧。
- ^ Publishing, Harvard Health. “Is sex exercise? And is it hard on the heart?”. Harvard Health. 2020年12月6日閲覧。
- ^ Publishing, Harvard Health. “Resuming sex within months of a heart attack linked to longer survival”. Harvard Health. 2020年12月3日閲覧。
- ^ Publishing, Harvard Health. “11 ways to help yourself to a better sex life”. Harvard Health. 2020年12月10日閲覧。
- ^ IASR 29-9 性感染症, 感染症発生動向調査, 梅毒, 性器クラミジア感染症, 性器ヘルペスウイルス感染症, 尖圭コンジローマ, 淋菌感染症
- ^ 三宅婦人科内科医院“思春期" 思春期の性動 - ウェイバックマシン(2016年2月18日アーカイブ分)
- ^ 三宅婦人科内科医院“思春期" 10代の妊娠 - ウェイバックマシン(2015年12月8日アーカイブ分)
- ^ 「女性は思春期の恋愛期間の性行為を控えるべき」と脳科学者(2013年1月11日 NEWSポストセブン)
- ^ “性感染症の早期予防教育を”. 東奥日報社 (2005年3月11日). 2011年10月14日閲覧。
- ^ 思春期の性の危機 Archived 2007年1月29日, at the Wayback Machine.
- ^ 家庭・家族の意味を再考する[リンク切れ]
- ^ “山口県医師会報 第1737号 (PDF)”. 山口県医師会 (2005年5月). 2011年10月14日閲覧。 447ページ(ファイルの69ページ目)を参照のこと。[リンク切れ]
- ^ 第7回青少年の性行動調査 - 日本性教育協会
- ^ 「夫婦の性1000人に聞く」朝日新聞の2001年7月4日付
- ^ 日本性科学会公式サイト[リンク切れ]
- ^ livedoor News 武田アナが凍りついた田原総一朗のツッコミ NHKクロ現「高齢者セックス特集」2017年5月19日 18時19分 J-CASTニュース
- ^ クローズアップ現代+ 公式サイト
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- ^ 森下 2008, pp. 12–13.
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