影の車
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影の車 | ||
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著者 | 松本清張 | |
発行日 | 1961年8月30日 | |
発行元 | 中央公論社 | |
ジャンル | 短編集 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
ページ数 | 238 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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連作短編集『影の車』
- 松本清張による連作短編。同タイトルで『婦人公論』1961年1月号から8月号まで連載され、同年8月、中央公論社より単行本が刊行された。
- 作品は以下の通り。なお、単行本では各話の順序が入れ替えられている。リンクのある作品は、各リンク先を参照。
- 第4話『潜在光景』が『影の車』のタイトルで映画化・テレビドラマ化されたほか、『万葉翡翠』『薄化粧の男』『典雅な姉弟』『鉢植えを買う女』『突風』もテレビドラマ化されている。
小説『潜在光景』あらすじ
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
都心から80分ばかりかかる住宅地に住む浜島幸雄は、会社帰りのバスの中で、小磯泰子から声をかけられ、学生時代以来の再会をする。1週間後、再びバスの中で遭遇した泰子は、家に立ち寄るよう勧めた。思い切ってバスを降りた浜島は、泰子が夫を失い、保険の集金の仕事をしながら、六歳の健一という名前の息子と二人で暮らしているのを知る。泰子の態度に、妻には見られないやさしさを感じる浜島。
他方、浜島の妻は、それほど温かい気持ちの女ではなく、家の中は索漠としていた。浜島と泰子の間は急速に進み、二人は結ばれる。少ない収入にもかかわらず、浜島に心から仕える泰子。しかし、息子の健一はひどく人見知りし、一向に浜島に馴れない。泰子と話をしていても、健一の存在が煙たく、気持ちにひっかかってくる浜島。浜島はふと、自分の小さいときの記憶を途切れ途切れに思い出すようになったが、その記憶に潜在する光景が、現在の浜島に思わぬ影をもたらす。
映画
影の車 | |
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The Shadow Within | |
監督 | 野村芳太郎 |
脚本 | 橋本忍 |
製作 | 三嶋与四治 |
出演者 |
加藤剛 岩下志麻 |
音楽 | 芥川也寸志 |
撮影 | 川又昂 |
編集 | 浜村義康 |
配給 | 松竹 |
公開 | 1970年6月6日 |
上映時間 | 98分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
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1970年6月6日に松竹系にて公開された。主な舞台を東急田園都市線・藤が丘駅周辺の「ささおやま団地」とし、浜島の勤務先を旅行代理店、妻・啓子の職業をフラワー教室とするなど、時代背景は、高度経済成長の進行を踏まえた設定となっている。また、本映画オリジナルの設定として、浜島と泰子の故郷を千葉県千倉町(現・南房総市)としている。1970年度キネマ旬報ベストテン第7位に選出されている。現在はDVD化されている。
キャスト
- 浜島幸雄:加藤剛
- 小磯泰子:岩下志麻
- 浜島啓子:小川真由美
- 浜島の母親:岩崎加根子
- 浜島のおじさん:滝田裕介
- 石川:近藤洋介
- 小磯健一:岡本久人
- 浜島の少年時代:小山梓
- 刑事:芦田伸介
- 医師:稲葉義男
- 泰子の夫(写真出演):長谷川哲夫
- 早野寿郎
- 野村昭子
- 川口敦子
- 谷よしの
- 大塚君代
- 関口銀三
- 阿部百合子
- 新田勝江
- 清水良英
- 竹口アキ子
- 志賀真津子
- 水木涼子
- 村上記代
- 戸川美子
- 後藤泰子
- 光映子
- 城戸卓
他
スタッフ
- 監督:野村芳太郎
- 脚本:橋本忍
- 音楽:芥川也寸志
- 撮影:川又昂
- 美術:重田重盛
- 編集:浜村義康
- 録音:栗田周十郎
- 照明:三浦礼
- 調音:松本隆司
- 光学技術:石川智弘
- 監督助手:山根成之
- 装置:中村良三
- 装飾:玉生久宗
- 衣裳:東京衣裳
- 現像:東洋現像所
- 製作主任:吉岡博史
エピソード
- 本映画を監督した野村芳太郎は、撮影前日に「明日の撮影に関するメモ」と題した構想書きをメインキャストとメインスタッフに渡していた。主演の加藤剛はこれに刺激され、構想を提案するレポートを毎日書いており、劇中の眼鏡を握りつぶす演技は、加藤が野村に提案し採用されたと回顧している[1]。
- 劇中に度々挿入される主人公の回想場面は、一見フィルターをかけた普通のエフェクト映像に見えるが、実は100日間の実験期間と当初の9倍の予算費用、そして6千mの作業用ポジ・フィルムを消費するという手間暇がかかっている。潜在意識による被害妄想を表現するために単なる回想にしたくないと考えた監督が特注したもので、撮影を担当した川又昂は光学技術担当の石川智弘と共に大船撮影所内に現存していた旧式のオプチカルプリンターを駆使して、まず撮影したポジ・フィルムから3原色分に分解したネガを3本作り、それぞれを8~4コマ分ずらしてポジに焼くことで全体の色がズレた画面を創り上げ、次にこの色ずれしたフィルムの最初のネガからカラーポジと白黒ポジ2本焼いて、さらに撮影風景の明るい部分だけの素粒子を強調するコントラストの強い白黒ポジをもう1本焼いたうえで、この3本のポジを重ね焼きすることで『レリーフ効果』と呼ばれる線や面が浮き出る映像効果を創り上げた。3色分解とレリーフ効果を合わせたこの映像効果を、川又は『多層分解』と名付け、公開当時のパンフレットにもそう記載されている[2]。
- 監督は回想以外の場面を徹底的にリアルに描くこととし、ヒロインの家の外観は神奈川県の長津田にある家屋を8ヶ月借り切り、家内部を撮影する際も実際に大船撮影所内に家屋を建ててから本物の水道やガス、テレビを設置して、テレビ番組を視聴する場面では本物の番組が放送される時間帯まで撮影を待つという拘り様だった[3]。
- 岩下志麻の息子役・岡本久人に対する印象は「あの子は普段から喜怒哀楽がないんです。いつも笑ってるような、笑ってないような顔をして。野村監督は子供の扱い方がすごく上手だから、なだめたりいろいろしていました。よくああいう子供を見つけてきたと思います。何を考えているんだか本当に分かりませんでした」「オーディションした時に野村監督が『何を考えているか分からない』というような子を選んだんでしょうね」「不思議な子役さんでしたね」[4]
固有名詞の分類
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