強制性交等罪 未遂等・強盗強制性交等罪

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強制性交等罪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/06 12:54 UTC 版)

未遂等・強盗強制性交等罪

性交等の行為を開始し、あるいはその手段としての暴行・脅迫を開始した時点で強制性交等罪の実行の着手があったものとされる。よって、性交等が既遂とならなくても、強制性交等未遂罪(刑法177条、180条)が成立し、既遂と同一の法定刑で処断される。

また、強制性交等の故意が認められない場合でも、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪・監護者わいせつ罪(刑法176条・178条1項・179条1項)が成立し得る。

強盗犯人が口封じやその他の理由で強制性交等に及ぶケースもあることから、別途、強盗・強制性交等罪(刑法241条)が定められている。

親告罪から非親告罪化

平成29年改正以前は、強制わいせつ罪、強姦罪、準強制わいせつ罪及び準強姦罪は親告罪であり、被害者(又はその法定代理人等)の告訴がなければ公訴を提起することができなかった(平成29年改正前の刑法180条1項)。これらの犯罪の追及は、社会的評判の失墜などかえって被害者の不利益になることもあったため、訴追するか否かを被害者の意思によることとしたものである。なお、強姦罪は犯人と被害者の間の一定の関係は問わないため、絶対的親告罪に該当していた。

一方、親告罪であることが、かえって被害者の心理的負担となることや、被害者の選択に拠らせることにより、加害者の逆恨みからの復讐の標的となりかねないなどの問題点[17]があるとするのが政府見解であり、被害者のプライバシーなどの厳格な保護は、別途刑事手続き・裁判手続きにおいて対処されるものとし[18]、これらの性犯罪に関し、平成29年改正により非親告罪とした。

親告罪から非親告罪へ

強姦致死罪、強姦致傷罪は、立法当時より、非親告罪であるため、告訴の有無に拘らず公訴を提起することができた。また、集団による強姦行為(輪姦)等は性的倫理感から照らして異常な行為であるとの認識があり、昭和33年改正において既に非親告罪となっていた。

2000年(平成12年)法律第74号の改正により、強姦罪等については、発生日から6か月の告訴期間が廃止された(刑事訴訟法235条1項)。

2012年(平成24年)憲法学者辻村みよ子東北大学教授が会長を務める内閣府男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会で、強姦罪を非親告罪化する法改正を求める報告書が取りまとめられた[19]

2015年(平成27年)8月6日、刑法学者山口厚東京大学名誉教授が座長を務めて性犯罪の厳罰化を議論してきた法務省性犯罪の罰則に関する検討会でも、被害者の告訴がなくても罪に問えるようにするべき[20]だとの意見が多数であった[21]

2015年(平成27年)10月9日の法制審議会への改正諮問の案に、強姦罪等の非親告罪化が盛り込まれた。

法定刑

有期懲役刑の上限は20年(加重により30年)である[22]。以下、(参考)内の「改正前」とは平成29年改正前を言う。

強制性交等罪、監護者性交等罪
5年以上の有期懲役(刑法177条、178条2項、179条2項)
(参考)強姦罪・準強姦罪 3年以上の有期懲役(改正前刑法177条、178条2項)
強制性交等致死傷未遂罪、強制性交等致死傷罪、監護者性交等致死傷罪
無期又は6年以上の懲役(刑法181条2項)
(参考)強姦致死傷罪・準強姦致死傷罪 無期又は5年以上の懲役(改正前刑法181条2項)
強盗・強制性交等罪
無期又は7年以上の懲役(刑法241条1項)
(参考)強盗強姦罪 無期又は7年以上の懲役(改正前刑法241条前段)
強盗・強制性交等致死罪
死刑又は無期懲役(刑法241条3項)
(参考)強盗強姦致死罪 死刑又は無期懲役(改正前刑法241条後段)
集団強姦罪・集団準強姦罪(廃止)
4年以上の有期懲役(改正前刑法178条の2)
集団強姦致死傷罪・準強姦致死傷罪(廃止)
無期又は6年以上の懲役(改正前刑法181条3項)

減軽

以上の各罪につき、未遂の場合でも既遂と同一の法定刑により処断される。

減軽を定める罪は強盗・強制性交等罪だけであり、強盗行為および強制性交等行為の両方とも未遂の場合に裁量的減軽を定める。更に、両方とも未遂であり、なおかつ一方(又は両方)が中止未遂となった場合には必要的減軽を定める。ただし、致死の結果を生じた場合には強盗・強制性交等致死罪となり、法定の減軽の対象外となる。

これ以外の罪については全て裁量的減軽(酌量減軽)である。

国外犯

刑法第三条(国民の国外犯)および第三条の二(国民以外の者の国外犯)の対象である。




  1. ^ 改正刑法:性犯罪を厳罰化、成立 「非親告罪」化などが柱”. 毎日新聞. 毎日新聞社 (2017年6月16日). 2017年6月19日閲覧。[リンク切れ]
  2. ^ 以下、2017年(平成29年)7月13日施行の改正刑法を言う。
  3. ^ 性犯罪に関する刑法~110年ぶりの改正と残された課題”. NHK (2018年10月22日). 2020年7月13日閲覧。
  4. ^ 西田典之『刑法各論』第三版81頁
  5. ^ http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/193/0004/19306070004021c.html
  6. ^ “川崎逃走男「金は返すから逮捕は勘弁して」”. 日テレNEWS24. (2014年1月11日). http://news.livedoor.com/article/detail/8422765/ 2014年1月11日閲覧。 
  7. ^ 制定の直接の契機となったのは、2003年(平成15年)に発覚したスーパーフリー事件である。
  8. ^ 以下、前澤貴子. “調査と情報第962号”. 性犯罪規定に係る刑法改正法案の概要. 国立国会図書館. 2017年10月22日閲覧。による。
  9. ^ なお、平成29年改正以前、法定刑の下限は5年であった。
  10. ^ 最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)第2294号 窃盜、強姦致傷 昭和34年7月7日 決定 棄却 集刑130号515頁
  11. ^ 最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)第1274号 強姦致傷 昭和34年10月28日 決定 棄却 刑集13巻11号3051頁
  12. ^ 最高裁判所第二小法廷 昭和46年(あ)第1051号 強姦致傷 昭和46年9月22日 決定 棄却 刑集25巻6号769頁
  13. ^ 最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)第1260号 強姦致傷 昭和23年7月26日 判決 棄却 集刑第12号831頁
  14. ^ 仙台高等裁判所第二部 昭和32年(う)第366号 強姦致傷被告事件 昭和33年3月13日 判決 高刑11巻4号137頁
  15. ^ 大谷實『新版刑法講義各論[追補版]』成文堂、2002年、127頁
  16. ^ 強姦致死罪には死刑が規定されていないため、単純な殺人よりも、殺意をもって強姦し死亡させた場合の方が法定刑が軽くなってしまう。
  17. ^ 法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 第1回会議(平成27年11月2日開催)議事録”. 中村幹事による法務省資料1諮問第101号別紙要綱(骨子)第四に関する説明. 法務省. 2017年10月23日閲覧。
  18. ^ 法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 第1回会議(平成27年11月2日開催)議事録”. 森悦子委員(最高検察庁)、田邊三保子委員(名古屋高等裁判所)発言. 法務省. 2017年10月23日閲覧。
  19. ^ 「強姦罪「告訴なしで起訴可能に」 内閣府専門調査会が提言 」日本経済新聞2012/7/25付
  20. ^ この場合、犯罪の成立の判断は被害者の感情をくみ取って、これが犯罪を成立させるか行為の文脈的な解釈に応じて司法に委ねられることになる。
  21. ^ 「性犯罪の罰則に関する検討会」取りまとめ報告書 p5 平成27年8月6日性犯罪の罰則に関する検討会
  22. ^ 刑法12条、14条
  23. ^ 3年ちょうどで、初犯の場合だと執行猶予5年を言い渡すこともある。
  24. ^ 「尻」ばかり狙った前代未聞「連続暴行魔」
  25. ^ 国際人権(自由権)規約委員会の総括所見
  26. ^ 国連の自由権規約委員会の2008年11月の最終見解
  27. ^ 犯罪率統計-国連調査(2000年)とOECDのデータ他
  28. ^ 法制審議会 第175回会議配布資料 刑1 諮問第101号 - 法務省
  29. ^ 刑法の一部を改正する法律案
  30. ^ “改正刑法施行は7月13日 性犯罪を厳罰化”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2017年6月23日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H21_T20C17A6CR0000/ 2017年7月5日閲覧。 






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