弁護士 日本の弁護士

弁護士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 05:58 UTC 版)

日本の弁護士

弁護士
英名 Lawyer, Attorney-at-law, Bengoshi[16]
実施国 日本
資格種類 国家資格
分野 法律
試験形式 司法試験
認定団体 法務省
後援 法科大学院
等級・称号 弁護士
根拠法令 弁護士法
特記事項 弁護士会52会、弁護士42,164名(女性8,017名)、弁護士法人1,302法人、準会員0名、沖縄特別会員7名、外国法事務弁護士436名(2020年3月現在)[1]
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ウィキポータル 資格
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概要

日本の弁護士は、民事訴訟では、原告被告等の訴訟代理人として主張や立証活動等を行う。破産民事再生会社更生法の申請などの法的倒産処理手続やこれに関連する管理業務などの法律事務を行い、関連する法律相談も行う。

また刑事訴訟では、弁護人として被告人無罪を主張し、あるいは適切な量刑が得られるように、検察官と争う。

弁理士司法書士税理士行政書士社会保険労務士土地家屋調査士海事代理士と共に職務上請求が認められている八士業の一つである。

弁護士記章には、中央にエジプト神話マアトの「真実の羽根」との重さを比較する天秤を配した向日葵がデザインされている。

業務

職域と独占性

弁護士は、法律事務一般を扱うことができる(弁護士法第3条1項)。

弁護士または弁護士法人でない者が報酬を得る目的で法律事務を業とする「非弁行為」は、原則として禁止されている(業務独占、弁護士法第72条)。

弁護士または弁護士法人でない者が「弁護士」の標示をすること等は禁じられている(名称独占、弁護士法第74条)。

業務の流れ

弁護士の業務は、一般的に次のような流れで行われる[17]

  1. 相談者から法律相談を受ける。
  2. 法律相談の内容を法的に検討し、法的なアドバイスを行う。
  3. アドバイスだけでは解決しない場合は、依頼者と委任契約を締結し、依頼者と合意した目標実現へ向けて裁判内外の手続を実施する。

業務分野の分類

弁護士の業務は、主に法律事務ないし法務である。これはいくつかの観点から分類が可能である。

事案ごとの内容次第で他の分野に分類可能であることもあり、各分野の境界線は曖昧である。

一般民事

個人の依頼者から委任される、民事上の一般的な法律問題を扱う分野である。

主として一般民事を取り扱う弁護士を、「マチ弁」(「街弁」または「町弁」)と呼ぶ[18]

一般民事(狭義)
個人間の偶発的な紛争事件(交通事故、近隣紛争など)や、金銭問題などの解決が含まれる。
家事
離婚や相続など、家事事件に関する法律問題を扱うものである。
消費者問題
消費者が事業者から不当な契約を結ばされたと目される場合などに、消費者の権利を擁護するものである。
労働(労働者側)
解雇や未払い賃金の問題など、労働者と使用者の間の紛争を取り扱うものである。2010年代後半以降は退職代行を扱う弁護士も現れた。
倒産・再生
法的整理・私的整理を問わず、あらゆる倒産処理手続において債務者を含む関係当事者にアドバイスし、手続を代理できる。
倒産処理を主業務とする弁護士らは、要求される専門性の高さや、非訟事件である倒産事件[注釈 2]において高度な連携が要求されることなどから、独特な集団を形成していることが多く、所属法律事務所の垣根を越えて「倒産村」と俗称される[19]
個人を依頼者とする破産・再生事件は債務整理とも呼ばれる。
管財実務
日本の実務においては、破産事件における破産管財人、民事再生事件における管財人および保全管理人ならびに会社更生事件における更生管財人などの管財業務には、通常は弁護士がその任に当たる[注釈 3][注釈 4]
企業法務

主として企業を依頼者とする法律問題を扱う分野である。

広義の企業法務は、多くの場合、狭義の企業法務(コーポレートとも)、金融法務(ファイナンス法務とも)、税務知的財産倒産・事業再生、紛争処理などの分野に分かれている。いずれの分野も渉外案件を含み得る。

企業法務(狭義)
一般企業法務[注釈 5](ジェネラル・コーポレート)、コーポレートガバナンスM&A、労働問題(使用者側)などが含まれる。
金融法務
企業の資金調達に関する法務や、金融機関に関する法務をいう。バンキング、キャピタル・マーケット、金融規制ストラクチャード・ファイナンスアセット・マネジメントなどを扱うものである。
知的財産
知的財産(IP)を取り扱う分野である。平時の知的財産戦略の策定・権利化に関するアドバイスや出願等の手続代理も行う一方、知的財産に関する紛争にも対応する。
労働(使用者側)
企業と労働者との間に生じたトラブルの解決のほか、就業規則などの企業の内部制度構築支援も含む。
税務
取引スキームの構築にあたり税務上の観点からアドバイスを行う。課税当局との紛争に発展した場合は、審査請求や税務訴訟における代理も行う。この分野を扱う弁護士は、後述する税務当局への通知を行っていることが多い。
スポーツ法務
競技団体の制度設計・運営支援[21]や選手のマネジメント、試合中の紛争の解決など[22]を取り扱う。例えば、日本プロ野球選手会の公認代理人となることができるのは弁護士のみであったり[23]、スポーツ調停の調停人は原則として弁護士が選ばれる[24]など、弁護士の資格がなければ扱えない業務が多い分野である。
刑事弁護

刑事手続において、弁護人として被疑者や被告人を弁護する。公判における法廷弁護活動だけでなく、捜査段階における不起訴に向けた活動、示談交渉や身柄解放に向けた活動(保釈請求など)も含まれる。

冤罪が疑われる事件について再審請求に取り組む弁護士もいる。

その他

行政事件や人権に関わる事件なども扱う。

他士業との関係

弁護士の職務範囲には、以下のように隣接士業の職務が幅広く含まれる。

弁護士法の規定
弁理士業務

弁護士は、弁護士法上、別途弁理士の登録を受けることなく、弁護士登録のみで当然に弁理士の職務を行うことができる(弁護士法第3条2項)。

税理士業務

弁護士法第3条2項は、弁護士登録のみで税理士業務も行いうると読めるが、実際に弁護士が税理士業務を行うためには、税理士法第18条の税理士の登録を受けるか、同法第51条1項による通知を要する[25]。税理士法第51条第1項の通知を行った弁護士は通知弁護士と通称される[26]

「一般の法律事務」に含まれる業務

法律上は他士業の独占と規定されている業務であっても、「一般の法律事務」に含まれることにより弁護士登録のみで取り扱うことができる分野が多い。

例えば、登記申請代理行為は、一般の法律事務に含まれるため、弁護士の本来の職務に含まれるものであり、司法書士業務についても当然に行うことができる[27]

同様に、行政書士社会保険労務士海事代理士海事補佐人の職務を行うこともできる。

隣接士業の登録

弁護士となる資格を有する者[注釈 6]は、その資格をもって、弁理士、税理士、行政書士、社会保険労務士、海事補佐人の資格登録をすることができる(各根拠法に規定がある。)。

司法書士海事代理士については、弁護士であっても所定の国家試験に合格しなければ登録することはできない(各根拠法に無試験での登録を許す規定がない。)。

隣接士業はいずれも各所管行政庁の監督下にあるから、弁護士が隣接士業の登録を行った場合は、その範囲において所管行政庁からの監督が及ぶものとなる。

業務上の義務

弁護士は、法律事務を取り扱う高度な権限を認められているがゆえに、職務上高度な義務を負う。これを弁護士倫理[注釈 7]という。

日本弁護士連合会は、弁護士の倫理的基盤を確立すると共に職務上の行為規範を整備するため、2004年11月10日に開催された臨時総会において「弁護士職務基本規程[28]」を会規として制定した。

宣伝・広告

宣伝・広告の解禁

以前は、弁護士は、職業の性格上、宣伝広告をすべきでないという考え方が一般的で、弁護士や法律事務所広告は日弁連の会則で全面的に禁止されていた。この規制は2000年10月より撤廃され[29]、大都市を中心に債務整理破産手続等を担当する法律事務所を中心に、鉄道バスの車内、スポーツ新聞タウンページ、インターネットなど広く一般に対する広告が増えてきている。

宣伝・広告に関する規制

弁護士広告は自由化されたが、品位を損なう広告など、一定の広告は日弁連の会則・規程により規制されている。

一例として、「専門分野」の表示は、国民から情報提供が望まれている情報ではあるものの、専門性の評価に関する客観的な指標がないことなどから、原則として非推奨とされ、「得意分野」などの専門性の評価を伴わない表示であれば許容されている[30]。こうした規制に対応するため「〜に強い弁護士」といった表現を用いた弁護士広告がなされることが多いが、客観的な評価基準はなく、実際の専門性の高さや経験の豊富さは担保されていない[31]

資格の得喪等

弁護士登録を受ける資格

日本では、法科大学院課程を修了しまたは司法試験予備試験に合格した後、法務省司法試験委員会が行う司法試験に合格し、司法研修所へ入所して司法修習を修了し、日本弁護士連合会に登録を受けるのが最も典型的な弁護士資格の取得方法である[32]

他に以下の者に資格がある。

  • 最高裁判所裁判官の職にあった者(弁護士法第6条)。行政官や学識経験者など、法曹資格を持たない者が任命されることがあるため。

以下の者は、日本弁護士連合会の研修を修了して法務大臣がその修了を認定した場合に弁護士となる資格を有する(弁護士法第5条)。

  • 司法試験合格後[注釈 8]国会議員、内閣法制局参事官や、大学で法律学を研究する大学院の置かれているものの法律学を研究する学部専攻科若しくは大学院における法律学の教授若しくは准教授の職、などに在った期間通算5年以上経験した者
  • 司法試験合格後に、公務員や民間人として立法作業や契約書等の作成に従事した期間が通算7年以上経過した者
  • 副検事が特別考査に合格して、検察官副検事を除く)として5年以上在職した者

経過措置として、司法試験に合格せずとも、2004年4月1日時点で、法律学を研究する学部、専攻科もしくは大学院における、法律学の教授もしくは助教授の職歴を通算5年以上有する者などについては、弁護士資格が与えられた[33]。また、1972年の沖縄復帰に関連し、布令弁護士に絡んで法務省の司法試験管理委員会(現在の司法試験委員会)が沖縄復帰までに法曹として必要な学識及びその応用能力を有するどうかを判定するための以下の順で試験や講習や選考を実施し、選考等に合格した者は日本国で弁護士の資格が与えられた[34]

これらの要件を満たしたうえで、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されて、はじめて弁護士となることができる(弁護士法第8条)。

欠格事由

以下の者は上記の規定にかかわらず弁護士となることができない(弁護士法第7条)[注釈 9]

  • 禁錮以上の刑に処せられた者[注釈 10]
  • 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
  • 懲戒の処分により、弁護士もしくは外国法事務弁護士であって除名され、弁理士であって業務を禁止され、公認会計士であって登録を抹消され、税理士であって業務を禁止され、または公務員であって免職され、その処分を受けた日から3年を経過しない者
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

資格取得難易度

一般的には、司法試験の内容の難しさや受験資格に制限があること、1年間の司法修習が必修でありその間修習専念義務により兼業が許されないこと等、資格取得までに長時間を要することや学習に必要な知識・情報の膨大さなどもあり、弁護士は日本国内の数ある資格の中でも最難関資格の一つとして知られる。日本の司法試験が極めて難関であることは海外の弁護士にも知られている[35]

一方で、司法試験単体の合格率だけ見れば、旧司法試験においては約3%であったものが、2019年には30%以上と高い水準になっている。その原因は、資格取得ルートの枢要と位置付けられた法科大学院の人気が低迷し、連動して司法試験の受験者数も年々減少しているのに、合格者数は減っていないことにあるとみられる。より根本的な原因としては、法科大学院で司法試験対策となるような指導を行うことが禁止されており、結果として法律実務の現場で必要なスキルも身に付かないなど、法科大学院と法律実務の現場のミスマッチが生じていることが指摘されている。法曹界に幅広い人材を呼び込むため、一層の改革が求められている[36]

弁護士人口

日本に於ける弁護士の数は、2017年11月1日時点で、38,843名(うち女性7,172名)となっている[37][38][注釈 11]

2019年には、司法試験合格者数が過剰であり、弁護士の質の維持が図れないなどとして、複数の弁護士会が共同して、法務省に対して司法試験合格者を削減するよう声明を発表している[40]

しかし、#地域的偏在の問題において後述するように、2020年末現在でも地方の司法過疎は未だ解消されておらず、地方ではまだ弁護士は不足しているとの指摘がある。

弁護士の組織

弁護士会

弁護士会が原則として各地方裁判所管轄区域ごとに置かれ、弁護士会の連合体である日本弁護士連合会(日弁連)と共に弁護士の監督を行う。戦前は司法省に弁護士・弁護士会を監督する権限が与えられていたが、戦後は弁護士の国家権力から独立性が高められた。このような弁護士の公権力からの自立性を弁護士自治という。このため、弁護士会および日弁連は強制加入団体となっており、弁護士登録をする者は、各弁護士会と日弁連に対し会費を拠出する。

法律事務所

弁護士が執務する事務所を法律事務所と呼ぶ。一般には「弁護士事務所」と呼ばれることもあるが、弁護士法上の正式名称は「法律事務所」であり、事務所の名称には原則として「法律事務所」という文言を含む名称を付すことが義務付けられている(弁護士法20条1項)。

法人化を認める弁護士法の改正がなされたことから、一部の法律事務所は法人化しており、事務所を複数持つことができるなどのメリットがある。法人化していない法律事務所は、法的には弁護士の個人事業か、民法上の組合であると解されている。経営弁護士が複数の場合、組織法的には、民法上の組合弁護士法人がある。

構成人数としては、弁護士が1人のものから600人以上のものに至るまで様々であるが、大人数の事務所は東京大阪(特に東京)に集中している。

アメリカ・イギリスなどの大規模法律事務所(弁護士数千人が所属)と比べ、日本の法律事務所は規模は小さいが、近年は合併などにより大型化し、2021年現在では五大法律事務所では所属弁護士の数が500人を超えることも珍しくなくなっている。

弁護団

ある社会的事件において多数の被害者が生じたり、または数は少なくとも問題を社会に広く訴えかける必要が生じた場合などに、弁護士の有志が自発的に集まって結成する集団を弁護団という[41]

各弁護士が所属する法律事務所の垣根を超えて弁護士が集まるのが特徴であり、ベテランの技術と若手の熱意を統合できることが利点である。また、社会的問題の解決へ向けて司法的手段に留まらない対策を講じることも多く、政治家とのパイプ作りやメディア対策を通じて世論形成に努めるなど、立法的解決を図ることも多い[42]

就業形態

概説

法律事務所を自ら開設し、または既存の法律事務所において勤務することが最も典型的な弁護士の就業形態である[17]

法律事務所の開設者(経営者)である弁護士を「ボス弁」または「パートナー」、勤務弁護士を「イソ弁」(「居候弁護士」の略)または「アソシエイト」などと呼ぶことが多い。イソ弁またはアソシエイトは、所属法律事務所から業務委託を受ける形(請負契約)とされることが多いが、実際には雇用契約と評価すべきとの主張がなされることもある。いずれの法形式となるかは、勤務の実態により評価される[43]

最近は企業に直接雇用されたり行政庁で勤務する、インハウスローヤーと称される弁護士も増えている。

既存の事務所に籍だけは置かせてもらえるが固定給はなく事務所の経費負担を求められる者(軒下だけ借りることから「ノキ弁」と呼ばれる)も1997年ごろから出現している[44]

既存の法律事務所への就職活動が奏功せず、または地域の実情に合わせて積極的に進路選択をした結果、司法修習修了後即時独立することとなる者(即独)も従来から存在している[45]

収入・所得

弁護士の収入は、様々な理由で画一的な統計的評価が困難である。例えば、勤務弁護士が所属事務所の事件(通称「事務所事件」)を処理することにより勤務先からの報酬が支払われた場合は厚労省の「賃金構造基本統計調査」に反映されるが、勤務弁護士は同時に自力で獲得した事件(通称「個人事件」)を処理することにより依頼者から直接報酬を得ることが多く、個人事件の報酬は上記統計調査には反映されない。このような前提をもとに国税庁の税務統計を分析すると、2010年以降2013年ごろにかけて、課税所得(収入から経費を控除した額)2000万円超の層と低所得の層が減少し、中間層の500万円~1000万円の層が増加しており、格差が減少していると指摘されている。また、全業種では申告所得額200万円以下が全体の6割を占めていることと比較すれば、弁護士は依然として高収入の部類にあると指摘されている[46]

数少ない出身校別の調査結果としては、2016年10月、「法科大学院の出身校別の年収1千万円以上の割合は、東京大55.6%、慶応義塾大学47.6%である一方、早稲田大は26.4%」との調査結果も報道されている[47]

自営業者の場合

弁護士の94%は自営業者である。いわゆる勤務弁護士(イソ弁)でも、自営業者として組合に参加している場合が多く、必ずしも法律事務所を経営しているわけではない。各年の弁護士白書によると、自営業者の弁護士の収入・所得の平均値・中央値は以下の通りである[48]

平均値
調査年 2004年 2006年 2008年
収入 3624 3453 3397
所得 1654 1632 1598
中央値
調査年 2004年 2006年 2008年
収入 2006 2400 2200
所得 1203 1200 1100

また、平成16年サービス業基本調査[49]によると、法律事務所(一事業所あたり)の平均所得は1829万円である。同調査における平均値は1301万円である。

被雇用者の場合

上述の通り、被雇用者の弁護士は全体の6%に過ぎない。賃金構造基本統計調査[50]によると、被雇用者の弁護士の平均収入は以下の通りである。

同調査は抽出調査であり、毎年サンプル数やサンプル自体が変動する。

たとえば、2005年については年間賞与が1000万円を超えることになっている(他の年度は100万円から200万円台)。

調査年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
収入 2097 772 852 801 679 
年齢 40.5 32 35 41.5 36.4
調査人数 930 150 340 40 1350

2005年に2097万円だったのが2006年には772万円に激減している。同調査によれば、民間企業の被雇用者の平均年収は486万円である[51]

制度の問題点

地域的偏在の問題

2017年11月1日時点での日本の弁護士数38,843名のうち、東京の弁護士会[注釈 12]に在籍するのは計18,164名、大阪弁護士会に在籍するのは4,442名、名古屋市を擁する愛知県弁護士会に在籍するのは1,903名で、三大都市圏で全国の弁護士数の6割を超える格好となっている[38]

日本弁護士連合会では、2000年6月以降、弁護士が2人未満の「弁護士ゼロワン地域」の解消を目的にひまわり基金法律事務所を各地に設立し、2020年末時点でその数は全国36か所となっている。しかし、弁護士ゼロワン地域をなくすには至っていないうえ、少数の弁護士を配置しても地域住民が物理的距離感を障壁に感じて利用が進まなかったり、逆に少数の弁護士に地域の全業務が集中して負担が大きくなりすぎるといった問題も残されている。新規登録弁護士には大都市志向が高まっている傾向があり、地方で働く若手弁護士の増加が望まれている[52]

依頼費用・報酬面の問題

弁護士報酬は、原則として各弁護士が定めるもので統一的・客観的な基準はなく、依頼者と弁護士の契約に委ねられているが、依頼者がこれを高額と感じることがある。

資力の乏しい者が弁護士の援助を受ける方法としては、日本司法支援センター(法テラス)による法律扶助の制度があり、「勝訴の見込みがないとはいえない」場合、弁護士費用や裁判費用の援助が受けられる。法テラスは、弁護士紹介事業も行っている。

また、難民認定申請や在留特別許可の申請、不法滞在者の労働問題などについては、日本弁護士連合会が援助を行っている。

刑事事件においては各種の制度が整いつつあり、被疑者となった場合に1回に限り無料で弁護士の出動を依頼できる当番弁護士制度や、無資力の被疑者のために弁護士費用を援助する被疑者弁護扶助制度、刑事被告人に資力がないときに裁判所が被告人のために弁護人を選任する国選弁護制度などの制度がある。また、一定の重罪事件については被疑者段階でも無資力の被疑者のために国選弁護人を付する被疑者国選弁護人制度が設けられている。

もっとも、当番弁護士制度は弁護士自身の負担で維持されている状況であり、国選弁護人に対する報酬が低廉であること、被疑者弁護扶助制度について十分に知られておらず、貧しいために被疑者段階で本来必要な弁護人の援助を受けられない者もおり、捜査機関から弁護人を選任しないよう被疑者や被疑者の家族に対して働き掛けがなされるなど問題点も多い。

会費問題

弁護士会の会費は高額であり、平成21年度の東京弁護士会の会費は59万6500円になっている[53]

このように高額な会費となっている理由は、弁護士自治の関係で弁護士会の運営が会費でまかなわれているためもあるが、弁護士会が公益活動を会費を支出して行っているためでもある。現在、日弁連では、(1)被疑者弁護、(2)少年付添、(3)犯罪被害者、(4)難民認定、(5)外国人、(6)子ども、(7)精神障害者、(8)心身喪失者等、(9)高齢者、障害者及びホームレスに関する9事業について、法テラスに委託して法律援助事業を行っている。弁護士会内ではこれらの事業は本来公益性が高く国の負担で行われるべきとの意見が強いが、これらに対する事業は弁護士会からの支出によってまかなわれており、個々の弁護士に会費という形で徴収されている。

収入が少ない若手会員にとってこの負担は大きく、滞納という現実もあると指摘されている[54]。滞納すると退去命令の懲戒処分を受けて弁護士資格を失うこともある[55]

不祥事

タクシー運転手への暴行から事件放置、横領などに至るまで、不祥事の増加が報じられている[56]

多発する不祥事の類型としては預かり金の着服などの横領事案が典型的と指摘される。その要因としては、弁護士数の増加により従来のような営業活動では顧客獲得が困難になったことで、集客などの業務を外部業者に委託する弁護士が増えたことに伴い、非弁提携のリスクが増大していることが指摘されている[57]

報道された最大規模の横領事案としては、岡山弁護士会所属の弁護士が依頼された案件22件において計9億円を横領した事例がある。本件においては懲役14年の有罪判決が確定している。

2011年には、債務整理を手掛ける弁護士のトラブルの多発を受けて、債務整理事件処理の規律を定める規程[58]が日弁連で制定された[59]

2013年ごろには成年後見に関する横領などの不祥事が増加し、これを問題視する報道もなされた[60]。なお、専門職後見人(弁護士のみならず、司法書士社会福祉士なども含む。)による不祥事は、2014年には22件計5億6000万円に達していたが、令和2年には30件計1億5000万円となっている[61]

過去10年間において懲戒処分を受けた弁護士および弁護士法人の数は、全国の弁護士および弁護士法人数に対し毎年0.2%~0.3%程度であり、大きな変動はない[62]


注釈

  1. ^ 判事・検事については「判事検事登用試験」、弁護士については、「弁護士試験」であったが、1923年の「高等試験司法科」試験開始により試験制度は一元化された。
  2. ^ 訴訟事件と異なり各当事者が対立構造にあるわけではないため、適正な手続の運用という共通の目的に向けて、申立人代理人弁護士と破産管財人弁護士が破産裁判所の監督のもと緊密に連携する実務が構築されている。
  3. ^ 法律上は特に被選資格は定められていない(破産法第31条第1項、弁護士法第3条第1項参照)。
  4. ^ アメリカやイギリス[20]等の海外の主要国では、公認会計士の業務であることもあることと対照的である。
  5. ^ 確立した定義はないが、会社設立に始まり、株主総会の事務局業務や、資本政策・資金調達に関する助言など、企業の日常的な法律問題への対応等を称していうことが多い。
  6. ^ 司法試験合格のみでは足りず、司法修習を修了した者を指す(弁護士法第4条)。
  7. ^ 「倫理」と呼ばれるものの、道徳的な規範にとどまるものではなく、弁護士法および日弁連の会則を通じて弁護士の活動を規律する一種の法規範である。
  8. ^ 司法試験に合格しても司法研修所に直ちに入所する義務はない。
  9. ^ かつては成年被後見人および被保佐人であることを欠格事由とする規定があったが、令和元年6月14日に公布された「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」によって削除され、心身の故障等の状況を個別的、実質的に審査し、必要な能力の有無を判断することとなった。
  10. ^ 執行猶予付判決を受けた場合であっても欠格事由に該当する。また、沖縄の復帰に伴う法務省関係法令の適用の特別措置等に関する政令第3条により、沖縄の法令の規定により禁錮以上の刑に処せられた者も対象となる。刑法第34条の2により、刑期満了後に罰金以上の刑に処せられないで10年を経過した時は、欠格事由の対象外となる。
  11. ^ 日本弁護士連合会に登録されている弁護士数。なお弁護士として登録されている者を日本弁護士連合会では「正会員」と種別呼称している[39]。「正会員」以外の種別での登録では、「準会員」0名、「沖縄特別会員」8名、「外国特別会員」407名となっている《何れも2017年11月1日時点》[37]
  12. ^ 東京弁護士会第一東京弁護士会第二東京弁護士会の3弁護士会の合計。

出典

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