市町村長 米国

市町村長

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/14 23:09 UTC 版)

米国

アメリカ合衆国では自治体ごとに機構が異なる。

アメリカ合衆国の地方の機構は、市長-議会型、議会-支配人型、評議会型の3つに大きく分けられる[4]。それぞれ市長制(市長議会制、Mayor-Council Form)、シティー・マネージャー制(議会マネジャー制、Council-Manager Form)、委員会制(Commission Form)ということもある[5]

市長-議会型

ニューヨークなど東部諸州に多い方式で、議会とは別に市長は住民による選挙で選ばれ、全市一区を選挙区とする市長と全市一区または各地区を選挙区とする議員で構成される議会に権限を分割している[4][5]。しかし、市長の権限の範囲は自治体ごとに大きく異なるため、伝統的に弱市長制(Weak Mayor-Council Form)と強市長制(Strong Mayor-Council Form)にさらに分類されている[5]

  • 弱市長制(Weak Mayor-Council Form) - 各部局長の任命に議会の承認が必要となっていたり、一部の役職は議会に任命権があるなど市長の権限が大幅に制限されている場合[5]
  • 強市長制(Strong Mayor-Council Form) - 連邦制度を参考に各部局長の完全な任免権、条例に対する拒否権、条例の提案権、予算の調製権など広範な権限が認められている場合[5]

弱市長制では権限が分散して小政府の寄せ集めの様相を呈する弊害が指摘され、現代的な統治形態としては十分に機能しないため、小規模自治体を除きこの統治形態は減少している[5]。強市長制は19世紀末の市政改革運動(リフォーム運動)で誕生し、政策の一貫性や効率的な予算執行など数多くの面で弱市長制を凌駕する有効性を発揮した[5]

ニューヨークの場合、市長の任期は4年で、政策立案執行、行財政運営、市法制定に対する拒否権、予算案の作成と議会への提出権などを持つ[4]

なお、市長制でも、Chief Administrative Officer(CAO)という専門的行政官を置く自治体が半数以上になっており、市長が市を代表する儀礼的業務や高度な政策決定などの政務機能に専念できる体制をとるようになっている[5]

議会-支配人型

スタントンなどでとられている方式で、市長は議会で議員の中から選ばれる[4]。例えばスタントンでは市長の任期は2年で市を代表し、議会を主宰する(議長を兼務)[4]。議会は市長とは別に支配人(City Manager)を任命し、支配人は行政部局の指揮監督、予算案の作成や執行、人事などを行う[4]

シティー・マネージャー制の市長は議会を主宰するほかは、市の代表としては儀礼的用務を務めるのみであることが多い[5]。シティー・マネージャーは専門的行政官として議会から任命される職で、議員とは異なり政治家ではなく行政の専門家である[5]

評議会型

住民による選挙で選ばれる評議会が立法機関と行政機関の役割を果たす行政・立法一体型で評議会議長が市長を務める[4]。委員会制ともいい市民によって公選された委員が行政各部局の長となって直接行政を執行する制度で、委員の一人が市長になるものの他の委員と全く同格で拒否権等もない[5]


注釈

  1. ^ 議会と違い、その市町村民でなくても被選挙権を行使することは可能(公職選挙法第10条第6号)。
  2. ^ 法的には、当該自治体が資本金の二分の一以上を出資している法人(地方自治法施行令第122条)とされる。
  3. ^ 例えば議会、行政委員会など
  4. ^ 地方自治法第177条第1項および同条第2項により、「非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のために必要な経費」を議会が削除し又は減額する議決をしたときは市町村長は理由を示してこれを再議に付さなければならず、再議に付してもなお議会が当該経費を削除し又は減額する議決をしたときは市町村長は地方自治法第177条第4項によりその議決を不信任の議決と見なすことができる。不信任の議決と見なす場合には市町村長は議会から予算の送付を受けてから10日以内に議会を解散する(全国都道府県議会議長会事務局内地方議会議員大事典編纂委員会『地方議会議員大事典』第一法規出版p280)。
  5. ^ つまり、市町村長が議会を解散できるのは議会から不信任の議決を受けた場合(地方自治法第178条)と不信任の議決を受けたと見なせる場合(地方自治法第177条第4項)に限られ、この要件を満たさない市町村長の議会解散権の行使は無効とされる(仙台高裁昭和23年10月25日判決(『地方議会議員大事典』p542))。

出典

  1. ^ 下楠昌哉 編『イギリス文化入門』三修社2000年平成12年)、310頁
  2. ^ a b 岩崎正洋 編『民主主義の国際比較』一藝社、2000年(平成12年)、109頁
  3. ^ a b c d e f 岩崎正洋 編『民主主義の国際比較』一藝社、2000年(平成12年)、111頁
  4. ^ a b c d e f g 諸外国及び過去の日本の基礎自治体における執行機関と議決機関との関係 総務省、2022年1月14日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k 澤田道夫「シティマネジャーシステムの機能的特質の研究-基礎自治体における「自治効率」の向上を求めて-」 熊本県立大学大学院、2022年1月14日閲覧。


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