就業規則 短時間労働者に係る就業規則の作成

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 社会 > 社会一般 > 規則 > 就業規則の解説 > 短時間労働者に係る就業規則の作成 

就業規則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/22 03:38 UTC 版)

短時間労働者に係る就業規則の作成

事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする(パートタイム労働法第7条)。事業主は、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、就業規則に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない(パートタイム労働法第14条)。

歴史

使用者が制定する、労働条件を記した文書に関する規制は、1905年(明治38年)制定の旧鉱業法が始まりとされる[1]。同法には現在の労働基準法に連なる規制(周知義務、絶対的・相対的必要記載事項、違反者に対する罰則等)がすでに盛り込まれていた。その後1911年(明治44年)の工場法では直接の規制は設けられなかったが、1916年(大正5年)に発出された同法施行令において、労災扶助規則の作成・届出義務を工場主に課し、1923年(大正12年)の改正により「就業規則」の語が初めて法文上に現れた。戦後の労働基準法制定により、これらの経緯を引き継いで「就業規則」が規定された。

労働基準法は制定後たびたび改正されているが、就業規則に関する改正は少なく、時世の変化に伴う絶対的・相対的記載事項の追加と、他法改正に伴う条項の整理にとどまっていて、現行法においてもその根幹は制定当時のものがおおむね残されている。

法的性質

就業規則は使用者・労働者双方に遵守義務が課されているものの(第2条)、就業規則の法的効力はあくまで最低労働条件の確保であり、就業規則が労働契約の内容をどれほど規定するが(それに反対の労働者をも当然に拘束するか)は法文上は不明確である。それゆえその法的性質が検討されるが、法規範説と約款説の2説が最も基本的な考え方とされる。

法規範説

就業規則それ自体を労働者及び使用者を拘束する一種の法規範とみる。

約款説

就業規則はそれ自体では法規範ではなく、労働者との労働契約の内容に取り込まれることによってのみ両当事者を拘束する(就業規則を労働契約のひな型と見る)。

判例(秋北バス事件、最判昭和43年12月25日)の立場は法規範説とされるが[注 10]、同判旨では就業規則に反対の意思を明示した労働者をも当然に拘束するとは述べてなく、約款説としても理解でき、事実上中立的な見解となっている。実際には採用に際し、労働者は就業規則に対し明確に反対の意思を表示するはずはなく(すれば採用されない)、就業規則は新入社員によって一括受け入れされて拘束力を取得する。判例はこの現実を法の世界でも是認しつつ、内容の合理性を効力取得の要件としている。特に判例では就業規則の改定によって労働条件を労働者の不利益に改定する場合に「内容の合理性」を厳しく審査していて、この法理は労働契約法第9条・第10条(#不利益変更参照)に盛り込まれた。

関連文献・記事


注釈

  1. ^ 第2条は違反者に対する罰則が定められておらず、訓示的規定と解される。
  2. ^ 当該事業場の過半数の労働者が、本社において意見聴取する労働組合のいずれか一に加入していない場合には、別に当該事業場の労働者の過半数が加入している労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者)の意見を聴取しなければならない(昭和39年1月24日基収9243号)。
  3. ^ ただし、本則において、当該別個の就業規則を適用する労働者にかかわる適用除外規定等を設けることが望ましい(平成11年3月31日基発168号)。
  4. ^ 使用者は労働組合等の意見を聴けば足り、協議を義務付けているものではない(昭和25年3月15日基収525号)。
  5. ^ 就業規則が拘束力を生ずるために周知が必要であるとした判例として、フジ興産事件(最判平成15年10月10日)。
  6. ^ 「法令」とは、強行法規としての性質を有する法律、政令及び省令をいう。なお、罰則を伴う法令であるか否かは問わないものであり、労働基準法以外の法令も含むものである(平成24年8月10日基発0810第2号)。
  7. ^ 労働協約にすべての労働条件を詳細明確に規定し、就業規則の記載事項もすべて労働協約に織り込み、就業規則には「労働協約の通り」とし重複記載を省略する場合、労働協約の各条にそのまま就業規則の内容となりうるような具体的な労働条件が定められている場合に限って就業規則の重複記載を省略することも可能であるが、就業規則の中に引用すべき労働協約の条文番号を列記し、かつ就業規則の別紙として労働協約を添付すること、さらに労働協約が失効した場合にも就業規則中の労働協約を引用した部分についてはなお効力を有することを明確にする必要がある(昭和24年11月24日基発1296号)。
  8. ^ 第92条は就業規則の内容が労働協約の中に定められた労働条件その他労働者の待遇に関する基準(規範的部分)に反してはならないという意味であり、就業規則作成にあたっての手続きたる「会社の社内諸規則、諸規定の制定改廃に関しては労働組合の同意を要するものとする」というような規定は第92条には関係ない(昭和24年1月7日基収4078号)。したがって労働協約中にそのような規定がある中で使用者が労働組合の同意を得ずに作成した就業規則であっても第92条には違反しない。
  9. ^ 就業規則の変更が「合理的なものである」か否かを判断するに当たって考慮すべき要素を明らかにした判例として、第四銀行事件(最判平成9年2月28日)。同判決は「就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度」「使用者側の変更の必要性の内容・程度」「変更後の就業規則の内容自体の相当性」「代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況」「労働組合等との交渉の経緯」「他の労働組合又は他の従業員の対応」「同種事項に関する我が国社会における一般的状況」という7つの考慮要素を列挙している。労働契約法第10条はこの判例を受け、これらの要素のうち関連するものについては統合して列挙し、またこれらの考慮要素に含まれない事項についても、「その他の就業規則の変更に係る事情」という文言で包括的に表現している。
  10. ^ 同判決の反対意見は、多数意見を法規範説と理解したうえで述べられている。また以後の判決でも同判決は法規範説の立場であるとの前提で述べられている。

出典

  1. ^ 浜田冨士郎『就業規則法の研究』有斐閣、1994年 p.2~


「就業規則」の続きの解説一覧




就業規則と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「就業規則」の関連用語

就業規則のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



就業規則のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの就業規則 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS