小麦粉 性質

小麦粉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 00:10 UTC 版)

性質

カロテノイド色素により淡いクリーム色をしている[10]。粒子は直径150µm以下と細かく、粉塵爆発のおそれもあるため、東京都など一部の自治体では指定可燃物に規定している[11]。ほかの粉末と混ざりやすく、粉末調味料などを混ぜてプレミックスとしたり、ビタミンなどの添加に応用される。表面に水気を帯びたものに付着しやすく、ムニエルなどのや、麺類の打ち粉として使われる。匂い吸着しやすく、香り付けの加工ができる反面、保管の仕方によっては異臭が付くことがある[10]

加工と精製

全粒から果皮や胚芽の部分がふすまとして取り除かれ、胚乳の部分のみを挽いたもので、全粒100kgからはおおよそ72 - 75kgほどが得られる。胚乳部分のみを残し果皮や胚芽を完全に取り除くと真っ白で純粋なものが取れるが、製パンに使用する場合、風味を与えるために、必ずしもふすま部分を完全に取り除いたものが良いとも限らない。素朴な味わいや風味を出すために、小麦粒をふすまごと丸々挽いた全粒粉も用いられる[12]

種類

ふすま類などを取り除いてから製粉するものは、含有するタンパク質(主にグリアジン、グルテニン)の割合と、形成されるグルテンの性質によって強力粉、中力粉、薄力粉に分類される。ふすま類なども含めて製粉するものは、栄養が豊富で、全粒粉、グラハム粉などに分類される。でんぷん成分だけとりだした特殊なものは浮き粉という。

強力粉

強力粉(きょうりきこ)はタンパク質の割合が12%以上のもので、パンうどん中華麺・学校給食で出てくるソフト麺等に使われるほか、国産の一部乾燥パスタは粗挽きの強力粉を用いて作られる。主にアメリカ・カナダ産の硬質小麦(パンコムギ)を使用している。焼くと硬い仕上がりになるので洋菓子には向かない。英語圈の分類ではbread flourがこれに近い。

中力粉

中力粉(ちゅうりきこ)はタンパク質の割合が9%前後のものでたこ焼きなどに用いる。主にオーストラリア・国内産の中間質小麦を使用している。強力粉と薄力粉を混ぜれば性質は中間になるため、中力粉の代用とすることができるが、本来の中力粉とは加工特性がやや異なるため工夫を要する(平均値は10.2%)。

薄力粉

薄力粉(はくりきこ)はタンパク質の割合が8.5%以下のものでケーキなどの菓子類・天ぷらカレーに使われる。主にアメリカ産の軟質小麦を使用している。タンパク質の含有量を抑えれば抑えるほど繊細な仕上がりになるので、「製菓用薄力粉」や「スーパーバイオレット」などの商品名で売られている、タンパク質の含有量をさらに減らした商品も存在する(「超薄力粉」とも呼ばれるが、そのような商品名では売られていない)。また、乾燥パスタ原料からの連想で誤解されることがあるが、卵を用いて生パスタを作る場合に使われるのは薄力粉である。英語圏の表記ではcake flourがこれに近い。

全粒粉

「ぜんりゅうこ」または「ぜんりゅうふん」。小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にしたものである。精製品に比べて食物繊維ミネラルビタミンが豊富。主にパンビスケットシリアル食品の材料として用いられる。

グラハム粉

グラハム粉(グラハムこ)とは、全粒粉の一種。小麦を胚乳と表皮および胚芽に分けてから、胚乳は普通品と同じ細かさに挽き、表皮と胚芽は粗挽きにして両方を混ぜ合わせたもの。全粒粉よりもざらざらしている。

セモリナ粉

セモリナ粉(セモリナこ)とは、通常品より粒子の粗い(210µmの布ふるいに残留する)粉をいう[13]。英語のセモリナ (Semolina) は、イタリア語のSemolaから由来し、これはラテン語のSimila(穀粉)に由来する。クスクスなどを作るために使用されるデュラム粉から精製されており、蛋白質の量が強力粉よりも多く、グルテンが少ない。乾燥パスタ、シリアル、プリンなどに使用されている。

浮き粉

浮き粉(うきこ)は、「生地からグルテンを分離」[注 1]した残りの澱粉分。浮き粉は澱粉だけでできており、片栗粉のような性質を持つ。主に明石焼き和菓子香港の透明な皮の海老餃子などの原料として使われている。

種類ごとの用途

強力粉はパンや麺・うどんに、中力粉はお好み焼き・たこ焼きなどに、薄力粉は菓子や天ぷらに適する。全粒粉は精白されていない小麦を用いておりその分栄養に富み、クラッカービスケットシリアル食品、パスタなどに用いられている。グラハム粉は、同じく全粒だが精製法が違い、表皮と胚芽の部分が粗挽きであり、血糖値の上昇も緩やかになり健康的で、クラッカー、ビスケット、シリアル食品などに用いられている。セモリナ粉はパスタの原料となっている。

(※)パスタに使われる粉は粗挽きである。

そのほか、食品としては、饅頭もんじゃ焼きトルティーヤ、などがあるほか、ピザクラストにも用いられる。

麩は小麦グルテンを原料として作られ、焼麩の種類(車麩や庄内麩など)により異なる種類と等級の合わせ粉として使われる[14]


注釈

  1. ^ グルテンを分離するには、こねた生地を水につけて洗い流すのだが、この水に浸かっている状態は沈粉(じんこ)という。一方、生地から分離したグルテンのほうはなどの原料として使われる。

出典

  1. ^ #メリケン粉とうどん粉の違い参照
  2. ^ a b c d e f 吉田宗弘. “うどん類の歴史と分類”. 関西大学. 2020年11月8日閲覧。
  3. ^ 小麦粉の歴史・文化、小麦粉百科」日清製粉グループ、閲覧2017年5月30日
  4. ^ 粉砕部分に着目した製粉機の分類、製粉の歴史」木下製粉株式会社、閲覧2017年5月30日
  5. ^ 家庭用小麦粉にも実施(昭和16年4月11日 朝日新聞(夕刊))『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p120 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  6. ^ 学校給食の歴史、学校給食について」全国学校給食会連合会。閲覧2017年5月30日
  7. ^ 「コメよりパン」になった日本人の食卓」ニッポンドットコム。閲覧2017年5月30日
  8. ^ [どれ?]米国農務省食品成分データベース (英語)
  9. ^ a b c [1]
  10. ^ a b c 長尾精一『粉屋さんが書いた小麦粉の本』三水社、1994年。ISBN 4-915607-68-2 
  11. ^ 東京都火災予防条例
  12. ^ ジェフリー・ハメルマン 2009, pp. 36–38.
  13. ^ 長尾精一編 『小麦の科学』朝倉書店、1995年、p.62。ISBN 978-4-254-43038-7
  14. ^ 長尾精一編 『小麦の科学』 朝倉書店、1995年、pp.187-188、ISBN 978-4-254-43038-7
  15. ^ 豊田実「最近の麺事情について」『調理科学』24巻 1号 1991年 p.36-42, doi:10.11402/cookeryscience1968.24.1_36
  16. ^ プレミックスとは?」日本プレミックス協会。閲覧2017年5月30日
  17. ^ 『広辞苑 第五版』岩波書店、1998年。ISBN 978-4000801119 
  18. ^ 第10回 メリケン粉、洋菓子の世界」日本洋菓子協会連合会。閲覧2017年5月30日
  19. ^ 小麦・小麦粉の商品知識、小麦粉のおはなし」製粉振興会。閲覧2017年5月30日
  20. ^ 小麦粉のはなし、小麦と小麦粉のはなし」木下製粉株式会社。閲覧2017年5月30日
  21. ^ いろいろなかび毒”. 農林水産省 (2022年). 2023年12月2日閲覧。
  22. ^ いわて生活協同組合「雑穀ブレッド、すいとん粉、県産小麦粉、うどん(乾麺)」 - 返金/回収”. 消費者庁 リコール情報サイト (2023年). 2023年12月2日閲覧。
  23. ^ 創業87年の南部せんべい老舗、自主回収で「店開けられない」原料の「かび毒」基準値超えか”. J-CAST (2023年11月27日). 2023年12月2日閲覧。
  24. ^ a b c 藤原 逸樹. “粘土遊びの指導法に関する一考察”. 安田女子大学. 2019年11月11日閲覧。






小麦粉と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「小麦粉」に関係したコラム

  • CFDで取り扱うコモディティの一覧

    CFDで取り扱うコモディティは、エネルギー、貴金属、農産物の3つに大別できます。CFDのエネルギーには、原油や天然ガス、ガソリンなどの銘柄があります。WTI原油先物もそのうちの1つで、外国為替市場や証...

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「小麦粉」の関連用語

小麦粉のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



小麦粉のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの小麦粉 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS