小田急10000形電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 14:35 UTC 版)
概要
小田急開業60周年を記念して[6]1987年に登場した特急車両で、展望席を除く全ての客室を高床化した車両である。
「HiSE」という愛称[注 1]が設定された。デビューした1987年〜1991年[注 2]までの間と、2002年〜2005年[注 3]までの間、特急ロマンスカーのイメージリーダーとして扱われてきた[7]。
しかしバリアフリー対応が困難であるとされて[7]VSE車の登場した2005年に淘汰が始まり、2012年3月のダイヤ改正をもって全編成が営業運転を終了した[8]。廃車後、一部の車両が長野電鉄に譲渡され、同社の1000系となった[9]。
1988年には鉄道友の会よりブルーリボン賞を授与された[10]。
登場の経緯
1987年は小田急の開業60周年となることから[6]、これを記念すべく新形特急車両を増備することになった[11]。
この当時、観光バスなどで高床車(ハイデッカー)が導入されており[12]、他鉄道事業者の車両においても高床構造の観光用車両が登場していた[12]。また、この時期におけるレジャーの傾向は多様化が進んでおり[11]、ゆとり以外に「一味違ったもの」が求められていた[11]。
これらの要求に対応するために、前面展望席や連接構造はNSE車・LSE車から踏襲する[11]一方、展望席以外の乗客も車窓の眺望を楽しめるように[12]客席を高床構造とした上で、車両内外ともにカラーリングを変更し、イメージの一新を図って登場した[11]のがHiSE車である。
形式は10000形と、小田急では初めて5桁の形式番号・車両番号を有する車両となった[10]。
注釈
- ^ a b 先頭の"High" は、『鉄道ピクトリアル』通巻491号 小田急電鉄(株)車両部車両課「小田急電鉄新形特急車10000形」 (1988) p.53の記述によれば "High decker","High grade","High level" などの、生方良雄『日本の私鉄1 小田急』(1988年) p.124によれば "High performance" などのキーワードから連想する、上級というイメージを表したもので、特定の単語の頭文字ではない。ここでは、『鉄道ピクトリアル』通巻829号 岸上明彦「小田急電鉄現有車両プロフィール」 (2010) p.275の表記に倣った。
- ^ 1991年…20000形(RSE)が登場した年
- ^ 2005年…50000形(VSE)が登場した年
- ^ 1・2号車の間と、10・11号車の間。
- ^ 「初詣号」での「走る喫茶室」営業はこの時1回だけである。
- ^ 一般車格下げ後の譲渡。
- ^ この時解体された中間車(10003号車)は、車体側面にヤマユリのシンボルマークを付けたロマンスカー車両の、残存する最後の1両であった。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 『鉄道ピクトリアル』通巻546号 大幡哲海「私鉄車両めぐり145 小田急電鉄」 (1991) p.195
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 『鉄道ピクトリアル』通巻491号 小田急電鉄(株)車両部車両課「小田急電鉄新形特急車10000形」 (1988) p.49
- ^ a b c d e f 生方良雄『小田急ロマンスカー総覧』 (2005) p.167
- ^ a b c 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.146
- ^ 『鉄道ダイヤ情報』通巻145号 「EXE 115DAYS」 (1996) p.15
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻491号 生方良雄「小田急ロマンスカーの移り変わり」 (1991) p.15
- ^ a b c d e 『鉄道ジャーナル』通巻464号 鶴通孝・山﨑友也「列車追跡シリーズ548 何度でも乗ってみたい特急ロマンスカー わくわくの85分」 (2005) p.34
- ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻548号 南謙治「特急あさぎり 22年目の再出発」 (2012) p.50
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 岸上明彦「小田急電鉄現有車両プロフィール」 (2010) p.277
- ^ a b 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.33
- ^ a b c d e f g h 『鉄道ピクトリアル』通巻491号 小田急電鉄(株)車両部車両課「小田急電鉄新形特急車10000形」 (1988) p.47
- ^ a b c 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.43
- ^ a b c d e f g h i j k l m 『鉄道ピクトリアル』通巻679号 大幡哲海「私鉄車両めぐり164 小田急電鉄」 (1999) p.237
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻679号 大幡哲海「私鉄車両めぐり164 小田急電鉄」 (1999) p.236
- ^ a b c d e f g h i j k l 『鉄道ピクトリアル』通巻491号 小田急電鉄(株)車両部車両課「小田急電鉄新形特急車10000形」 (1988) p.50
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 『鉄道ピクトリアル』通巻491号 小田急電鉄(株)車両部車両課「小田急電鉄新形特急車10000形」 (1988) p.53
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻679号 細谷和一郎「営業設備とサービス」 (1999) p.25
- ^ a b c d e f 『鉄道ピクトリアル』通巻491号 小田急電鉄(株)車両部車両課「小田急電鉄新形特急車10000形」 (1988) p.51
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻491号 小田急電鉄(株)車両部車両課「小田急電鉄新形特急車10000形」 (1988) p.48
- ^ a b c 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.46
- ^ a b c 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.35
- ^ 『鉄道ダイヤ情報』通巻277号 結解喜幸「2007小田急ロマンスカーオールガイド」 (2007) p.22
- ^ a b c 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.34
- ^ 乙幡啓子 (2010年1月13日). “栓抜きのある列車を探す小さな旅”. デイリーポータルZ. @nifty. 2011年8月19日閲覧。
- ^ a b c 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.40
- ^ a b 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.39
- ^ a b c d e f g 『鉄道ピクトリアル』通巻491号 小田急電鉄(株)車両部車両課「小田急電鉄新形特急車10000形」 (1988) p.52
- ^ a b c d 『鉄道ピクトリアル』通巻679号 「現有車両主要諸元表」 (1999) p.263
- ^ a b 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.48
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻546号 刈田草一「小田急電鉄 列車運転の変遷」 (1991) p.152
- ^ a b 『鉄道ダイヤ情報』通巻277号 結解喜幸「2007小田急ロマンスカーオールガイド」 (2007) p.20
- ^ a b c 生方良雄、諸河久『日本の私鉄1 小田急』 (1988) p.49
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻546号 刈田草一「小田急電鉄 列車運転の変遷」 (1991) p.153
- ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻546号 刈田草一「小田急電鉄 列車運転の変遷」 (1991) p.154
- ^ a b c 生方良雄『小田急ロマンスカー総覧』 (2005) p.132
- ^ a b 鶴通孝・山﨑友也「列車追跡シリーズ548 何度でも乗ってみたい特急ロマンスカー わくわくの85分」p.33
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 岸上明彦「小田急電鉄現有車両プロフィール」 (2010) p.275
- ^ a b c 『鉄道ジャーナル』通巻522号 「Railway Topics『小田急LSE・HiSEが運用から外れる』」 (2010) p.147
- ^ a b 『鉄道ファン』通巻606号 「POST『7/8、HiSE10041編成、解体に向けて陸送される』」 (2011) p.181
- ^ 『2012年3月17日(土) ダイヤ改正を実施します。』(プレスリリース)小田急電鉄、2011年12月16日 。2011年12月16日閲覧。"3.車両の引退について"。
- ^ 『ロマンスカー・HiSE、RSE、通勤車両5000形の3車種が引退します』(プレスリリース)小田急電鉄、2011年12月16日 。2011年12月16日閲覧。
- ^ 『鉄道ジャーナル』通巻546号 「Railway Topics 『小田急の引退予定車両の動き』」 (2012) p.147
- ^ a b 『鉄道ダイヤ情報』通巻337号 結解学「3月17日ダイヤ改正レポート 小田急線を駆け抜けた4形式の思い出」 (2012) p.32
- ^ 小田急ロマンスカー旧型車両がラストラン ファンが別れ惜しむ TOKYO MX
- ^ “ラストランに「ありがとう」 ロマンスカー2車種、初代のぞみ”. 読売新聞(相模版): p. 32. (2012年3月17日). オリジナルの2012年6月28日時点におけるアーカイブ。
- ^ “小田急ロマンスカー10000形(2編成)の長野電鉄への譲渡について”. 長野電鉄 (2005年8月4日). 2005年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年2月13日閲覧。
- ^ 『鉄道ジャーナル』通巻522号 「Railway Topics『小田急LSE・HiSEが運用から外れる』」 (2010) p.148
- ^ “小田急、保存ロマンスカーなど一部を解体へ”. 東洋経済ONLINE (2017年7月6日). 2021年8月31日閲覧。
- ^ 『新世紀エヴァンゲリオンTVアニメーション設定資料集』グラウンドワークス出版、2015年
固有名詞の分類
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