将棋 将棋の概要

将棋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/03 20:10 UTC 版)

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チェスなどと同じく、古代インドチャトランガが起源と考えらている[1]

以下、本項ではおもに本将棋について解説する(本将棋以外の将棋および将棋に関連する遊戯については将棋類の一覧を参照)。

総説

チェスやシャンチーなどと区別するため日本将棋(にほんしょうぎ)ともいい、特に日本の「本将棋」には「持ち駒」の観念が古くからあることが特徴とされ、これは諸外国のチェス類似の伝統的ゲームに例のない独特のルールである。持ち駒を利用したチェス派生のゲームが考案されたのは後年のことである。日本将棋連盟によると将棋人口は約1,200万人である[2]

国際将棋フォーラム[3]世界コンピュータ将棋選手権[4]の開催などもあり、日本国外への普及も進みつつある。

ゲーム理論の分類では二人零和有限確定完全情報ゲームであるとされる。ただしステイルメイトや後述する千日手に関してルールの不備や曖昧さがあり、厳密には二人零和有限確定完全情報ゲームとは言えない。

現代の日本では特に本項で述べるいわゆる本将棋(81マスの将棋盤と40枚の将棋駒を使用)が普及している。また、はさみ将棋まわり将棋など、本将棋のほかにも将棋の盤と駒を利用して別のルールで遊んだりする遊戯があり、変則将棋と総称される[5]

歴史的には「大将棋」(225マスの将棋盤と130枚の将棋駒を使用)、「中将棋」(144マスの将棋盤と92枚の将棋駒を使用)、「小将棋」(81マスの将棋盤と42枚の将棋駒を使用)などが指されていたこともあり、これらの将棋は現代の将棋に対して「古将棋」と総称される[6][7]。現代でも中将棋などわずかではあるが愛好家が存在する。ほかに小将棋から派生したと推定される朝倉将棋が福井県を中心として残されており、おもに福井県内のイベントなどで朝倉将棋の大会が開かれている。

ルール

将棋は2人の競技者(対局者)によって行われる。ここでは便宜的に自分と相手と呼ぶことにする。

将棋盤と駒

  • 将棋の対局には縦横9マスずつに区切られた将棋盤将棋駒を用いる。
  • 対局者は将棋盤を挟んで向かい合って対局することになるが、このとき将棋盤の自分側から3段目までのマスを自陣、相手側から3段目までのマスを敵陣と呼ぶ。
  • ほかの将棋に類するゲーム(チェス、シャンチーなど)と違い、駒に色分けなどはなく、敵味方共通の駒を用いる。ただし駒は先の尖った独特の五角形で向きが存在し、一局を通じて自分の駒と相手の駒は常に向き合う方向に配置される。したがって、駒の向いている方向によって、その駒が現在自分と相手のどちらに属しているかが表されることになる。「持ち駒」のルールによって、駒が敵味方どちらに属しているかは目まぐるしく変わることになる。
  • 盤上の駒は一局を通じて常に1つのマスに入ることになる(シャンチーのように線の交点に配置されるわけではない)。1つのマスに複数の駒が存在したり、1つの駒が2つ以上のマスに同時に存在したりすることはできない。

駒の種類

将棋の駒。成駒も含め全種類を示している。
  • 将棋の駒は玉将(玉)及び王将(王)、飛車(飛)、角行(角)、金将(金)、銀将(銀)、桂馬(桂)、香車(香)、歩兵(歩)の8種類であり、それぞれ動ける範囲が決まっている。
  • 一般的に一組の将棋駒には玉将と王将が1枚ずつ入って構成されている。慣例として上位者が王将、下位者が玉将を用いる[8]。ただし、2つとも玉将である「双玉」と呼ばれるものもある[9]。なお、駒の種類である玉将の「玉」、金将の「金」、銀将の「銀」はいずれも宝物の意味であり[9]、本来は2つとも玉将で構成されている双玉であったと考えられている[9]。したがって、将棋で「王様」と呼ぶのは厳密には正しくないとされる[9](そのため、一般的に棋譜読み上げでも玉将と王将を区別せず「ぎょく」と読み上げる。また、一般的に自分側の玉将(王将)のことを「自玉」、相手側の玉将(王将)のことは「相手玉」あるいは「敵玉」という。ただし、玉将(王将)に利きのかかる手は「王手」と言い、「玉手」と言うことは普通ない)。
  • 将棋駒のうち、飛、角、銀、桂、香、歩については敵陣内への移動・敵陣内での移動・敵陣内からの移動の際に成ること(後述)を選択することができ、これによって以下のように駒の動きが変化する(成りを選択した時点で駒を裏返す)。
  • 将棋駒のうち一方向に向かって何マスでも進めることのできる飛車、竜(成った飛車)、角、馬(成った角)、香のことを総称して「走り駒」(跳び駒ともいう)という。
  • 玉、王以外の大きな駒である飛車、角行はまとめて「大駒(おおごま)」と呼ばれ、金将、銀将をまとめて「金駒(かなごま)」と呼ぶことがある。それぞれ、戦術において似た役割の駒をまとめた言い方でもある。
  • 「駒の利き」とは盤上にある各駒の効力が及んでいる範囲(機能している範囲)を言い、各駒の移動可能となっている範囲に相当する。

駒の動き

元の駒 動き 成駒 動き
玉将(ぎょくしょう)
王将(おうしょう)
玉(ぎょく)
王(おう)
全方向に1マス動ける。 - - -
飛車(ひしゃ)
飛(ひ)
車(しゃ)[10]
   
   
縦横に何マスでも動ける。
駒を飛び越えてはいけない。
龍王(りゅうおう)
龍(りゅう)
飛の動きに斜めに1マスの動きを足したもの。
角行(かくぎょう)
角(かく)
 
   
 
斜めに何マスでも動ける。
駒を飛び越えてはいけない。
龍馬

(りゅうめ、りゅうま)
馬(うま)

角の動きに縦横に1マスの動きを足したもの。
金将(きんしょう)
金(きん)
   
斜め後ろ以外に1マス動ける。 - - -
銀将(ぎんしょう)
銀(ぎん)
   
 
前と斜めに1マス動ける。 成銀(なりぎん)
   
金と同じ。
桂馬(けいま)
桂(けい)
 
     
   
前へ2、横へ1の位置に移動できる。
その際、駒を飛び越えることができる。
成桂(なりけい)
   
金と同じ。
香車(きょうしゃ、きょうす)
香(きょう)
   
     
前に何マスでも動ける。
駒を飛び越えてはいけない。
成香(なりきょう)
   
金と同じ。
歩兵(ふひょう)
歩(ふ)
   
     
前に1マス動ける。 と金(ときん)
と(と)
   
金と同じ。

上の表では便宜的に成銀を「全」、成桂を「圭」、成香を「杏」と表示している。この表記は、将棋駒の活字がない環境で(特に詰将棋で)しばしば用いられる。成銀を「全」、成桂を「今」、成香を「仝」、と金を「个」で表す流儀もある。成銀、成桂、成香、と金はすべて「金」と表記されているのが実際で、くずし方を変えることで成る前の駒がわかるようにしている。王将と玉将では役割が同一であっても先手が玉将を持つことで後手と区別している働きが存在する。

対局の進行

将棋は対局者が相互に自らの駒を動かすことによってゲームが進められる。

  • 対局において先に駒を動かし始める側の対局者を先手、そうでない側の対局者を後手という。将棋では一局を通じて先手と後手が交互に盤上にある自分の駒のいずれか1つを一度動かすか、持ち駒(相手から取って自分の駒となった駒。後述)を1つ盤上に置くことを1回ずつ繰り返す。この手順における一回の動作(盤上の駒を動かす、または持ち駒を盤上に置く)を「一手」と呼び、動詞としては盤上の駒を動かす場合には「指す」、持ち駒を盤上に置く場合には「打つ」という。
  • 「将棋を打つ」という表現がなされることがあるが、将棋は「指す」ものであって「打つ」ものではない。ただし、持ち駒を盤面に配置することは「打つ」という(多くのテーブルゲーム類の中で「指す」という表現を用いるのは将棋類のゲームのみ)。

駒の配置

将棋の対局において駒は対局者各20枚ずつの計40枚を用いる。対局者間の棋力の差によって手合割(ハンデ)を考慮する必要もあり、対局者間の棋力の差がかなり大きい場合には駒落ち(棋力で上回る側に属する駒の一部を盤上から除外した状態での対局)となるが、基本的には駒を落さずに対局者各20枚ずつ対等に駒を持つ「平手(ひらて)」で指される(手合割の詳細については後述)。

将棋の対局を始めるには、まず、駒を盤上の定められた位置(初形の位置)に配置する。将棋の正式な礼法では、対局者のうち上位者が駒袋に入った駒を盤の中央に取り出し、対局者はそれぞれ自陣に大橋流あるいは伊藤流の並べ方によって駒を並べていく。慣例として上位者が王将、下位者が玉将を用いる[8]

平手戦の場合、開始時には駒を次のように並べる。

平手戦の初期配置

上図のように盤面を図として表示する場合、下側が先手、上側が後手となる。先手から見て将棋盤の右上のマスを基点とし、横方向に1、2、3、…、9、縦方向に一、二、三、…、九とマス目の位置を表す座標が決められている。棋譜はこの数字を用いて表現される。また、先手はUnicode文字参照U+2617、)、後手は(U+2616、)で示すのが一般的だが、コンピュータ上ではJIS2004対応などのフォントが必要で、先手は▲・後手は△で示すことも多い。

先手・後手は振り駒により決定する(プロのリーグ戦など事前に先手・後手が決定している場合もある)。

手番における動作

自分の番(手番)が来たら、必ず盤上の自分の駒のいずれか1つを1回動かすか、持ち駒を1つだけ盤上に打たなければならない。二手続けて指したり(二手指し)、パスしたりすること(自分の駒をまったく移動せず、持ち駒も打たないこと)はできない。

盤上の駒の移動

盤上にある自分の駒は、その駒の種類に応じて駒の動きに書かれている範囲内に存在するマスであれば、どこにでも移動させることができる。ただし、以下のような制限がある。

  • 本来の駒の動きの範囲内に含まれていても、盤上に存在しないマスには移動できないため、それぞれの駒の利きは盤上にあるマスの範囲に限られる。したがって、飛、角、香などの走り駒の移動できる範囲は盤の端のマスまでになる。また、盤の端に近い位置にある駒は移動できる範囲がマスのある範囲に限られる。
  • 駒の移動においては、それぞれの駒は原則としてほかの駒を飛び越して移動することができず(桂馬は例外。後述)、また、盤上の駒は常に1つのマスに1つの駒しか入ることができないことから次のような制約がある。
  1. 自分の駒を移動させることができる範囲内にほかの自分の駒がすでに存在する場合、その駒によって塞がれているマスには入れない。また、ほかの駒を飛び越すことはできないため、ほかの自分の駒を飛び越してその先のマスへと移動することもできない(自分の駒が移動可能な範囲は、ほかの自分の駒が存在するマスの1つ手前のマスまでとなる)。
  2. 自分の駒を移動させることができる範囲内に相手の駒がすでに入っている場合、その相手の駒を捕獲して自分の「持ち駒」としたうえで、自分の駒をその相手の駒が存在したマスの位置に動かすことができる。したがって、自分の駒が移動可能な範囲は、その相手の駒が存在するマスにまで及ぶことになる。ただし、ほかの駒を飛び越すことはできないため、飛、角、香などの走り駒であっても、移動範囲を塞いでいる相手の駒を取ったうえでそのマスに移動することはできるが、移動範囲を塞いでいる相手の駒を飛び越してその先のマスへと移動させることはできない。
  3. 桂馬については、ほかの駒とは異なり移動可能なマスが元のマスから離れた場所にあるため(先述の駒の動きを参照)、周囲のマスにほかの駒があっても、それを飛び越して移動することができる。ただし、桂馬の移動可能なマスにすでに自分のほかの駒が入っていて塞がれているときは移動できない。なお、桂馬の移動可能なマスに先に入っている駒が相手の駒である場合には、その相手の駒を取ってそのマスへ移動することができる。

以上のほか、玉将の位置との関係で、自分の駒を移動させることによって自玉を相手駒の利きにさらすことになる場合には、後述する禁じ手に該当することとなり移動できない。

駒の成・不成の選択

前述のように盤上の相手側3段を敵陣と呼ぶが、玉(王)と金以外の駒(飛、角、銀、桂、香、歩)については、敵陣内へ入るとき、敵陣内で移動するとき、敵陣内から出るときに「成る」ことを選択することができる。こうして成った駒を成駒と呼ぶ。成駒となることによって、移動可能な範囲が変化する。飛は竜王(竜)、角は竜馬(馬)となり、それぞれ飛・角のもともとの駒の動きに加えて、全方向1マスの範囲にも動けるようになる。また、銀は成銀、桂は成桂、香は成香、歩はと金となり、それらはすべて金と同様に扱われる。歩が成った場合にも金と同様に扱われるため、同じ縦の列に歩と成った歩(と金)が並んでも二歩(後述)にはならない。

成りは強制ではなく、成らないこと(「不成(ならず・ふなり[11])」と称する)を選択することができる。ただし、駒がそれ以上は動けなくなってしまう場合(例えば、香車を敵陣の一番奥の段に移動させる場合)は、自動的に成らなければならない。一度、不成を選択した場合であっても、以後、その駒が成る条件(敵陣に入るとき、敵陣の中で動くとき、敵陣から出るとき)を満たすたびに、成るか成らないかを選択することができる。また、一度成駒になってしまうと、その駒が盤上にある限り、元に戻すことはできない。その駒が相手に取られて相手の持ち駒となった時点で、成る前の状態に戻る。したがって、持ち駒を成った状態で打つことはできない。

駒が成ることを選択した場合には、それを表示するために、移動先のマスに駒を裏返して配置する(不成を選択した場合には裏返さずそのまま配置する)。銀、桂、香の駒の裏面には「金」の字が崩して書いてある(歩の裏面の「と」も本来は「金」あるいは同音の「今」の字を崩したもの)が、もともとの駒の種類が分からなくならないように各駒の種類に応じて裏面の「金」の字体は変えてある。

上述のように、成りは強制ではなく、成るか成らないかを選択することができる。銀、桂、香は、成ることによって移動できなくなるマスがあるため、不都合を生じることがある(例えば、銀が成ると斜め後ろに動かせなくなる)。そのため、成るか成らないかについて慎重な検討を要することもある。これに対して飛、角、歩は、成っても移動できるマスが増えるだけで減らない(つまり、駒の性能が上がる)ため、成りが選択されることがほとんどである。ただし、ごくまれに、反則である打ち歩詰め(後述)になる局面を回避するなどの理由で、あえて駒を成らない場合もある。その逆に、成ることによって自玉に詰みが生じる局面(大抵は、成ってしまうと自玉の打ち歩詰めが解消されてしまう局面)を回避するなどの理由で、あえて駒を成らない場合もある。

持ち駒の使用
相手から取った駒は持ち駒として再利用できる

持ち駒(自分の駒が移動した際に捕獲して得た駒)は一般的に盤の脇の駒台に置かれる。持ち駒は盤上の空いているマスであれば、禁じ手(後述)に該当する場合(二歩や行き所のない駒、打ち歩詰めなどとなる場合)を除いて、好きなところに打つことができる。敵陣に駒を打つ場合でも、成る前(将棋駒の表側)の状態で打たなければならない。

持ち時間

プロの公式戦では持ち時間を定め、ストップウオッチまたは対局時計(チェスクロック)を用い、時間切れによる勝敗を厳正に定める。公式戦では、名人戦では9時間、NHK杯では10分というように棋戦ごとに持ち時間が決められているが、残り時間を使い果たした場合は1手当たりの制限時間(30秒から1分)が課される。プロの公式戦以外では持ち時間なしで最初から1手当たり○秒以内で指す、あるいは持ち時間がなくなれば即負け(切れ負け)の対局もある。

手合割

二枚落ちの初期配置

対局者の棋力の差によってはハンデキャップ付きの対局も行われる。棋力の差が非常に大きい場合、上位者が駒の一部を取り除いて(駒落ち)対局する。右図は「二枚落ち」と呼ばれる駒落ちの場合である。

駒落ちにおいては棋力の差により、1枚ないし2枚の駒を落とすものから、飛車角行に加え、金将銀将桂馬香車まで落とす十枚落ちまでの手合割がある。特殊なものとしては、上手が玉将1枚だけになる「裸玉」(19枚落ち)、上手が19枚落ち+持駒に歩3枚を持つだけの「歩三兵」や、金落ち・銀落ちといった特殊な駒落ちが指されることもあるが、あまり一般的ではない。

駒落ち戦の場合には「先手」や「後手」ではなく、駒を落とした方を上手(うわて)、落とされた方を下手(したて)といい上手から指し始める。

勝敗の決め方

将棋は原則として互いに自らの駒で相手の玉将(王将)を捕獲することを目指し、一方の玉将(王将)が相手の駒に捕獲されてしまうことが不可避な状態(詰み)となれば勝敗が決まる。伝統的に「実際に王を取る」ことは忌避されたため、どちらか一方が逆転不可能と判断した時点で投降することにより対局を終了する習慣になっている(投了)。投了のタイミングは、ルール上は自分の手番であればいつ行ってもよいが、実際に投了する局面としては、自玉が詰まされることが確定的となったとき(自玉が即詰みになることが判明した場合、自玉に必至がかかり敵玉が詰まないとき)がまず挙げられ、相手の攻めを受け切れず、自玉が一手一手の寄り筋となった場合、攻め合いで相手より早く玉を詰ますことができない場合も該当すると考えられる。このほか、自玉に具体的な詰み筋・寄り筋は見えなくても、到底勝ち目がないと判断して戦意喪失した場合、すなわち相手の受けが強くて一連の攻めが続かなくなった場合(指し切り)や、攻防に必要な駒を相手にほとんど取られてしまった場合、一方的に入玉されて敵玉が寄る見込みのない形になってしまったなどの場合に投了することもある。特にプロの公式戦では完全に詰むまで指すことはきわめて稀である。原則的には詰みまたは投了によって勝敗が確定するが、勝敗の決し方には以下のようなものがある。

  • どちらかの対局者が以下の状態になった場合には、その対局者の負けとなり、もう一方の対局者の勝ちとなる。
    • 詰み(自玉に王手がかかっており、合法な指し手が存在しない)[12]
    • 投了(勝利不可能と判断して負けを認めた)
    • 時間切れ(持ち時間がなくなった)
    • 反則行為(反則を行ったことを指摘された)
      • ルール違反(基本ルールに反する動作を行った)
      • 禁手(ルールで禁止された手を指した)
      • 連続王手千日手(相手玉への王手の連続によって千日手が成立した)
    • 入玉の点数不足(相入玉に対局者同士が合意し、点数計算で24点未満となった)
    • 入玉宣言(条件を満たした状態で対戦相手が入玉を宣言した)
  • 以下の状態になった場合には、引き分けとなる。
    • 連続王手以外の千日手(連続王手以外で同一局面が4回現れた)
    • 持将棋(相入玉に対局者同士が合意し、点数計算で両者ともに24点以上となった)

千日手

同一局面が4回現れた場合千日手となる。同一局面とは、「盤面・両者の持駒・手番」がすべて同一の場合のことをいう。千日手は原則として無勝負・指し直しだが、一方が王手の連続で千日手となった場合は、王手をかけていた側の負けである。これは、千日手が成立した手番に関係ないため、自身が指した手で千日手が成立して負けが決まることもあれば、相手が指した手で千日手が成立して負けが決まることもある。通常の禁手のように、自分が指した手で負けが決まるとは限らないため、ルールでは「禁じられた手」ではなく「禁じられた局面」と表記している。連続王手の千日手は通常の禁手とは異なる特殊な規定のため、双方連続王手の千日手や最後の審判(詰将棋作品)といった状況においてルールの不備が指摘されている。

持将棋

先後両者の玉(王)が互いに入玉し、互いの玉を詰ますことが困難になった場合、両者の合意の上で判定により勝敗を決める場合がある。この判定法により引き分けとなる場合を持将棋という。プロの公式戦においては、大駒1枚につき5点、小駒1枚につき1点とし、互いに24点以上であれば引き分けとしている。アマチュアの大会の場合はそれぞれの規定による。一般に27点法(同点)が採用され、点数が多い方が勝ち、同点の場合は後手勝ちとしている。

反則行為

次に挙げる行為は反則と決められており、着手した場合ただちに負けとなる。対局中であれば、反則行為が行われた時点ではそれに気付かずに手が進められても、終局前に反則が指摘された場合、反則した時点に戻して反則した側の負けとなる。また、終局後に反則が判明した場合も、原則として反則をした側の負けとなる。たとえば、対局者が反則に気づかずに手を進め、反則された側が投了したとしても、反則を行った対局者の負けとして勝負結果が変更されることになる(棋戦の運営による例外の対応もあり。以前は投了優先であったが、2019年10月1日に将棋連盟対局規定の一部変更が行われている[13])。なお、対局中の助言は一切禁止されるが、反則行為が行われた場合に限り第三者がそれを指摘してもよい。

  • ルール違反
    • 2手続けて指す(二手指し)、後手が誤って初手を指す、ルール上移動できない位置に駒を移動する(特に、角(馬)を遠い位置に移動させるときに間違えやすい)、駒を成れない状況で成ってしまう、玉や金を成ってしまう、成り駒を盤上で裏返し元の駒に戻す、成り駒を打つ(持ち駒を裏返して打つ)、持ち駒を駒台に乗せず手に隠し持つあるいは将棋盤や駒台の陰に置く(隠し駒)などの基本ルールに反する行為。いったん着手した手を変える行為(待ったと呼ばれる)も基本的には即負けである。駒から手を離した時点で着手が完了となるため、いったん駒を動かしても手を離さなければ、その時点では元に戻して別の手を指してかまわない。ただし、仲間同士の気楽な対局や駒落ちなど指導を目的とする対局の場合は、例外的に許可される場合もある。しかし、多くの人は「待った」をマナー違反とみなすため、注意が必要である。
  • 禁じ手
    • 基本ルールには反していないが、特別に禁止されている手のこと。
  • 連続王手の千日手
    • 連続王手での千日手は王手している側が指し手を変更しなければならないが、これを行わずに千日手が成立してしまった場合。千日手が成立した時点で反則になるため、対戦相手が指した手によって反則が確定する場合もある。

禁じ手は以下の通りである。

  • 二歩
    • 成っていない歩兵を2枚以上同じ縦の列に配置することはできない。
  • 行き所のない駒の禁止
    • 盤上の駒を行き先のない(動けない)状態にしてはいけない。味方の駒に進路を塞がれて一時的に動けない場合はこれにあたらない。打つ場合、不成で進む場合ともに敵陣1、2段目の桂馬、1段目の香車・歩兵は配置してはいけない。したがって盤上の桂馬・香車・歩兵がその場所に進む場合は自動的に成らなければならない。
  • 打ち歩詰め
    • 持ち駒の歩を打って相手の王を詰ませてはいけない。ただし、歩による王手が詰め手順の最終手でなければ、歩を打っての王手は反則ではない。したがって、歩を打って王手をかけたのちの連続王手で最終的に「詰み」が成立することは問題がない。また、盤上の歩を突いて玉を詰ます突き歩詰めは問題ない。
  • 自玉を相手駒の利きにさらす手(王手放置)
    • 自らの着手の後、自らの王が王手のかかった状態にあってはいけない。すなわち、
      1. 相手に王手された場合は王手を回避しなければならない。
      2. 王を相手の駒の利きに移動してはならない。
      3. 王以外の駒を移動させた結果、王が相手の駒(香車、飛車(龍王)、角行(龍馬))の利きにさらされるようにしてはならない。

プロの棋戦で発生した反則は、記録に残っているもので回数が多い順に下記のとおり(2018年10月20日現在)[14]。プロの棋戦では打ち歩詰め・行き所のない駒によって反則負けになった例は現時点では1例もない。

プロの棋戦で発生した反則
1位 二歩 86回
2位 二手指し 28回
3位 ルール違反の手を指す[15] 25回
4位 王手放置、自らの王を相手の駒の利きにさらす 14回
5位 後手が初手を指す 6回
6位 連続王手の千日手 2回

プロ[16]が行った「ルール違反の手」として、下記のような事例がある。

  • 持ち駒を、成り駒の状態で打った(一字駒の「成銀」を「金」と見間違えた。参考)。
  • 駒を飛び越える位置に角を動かした[17][18]
  • 自分が取った駒を相手の駒台に乗せた[19]
  • 盤上から駒台に移ってしまった香車を持ち駒として使用した(服の袖が当たったことが原因である。参考)。
  • 相手の駒を取ったあと、別の場所に駒を動かした(8八の王将で7八の相手の馬を取ろうとして、馬を駒台に移したあと王将を8七に移動させた。棋譜上は馬を取らずに王を8七へ指した王手放置となっている。参考)。
  • いったん不成で敵陣に置いたように見えた駒を持ち直し、成りに変えた。対局はそのまま継続されたが、テレビ放送後の視聴者の抗議を受け、「待った」であるとされた[20]

なお、「王手をするときには『王手!』と言わなければいけない」と誤認する者も多いが、そのようなルールは存在しない[21]。これは、本来「自分で気づかなければいけない」とされているためである[22]。そのような王手の発声は、指導対局や縁台将棋、初心者同士の対局などで慣習的に行われる場合があるに過ぎず、プロの公式戦などで行われることは皆無である。

公式戦ルールの不備

打ち歩によって、連続王手の千日手でしか王手を解除できない状態を作った場合、打ち歩詰めに該当するのか否かが不明である。連続王手の千日手でしか王手を解除できない状態は詰みとみなすのかどうかに依存し、現行ルールではどちらの解釈も可能である。公式戦での前例は存在しないとされるが、「最後の審判」という詰将棋の問題において、発生する可能性が指摘されている。

この他に、歩を打った後の局面が「ステイルメイト」状態になった場合に、「打ち歩詰めの反則規定」に該当するのかについて、「一方が玉以外に盤上の駒や持ち駒がない」などの極端な勢力差にならない限り局面が出現せず、プロの実戦上は相当前の段階で投了による決着となるため、特に正式な見解は出されていない。また、両者が連続王手で千日手となった場合については定義されていないが、いまだ局面や手順として再現できておらず、公式戦でも前例が存在しないがゆえ、特に問題視されていない。

公式戦ルールの不備が改正された例としては、1983年に千日手の規定が「同一手順を3回繰り返した場合」から「同一局面が4回現れた場合」に変更された例がある。旧規定では、千日手になることなく無限に指し続ける手順の存在が数学を用いて簡単に証明でき、実際に千日手模様の無限ではないが、かなり長手数の対局が見られたことから改正された。また、相入玉の将棋で、一方が持将棋の合意や投了を拒否した場合、詰みによる決着の見込みがないまま延々と指し続けることになりかねないため、入玉宣言法500手指了ルールが暫定導入されている。




  1. ^ a b “将棋の起源”. 朝日現代用語 知恵蔵2006. 朝日新聞社. (2006年1月1日). pp. 999-1000. ISBN 4-02-390006-0. 
  2. ^ https://www.shogi.or.jp/faq/other/
  3. ^ 『日本将棋用語事典』 p.77 東京堂出版 2004年
  4. ^ 『日本将棋用語事典』 p.113 東京堂出版 2004年
  5. ^ 『日本将棋用語事典』 p.175-176 東京堂出版 2004年
  6. ^ 『日本将棋用語事典』 p.129 東京堂出版 2004年
  7. ^ 『日本将棋用語事典』 p.102 東京堂出版 2004年
  8. ^ a b 『日本将棋用語事典』 p.26-27 東京堂出版 2004年
  9. ^ a b c d 『日本将棋用語事典』 p.56 東京堂出版 2004年
  10. ^ しゃ【車】 の意味”. goo辞書デジタル大辞泉). 2017年1月25日閲覧。
  11. ^ 「歩成り」との区別から「ならず」と呼ばれることがほとんどである
  12. ^ 将棋の通常の対局ではまず発生しないが、自玉に王手がかかっていないが合法な指し手が存在しない(チェスでいうステイルメイト)場合については、合法手がないため負けが確定している。ただしその場合は詰みにならないため、実際に負けとなるのは、投了するか、持ち時間が切れるか、反則行為を行った時である。コンピュータ将棋などでは、ステイルメイトは詰みと同様とすることが多い。
  13. ^ 対局規定(抄録):日本将棋連盟
  14. ^ 毎日新聞・将棋「ツィート」『Twitter』、2018年10月20日。2018年10月21日閲覧。オリジナルの2018-10-21時点におけるアーカイブ。
  15. ^ 角・馬が移動できない位置に移動する、成れない状況で駒を成るなど。
  16. ^ 棋士女流棋士奨励会員
  17. ^ 石橋幸緒女流王位がタイトル戦で角による豪快な「反則手」で勝局がふいになる”. 田丸昇公式ブログ と金 横歩き (2009年10月19日). 2013年6月19日閲覧。
  18. ^ トップ棋士が「角のワープ」で反則負け 109手目の痛恨ミス(松本博文) - Yahoo!ニュース” (日本語). Yahoo!ニュース 個人. 2021年1月4日閲覧。
  19. ^ 伝説の事件 - 第25回朝日オープン将棋選手権本戦第5局”. asahi.com (2007年1月9日). 2013年8月13日閲覧。
  20. ^ 対局者の「着手が30秒を超えており、考慮時間が消費されるべきである」との抗議で考慮時間が1回分消費されたが、対局時には反則であるという指摘はされなかった。テレビ放送後の視聴者からの抗議を受けて理事会で協議を行い、反則であるとされ次年度の銀河戦への出場停止などの処分が決定した(参考:加藤一二三九段、第14期銀河戦出場停止に(日本将棋連盟からのお知らせ))。
  21. ^ 日本将棋連盟でも、よくあるご質問にて、同じ指摘を行っている。なお、将棋とは異なり、チェスでは王手(チェック)をかける場合、強制ではないが慣習的に「チェック」と口頭で告げるべきとされている(王手#チェスの「王手」参照)。
  22. ^ NHKEテレ将棋フォーカス』2017年10月22日・放送分でも解説されている。
  23. ^ ASCII.jpで公開されているPonanza電王戦バージョン(2016年)の駒の価値。
  24. ^ Bonanzaで公開されているBonanza 6.0(2011年)の駒の価値。
  25. ^ なお、コンピュータのつけた評価値は、内部の計算に用いるために大きな値(飛車1枚で1000点前後になるなど)となっているため、1%程度に縮小して棋士のつけた評価値とスケールを合わせている。
  26. ^ 羽生善治 『羽生善治の将棋入門』 河出書房新社、2015年。 
  27. ^ 谷川浩司 『谷川浩司の本筋を見極める』 NHK出版、2007年。 
  28. ^ 同じソフト・棋士でも、徐々に改良を重ねているため、本やバージョンによって数値は異なる。例えば、谷川浩司は過去の著書(谷川浩司 『将棋に勝つ考え方』 池田書店、1982年)では、歩兵=1点、香車=5点、桂馬=6点、銀将=8点、金将=9点、角行=13点、飛車=15点、と金=12点、成香=10点、成桂=10点、成銀=9点、龍馬=15点、龍王=17点としていたことがある。
  29. ^ 玉将(王将)については他のいかなる駒よりも常に価値が高いので、点数は「付けられない」あるいは「∞点」と表現される。ただコンピュータ将棋などでは便宜的に全40枚のうち玉将2枚を除いた38枚(金将以外全て成っている状態)の点数の総計より十分大きい有限の点数が設定されることがある。
  30. ^ 増川宏一『ものと人間の文化史 将棋』(法政大学出版局、ISBN 4-588-20231-6)では、明治時代初めに書かれた『将棋絹篩』([1])の序文などに見られるが、宋代の『太平御覧』にあるものをそのまま引き写したのだろうとしている(88ページ)。が、増川説に対しては、木村義徳「将棋の日本到着時期をめぐって:増川宏一説に対する批判」(『桃山学院大学総合研究所紀要』30-2)[2] (PDF) で、武帝説の起源は初唐の数種の史料に遡る点等を指摘し、批判している。
  31. ^ 増川の同書(88 - 89ページ)に、1690年の『人倫訓蒙図彙』、1746年の『本朝俗諺誌』、1755年の『象棋百番奇巧図式序』などに記述があると指摘している。
  32. ^ 木村義徳『持駒使用の謎』日本将棋連盟、2001年。ISBN 4-8197-0067-7
  33. ^ 将棋棋士の大内延介は、著書『将棋の来た道』(めこん(文庫本は小学館)、ISBN 978-4-8396-0032-7)でマークルックを指した経験から、将棋との類似を指摘し、将棋の源流ではないかと主張している。
  34. ^ 前述の増川宏一らが、東南アジア伝来説を主張している。
  35. ^ 増川宏一『将棋の駒はなぜ40枚か』(集英社、ISBN 4-08-720019-1)、12 - 15ページ。出土資料そのものについては『木簡研究』16号(1994年)、「奈良・興福寺旧境内」(26ページ)参照。
  36. ^ 「平安将棋」の呼び名は、関西将棋会館にあった将棋博物館でも採用している(将棋史年表。このページでは木村義徳の説に従っている)。
  37. ^ 『遊戯史研究』6号(1994年)、清水康二「将棋伝来についての一試論」(12ページ)。これを紹介したサイトが日本中将棋連盟の古典将棋コラム九 日本将棋と仏教観にある。
  38. ^ 大内延介の『将棋の来た道』(小学館文庫版、ISBN 4-09-416541-X)に、大橋家文書に含まれていた碑文から同様の記述が見つかり、記述の信憑性が高まったと指摘している(35ページ)。
  39. ^ 村山修一『普通唱導集―翻刻・解説』法藏館、2006年。ISBN 978-4-8318-7558-7。「桂馬を飛ばして銀に替ふ」
  40. ^ 佐伯真一「「普通唱導集」の将棋関係記事について」『遊戯史研究』第5号、1993年。
  41. ^ なお、近年の研究によると、将棋所や碁所という役職は幕府公認のものではなく自称である。
  42. ^ 「国民百科事典4」平凡社 p21 1961年11月15日初版発行
  43. ^ ただし越智信義著『将棋文化誌』 (Kindle) では、萬朝報の将棋欄創設は1908年(明治41年)に掲載開始した「高段名手勝継将棋」開始時点とされている。
  44. ^ a b c d e 升田幸三『名人に香車を引いた男』223ページ「GHQ高官の度肝を抜く」より
  45. ^ http://ameblo.jp/professionalhearts/entry-10001276891.html などを参照
  46. ^ 「レジャー白書に見るわが国の余暇の現状」
  47. ^ 増川宏一『チェス』法政大学出版局〈ものと人間の文化史 110〉、2003年、13-14頁。ISBN 4588211013
  48. ^ ホッジスをはじめとする西洋人の努力は増川宏一『将棋II』(法政大学出版局1985) pp.305-307 に簡単に紹介されている
  49. ^ Federation of European Shogi Associations, http://www.shogi.net/fesa/ 
  50. ^ Shogi (Japanese Chess), GNU Operating System, http://www.gnu.org/software/xboard/whats_new/rules/Shogi.html 
  51. ^ Motif Shogi Pieces, The Chess Variant Pages, http://www.chessvariants.com/graphics.dir/motifshogi/index.html 
  52. ^ Shogi News: Internationalized shogi pieces - YouTube HIDETCHI(英語) - 他のデザインの国際駒のアイデアも紹介されている。
  53. ^ 将棋駒 国際駒 - 銘駒図鑑
  54. ^ Shogi Game Notation, Online Shogi Resources, https://genedavissoftware.com/shogi-game-notation/ 
  55. ^ Roger Hare (2019). A Brief Introduction to Shogi. http://eric.macshogi.com/shogi/roger/Introduction%20to%20Shogi.pdf 
  56. ^ 81Dojoの棋譜など
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  60. ^ Searching for Solutions in Games and Artificial Intelligence
  61. ^ a b 羽生「将棋の海外普及」(2011)
  62. ^ a b ガラパゴス的に進化した日本の将棋 羽生善治 将棋棋士|働き方・学び方|NIKKEI STYLE
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