家族 日本

家族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/14 06:13 UTC 版)

日本

明治時代のある家族
日本のある家族(1957年
日本の家族、当時の淡路島民宿1980年
日本の家族(2003年

日本では明治大正期は、夫婦が多くの子をつくり(子沢山)、親たちと同居し、大家族の割合が高かったが、昭和期には夫婦とその子だけで成る核家族、小家族の割合が増えた(つまり、ある夫婦から見て夫や妻の親とは住まない割合、あるいはある夫婦から見て、孫と一緒に暮らさない割合が増えた)。その後、そうした形態の家族の様々な弊害が認識されるようになり、ひとつの家屋の1階2階に分かれて微妙な「近さ」と「距離」を保ちつつ暮らす人々も増えるなど、家族の多様化や 家族の線引きの曖昧化が進んでいる。

家族団欒、一家団欒
広辞苑では「集まってなごやかに楽しむこと」と説明されている。家族で、一緒に食事をしたり、談笑するなどして、なごやかに、楽しくすごすことである。「なごやかに」とあるように、喧嘩をしている状態や険悪な雰囲気では「家族団欒」ではないわけである。たとえば、冬には一緒に炬燵に入り、ひとつのを家族でつつく、などといったイメージがある。
日本では昭和期・平成期に核家族や独身者が増え、ひとりひとりの生活リズムもバラバラになり、孤食化も進み、家族団欒が失われた。正月彼岸には帰省して、ほんの数日間(普段はしていない)「家族団欒」を意識的に作り出そう、などということが行われるようになっている。
家族旅行
戦前から家族旅行は比較的裕福な市民において行われていたが、戦後の高度成長期には裾野が広がり、庶民の家庭においても家族で旅行することが定着した。社団法人日本旅行業協会が公表した統計では、『成人するまでに20回以上、つまり平均して年に1回以上家族旅行に行った人は、「我慢強い」「思いやりがある」「協調性がある」「社交的である」等、周囲とのコミュニケーションや気配りに長けている傾向が強い』という結果となっている[13]

家族に関するメディア報道

一部の家族が機能不全状態にあるという意識の広まりと共に、家庭でのドメスティックバイオレンス児童虐待などの事件がマスメディアを賑わすことが日常化している。これらの問題はどの時代にもあり、件数的には現代ではむしろ減少しているが、報道は増加している。近年は家庭内の暴力を人権問題として社会問題ととらえる傾向がある。増加する高齢者人口と在宅での高齢者看護などと共に、家族をめぐる社会問題が報道されている。

家族をめぐるメディア報道においては、現代の離婚件数が昔より増加しているかのような言論や(明治期の離婚は現代の1.5倍の件数であった)、「家族の終焉」といった、歴史的に見て適切ではない言説がなされる場合がある[14][15]。ただし、離婚率は1960年から緩やかに上昇傾向に入り、2000年まで増加し続けた。それでも世界的に見れば日本の離婚率は2006年時点でもかなり低位となっている[16]

フェミニズムの視点から見た日本の家族形態の変化

特にフェミニズムにおいては、家父長制という概念を通して家族の歴史がたどられる。リサ・タトル(米国、1952年生)著『フェミニズム事典』(明石書店)では「家族は、家父長制と女性に対する抑圧を存続させる主要な制度である」との説明を採用している。

戦前から終戦までの歴史と変容
戦前の日本の家族は家制度に基盤をおき、地域社会はもとより国家とつながる「イエ」を形作っていた。「家制度」は16世紀に成立し[17]、「家」と「家父長制」の二つを大きな要素としていた。「イエ」という親族集団の一体的結合と継続的発展を重視し、家族の人々を「イエ」に従属する存在とみなした。家父長権の相続(家督相続)、本家・分家などの階層性、それらを対外部的にひとまとまり(ウチ)としてとらえる心性・制度であった。また、家はひとつの経営体でもあり、その維持と継続が最も重視された。このため、長子、主に長男は家にとどまって跡取りとなり配偶者をめとり、先代が死去すると代わって家長となった。「家を継ぐ」という観念がこの時代に発生したことからもわかるとおり、家は跡取りの単独相続であり、また財産は家長ではなく家そのものに属していた[18]。農村部においては、次男や三男など長男以外の男子や女子は、富農層では分家として財産の一部を分与され村内に一家を立てることもあったが、中農層以下のものは独立や婚姻によって村を離れることが多かった[19]。こうした家は地域集団や共同体の基本的な構成単位であり、周囲との密接な関係の上で存続していた[20]。一方離婚は比較的自由であり、この傾向は明治時代に入っても続いた。1883年には人口1000人あたりの普通離婚率が3.39となり、おそらく世界最高の離婚率となっていて、これは1896年の民法制定で離婚が抑制され激減するまで続いた[21]

明治時代に入り、1896年には民法が制定され、そのうちの第4編「親族」と第5編「相続」(いわゆる家族法)によって家制度および戸主権は強化・固定された[22]。ただし、理念的には直系家族が主とされていたものの、次男以下の独立家族が多かったことや父母の寿命が短かったことから、日本では戦前から比較的小規模な核家族が最も一般的な家族形態であり、1920年の時点で過半数の世帯が核家族化していた[23]。戦前の農村では大家族制度が主流であったという認識は(一部の地域を除き)誤りである。

終戦から1950年代まで
太平洋戦争の終戦を機に民法の改正により家制度は廃止された[24]。経済復興と給与労働者の増加により家庭は家内労働の場という側面が薄まり、家庭の教育的役割が強調されていく。また直系家族に代わり核家族が主な家族理念とされたが、旧来の家族概念も残存した[25]
現代
1950年代以降(高度経済成長期)の家族変動の最も顕著なものは同居親族数が減少したこと、および共同体の力の減退に伴って家族の基盤に変容が生じたこと、の二つの特徴があげられる。多数の人口が農村から都市へ移動し、兄弟の数も減った。戦後社会で育った子供たちはすでに中年から高齢にさしかかり、不況の中で社会から孤立する者が急速に増え無縁社会という言葉まで生まれた。
1980年代以降は、夫婦の共働きも一般化しつつあり、1991年以降男性片働き世帯と共働き世帯の世帯数は拮抗するようになって、1997年以降は共働き世帯が完全に上回るようになった[26]。それによって育児子育てが保育園や学童クラブ、地域の野球やサッカー、スイミングスクールなどのスポーツクラブ学習塾などに一時的に委託されることも増え、性別役割分業の見直しが進みつつある。また、高齢化社会に伴う老親の扶養の問題も深刻化してきた[27]
また、女性の社会進出にともない、女性が旧姓を通称として用いることが多くなってきたほか、選択的夫婦別姓制度導入などを求める声も大きくなって来ている。

日本の家族の現状

2010年時点では、日本の家族構成は核家族が56.4%、直系家族等が10.2%、単独世帯が32.4%となっており、1960年代からのデータでは核家族は1980年代まで上昇した後微減傾向、拡大家族は一貫して減少傾向、単独世帯はほぼ一貫して増加傾向にある[28]。ただし単独世帯が1人であるのに対し核家族・直系家族は2名以上で構成されるため、総人口ベースでは2005年データで87%の人が家族と同居していることとなる[29]。また、一つの世帯に属する平均人員数は、調査の開始された1920年から1955年頃までは1世帯に対しほぼ5名で動かなかったものの、その後は急減していき、2005年には1世帯に2.58人とほぼ半減した[30]。地域的に見ると、2005年時点ですべての県において核家族世帯が最も多くなっているものの、都市部では単独世帯もかなりの数を占め、東京都では4割以上が単独世帯である一方、主に日本海側の農村県においては直系家族や大家族の占める割合が比較的高く、山形県では3割を超えている[31]

一部先進国においては婚外子の割合が結婚しているカップルの子どもの割合とほぼ同じとなっている国家も存在するが、日本においては婚外子の割合は2008年でわずか2.1%にすぎず、ほとんどが結婚した夫婦による子どもである。しかし、晩婚化や非婚化によって出産数が減少し、深刻な少子化が起こっている[32]




注釈

  1. ^ フランスでは、日本のように親子が「川の字」で寝る、などという概念はフランス人には、はなから、まったく無い。もしも、フランス人が日本で親子がひと部屋で「川の字」で寝ている、などという実態を聞くような機会があると、非常に驚き、「そんなことをしては絶対にダメだ(ダメよ)」と、真剣に、猛烈に反対する。

出典

  1. ^ a b c 吉松和哉; 小泉典章; 川野雅資 『精神看護学I』(6版) ヌーヴェルヒロカワ、2010年、143頁。ISBN 978-4-86174-064-0 
  2. ^ 吉松和哉; 小泉典章; 川野雅資 『精神看護学I』(6版) ヌーヴェルヒロカワ、2010年、149頁。ISBN 978-4-86174-064-0 
  3. ^ 「文化人類学キーワード」p138 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  4. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p79-80 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  5. ^ 「新版 データで読む家族問題」p17 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  6. ^ 「新版 データで読む家族問題」p17 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  7. ^ 「文化人類学キーワード」p140-141 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  8. ^ 「文化人類学キーワード」p142-143 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  9. ^ 「文化人類学キーワード」p140-141 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷
  10. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p63-64 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  11. ^ M・アンダーソン著『家族の構造・機能・感情』
  12. ^ 家族システムの起源(上) 〔I ユーラシア〕, 藤原書店, 2016, p.108
  13. ^ 「親子の絆と旅行」アンケート結果/社団法人 日本旅行業協会
  14. ^ [1][リンク切れ]
  15. ^ 湯沢雍彦著『明治の結婚 明治の離婚―家庭内ジェンダーの原点』
  16. ^ 「新版 データで読む家族問題」p203 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  17. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p73 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  18. ^ 「百姓たちの江戸時代」p13-14 渡辺尚志 ちくまプリマー新書 2009年6月10日初版第1刷発行
  19. ^ 「一目でわかる江戸時代」p36-37 竹内誠監修 市川寛明編 小学館 2004年5月10日初版第1刷
  20. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p73-75 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  21. ^ 「新版 データで読む家族問題」p202 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  22. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p75-78 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  23. ^ 「新版 データで読む家族問題」p18 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  24. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p79 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  25. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p79-80 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  26. ^ 「新版 データで読む家族問題」p114-115 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  27. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p154 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  28. ^ 「ライフコースとジェンダーで読む 家族 第3版」p138 岩上真珠 有斐閣 2013年12月15日第3版第1刷
  29. ^ 「新版 データで読む家族問題」p14 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  30. ^ 「新版 データで読む家族問題」p16 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  31. ^ 「新版 データで読む家族問題」p22 湯沢雍彦・宮本みち子 NHKブックス 2008年11月30日第1刷発行
  32. ^ 「現代人の社会学・入門 グローバル化時代の生活世界」p60-61 西原和久・油井清光編 有斐閣 2010年12月20日初版第1刷発行
  33. ^ 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p126 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行
  34. ^ 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p146-147 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行
  35. ^ 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p153-154 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行






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