宇宙世紀 正史設定の定義

宇宙世紀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/29 13:20 UTC 版)

正史設定の定義

宇宙世紀における正史(本伝)

ガンダムワールドにおける公式設定とは、映像化した作品、富野由悠季による小説作品という定義を上記で解説したが、サンライズ公式設定の作品であっても、宇宙世紀を舞台とした作品を年表という括りで一纏めにすると、多少の差異が発生する。 こういった設定の差異を読者に分かりやすく解説しようと、双葉社のグレートメカニックの編集部などは、アニメ『機動戦士Zガンダム』を例に挙げて「ハヤト・コバヤシが館長を務める戦争博物館でガンキャノン109号機が展示されているから、フィルム上では劇場版『機動戦士ガンダム』を正史とするのだろう」と解説していたが[13]、サンライズの方針は異なった。

2004年当時のサンライズ企画開発室室長・井上幸一はグレートメカニックのインタビューで「富野由悠季が執筆した小説なども皆が正史と捉えますよね?そもそもファーストガンダム自体が劇場版、TV版、小説版で設定が違っているがどれも全部富野由悠季が手掛けている訳で、どれが本物なのか?と言われても困ってしまう。」と語り[13]、サンライズとしてはどのメディアが正史か明確にしないスタンスであった。

ガンダムシリーズの原作者である富野由悠季は、2015年8月27日に開催されたイベント『夜のG-レコ研究会〜富野由悠季編〜』で、「皆さんなりにガンダム全史みたいなものを作っていただければ良い」とガンダムシリーズのユーザーへ見解を語っている[20]

宇宙世紀におけるパラレル

映像化されればサンライズ公式設定となるのは上記で説明した通りだが、映像作品であってもパラレルとして紹介される作品も存在している。

一年戦争を舞台にした準公式作品である漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』や漫画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』は、サンライズ公式設定や宇宙世紀の正史と異なった独自の設定などを盛り込んだ作品で、この2作品は後にタイトルをそのままにそれぞれアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』、アニメ『機動戦士ガンダム サンダーボルト』として映像化されサンライズの公式設定となった部分もあるが、こちらもパラレルであるとされている。

『サンダーボルト』のプロデューサーを務めたサンライズの小形尚弘は2016年のインタビューで「『サンダーボルト』が正史か、パラレルかっていう問題はあったが、アニメを制作している自分達は、そんなに意識している訳ではない。以前までは映像化されたものが正史という考え方だったが、河口さんも先ほど言っていたように、ガンダムの幅がどんどん広がってきて、『サンダーボルト』に関しては、たまたまスタジオ的にタイミングがよかったっていう理由が大きい。制作する中で、サンライズがやるからには正史に組み込んでいいようには作るが、それをやり過ぎると太田垣先生の味がなくなってしまうので、そこに関しては半分パラレルでいいのかなって思いながら作っていました。」と語った。また同インタビューで小形は「『サンダーボルト』は、ガンダムという舞台設定だけ借りた、富野さんが昔言っていたように何回目かの宇宙世紀っていう考え方でいいじゃないかと思いますね(笑)。海外のコミック映画みたいに監督が代わると見え方も変わるっていうやり方も、今のガンダムというコンテンツであればこその許容力はできているんじゃないかと思います」と制作中は、あまりサンライズ公式か正史かどうかに拘っていなかった見解を語っている[21]。 しかし2018年には、『サンダーボルト』は宇宙世紀の本伝ではなく、パラレルであると改めて言及している[22]

宇宙世紀年表

サンライズが制作した映像フィルムである2014年の公式PV『100秒でわかる「機動戦士ガンダムUC」』では(U.C.0001〜0153)までの年表が掲示され、そこには『機動戦士ガンダム』から『機動戦士Vガンダム』までの作品の映像が編集されている。

宇宙世紀年表は、上記で紹介したサンライズの映像フィルム以外にも、過去から現在に至るまで様々な会社から発表されてきたが、それはサンライズ公式設定やサンライズ準公式設定をあまり区別せずに各社の独断で判断し構成されていることが殆どであり、そういった理由から、各社の年表を比較した場合においても、細部の内容に食い違いが発生する事となっている。しかしながら、上記のPV『100秒でわかる「機動戦士ガンダムUC」』だけでなく『【U.C. ENGAGE】宇宙世紀ヒストリー』登場の映像作品、サンライズ監修書籍『週刊ガンダム・モビルスーツ・バイブル』年表[23]、及び公式ショップ『ガンダムベース』壁面年表など、いずれも〜U.C.0153、つまり『機動戦士Vガンダム』までとなっている[注 4]


注釈

  1. ^ ただし "universal" には、「宇宙の」「宇宙的な」という意味合いもある。
  2. ^ 映像作品に大学は登場していないが、カイ・シデンが一年戦争後ベルファスト大学に通っていたとする資料がある[4]
  3. ^ 正式名・略称ともに『機動戦士ガンダム』第1話の台本で確認できる[5]。ただし、設定画では「エレカー」と表記されている[6]
  4. ^ 毎日新聞出版発行のサンデー毎日の記事では、小説『ガイア・ギア』が紹介されている[24]
  5. ^ ただし、1994年から刊行されている近藤和久の『機動戦士ガンダム0079』は、2005年発行のVol.12(最終巻)まで「宇宙世紀公式年表」が掲載された。
  6. ^ 連載誌『MS SAGA』では前作『強化人間物語 ANOTHER Z GUNDAM STORY』(宇宙世紀0088年)から912年後と記載されたが[38]、起点を宇宙世紀0088年とするなら該当するのは宇宙世紀1000年であり、1160年ではない。

出典

  1. ^ 『機動戦士ガンダム・記録全集1』日本サンライズ、1979年12月、124頁。
  2. ^ ガンダムの宇宙世紀でインフレは起きたのか? (2/5) - ITmedia
  3. ^ ガンダムの宇宙世紀でインフレは起きたのか? (4/5 - ITmedia
  4. ^ 『機動戦士ガンダム公式設定集 アナハイム・ジャーナル U.C.0083-0099』エンターブレイン、2004年1月、32頁。
  5. ^ 『機動戦士ガンダム・記録全集1』172頁。
  6. ^ 『機動戦士ガンダム ガンダムアーカイヴ』メディアワークス、1999年6月、209頁。
  7. ^ 『アニメック』第16号「機動戦士ガンダム大事典」ラポート、1981年8月、102頁。
  8. ^ 『機動戦士ガンダム MS IGLOO グラフィックファイル』アスキー・メディアワークス、2009年12月、174頁。
  9. ^ a b c 小説F91上 1991, pp. 121–126.
  10. ^ 『ENTERTAINMENT BIBLE .1 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』バンダイ、1989年2月20日初版発行、88-90頁。(ISBN 4-89189-006-1)
  11. ^ 『週刊ガンダム・ファクトファイル 第137号』デアゴスティーニ・ジャパン、2007年6月12日、31頁。
  12. ^ 『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』、2001年3月21日発売、883~884頁。 (ISBN 4-06-330110-9)
  13. ^ a b c d e f g 『Great Mechanics vol.15』双葉社、2004年12月15日初版発行、44頁。(ISBN 978-4-575-46425-2)
  14. ^ a b 。『Great Mechanics vol.15』双葉社、2004年12月15日初版発行、45頁。(ISBN 978-4-575-46425-2)
  15. ^ 「「ガンダム」が問う「非戦」という生き方」『サンデー毎日』2022年6月5・12日合併号、毎日新聞出版、99頁。 
  16. ^ a b c d 『グレートメカニックG 2018 SUMMER』双葉社、2018年6月18日初版発行、6頁。(ISBN 978-4-575-46509-9)
  17. ^ 『富野由悠季×安彦良和』再タッグの可能性も? サンライズGMが語る「名作はクリエイターの“衝突”から生まれる」 - オリコンニュース”. 2021年11月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月5日閲覧。
  18. ^ 『機動戦士ガンダムNT』プロデューサーに聞く シリーズの未来 - シネマトゥデイ”. 2021年11月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月5日閲覧。
  19. ^ 『アウターガンダム』株式会社メディアワークス、2002年8月15日初版発行、222頁。
  20. ^ 『夜のG-レコ研究会〜富野由悠季編〜』より
  21. ^ アキバ総研: アニメとアキバ系カルチャーの総合情報サイト 「機動戦士ガンダム サンダーボルト」、オリジンと合同のプロデューサートークショーレポート!
  22. ^ ガンダム「UC NexT 0100」は宇宙世紀100年の"本伝"描く決意表明だった”. マイナビニュース (2018年4月23日). 2020年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月4日閲覧。
  23. ^ デアゴスティーニ公式サイト
  24. ^ 『サンデー毎日2015.11.1』p.138
  25. ^ 『ENTERTAINMENT BIBLE .1 機動戦士ガンダムMS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』バンダイ、1989年2月20日、63頁。
  26. ^ 近藤和久『機動戦士Ζガンダム Vol.1』メディアワークス、1994年4月15日、6頁。
  27. ^ 『電撃ENTERTAINMENT BIBLE 機動戦士ガンダム大図鑑2【ザンスカール戦争編】〈下〉』メディアワークス、1994年7月15日、53頁。
  28. ^ 『データコレクション2 機動戦士ガンダム 一年戦争編』メディアワークス、1996年11月15日、63頁。
  29. ^ 『データコレクション5 機動戦士Ζガンダム 下巻』メディアワークス、1997年7月15日、63頁。
  30. ^ うしだゆうじ『ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム』メディアワークス、2002年12月19日。
  31. ^ 『機動戦士ガンダム大事典(アニメック第16号)』ラポート、1981年8月1日、80頁。
  32. ^ 漫画『機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91』8ページ掲載の『宇宙世紀公式年表』より。
  33. ^ 電撃ENTERTAINMENT BIBLE『機動戦士ガンダム大図鑑1【ザンスカール戦争編】(上)』(メディアワークス・1994年)59頁。
  34. ^ 電撃ENTERTAINMENT BIBLE『機動戦士ガンダム大図鑑2【ザンスカール戦争編】(下)』(メディアワークス・1994年)57、59頁。
  35. ^ SDガンダム GGENERATION』シリーズなど。
  36. ^ 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ 公式サイト 制作スタッフ欄上部より。
  37. ^ 小説『G-SAVIOUR』上巻212ページより
  38. ^ a b 『MS SAGA vol.6』バンダイ、メディアワークス、165頁より
  39. ^ a b c 「月刊ガンダムエース 2014年11月号特別付録 THAT's ALL TOMINO」29ページ
  40. ^ 「月刊ガンダムエース 2014年11月号特別付録 THAT's ALL TOMINO」22ページ


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