宇宙マイクロ波背景放射 観測実験

宇宙マイクロ波背景放射

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/15 08:36 UTC 版)

観測実験

上記のような観測実験の中でも、1989年から1996年にかけて行われたCOBE衛星ミッションはおそらく最も有名なものである。この衛星によって初めて、双極成分以外の大スケールでの非等方性が検出された。COBEの結果に触発されて、続く10年間に一連の地上もしくは気球を使ったCMB観測実験が行われ、より小さな角度スケールでの非等方性が測定された。これら実験の初期目標は、COBEで十分に分解できなかったパワースペクトルの最初のピークのスケールを測定することだった。これらの測定によって、宇宙における構造形成の理論として宇宙ひもを考える説は棄却され、インフレーション宇宙が正しい理論であることが示唆された。パワースペクトルの最初のピークは年々高い感度で測定され、2000年には南極の大気圏上層部での気球によるBOOMERanG実験によって、1度というスケールでゆらぎのパワーが最も高くなることが報告された。この結果と他の宇宙論の観測データを総合すると、我々の宇宙は平坦であるという結果が示唆された。その後2003年までに、カリフォルニア大学バークレー校のチームによるMAXIMAやVery Small Array、Cosmic Background Imagerといった多くの地上の干渉計によって、より高精度のゆらぎの観測が行われた。

2001年6月、NASAは2機目のCMB観測ミッションであるWMAPを打ち上げた。これは全天にわたって大スケールの非等方性を、それまでよりも遥かに正確な測定を行なうことが目的であった。2003年に公開されたこのミッションの成果は、パワースペクトルを1度以下のスケールまで詳細に測定したもので、これによって数多くの宇宙論パラメータに強い制限が与えられることとなった。この観測の結果は、多くの理論の中でもインフレーション宇宙論から期待される結果と広い範囲で良く合うものである。例えば、宇宙年齢は137±2億年、宇宙の物質・エネルギーの組成はダークエネルギー73%、ダークマター23%、バリオン4%などと求められている。WMAPはCMBの大きな角スケール(の大きさ程度の構造)でのゆらぎについて非常に精密な測定を行ったが、地上の干渉計で行われた小さなスケールでのゆらぎについては測定していない。

3機目の宇宙ミッションであるプランク衛星は2009年5月に打ち上げられた。この人工衛星はボロメータを搭載し、WMAPよりも小さなスケールでCMBを測定する。前の2機とは異なり、PlanckミッションはNASAとESAの共同ミッションである。プランク衛星による初期観測結果は、2013年3月21日に公開された。この結果、宇宙年齢は138億年、宇宙の物質・エネルギーの組成はダークエネルギー68.3%、ダークマター26.8%、バリオン4.9%であると求められた[3][4]


  1. ^ 銀河系を含む近傍の銀河はグレート・アトラクターの重力に引かれて運動している。
  2. ^ 小松英一郎「小松英一郎が語る 絞られてきたモデル」『日経サイエンス』第47巻第6号、日経サイエンス社、2017年、30頁。 
  3. ^ “「プランク」が宇宙誕生時の名残りを最高精度で観測”. AstroArts. (2013年3月22日). https://www.astroarts.co.jp/news/2013/03/22planck/index-j.shtml 2013年4月10日閲覧。 
  4. ^ Plunck Reveals an almost perfect universe”. 欧州宇宙機関 (2013年3月21日). 2014年7月1日閲覧。






宇宙マイクロ波背景放射と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「宇宙マイクロ波背景放射」の関連用語

宇宙マイクロ波背景放射のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



宇宙マイクロ波背景放射のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの宇宙マイクロ波背景放射 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS