妄想 妄想の概要

妄想

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/15 02:15 UTC 版)

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妄想
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
精神医学
ICD-10 F22
ICD-9-CM 297
DiseasesDB 33439
MeSH D003702
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妄想の内容や程度は個人差が大きく、軽度で生活に支障をほとんど来たさないものから重大な支障を来たすようなものまで様々である。本人が妄想であるとは自覚しない(「病識」がない)場合が多いが、漠然と非合理性に気づいている場合(いわゆる「病感」がある状態)もある。また、妄想世界と現実世界が心の中で並立してその双方を行き来する「二重見当識[3]という状態もある。

日常的な会話でも用いられることもあり、その際はいかがわしい考えや空想を表し、必ずしも病的な意味合いを含むわけではなく軽い意味で使われている。

分類

「一次妄想」と「二次妄想」

古典的には、まったく根拠を持たない妄想を一次妄想(「あの人はまだ自分がxxであることに気づいてない」「おれはナポレオンの生まれ変わりだ」「近所の人たちが私を電波で攻撃している」など)、何かしらの経験と関わりがある妄想を二次妄想(「私の病気は不治の病なのだ」「皆の不幸は私のせいなのだ」など)と区別している[2]

しかし、一次妄想と考えられる妄想にも本人なりの理由が存在している場合も多く、真の無意味で根拠のない妄想はまれである。了解可能か否かで一次妄想と二次妄想を区別するという定義もあるが、「私の病気は不治の病なのだ」という妄想も、抑うつ気分から悲観的妄想が出現していれば理解可能であるが、健康なひとがそのような妄想をもっていれば了解不能であるため、これらの区別は難しい。偏見との区別も難しく、考えの根拠を聴取し、ひとつひとつ反証していくことで妄想と明らかになるが、文化が異なる反証であるとその方法は有効ではなくなる。

さらに一次妄想は以下の5つに細分化されている。

  1. 妄想気分:周囲がなんとなく意味ありげで不気味と感じる。形容ができないがそこから具体的な判断がおこり妄想となる。
  2. 妄想知覚:正常な知覚に特別な意味づけがなされる。それが強固な確信となり訂正が不可能である。
  3. 妄想表像:とんでもないイメージを抱く。
  4. 妄想覚性:途方もないことを察知するが実体には何も理解できていない。
  5. 妄想着想:ある考えや古い記憶が突然思いがけない意味をもって思い出され、強固な確信に至ること。

妄想知覚などは統合失調症でよくみられる現象である。二次妄想はうつ病でよく見られる現象である。心気妄想、微小妄想などが有名である。「なんとなく胃が痛い、病院にいって検査しても異常がない、心療内科の受診を勧められ、それでうつ病と診断される」こういったエピソードが心気妄想には多い。

内容による分類

スパイからの監視

下記の大半が統合失調症によく見る病状でもある[4](治療法については「統合失調症#治療」を参照)。

注察妄想
「常に盗聴されている」とか「隠しカメラで監視されている」と思い込む妄想。
関係妄想
周囲に起こっている現実を自らに結びつけて考える妄想。周囲の行動・言葉に過敏で自己に関係して捉えるが、それに動じることも多く、妄想まで発展し現実離れしていく。自分は人に嫌われ避けられていると思い込む忌避妄想も関係妄想の一種である。
恋愛妄想・被愛妄想
エロトマニア」とも呼ばれる。特定の相手に恋愛対象とみなされていないのに「自分は相手に愛されている」と思い込む妄想性障害
罪業妄想
「自分は非常に悪い存在」「罰せられるべきだ」「皆に迷惑をかけている」などと思いこむ妄想。うつ病によく見る病状の一つでもある。
心気妄想
自分の身体の一部が病気にかかっていると思いこむ妄想。実際に病気に罹っていても、その症状が自分の思っているより非常に軽い場合もこの種類に分類される。いわゆる「エイズノイローゼ」や「ガンノイローゼ」も一種の心気妄想である。
貧困妄想
現実にはそうでないにも関わらず、「自分は非常に貧しい」「借金を抱えてしまった」などと信じる妄想。
宗教妄想
誇大妄想の延長上、またはひとつの症状として考えられる。統合失調症のひとつの症状としても考えられているが[4]、自分自身に何か超次元的で特別なパワーがあると信じたり、霊界のような所から特別な預言や啓示を受けた、またはあらゆる病気を癒す力を授けられたなど、内容が極めて非日常的で壮大なものであり、訂正不能な強固な確信があることが特徴で、現実世界からは考え得ることのできない壮大なスケールによって描かれる妄想が大半である。つまり自分自身を“神”の化身であると信じてしまう症例である[5][6][7]。人格崩壊まで至るケースは稀であるが憑依妄想を共に発症するケースがある。これが極端になると宗教団体の教祖にまでなってしまうケースも見受けられる。中壮年層に多く発症するが、青年期に発症する例もある[8]
その他
好訴妄想、不死妄想、Capgras妄想、被毒妄想、恋愛妄想、血統妄想など(詳しくは統合失調症参照)。嫉妬妄想は隠される場合が多い。

被害妄想

被害妄想(persecutory delusions)は、妄想の中で最も一般的なタイプであり、他人から悪意をもって害されていると信じる妄想[1]。何らかの犯罪的な干渉を受けていると信じこみ、事業や就職などにおいて失敗しても、他者からの攻撃で失敗したと考えたり、「脳内に何らかの機器を埋め込まれ、意識や行動を操作されている」と考えたりする。

DSM-IV-TRにおいては、被害妄想は統合失調症患者の妄想に最も多く見られるタイプとされ、本人は「苦しめられ、追跡され、妨害され、騙され、盗聴され、嘲笑されている」と信じている[9]。DSM-IV-TRでは、被害妄想は妄想性障害の主な特徴とされている[10]

盗害妄想は自分の物を盗まれたと思い込む妄想で、認知症によく見られる。

誇大妄想

誇大妄想 (Grandiose delusions)は、現実的な状況から逸脱し、自己を過剰評価したり、実際には存在しない地位・財産・能力があるように思い込んでいる状態である。躁病によく見られる。自己評価と他者からの評価のバランスの悪さがある。

誇大妄想は主に妄想性障害(Delusional disorder)のサブタイプとなっているが、ほか 統合失調症や、双極性障害エピソードの可能性もある[11]

原因

様々な精神疾患統合失調症妄想性障害双極性障害うつ病妄想性パーソナリティ障害統合失調型パーソナリティ障害境界性パーソナリティ障害認知症せん妄、あるタイプてんかん、急性薬物中毒覚醒剤乱用など)に伴って生じることがある。しかし、健常者においても断眠や感覚遮断など特殊な状況に置かれると一時的に妄想が生じることもある。

また、原因となる基礎疾患によっても生じる妄想の種類が異なる傾向があり、統合失調症に多いのは被害妄想、関係妄想、誇大妄想などで、うつ病に典型的なのは罪業妄想、心気妄想、貧困妄想であるとされているが、必ずしも全例に当てはまる訳ではない。




  1. ^ a b B.J.Kaplan; V.A.Sadock 『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開』(3版) メディカルサイエンスインターナショナル、2016年5月31日、Chapt.7.4。ISBN 978-4895928526 
  2. ^ a b 福島 貴子、針間 博彦. “妄想ー脳科学辞典”. 2019年3月27日閲覧。
  3. ^ 論文「妄想世界の二重構造性」への回顧 内沼幸雄、精神神経学雑誌 第109巻第1号、2007年。公益社団法人日本精神神経学会 公式サイト
  4. ^ a b Ⅰ.統合失調症 大阪大学医学系研究科・医学部
  5. ^ 誇大妄想とは コトバンク
  6. ^ 神経症⑤ ~こころがもたらすからだの病気 特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 2019年8月29日
  7. ^ 幻覚・妄想の具体例および統合失調症について 名駅さこうメンタルクリニック 2017年9月12日
  8. ^ 人格分野の発表 (口頭論文)の回顧と要望 高橋茂雄 香川医科大学 国立国会図書館デジタルコレクション
  9. ^ Diagnostic and statistical manual of mental disorders: DSM-IV. Washington, DC: American Psychiatric Association. (2000). p. 299. ISBN 0-89042-025-4 
  10. ^ Diagnostic and statistical manual of mental disorders: DSM-IV. Washington, DC: American Psychiatric Association. (2000). p. 325. ISBN 0-89042-025-4 
  11. ^ Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Fourth edition Text Revision (DSM-IV-TR) American Psychiatric Association (2000)


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