奇巌城 奇巌城の概要

奇巌城

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 08:59 UTC 版)

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奇巌城
L'Aiguille creuse
著者 モーリス・ルブラン
イラスト Léo Fontan
発行日 1909年
発行元 Éditions Pierre Lafitte
ジャンル 推理小説
フランス
言語 フランス語
前作ルパン対ホームズ』/『ルパンの冒険
次作813
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概要

ルパンシリーズの単行本第3冊目(「戯曲アルセール・ルパン」の小説化「ルパンの冒険」を計上すると4冊目)にして、初の長編(1冊目は短編集、2冊目は中編2本)。ルパンが過去3本の短・中編で対決してきたライバル探偵エルロック・ショルメ(邦訳ではシャーロック・ホームズ)との、最後の直接対決でもある。

原題を直訳すると『空洞の針』ないし『空ろの針』などとなる。「奇巌城」とは日本で最初にルパン全集を訳した保篠龍緒による訳題で、以後ほぼすべての邦訳で用いられている。

探偵エルロック・ショルメや、高校生探偵イジドール・ボートルレ(この作品にのみ登場する)[1]、ガニマール警部などとの激しい知力合戦が繰り広げられる。

ルブランはレオポルド・マルシャンと共同で、『奇岩城』を4幕の戯曲に脚色する作業を進めていたが、これは実現しなかった[2]

ルブランの最初の公開作品(1890年3月15日、Revue Illustrée)であり、エトルタを舞台にした短編「救助(Le Sauvetage)」でも、すでに奇岩の事が"aiguille"と記されている。

あらすじ

ノルマンディーのジェーブル伯爵邸で、殺人事件と絵画の盗難事件が発生した。事件には、すでに伝説的怪盗として名を馳せていたアルセーヌ・ルパンの影があった。高校生探偵イジドール・ボートルレは次々に謎を解き、ルパンの足取りを突き止めてゆく。フランス王家の財宝やガニマール警部、イギリス人探偵エルロック・ショルメも絡み、事件は次第に壮大な全貌を見せはじめる。

作品内の暗号

ボートルレは数字を母音に、カンマを子音に置き換え、5行目からAiguille creuse(エギーユ・クルーズ)という単語を導き出し、クルーズ県のエギュイユ城からレイモンド嬢と父親を助け出すが、これはルパンのそしてルイ14世による策略に見事に引っかかる結果となってしまった。最終的にボートルレはすべてを読み解く。なお、4行目の暗号はまったく異質のものである。

ルパンシリーズにおける意義

この作品で、ルパンはその難攻不落の隠れ家にして資金源でもある「エイギュイユ・クルーズ」(空洞の針)から追い出されることになる。『エイギュイユ・クルーズの事を考慮に入れない限り、ルパンは全く不可解な存在になり、伝説中の人物、現実離れのした伝奇物語中の主人公になってしまう。しかし、このとてつもない秘密を知っていたとしても、ルパンは、実はごく普通の人間なのだ。ただこの途方もない武器を、極めて巧みに使う術を知っているだけなのだ』(以上、「奇巌城」から抜粋)と言うように、エイギュイユ・クルーズは、初期のルパンの活躍における、力の源泉であったことが明かされる。

この物語の核心となる謎は、後の作品「カリオストロ伯爵夫人」で語られる、マリー・アントワネットの口から語られカリオストロ伯爵が追い求めていたと言う「カリオストロ4つの謎」のうちの一つである。

ホームズとショルメ

ルブランは短編「遅かりしシャーロック・ホームズ」の雑誌発表時、当時大人気を博していた英国の小説家アーサー・コナン・ドイルの探偵小説の主人公シャーロック・ホームズの名前をそのまま使って登場させ、ルパンと対決させた。しかしルブランは、以降の作品ではこのキャラクターをホームズとは別人ということにし、アナグラムを用いてエルロック・ショルメ (Herlock Sholmès) という名前に変え、キャラクター付けも明確に変えたオリジナル・キャラクター(正確にはパロディー・キャラクター)として構築している。「遅かりし」も、単行本(「怪盗紳士ルパン」)では「ショルメ」と修正して収録された。

しかしながら、アナグラムからも容易にわかるように、ショルメがホームズを指すことは当時の作者及び読者の共通認識である。なお、日本では古くから「エルロック・ショルメ」は「シャーロック・ホームズ」と改変して訳す慣習となっている(原文では、アナグラムから容易にショルメ=ホームズであると連想できるのに対し、日本語訳でそのままエルロック・ショルメとすると、ショルメ=ホームズとの連想が成立しにくいため)。

森田崇の漫画作品「アバンチュリエ」では、ショルメの英語読み「ハーロック・ショームズ」で登場しているが、長身、鷲鼻、インバネスコートに鹿撃帽など、それとわかる特徴が強調されている。


  1. ^ ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』などに登場する青年探偵ルールタビーユの作風の模倣であるといわれている。古い邦訳本では年少読者向けに「イシドル・トルレ」と簡略化されている。
  2. ^ Derouard, Jacques. Maurice Leblanc –Arsène Lupin malgré lui–. Séguier, 1983, p.546。なお同書脚注には、Léopold Marchandは劇作家で、シドニー=ガブリエル・コレットと共に、彼女の『さすらいの女』や『シェリー』の脚色もしているとある。


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