太地町 太地町の概要

太地町

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/29 06:54 UTC 版)

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たいじちょう
太地町
太地町旗 太地町章
日本地方 近畿地方都道府県 和歌山県東牟婁郡市町村コード 30422-1法人番号 2000020304221 面積 5.81km2
総人口 2,786[編集]
推計人口、2020年6月1日)人口密度 480人/km2隣接自治体 東牟婁郡那智勝浦町町の木 ハマセンダン町の花 ハマユウ町の鳥 イソヒヨドリ太地町役場町長 三軒一高所在地 649-5171
和歌山県東牟婁郡太地町大字太地3767番地1
北緯33度35分38.5秒東経135度56分38.1秒座標: 北緯33度35分38.5秒 東経135度56分38.1秒
外部リンク 公式ウェブサイト

― 市 / ― 町・村

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太地町役場正面
太地町役場。太地港側から
太地町、太地漁港

昔から捕鯨で全国的に知られた町であり、日本の古式捕鯨発祥の地と言われる[1]。この町は周辺の町村が合併を繰り返す中、1889年明治22年)に太地村と森浦村が合併した当時のまま残っているため面積が和歌山県で一番小さく、その全域が海と那智勝浦町に囲まれている。

地理

太地町は熊野灘に突き出た二股の崎に位置しており海岸線はリアス式、森浦湾と太地湾のため森浦・太地と2つの良港に恵まれた。太地湾の奥には太地町の主集落太地があり、漁港の町として大規模な集落が発展している。森浦湾の奥にも森浦集落があるが、こちらは至って小規模なものである。紀伊半島の南西部の南方に位置しており、気候は温暖である。なお、当町の北方にして那智勝浦町の南部、JR湯川駅附近の海岸に当たる場所には、当町の大字太地に属する小字夏山(なつさ)が飛び地として存在する。

川:与根子川

人口

太地町と全国の年齢別人口分布(2005年) 太地町の年齢・男女別人口分布(2005年)
紫色 ― 太地町
緑色 ― 日本全国
青色 ― 男性
赤色 ― 女性
太地町の方面。右側に太平洋がある。

太地における捕鯨の歴史は、1606年慶長11年)に和田家一族(豪族)の和田頼元が外来の漁師などと共に原始的な捕鯨技術の開発を行い、太地浦を拠点として組織的な捕鯨を行ったのが始まり[2]で、和田一族を中心として5つの刺手組という捕鯨団体のようなものが形成されていた。その後、1675年延宝3年)に三代目の和田頼治が鯨を網に追い込んでとる網捕法(網掛突捕法)という方法を発明すると、今度は和田一族統制の下太地村一村で大きな鯨方を形成するに至り(最盛期には捕鯨従事者が1,000人ほどいたと言われる[2])、これが200年近く続いた。太地では親子鯨を捕らないという独特の習慣もあった[3]。しかし1878年(明治11年)に捕鯨中の事故により百名以上の死者を出す大背美流れが起こったため、この鯨方も崩壊した[4]

太地が再び捕鯨の町となるのは25年ほど経った日露戦争後のことである。近代的な大資本による捕鯨基地として多くの船で賑わい、鯨体の処理場や鯨を缶詰にする工場もでき、太地は再び捕鯨産業が盛んになった。遠洋捕鯨船の乗組員としても、多くの太地町の出身者が活躍した。小型鯨類のゴンドウクジラなどを対象とし、捕鯨銃を使う沿岸捕鯨も明治時代の末には非常に盛んになった。ゴンドウクジラ漁はテント(天渡)船(動力式の小型キャッチャーボート)[5]を利用した捕鯨銃や銛による突き取り漁となり、また北日本沖でミンククジラを対象として操業する沿岸捕鯨の拠点でもあった。しかし遠洋捕鯨は、資源の枯渇などから国際捕鯨委員会 (IWC) を中心とした規制が進み、最終的には商業捕鯨モラトリアムにより、資源状態に関わらず全面停止となった。これにより1988年には太地でも、沿岸のミンククジラ漁を含むヒゲクジラ商業捕鯨が中断されるに至った。以後は、捕鯨砲を用いてゴンドウクジラ類やツチクジラを捕獲する小型捕鯨業と、追い込み網漁などの「いるか漁業」だけが行われ、また、追い込み網漁に関しては他地域での衰退もあり、太地は、日本国内で大規模な追い込み網漁が残った唯一の町となった(ここで言う「いるか」はゴンドウクジライルカなどの「小型鯨類」を指す)。また、かつては頻繁に行われた小型鯨類の突きん棒漁業も現在はごくわずか行われる[6]。また当地に、日本で最後に残るイルカの追い込み網漁が、他国から動物福祉の観点から非人道的と批判を受けることもあったが[7]、イルカ漁を支持する国民が多くおり、日本国政府はイルカ漁は日本の伝統文化だと説明し、2014年に閣議決定した[8]

くじらの町」と称し、1969年に太地町立くじらの博物館を建設し、また鯨を目玉とした観光の振興への取り組みが見られる。太地町には漁業協同組合直営のスーパーマーケットもあり、鯨肉も売られている。また、町章はクジラ、町のマスコットキャラクターはゴンドウクジラである[9][10]。クジラや、ゴンドウクジラ、イルカを用いた料理が幾つも伝わる。

沿革

  • 1606年慶長11年) - 組織的な古式捕鯨がはじまる。
  • 1879年明治12年)1月20日 - 郡区町村編制法の和歌山県での施行により、牟婁郡太地村・森浦村が東牟婁郡の所属となる。
  • 1878年(明治11年)暮れ - 大背美流れが起こる。以後、洋式捕鯨へ徐々に切り替わる。漁閑期のてんと船による小型鯨類の突き獲り漁[6]
  • 1889年(明治22年)4月1日 - 町村制の施行により、太地村・森浦村の区域をもって太地村が発足。
  • 1899年(明治32年)7月 - 追い込み漁で61頭のゴンドウクジラ捕獲[11]
  • 1904年(明治37年) - 捕鯨銃「前田式五連発銃」が完成。イルカ突き取り漁に使われるテント(天渡)船に装備されるようになる[12]
  • 1906年(明治39年) - この年の政府あて報告書で追い込み漁(寄せ物漁)の起源が不明なことが記載される[13]
  • 1912年大正2年) - テント船の動力化が順次進み、前田式五連発銃や手銛をもちいた突き取り漁によるゴンドウクジラの漁獲高は1931年まで毎年500頭コンスタントに捕獲と記録に残る[14]
  • 1925年(大正14年)4月1日 - 太地村が町制施行して太地町となる。
  • 1933年昭和8年) - 小型鯨類の追い込み漁により太地町から初めて水族館向けに出荷[6]
  • 1936年昭和11年) - 阪神水族館(現・甲子園阪神パーク)に漁で捕ったゴンドウクジラ搬入[6]。話題に[15][16]
  • 1961年昭和36年)- 極洋捕鯨株式会社が捕鯨基地を開設する。採算割れで1965年に操業停止。テント船やミンク船(小型捕鯨船)による捕鯨も低迷する[17]
  • 1968年(昭和43年) - くじらの博物館のために生態捕獲をするためのイルカ追い込み漁を最後のテント船「勝丸」が中心になり、富戸からハツオンキ(伊豆半島で使われていた音響でイルカを誘導する道具、太地では改良され「鉄管」となる)の技術などの協力を得て、翌年十二年ぶりに追い込み漁を成功させる[18]
  • 1969年(昭和44年) - くじらの博物館開設[19]
  • 2006年平成18年) - 古式捕鯨400年記念。
  • 2006年(平成18年)10月29日 - 世界で初めて腹びれのあるイルカ(はるか)を生体で捕獲。2013年まで展示を行う。
  • 2013年(平成25年) - 森浦湾鯨の海構想。小型のクジラ目の牧場兼研究施設の開設に向けて調査が開始される[20][21]
『古式捕鯨蒔絵』、太地



  1. ^ 古式捕鯨発祥の地、太地町公式ホームページ”. 2012年3月19日閲覧。
  2. ^ a b 紀南地方-太地町 くじら捕りの歴史和歌山県ガイドブックWEB
  3. ^ 環太平洋地域の鯨文化 秋道智彌(国立民族学博物館・民族文化研究部)著 季刊 環境情報誌 ネイチャーインタフェイス 第2号 2001/03/31 ISBN 4901581015 2013年1月21日閲覧。
  4. ^ a b 太地町の歴史と文化を探る 大背美流れ(おおせみながれ)
  5. ^ 「日本の動物記」毎日新聞社 122頁 動力は小型焼玉エンジン
  6. ^ a b c d e 第10章 変容する鯨類資源の利用実態 -和歌山県太地町の小規模沿岸捕鯨業を事例として- Archived 2014年3月2日, at the Wayback Machine.遠藤愛子(海洋政策研究財団政策研究グループ)。松本博之編『海洋環境保全の人類学』,国立民族学博物館調査報告 97 : 237―267(2011)。
  7. ^ a b c d e f g “ケネディ大使発言:イルカ漁でツイッターに 広がる波紋”. 毎日新聞. (2014年1月24日). オリジナルの2014年1月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140124080602/http://mainichi.jp/select/news/20140124k0000e040190000c.html 2015年8月24日閲覧。 
  8. ^ a b 「イルカ漁は適切」政府が答弁書を決定 「わが国の伝統的な漁業」 MSN産経ニュース 2014.2.25
  9. ^ 町章 くじらの町太地町公式ホームページ
  10. ^ 太地町ってこんな町イラストマップ (PDF) 太地町
  11. ^ 太地町史, 493頁
  12. ^ 「イルカ漁は残酷か」平凡社 伴野準一 48頁
  13. ^ 「イルカ 小型鯨類の保全生物学」 粕谷俊雄著 119頁
  14. ^ 「イルカ漁は残酷か」50頁
  15. ^ 阪神間の“今”を探そう♪阪神間クチコミ情報サイト-阪神ナウ!-
  16. ^ この展示の年代に関しては1935年及び1937年説もある、ゴンドウクジラ属#日本における展示飼育も参照。
  17. ^ 「イルカ漁は残酷か」55頁
  18. ^ 「イルカ漁は残酷か」69-84頁
  19. ^ 太地町の歩み”. 太地町公式ホームページ. 2019年5月19日閲覧。
  20. ^ クジラ牧場、開設に向け調査 太地町2013年03月09日更新 - AGARA紀伊民報
  21. ^ 「一緒に泳げる」クジラ牧場 和歌山・太地町に構想中 47NEWS(よんななニュース)2012/05/01
  22. ^ 太地町地域強靱化計画”. 2018年9月13日閲覧。
  23. ^ 森浦湾鯨の海構想概要 太地町くじらと自然公園の町づくり協議会(森浦湾鯨の海構想と魅力ある町づくり)
  24. ^ “追い込み漁の太地イルカ、半数は海外に輸出”. (2015年6月8日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08H0Y_Y5A600C1000000/ 2015年7月11日閲覧。 
  25. ^ 同期間に太地以外から輸出された小型鯨類の例(2004年に救助され、鴨川シーワールドで飼育され、2012年、鴨川から米国サンディエゴに輸出されたマゴンドウのアルゴ(Argo)の記事)Pilot whale arrives at SeaWorld from Japan | L.A. NOW | Los Angeles TimesMarch 19, 2012
  26. ^ Compiled From Kyodo, Staff Report (2009年10月15日). “Australian town embraces Taiji again , Broome reverses suspension of sister-city status”. The Japan Times. オリジナルの2013年4月22日時点におけるアーカイブ。. http://megalodon.jp/2013-0422-0211-27/www.japantimes.co.jp/news/2009/10/15/news/australian-town-embraces-taiji-again/ 2013年4月22日閲覧。 
  27. ^ “太地町とデンマーク・クラクスヴィーク、捕鯨めぐり姉妹都市提携”. TBS News. (2018年1月25日). http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3273350.html 2018年1月28日閲覧。 
  28. ^ [1]立教大学
  29. ^ 燈明崎の燈明台きのくに風景讃歌
  30. ^ イベント情報太地町
  31. ^ わかやま新報 » Blog Archive » 【AR】活動拠点をNYに 書画家・田中太山さん2015年06月12日 わかやま新報
  32. ^ 太地町観光大使 田中大山氏
  33. ^ 『巨鯨の海』 (伊東潤 著) | 著者は語る - 週刊文春WEB2013.06.02 2015年7月12日閲覧
  34. ^ 浅見光彦の家 - 中村俊介氏主演『鯨の哭く海』 10月13日放映! 浅見光彦倶楽部
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  36. ^ 連続テレビ小説 風見鶏 | NHK名作選(動画・静止画) | NHKアーカイブス2015年7月12日閲覧
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  38. ^ Filmmaker plans more balanced documentary on Taiji's dolphin hunt May 22, 2015
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  41. ^ a b 「シー・シェパード、ひどい」 モントリオール映画祭、日本人女性監督の反捕鯨「反証」作品に熱い反響 (2)”. 産経ニュース. 株式会社産経デジタル (2015年9月5日). 2015年9月23日閲覧。
  42. ^ 2009films DocuWest, 2015-8-7閲覧
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  45. ^ 「コーヴ」公開に合わせ邦画上映 クジラ漁の記録映画 - 47NEWS(よんななニュース)2010/08/14 共同通信
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  47. ^ 米映画『ザ・コーヴ』、アカデミー賞受賞に太地町反発 写真2枚2010年03月09日 国際ニュース:AFPBB News
  48. ^ イルカ漁等に対する和歌山県の見解(米映画『ザ・コーヴ』についてどのように考えるか) 和歌山県ホームページ
  49. ^ シー・シェパードが妨害宣言 和歌山・太地町に送り込んでくる活動家はリピーターより初参加組 - MSN産経west1ページ2ページ 2013.12.14
  50. ^ ようこそ知事室へ 知事からのメッセージ 平成23年5月 太地の捕鯨 和歌山県ホームページ]
  51. ^ 太地町における反捕鯨問題対策広報誌『和歌山の警察2013』19ページ、和歌山県警察。2013年3月発行。
  52. ^ 反捕鯨団体想定し警備訓練 和歌山県警と海保 AGARA紀伊民報 2013年08月10日更新
  53. ^ シー・シェパード妨害許さぬ クジラの町・太地に臨時交番2013.8.24 MSN産経west
  54. ^ ケネディ駐日米大使のつぶやきにイルカの町が“鯨撃” 「漁を守り続ける」強い思い - 政治・社会 ZAKZAK 2014.02.10
  55. ^ 捕鯨トラブルで対策本部 和歌山・太地町に臨時交番 日本経済新聞 2011/7/20
  56. ^ クジラ漁を前に県警と海保が合同訓練、違法行為に対応 太地町 AGARA紀伊民報 2012年08月08日更新
  57. ^ キャロライン・ケネディ駐日米国大使のツイート(424405149730107393)
  58. ^ a b ケネディ氏「イルカ漁は非人道的」に反発の声 安倍首相Facebookにも飛び火、盛り上がる J-cast
  59. ^ a b 安倍首相がイルカ漁を擁護、米CNNインタビュー 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News2014年01月26日 15:27 発信地:東京
  60. ^ a b ケネディ大使の「イルカ漁批判ツイート」 米政府見解でなく実は「個人的意見」の可能性2014/1/20 : J-CASTニュース
  61. ^ 日本のイルカ漁に米が懸念表明 「大使は政府の見解示した」日本経済新聞 2014/1/22
  62. ^ 「イルカ漁反対」と水産庁前で抗議=ケネディ発言受け市民ら(時事ドットコム)
  63. ^ イルカ追い込み漁:CNNに安倍首相「古来から…理解を」 毎日新聞 2014年01月25日 10時39分(最終更新 01月25日 11時29分)
  64. ^ CNN.co.jp : イルカ漁批判、日本側が反論 - (2/2)2014.01.21 Tue posted at 18:47 JST
  65. ^ ニュース和歌山-2014年2月8日1面 イルカ漁の真実 世界へ 映像ジャーナリスト サイモン・ワーンさん 太地の捕鯨 偏見正し文化保存 ニュース和歌山株式会社
  66. ^ 朝日新聞-2014年1月23日「イルカ漁懸念ツイート「政策示すこと大事」」





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