大乗仏教 発展の諸相

大乗仏教

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/17 23:19 UTC 版)

発展の諸相

顕教

インド

ネパール

チベット

中国・日本

天台宗

智顗538年-597年)を実質的な開祖とし、『法華経』を根本経典とする宗派。

浄土教

阿弥陀仏極楽浄土往生することを説いている[22]。『無量寿経』、『観無量寿経』、『阿弥陀経』の「浄土三部経」を根本経典とする[注 8]

座禅を中心においた修行によって、内観・自省によって心性の本源を悟ろうとする[23][24]

密教

インド

ネパール

チベット

中国

チベット

日本

大日如来を本尊とする深遠秘密の教え。加持  ・祈祷 を重んじる[25]。根本経典は『大日経』と『金剛頂経』。天台密教では『蘇悉地羯羅経』も重視する

伝播

紀元前3世紀、インド初の統一国家となったマウリヤ朝の最盛期を築いたアショーカ王の時代、その保護の下でインド全域に広がった仏教は、やがて西北インドから中央アジアを経由して、紀元1世紀には中国まで伝播した[26]。そして、さらに朝鮮、日本、ベトナムに伝わっている(北伝仏教)。北伝仏教は大乗仏教と同義ではなく、西北インドや西域諸国では部派仏教も盛んで、中国にもその経典が伝えられたが、受容は限定的だったという[26]。またチベットは8世紀より僧伽の設立や仏典の翻訳を国家事業として大々的に推進、同時期にインドに存在していた仏教の諸潮流を、数十年の短期間で一挙に導入、その後、チベット人僧侶の布教によって、大乗仏教信仰はモンゴルや南シベリアにまで拡大されていった(チベット仏教)。

7世紀ごろベンガル地方で、ヒンドゥー教神秘主義の一潮流であるタントラ教Tantra または Tantrism)と深い関係を持った密教が盛んになった。この密教は、様々な土地の習俗や宗教を包含しながら、それらを仏を中心とした世界観の中に統一し、すべてを高度に象徴化して独自の修行体系を完成し、秘密の儀式によって究竟の境地に達することができとなること(すぐれた素質の者は今生で(即身成仏)、劣った素質の者でも十六生のうちに成仏)できるとする。密教は、仏教圏全域に流布したが、東南アジア諸国では上座部仏教を国教と定めた各王朝が大乗仏教を排斥するのにともない消滅、現存するのはインドからネパールに伝わったサンスクリット語の経典を用いる系統、インドから中国・朝鮮半島を経由して日本に伝わった漢訳経典を用いる系統、インドからチベットを経由してモンゴルにも伝わったチベット語経典を用いる系統が残存するのみで、土地の習俗を包含しながら、それぞれの変容を繰り返している。

考古学的には、スリランカ、そして東南アジアなど、現在の上座部仏教圏への伝播も確認されている。スリランカでは東南部において遺跡が確認されており、上座部仏教と併存した後に12世紀までには消滅したようである。また、東南アジアではシュリーヴィジャヤなどが大乗仏教を受入れ、その遺跡は王国の領域であったタイ南部からスマトラジャワなどに広がっている。インドネシアのシャイレーンドラ朝ボロブドゥール遺跡なども著名である。東南アジアにおいてはインドと不可分の歴史的経過を辿り、すなわちインド本土と同様にヒンドゥー教へと吸収されていった。

脚注

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注釈

  1. ^ 図では漢訳仏典に基づく東アジア仏教圏は大乗に、チベット仏教は金剛乗(密教)にラベリングされている。チベット仏教とは密教であると誤解されることがあるが、実際のところチベットの仏教観では、金剛乗は釈尊が段階的に説いた教えのひとつであり、声聞乗・大乗・金剛乗のすべての教えの完備が尊重されている[1]
  2. ^ なお、ジャイナ教でも古くから: mahājāna: mahāyāna)ということをいう[疑問点][3]
  3. ^ アルダマーガディー語に近縁するプラークリットであるパーリ語では mahā jana は「大勢の人々(大衆)」という意味。[4]
  4. ^ 大正蔵の阿含部に収められている央掘魔羅経は大乗経典である[9]
  5. ^ Vetullavada - Wisdom Library
  6. ^ 平川彰は Vetullavāda を方広派、Vetulyaka を方広部と翻訳している[12]パーリ語 vetulla はパーリ語文献では異端という否定的意味で用いられたが、これは九分経のひとつである vedalla (広破)が変化したものと推測され、これに対応するサンスクリットの vaipulya (方広)、vaidalya (広破)、vaitulya (無比)は大乗側では自称として用いられたものである[13]。cf. 付録3 「大乗」のニュアンス─世親、親鸞に通づるもの - 真宗大谷派 西照寺
  7. ^ 波羅蜜という用語が現れたのは、かなり後に編纂された部派仏典のわずかな経論や[19]ジャータカ系・仏伝系の経典から[20]
  8. ^ 融通念仏宗では、『華厳経』・『法華経』を正依とし、「浄土三部経」を傍依とする。

出典

  1. ^ 吉村均「チベット・ネパール仏教の実践」『仏教の事典』 末木文美士・下田正弘・堀内伸二編、朝倉書店、2014年。
  2. ^ a b c d e 保坂俊司監修 『決定版 よくわかる世界三大宗教―キリスト教・イスラム教・仏教』 学研パブリッシング、2012年、118頁。
  3. ^ a b c d e 中村元 『広説佛教語大辞典 中巻』 東京書籍、2001年6月、1120頁の「大乗」の項目。※同頁によれば、ジャイナ教での用例の出典は『アーヤーランガ』の一・三、四・二。
  4. ^ 『パーリ仏教辞典』 村上真完, 及川真介著 (春秋社)1487頁。
  5. ^ 大乗 (阿含部・毘曇部) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  6. ^ 摩訶衍 - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  7. ^ 摩訶衍(阿含部「央掘魔羅經」, 本縁部「舊雜譬喩」「舊雜譬喩經」) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  8. ^ 大乗 摩訶衍(央掘魔羅經) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  9. ^ 『大蔵経全解説大事典』雄山閣、30頁。
  10. ^ Vetulla:m. 方等部, 方広部, 大乗仏教. -pițaka 方広説の三藏, 大乗経. -vādin 方等部, 大乗説者. (水野弘元「増補改訂 パーリ語辞典」 p.302)
  11. ^ 馬場紀寿「上座部仏教と大乗仏教」『シリーズ大乗仏教2 大乗仏教の誕生』高崎直道監修、桂紹隆・斎藤明・下田正弘・末木文美士編著、春秋社、2011年、145頁、152頁、157頁、167頁・註(20)、169頁・註(44)、170頁・註(61)。
  12. ^ 平川彰 『インド仏教史 上』 春秋社、新版2011年(初版1974年)、170頁、322頁。
  13. ^ 馬場紀寿「上座部仏教と大乗仏教」『シリーズ大乗仏教2 大乗仏教の誕生』高崎直道監修、桂紹隆・斎藤明・下田正弘・末木文美士編著、春秋社、2011年、167頁・註(20)、169頁・註(44)。
  14. ^ 小乗 (阿含部) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  15. ^ a b c d 『バウッダ』 中村元・三枝充悳著. 小学館. 337-338頁。
  16. ^ 平山朝治 (2007). “大乗仏教の誕生とキリスト教” (PDF). 筑波大学経済学論集 (筑波大学) (57): 139. https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=7626&item_no=1&attribute_id=17&file_no=1. 
  17. ^ a b 唯識派 - コトバンク
  18. ^ 『バウッダ』 中村元・三枝充悳著. 小学館. 337-339頁。
  19. ^ 波羅蜜 (阿含部・毘曇部) - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  20. ^ 波羅蜜 (本縁部) ※鳩摩羅什以前の漢訳で訳者が明白な経典のみ表示。 - 大正新脩大蔵経テキストデータベース。
  21. ^ 如来蔵(にょらいぞう)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年8月7日閲覧。
  22. ^ デジタル大辞泉「浄土教」
  23. ^ デジタル大辞泉「禅宗」
  24. ^ 『大辞林』第三版「禅宗」
  25. ^ デジタル大辞泉「密教」
  26. ^ a b 薗田香融「東アジアにおける仏教の伝来と受容 : 日本仏教の伝来とその史的前提」『関西大学東西学術研究所紀要』第22号、関西大学東西学術研究所、1989年、 1-36頁、 ISSN 02878151


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