多国籍企業 多国籍企業の概要

多国籍企業

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/04 09:29 UTC 版)

定義

国際経済に対する独占力を表す概念であることから[1]、規模にも着目し単純な空洞化と区別する。

上記の他、経済学者レイモンド・バーノンが唱えた製造業に限定したもの、親会社の出資比率25%を要求したりする定義もある。

実際に多国籍企業とされているものは、サービス業であったり、投信を利用し直接の出資比率を下げたりしている。

多国籍企業という言葉は、1960年にアメリカのD.リリエンソールが論文の中で初めて使用したとされる[2]

概要

多国籍企業が国際問題となった明確な端緒というものは存在しない。多国籍企業に関する学術研究は、したがってイギリス東インド会社までさかのぼって行われることもあった[3]。個別の多国籍企業史を時系列に整理して一冊に圧縮するような冒険も敢行された[4]。しかし、多国籍企業が東インド会社の17世紀から延々と議論されてきたというわけではない。多国籍企業は、「国際関係が高度に緊密化した現代資本主義のもとにおける、巨大独占企業の一般的な存在形態」として問題視された[1]。「国際関係が高度に緊密化した現代資本主義」とは何を指すのか、出典の著者は究明していない。この点を考える手がかりを示す。まず、(1)多国籍企業に関する研究文献の氾濫は1960年代後半以後に顕著である[5]。また、(2)国連が多国籍企業を定義した意味の一つは、1974年12月に国連総会で採択された「諸国家の経済権利義務憲章」にある[6]。そして同じころ、(3)イギリスの製薬産業の3/4がメルク・アンド・カンパニーエフ・ホフマン・ラ・ロシュといった外資の支配下にあると指摘されている[7]。(2)(3)は英米両国が同時に機関化された時代である。そして(1)はセカンダリー・バンキング商戦でシティの敗北がほぼ決定し、ユーロクリアが設立されてLIBORがロンドンに上陸した時期であった。そしてそのときこそ、機関投資家が分散化する国際金融市場の趨勢を決したのであった。「国際関係が高度に緊密化した現代資本主義」とは、実際において機関化経済である。機関投資家の資金が津波となって公社債や多国籍企業に押し寄せていた。そこが問題だったのである。日本ではロッキード事件が起こって贈賄が世論に叩かれたが、ロッキード社は在外生産活動が乏しく多国籍企業とはいい難いともいわれている[1]。企業というよりも、兵器産業と贈賄活動が「多国籍」化していたのであって、そうした要らぬ金あまりが問題だったのである。機関投資家によって世界経済はトリクルダウン理論とは正反対の方向に突き進んでいた。そこにグローバルな独占性が存在した。この大衆貯蓄を人質にとったマネーゲームは、世界金融危機を経てなお継続している。学術団体については、1951年4月21日、日本商業学会が慶應義塾大学教授向井鹿松を初代会長として設立された[8]

歴史

連合東インド会社のインディアマンレプリカ

機関化された企業は次節からいくらでも探すことができる。そこであえてその歴史は、問題意識から離れて簡単に書く。

1215年のマグナ・カルタは敵性資産の保護を規定した。これがドーバー海峡に多国籍企業が生まれる必要条件となった。

陸路では帝国郵便がゆっくりと発達した。1492年の新大陸の発見により、郵便の利用は活発化した。

各国が東インド会社を設立してゆく時期に、マーチャント・バンク(merchant bank)が登場した。

19世紀の多国籍企業といえば、デビアスケーブル・アンド・ワイヤレスアメリカの生保各社などがあげられる。

戦間期の主役はゼネラル・エレクトリックIG・ファルベンインドゥストリーであり、世界史の要素である。

石油メジャー各社は大変息が長く、それこそ機関化まで経営はダイナミックである。

多国籍企業の機関化は所有の国際化であって、1980年代以降証券化と相互補完のうえ急進した。そしてリストラも機関化をともなうのである。それは随時、公営多国籍企業の民営化された経験によって速やかに行われる。


  1. ^ a b c 佐藤定幸 「多国籍企業と現代資本主義の危機」 エコノミスト 1976年3月29日号 16-22頁
  2. ^ 桜井雅夫「多国籍企業の法律問題--法人の国籍と裁判管轄権を中心として」『法学研究』第59巻第2号、慶應義塾大学法学研究会、1986年2月、 133-167頁、 ISSN 03890538NAID 1200058992382021年5月1日閲覧。
  3. ^ M.Z.Brooke and H.L.Remmers, The Strategy of Multinational Enterprise, London, 1970, pp.1-2.
  4. ^ Mira Wilkins, The Emergence of Multinational Enterprise, Harvard University press, 1970.
  5. ^ 嵯峨壮一郎 『多国籍企業 その規制と国有化』 青木書店 1981年 6頁
  6. ^ 憲章の内容は次の文献で確認できる。福田博 『多国籍企業の行動指針』 時事通信社 1976年 272-3頁
  7. ^ C.レヴィンソン 『ある産業支配 多国籍製薬産業の内幕』 日本経済新聞社 1975年 188-9頁
  8. ^ 学会HP”. 日本商業学会. 2022年1月23日閲覧。 個人会員1,072名,賛助会員11社・団体,購読会員32件 (2019年7月現在)
  9. ^ 米電力大手エクセロン、採算悪化で原発2カ所閉鎖日本経済新聞 2016年6月3日
  10. ^ 再生エネ銘柄にマネー集中 政策転換で成長見込む日本経済新聞 2020年10月24日
  11. ^ Annual Report 2018 (PDF)” (英語). NextEra Energy, Inc.. 2019年5月18日閲覧。
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  45. ^ 英アーム、ソフトバンクの買収承認 株主総会日本経済新聞 2016年8月31日
  46. ^ BizVide. “Global Glass Industry Factsheet 2020: Top 10 Largest Glass Companies in the World” [世界のガラス産業ファクトシート2020:世界最大のガラス企業上位10社] (英語). 2022年5月11日閲覧。






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