声
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/03 01:44 UTC 版)
生成
生物
ヒトにおいて声は気道・声道における気流・発声・調音の段階を経て生成される。まず肺などを駆動し気流を発生させる。次に主に声帯を振動させて有声音を発声する、もしくは声帯振動を伴わない気息的な音(無声音)として通過させる。最後に舌や口腔を制御して共鳴させる、すなわち調音をおこなったうえで唇から声が放射される。
方式
ヒトは気流・発声・調音という基本的な声生成過程を共有しているが、個人ごとに各過程の調整が異なり、これが声の個人性を生み出している。
発声方式の違いを中心とした生成方式の分類を声区という。例としてファルセットが挙げられる。
モデル
ヒトの声生成過程モデルは様々存在する。代表例として、生成過程を「音源(例: 声帯) + フィルタ(例: 口の構え)」と見做すソース・フィルタモデルが挙げられる。
機械
人の声(音声)を機械的 / 人工的に生成する技術・システムを音声合成という。娯楽などに使われるVOCALOIDのほか、障害・傷病で発声できない人が意思伝達をできるようにするためにも利用されている[1]。
特性
高低
ヒトは音一般に関して高低感覚すなわち音高をもち、声に対しても様々な音高を感じる(声もピッチを持つ)。
厳密には音高(ピッチ、振動数)の高低とフォルマントの高低の2種類がある。歌唱の際を除けば、両者の区別を付けずに「声が高い(低い)」といっている場合が多い。
フォルマントの高さは主に声道の長さで決まるので、発声時の喉頭の位置に影響される。また一般に身長が高く、顎や首の長い人ほど低いフォルマントで発声できる。
ピッチは1秒間の声帯の振動により規定され、振動数が多いほどピッチが高く、少ないほど低くなる[2]。声帯の振動数は声帯の質量、張力、粘弾性により変わり、他の条件が同じであれば声帯が短いほど振動数が多くなる[2]。個人内でのピッチの変化は声帯の伸長で調節される[2]。また、木管楽器等のように共鳴のフィードバックにピッチが支配されることは基本的にない。これは、声道の共鳴の効果に対して声帯のスケール(長さ、重さ、剛さ)が大きいためである。
声位
特定の発声をするときの声の高さを声位という。会話時の声位を話声位といい、声域下限より4分の1あたりとされる[2]。話声位は成人男性で120Hz前後、成人女性で240Hz前後である[2]。子供の声は男女とも高いとされ、成長に従って音高、フォルマントともに低下する。また男性のほとんどは第二次性徴で急に低い声に変わる。女性の場合も軽度であるが低くなる。壮年期を過ぎると女性は低くなることがあり、男性はやや高くなることがある。
声域・声区
音楽一般に関して1つの音源が出せる音高の幅を音域といい、声の音域は特に声域と呼ばれる。発声可能な最も低い声から最も高い声までの範囲を生理的声域という[2]。通常成人男性で60〜500Hz、女性で120〜800Hzとされている[2]。ソプラノ、アルト、テノール、バスなどの声域は音楽的声域と呼ばれる[2]。声域は声区で区切られ、最も低いところからボーカルフライ、表声、裏声(ファルセット)、ホイッスルと言われる[2]。声区により声帯振動の様式が異なる[2]。
声量
ヒトは音一般に関して大小感覚すなわち声の大きさをもち、声に対しても様々な大きさを感じる(声もラウドネスを持つ)。声のラウドネスを特に声量という場合もある。
ラウドネスは気圧の変化幅と強く関係するため、気流機構の作用により声量は大きく変化する。例として呼吸に関連する肺やその下にある横隔膜、腹の動きに左右される[3](いわゆる「腹から声を出す」)。
文献上の記録として、『北条五代記』によれば、風魔小太郎はその声が50町(5.4km以上)先まで響いたと記される(事実なら城内のどこにいても声が聞こえる)。
声質
声には声色・声種の違いがある。個人ごとに異なるほか、同じ人でも年齢や体調によって変化し、また使い分けられる。声質や声種はハスキーボイス、ウィスパーボイス、(声種的)ファルセットのほか、美声、ダミ声など様々ある。声種の違いの一因は発声方式(声区)の違いに起因する(参考: 発声#種類)。
内容
声が持つ意味(内容)は多様である。一例として、泣き声や叫び声といった感情を表す声、韻律を声で奏でる鼻歌・ハミング、言語コミュニケーションの媒介となる言語音などが挙げられる。
言語
声のうち言語的内容をもつものを言語音という。連続的な音を離散的なシンボル列とみなす言語音の観点から声は母音と子音に分類でき、この産み分けには調音過程が重要である。
言語には音素上、声による対立をなすものと、息による対立をなすもの(中国語、タイ語など)、声と息の両方による対立をなすもの(ヒンディー語など)がある。
- ^ 【チェック】私の声 よみがえる/がん患者らソフト活用/事前に録音 話し方まね再生『毎日新聞』夕刊2019年1月25日(1面)2019年1月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 大森孝一編『言語聴覚士のための音声障害学』医歯薬出版株式会社、2019年。
- ^ 「腹式呼吸」完全マスター編①~腹式呼吸ってなに?~One's WILL Music School(2019年1月30日閲覧)。
- ^ どうぶつたちの鳴き声図鑑東京動物園協会「東京ズーネット」(2019年1月30日閲覧)。
- ^ デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典. "虫の音". コトバンク. 2019年10月28日閲覧。
- ^ “セミについて調べちゃおう”. 学研キッズネット. 2022年5月16日閲覧。
- ^ 岩本裕之「大声を生み出すセミの原動機」『生物物理』第58巻第5号、日本生物物理学会、2018年、245-247頁、CRID 1390564238026574208、doi:10.2142/biophys.58.245、ISSN 05824052。
- ^ 上宮健吉「昆虫の発音の多様性」『騒音制御』第13巻第2号、日本騒音制御工学会、1989年、77-83頁、CRID 1390001204768541952、doi:10.11372/souonseigyo1977.13.77、ISSN 0386-8761。
- ^ “2.どのようにして鳴くの?”. 所沢私立教育センター. 2022年5月16日閲覧。
- ^ “Biology of Insect Song”. Songs of Insects. 2022年5月16日閲覧。
- ^ 木戸博, 粕谷英樹、「音声が内包する話者の特徴情報の記憶(<特集>音声が伝達する感性領域の情報の諸相)」 『音声研究』 2009年 13巻 1号 p.4-16, doi:10.24467/onseikenkyu.13.1_4
- ^ 音声/声紋鑑定(法科学鑑定研究所) 閲覧2020-09-22
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