地蔵菩薩 真言

地蔵菩薩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 13:38 UTC 版)

真言

オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ [7]Oṃ ha ha ha vismaye svāhā

邦訳すれば『オーン、ha・ha・ha(地蔵菩薩の種子を3回唱える)、希有なる御方よ、スヴァーハー』となる。

信仰

地蔵十王図 パリ・ギメ美術館 敦煌将来(10世紀)
地蔵十王図 静嘉堂文庫(高麗時代)

中国における地蔵信仰

偽経とされる『閻羅王授記四衆逆修生七往生浄土経』(預修十王生七経)や『地蔵菩薩発心因縁十王経』(地蔵十王経)によって、道教十王思想と結びついて、中国においては地蔵菩薩が閻魔または十王の一尊としての閻魔王と同一の存在であるという信仰が広まった。閻魔王は地蔵菩薩として人々の様子を事細かに見ているため、綿密に死者を裁くことができるとされ、泰山王とともに十王の中心に据えられた。

このため中国においては地藏王菩薩と呼ばれ、主に死後の(地獄からの)救済を願って冥界の教主として信仰される。日本神奈川県横浜市中区にも、死者の永眠を祀る地藏王廟(中華義荘)が華僑によって建立されている。

代の小説である『西遊記』でも、冥界を司る地藏王菩薩が孫悟空(斉天大聖)の暴れっぷりを地獄から天の玉皇大帝に上奏する場面が描かれている。

地藏王菩薩の聖地は、安徽省にある九華山である。これは、新羅の地蔵という僧(696年 - 794年、俗名金喬覚、俗姓と法名を連ねて、金和尚あるいは金地蔵とも呼ばれる)が、この地にある化城寺に住したことに因むものである。齢99で、この地で入滅した地蔵は、3年後に棺を開いて塔に奉安しようとしたところ、その顔貌が生前と全く変わることがなかったことなどから、地蔵を地藏王菩薩と同一視する信仰が生まれ、その起塔の地が地藏王菩薩の聖地となったものである。その故事によって、文殊菩薩五台山普賢菩薩峨眉山観音菩薩普陀山と並ぶ中国仏教の聖地(中国四大仏教名山)として、今日まで信仰を集めている。

日本における地蔵信仰

日本においては、浄土信仰が普及した平安時代以降、極楽浄土往生の叶わない衆生は、必ず地獄へ堕ちるものという信仰が強まり、地蔵に対して、地獄における責め苦からの救済を欣求するようになった。

姿は出家僧の姿が多く、地獄・餓鬼・修羅など六道をめぐりながら、人々の苦難を身代わりとなり受け救う、代受苦の菩薩とされた。際立って子供の守護尊とされ、「子安地蔵」と呼ばれる子供を抱く地蔵菩薩もあり、また小僧姿も多い。

賽の河原で、獄卒に責められる子供を、地蔵菩薩が守る姿は、中世より仏教歌謡「西院河原地蔵和讃」を通じて広く知られるようになり、子供や水子の供養において地蔵信仰を集めた。関西では地蔵盆は子供の祭りとして扱われる。

また道祖神岐の神)と習合したため、日本全国の路傍で石像が数多く祀られている。交通の便に乏しい時代では大きな仏教寺院へ参詣することができず、簡易な参拝ができる身近な仏像として崇敬を集めた。そのような地蔵に導師が置かれた例は少なく、そのため本来の仏教の教義を離れ、神道との混同や地域の独自の民間信仰の意味合いなども濃くした。

路傍の地蔵尊はさまざまな祈念の対象になり、難治の傷病の治癒を祈念すれば成就する、と喧伝されて著名な地蔵尊となったり(とげぬき、いぼとり、眼病、子供の夜泣きなど)、併せた寓話が後に広く童話としても知られるようになった例(六地蔵、言うな地蔵、しばられ地蔵、笠地蔵、田植え地蔵など多数)がある。

この他、自性院(猫寺)の猫地蔵や、恐山菩提寺の英霊地蔵のように、供養のため作られたさまざまな地蔵が存在する。

六地蔵

六地蔵尊(茨城県水戸市六反田町)
金倉の六地蔵(平福

日本では、地蔵菩薩の像を6体並べて祀った六地蔵像が各地で見られる。これは、仏教の六道輪廻の思想(全ての生命は6種の世界に生まれ変わりを繰り返すとする)に基づき、六道のそれぞれを6種の地蔵が救うとする説から生まれたものである。六地蔵の個々の名称については一定していない。地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人道、天道の順に檀陀(だんだ)地蔵、宝珠地蔵、宝印地蔵、持地地蔵、除蓋障(じょがいしょう)地蔵、日光地蔵と称する場合と、それぞれを金剛願地蔵、金剛宝地蔵、金剛悲地蔵、金剛幢地蔵、放光王地蔵、預天賀地蔵と称する場合が多いが、文献によっては以上のいずれとも異なる名称を挙げている物もある[注 2]。像容は合掌のほか、蓮華、錫杖、香炉、幢、数珠、宝珠などを持物とするが、持物と呼称は必ずしも統一されていない。

日本では、六地蔵像は墓地の入口などにしばしば祀られている。中尊寺金色堂には、藤原清衡基衡秀衡の遺骸を納めた3つの仏壇のそれぞれに6体の地蔵像が安置されているが、各像の姿はほとんど同一である。


注釈

  1. ^ 竿の先に吹き流しを付けた荘厳具
  2. ^ 例えば、浄土真宗高田派の僧侶である顕智は、救勝地蔵、先味地蔵、獲散地蔵、牟尼地蔵、華供地蔵、諸龍地蔵の名前をあげる[8]

出典

  1. ^ a b c 鏡花の女人救済の原型(諸岡哲也)仏教大学大学院紀要文学研究科篇第47号(二〇一九2019年3月)
  2. ^ 大江吉秀『日本のほとけさまに甘える』2016年、東邦出版、27頁。
  3. ^ 大江吉秀『日本のほとけさまに甘える』2016年、東邦出版、28頁。
  4. ^ 「ろくどう‐のうげ」 - デジタル大辞泉
  5. ^ 『地蔵菩薩本願経』「若未來世有善男子善女人見地藏形像及聞此經乃至……得二十八種利益」
  6. ^ 『地蔵菩薩本願経』「若現在未來天龍鬼神聞地藏名禮地藏形或……得七種利益」
  7. ^ 印と真言の本』108頁
  8. ^ 高田 1959, p. 47.
  9. ^ 「勝軍地蔵」 - 精選版 日本国語大辞典、小学館。
  10. ^ a b 「勝軍地蔵」 - デジタル大辞泉、小学館。
  11. ^ 高田みのり (2020年10月30日). “鬼門地蔵謎の密集”. 中日新聞朝刊県内版: p. 20 
  12. ^ 伝通院 公式サイト http://www.denzuin.or.jp/ の「法蔵地蔵尊」の説明 閲覧日2023年8月14日
  13. ^ 境内「法蔵地蔵尊」 - 伝通院、2023年8月16日閲覧
  14. ^ 「地蔵」 - 世界大百科事典 第2版






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