土俵 神事

土俵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 02:30 UTC 版)

神事

土俵は、力士が入場の際に柏手を打つなどがいる場所とされてきた。柏手については相撲の宗家である吉田司家の許可に基づいている。

東京両国国技館の本場所前々日に野見宿禰神社(東京都墨田区)で日本相撲協会の幹部、審判部の幹部、相撲茶屋等関係者が集まり、出雲大社教神官の神事が執り行われる。

また、各場所の初日前日に日本相撲協会の幹部、審判委員の親方などを集めて土俵祭が行われる。内容は土俵の真ん中に日本酒、米、塩などを封じ、相撲の三神(タケミカヅチほか二神)と幣束を7体祭り、立行司が祭主で介添えの行司が清祓の祝詞を奏上し、祭主が神事を行い、方屋開口を軍配団扇を手にして言上する。この後、清めの太鼓として、呼び出し連が土俵を3周して終わる。これは1791年(寛政3年)6月11日、江戸幕府の第11代征夷大将軍・徳川家斉の上覧相撲で、吉田追風が前日に土俵を作った際「方屋開」として始めたものである。これにより、千秋楽にその場所の新序出世力士によって行司を胴上げする「神送りの儀式」によって神を送るまでの間、土俵には神が宿るとされている。

現在は横綱が行う一人土俵入りは、四股で邪悪なものを踏み鎮める地鎮祭と同じ意味である。

大相撲での女人禁制

女性による神事相撲やかつて興行で行われていた女相撲、また相撲の近代スポーツ化のため女子への普及を目的として始まった女子相撲日本相撲連盟国際相撲連盟が統括するアマチュアの相撲大会の土俵には女性が上がることができる。

寺社の建立資金のために行われていた勧進相撲の職業団体が元となる日本相撲協会(大相撲)のみは、その伝統を重んじて土俵上を女人禁制としているが、以下のような事例から問題として取り上げられることがある。

  • 1989年(平成元年)、森山真弓官房長官が総理大臣賜杯授与を行いたいと明言したが、相撲協会が拒否し、この際には女性差別問題を含め議論を呼んだ。
  • 2004年(平成16年)、太田房江大阪府知事も知事杯授与を希望する旨表明したが、やはり相撲協会が難色を示し、知事杯の授与は男性副知事が代理して行われた。この決定に対し、大阪市内のNPO法人が性差別を助長する行為として太田府知事を相手取り、知事賞の費用を府に返還するよう求めた。「男女共同参画社会実現への積極性に欠けるとして政治的責任が議論される余地はあっても、性差別を助長する行為とはいえない」としてこの請求は棄却されたが、大阪府監査委員は「(代理授与は)決して好ましいこととは言えない」として知事賞の授与停止を検討するよう太田府知事に勧告した。
  • 2018年(平成30年)4月4日、春巡業「大相撲舞鶴場所」(京都府舞鶴市)で、土俵上で挨拶していた多々見良三舞鶴市長がくも膜下出血で突然倒れ、観戦に訪れていた複数の女性医療関係者(現役の看護師)が土俵に上がって救命処置を行った[11]。このときに「女性の方は土俵から降りてください」「男性がお上がりください」などと三段目格行司が場内アナウンスを行った[12][13][14]。このアナウンスについて実行委員会は当初「救急隊員に処置を引き継いだ後に放送が流れた」と説明していた[15]が、観客によって撮影された映像がYouTubeに投稿され[16]、その内容から事実誤認があったことが判明した。日本相撲協会の八角理事長は場内アナウンスについて「人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫び申し上げます」と謝罪のコメントを出し[12]、アナウンスを行った行司は同年の7月に辞職した[17]。市長の救命措置が終わった後に土俵の上に大量のが撒かれたことについては[13][14][18]、事業部長の尾車親方が「本場所でも稽古場でもアクシデントがあったときに連鎖を防ぐために塩をまいている」「女性蔑視のようなことは全くない」と女人禁制に関連したことではないと説明している[14][18]。一連の出来事は海外メディアからも注目され、ワシントン・ポスト電子版で「女性が直面する壁が明確にあらわれた事例」として性差別と関連付けて報じられたほか、ウォール・ストリート・ジャーナルは「女性が初めて土俵に入ったきっかけが男性の命を助けるためだった」ことを皮肉交じりの見出しで伝えた上で、「日本の伝統的、そして文化的な分野で女性が置かれている不平等な立場に注目が集まった」と報じている[19]
  • 2019年(令和元年)8月に東京青年会議所は「わんぱく相撲女子全国大会」を創設した[20]わんぱく相撲の地方大会は地域の青年会議所が行っており、地域親善の色合いが強いことから女子の参加が認められていたが、優勝者が女子である場合に「わんぱく相撲全国大会」(会場は両国国技館・出場資格は男子のみ)に出場できない問題が生じていた[21]。このため女子の全国大会参加を要望する声があがっていたことから、それに応える形で創設されたものである。なお地域で行われている相撲大会に「少年少女相撲大会」は多く存在しており、大相撲力士である豊ノ島は自らの出身地の高知県宿毛市で「豊ノ島杯ちびっこ相撲大会」[22]夫人の出身地である富山県高岡市で「豊ノ島杯県少年少女相撲大会」を行っている[23]



注釈

  1. ^ 桑森真介『大相撲の見かた』(平凡社新書、2013年5月 [要ページ番号])には筆者本人が所属する研究グループが行った実験について記述があり「私たちの研究グループでは、直径16尺(4m85cm)の拡大土俵と、直径15尺(4m35cm)の両方で学生の相撲選手に相撲を取ってもらい、体重の軽い側が勝つ率、決まり手数、競技時間を比較した。土俵を拡大すると、体重差が10%以上ある取組では、体重の軽い方が、30番行うと2・3番多く勝つことができるようになると分かった。決まり手数と競技時間は、土俵を拡大しても大きな影響は見られなかった。」という内容が確認できる。

出典

  1. ^ 植月佐広「角土俵 ノコッタノコッタ◇岡山・勝央町に唯一現存、500年以上の歴史を守る勝負◇」『日本経済新聞』朝刊2018年11月7日(文化面)2018年11月8日閲覧。
  2. ^ 「土俵の高さがあるから土俵際をうまくつかえる」 日刊スポーツ 2019年11月25日10時0分(2019年12月12日閲覧)
  3. ^ ベースボール・マガジン社『大相撲名門列伝シリーズ(3) 高砂部屋』p76
  4. ^ a b c d 『大相撲ジャーナル』2017年6月号62-63頁
  5. ^ 土俵 大相撲ドットコム
  6. ^ 『大相撲中継』2017年5月27日号99頁
  7. ^ 大相撲の土俵に川越「荒木田土」初野建材が全場所制覇/スポーツ用 拡販に意欲日刊工業新聞』2018年8月10日(中小企業・地域経済面)2018年10月28日閲覧
  8. ^ 両国の土は埼玉県川越市の荒木田土、地方でも使用へ - 日刊スポーツ 2017年8月30日
  9. ^ https://www.hakatanoshio.co.jp/history/ 「伯方の塩」のあゆみ
  10. ^ 「四本柱から見るから土俵全体が見える。土俵下では反対側が見えない」という検査役の主張がまかり通っていたため、柱のそばに座っていた検査役を土俵の下に降ろすに至るまでには苦労があった。
  11. ^ 出典:http://www.iza.ne.jp/smp/kiji/events/news/180405/evt18040522110024-s1.html“「下りなさい」相撲協会員、口頭でも直接指示”. 産経新聞. (2018年4月5日) 
  12. ^ a b “土俵で心臓マッサージしていた女性に「降りて」 京都”. 朝日新聞. (2018年4月4日). https://www.asahi.com/articles/ASL44739ML44PLZB017.html 2018年4月5日閲覧。 
  13. ^ a b “「土俵から降りて」市長を救命の女性は看護資格あり、その後大量の塩撒かれる”. 毎日放送. (2018年4月5日). http://www.mbs.jp/news/kansai/20180405/00000027.shtml 2018年4月5日閲覧。 
  14. ^ a b c “尾車事業部長、土俵に大量の塩も女性蔑視は全くない”. 日刊スポーツ. (2018年4月5日). https://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/201804050000633.html 2018年4月6日閲覧。 
  15. ^ “救命処置の女性に「土俵下りて」、相撲協会謝罪”. 読売新聞. (2018年4月5日). http://www.yomiuri.co.jp/national/20180404-OYT1T50190.html 2018年4月5日閲覧。 
  16. ^ “舞鶴:倒れた市長の救命女性に相撲協会「土俵から下りて」”. 毎日新聞. (2018年4月4日). https://mainichi.jp/articles/20180405/k00/00m/040/131000c 2018年4月5日閲覧。 
  17. ^ 三段目格行司の木村昌稔が辞職 - 大相撲 : 日刊スポーツ” (日本語). nikkansports.com(2018年7月3日). 2020年4月26日閲覧。
  18. ^ a b “相撲協会・尾車事業部長 人命尊重明言、大量の塩は女性が土俵に上がったためではないと強調”. スポーツニッポン. (2018年4月5日). https://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/201804050000633.html 2018年4月6日閲覧。 
  19. ^ “女性が土俵 海外メディアも大きく伝える”. NHKニュース (日本放送協会). (2018年4月5日). オリジナルの2018年4月6日時点におけるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20180406060157/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180405/k10011392311000.html 2018年4月6日閲覧。 
  20. ^ 大相撲より先進的?わんぱく相撲、女子の全国大会創設へ:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル(2019年3月7日). 2020年4月26日閲覧。
  21. ^ “少女横綱に「待った」 国技館の土俵上がれず 主催者「全国大会は男子が対象」”. 朝日新聞夕刊. (1991年7月3日) 1978年(昭和53年)、「わんぱく相撲東京場所」で10歳の少女が勝ち進んだが、蔵前国技館の土俵に上がれず決勝大会出場を断念した。1991年(平成3年)には、「わんぱく相撲美馬大会」で小学5年生の女子が優勝したが、両国国技館の土俵は女人禁制であるとして、全国大会出場権を示すメダルは2位の男子に授与されている。
  22. ^ 豊ノ島杯ちびっこ相撲 高知県宿毛市で80人熱戦” (日本語). 高知新聞(2018年12月16日). 2020年4月26日閲覧。
  23. ^ 豊ノ島杯、優勝杯が完成 8月24日、高岡で開催 - 富山県のニュース | 北國新聞社”. www.hokkoku.co.jp(2019年7月25日). 2020年4月26日閲覧。
  24. ^ 「台湾で日本時代の土俵“復活”アマ選手が取組を披露」産経新聞ニュース(2017年9月17日)
  25. ^ “歴代最重量292キロの力士引退「がりがりになりたい」:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル. https://www.asahi.com/articles/ASL9P4DVXL9PUTQP00Y.html 2018年11月6日閲覧。 


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