国鉄EF67形電気機関車 番台別解説

国鉄EF67形電気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 00:26 UTC 版)

番台別解説

基本番台

基本番台(下関方)
2005年10月撮影
基本番台(東京方) 2005年10月撮影
老朽化したEF59形の置き換え用として、1982年から運用開始された。EF60形0番台(一般型)4次・5次車から3両 (1 - 3) が改造された。
車体台枠を400mm延長したうえで1エンド側(東京方)には貫通扉・デッキが付けられている[14]。走行中に連結器のロックを自動解除し、列車から切り離すため、自動解放装置を備えた密着自動連結器を装備する。100番台には自動解放機能は取り付けられなかったため、走行中に自動解放する列車は限定運用されていた。2002年に走行中の自動解放が廃止されたことにともない、同装備は外された。
車内は従来の機器が全面撤去され、新たに東洋電機製造製CH3形チョッパ装置、IC87形主平滑リアクトル(6台)、IC88形フィルタリアクトル(2台)が設置された[10][5]。主サイリスタは2,500V - 1,000Aの逆導通サイリスタを2個直列接続使用した[10]。六相チョッパ(素周波数は300Hz)で、素子の冷却はブロワー(送風機)による強制風冷方式である[10]
主幹制御器はMC30(種車のもの)をベースに改造され[10]、補機運用で使用される1エンド側には空転防止用の「均衡ハンドル」が追加されたMC30A、回送時に使用される2エンド側は逆転ハンドルに「前進回生ブレーキ」位置が追加されたMC30Bを搭載する[11][15]。機関車単機回送となる下り方面(西条駅基準で広島方面、2エンド側先頭)では4基の主電動機で走行し、中間台車は回生ブレーキ専用となる回路とした[11]
制御器および補機の動作用電源として、103系の発生品電動発電機(定格容量20kVA)を搭載している[16]
民営化後、側面中央の明かり取り窓の間に白色のJRマークが貼られていた。その後1号機以外は、コンテナブルーを基調とし、JRマークとその下に「FREIGHT」と白抜きで書かれた、ピクトグラム調のロゴに変更された。
本区分の更新工事は施行されていない。改造元の種車は以下の通りである。
EF67 1 2 3
EF60 104 129 88

100番台

100番台 更新前(下関方)2002年10月撮影
100番台 更新前(東京方)2009年8月撮影
100番台 更新後(下関方)2009年11月撮影
100番台 更新後(東京方)2009年8月撮影
貨物列車増発・EF61形200番台置き換えのため、1990年から運用開始[17]。EF65形0番台(一般型)6次車(最終量産車)を改造して、5両 (101 - 105) が製作された。これはJR貨物に種車となるEF60形がなかったため、機械的構造が近似したEF65形が選ばれたものである[17]。ただし、改造工事は0番台に合わせた性能とするため、歯車比の変更など改造規模は大きくなっている[17]
上り方にあるデッキは、基本番台より小型化されており、連結器の緩衝器を収めている。基本番台にあった貫通扉とデッキ階段が廃止された。走行中の自動解放機能は省略され、並形自動連結器とされた。緩衝器を上り方の連結器に装備したため、種車であるEF65と比べ車体長が、片エンド側のみ延長されている。
下り側のスカートの正面下辺について、通常は直線であるが、101号機のみ斜めになっている。
101・102号機は、基本番台と同様の逆導通サイリスタ素子を用いた東洋電機製造製チョッパ装置を搭載する[18][19]。101・102号機は、当時八本松 - 防府間に運転を予定した臨時貨物列車における600 tの単機牽引に対応した機器となっている[18]。その後、サイリスタ素子が生産中止になったため、103 - 105号機はGTO素子(4,500 V - 3,000A・東洋電機製造製[19])を用いたチョッパ装置を搭載している[16][19]
基本番台と同様に、補機運用で使用される1エンド側主幹制御器には空転防止用の「均衡ハンドル」が、回送時に使用される2エンド側は逆転ハンドルに「前進回生ブレーキ」位置が追加されている。
通常の列車牽引運用も考慮に入れ、0番台と異なり2エンド側が先頭となる場合でも主電動機6基での運転を可能としている[20]
2003年より更新工事を受け、パンタグラフがシングルアーム式に、尾灯が外ハメ式の丸型タイプから外ハメ式の角型タイプのLED灯にそれぞれ変更された。塗装についても変更され、従来の赤11色を基調としつつ、乗務員扉が直流機関車を示すクリーム色、前面窓と側面窓周辺が黒、車体裾部がグレー帯と白帯に塗られている。また、側面の明かり取り窓間のJRロゴが無くなった替わりに、各側面の機関士側の運転側窓下に、白抜きのJRFロゴが入れられるなど、外観が変化している。
シングルアーム式パンタグラフは不具合が多く、再びPS22Bに順次交換されている。
改造元の種車は以下の通りである。
EF67 101 102 103 104 105
EF65 134 131 133 132 135

注釈

  1. ^ 回生ブレーキ使用可能な条件としては、65km/h以上で走行中なこと、八本松 → 瀬野間を走行中の場合のみである。また、回生ブレーキ使用時には力行できないようになっている。

出典

  1. ^ a b c 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1983年2月号 NEWS FILE「EF67形が稼働開始」p.93。
  2. ^ a b 交友社『鉄道ファン』1990年5月号 POST「EF67 100番台 活躍を開始」p.117。
  3. ^ 技術(交通) 25.電気機関車の製造」『東洋電機製造百年史』東洋電機製造、2018年11月、246-251頁https://www.toyodenki.co.jp/100th/history_pdf/theme/25.pdf 
  4. ^ 交友社『鉄道ファン』2016年12月号「セノハチで後押し一筋34年 EF67形ものがたり」」pp.100 - 107。
  5. ^ a b c d e f g h i j 交友社『鉄道ファン』1990年6月号連載「近代形電機転身の記録4」pp.86 - 89。
  6. ^ a b 北野嘉幸「EF67の改造を終えて」『鉄道工場』 33巻、4(379)、レールウエー・システム・リサーチ、1982年4月、23-28頁。doi:10.11501/2360114https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2360114/13 
  7. ^ a b 東洋電機製造「東洋電機七十五年史」p.185。
  8. ^ 2.車両用機器 2-3.制御装置」『東洋電機技報』68号、東洋電機製造、1987年5月、8頁。doi:10.11501/3248092https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3248092/5 
  9. ^ a b 『J-train』Vol.55、イカロス出版、2014年、p.99。
  10. ^ a b c d e f 有馬一堯;山下巌;小泉真也;木村紘道「EF67形式チョッパ制御電気機関車」『東洋電機技報』53号、東洋電機製造、1982年11月、9-18頁。doi:10.11501/3248077https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3248077/6 
  11. ^ a b c 『J-train』Vol.55、イカロス出版、2014年、p.95
  12. ^ a b c d 有馬一堯「初の直流チョッパ制御機関車EF67形」『交通技術』 38巻、8(460)、交通協力会、1982年8月、17-19頁。doi:10.11501/2248159https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2248159/10 
  13. ^ a b c d e f 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1984年9月号「EF67形 スクランブル!」pp.31 - 41。
  14. ^ 『J-train』vol.14、イカロス出版、2004年、p.59
  15. ^ 『鉄道ジャーナル』1998年9月号、鉄道ジャーナル社、1998年、p.78
  16. ^ a b 『J-train』Vol.55、イカロス出版、2014年、p.97
  17. ^ a b c 交友社『鉄道ファン』1991年1月号連載「近代形電機転身の記録7」pp.70 - 74。
  18. ^ a b 1.鉄道編 JR貨物向け電気機関車 EF67形100番台」『東洋電機技報』77号、東洋電機製造、1990年6月、3頁。doi:10.11501/3248101https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3248101/3 (101・102号機)
  19. ^ a b c 1.鉄道編 日本貨物鉄道向 EF67 100形電気機関車用電機品」『東洋電機技報』81号、東洋電機製造、1991年9月、4頁。doi:10.11501/3248105https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3248105/4 
  20. ^ 鉄道ピクトリアル』2002年1月号、電気車研究会、2001年、p.43
  21. ^ 交友社『鉄道ファン』1984年7月号「車両のうごき」p.144。
  22. ^ 「鉄道ジャーナル」第563号23頁
  23. ^ 「鉄道ファン」2016年12月号p.103。
  24. ^ 「鉄道ファン」2016年12月号p.106。
  25. ^ a b c 松沼猛 (2022年4月26日). “貨物列車の「後押し専門機関車」EF67形ついに引退”. 東洋経済オンライン (東洋経済新報社). https://toyokeizai.net/articles/-/582614 2022年4月26日閲覧。 
  26. ^ 「鉄道ファン」2016年12月号p.107。
  27. ^ “「さらばセノハチ」名脇役が引退「西の箱根」で日本支えた機関車”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2022年3月30日). オリジナルの2022年3月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220330030827/https://www.asahi.com/articles/ASQ3Y6SNWQ3TPITB00J.html 2022年3月30日閲覧。 






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