国鉄12系客車 譲渡

国鉄12系客車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 02:06 UTC 版)

譲渡

12系客車は、未入籍を含めて30両がJRから日本国内の私鉄6社(樽見鉄道わたらせ渓谷鐵道秩父鉄道若桜鉄道東武鉄道大井川鐵道)に譲渡されている。

西武鉄道

譲渡ではないが、E851形電気機関車さよなら運転でJR東日本高崎運転所(現:ぐんま車両センター)所属の客車が貸し出されて牽引された際に、本形式6両が西武鉄道の車両として車籍を登録している。車両はスハフが161と162、オハが370・372・373・374。その後JRに返却され、オハ4両は廃車になったが、スハフ2両は2023年現在もぐんま車両センターに配置され現役である。

樽見鉄道

樽見鉄道スハフ1101

樽見鉄道へは、1990年にJR東海からオハ12形3両、スハフ12形2両の計5両が譲渡され、同社のオハ1000形、スハフ1100形となった。当初は輸送力列車用として運行され[26]、イベント用では「うすずみブルーライン号」として運行されていたが[27]、14系入線後は観桜列車「うすずみファンタジア」用としてトロッコ列車うすずみ1形をサンドイッチして使用された[28]が、2005年に全廃となった。また、14系の入線に伴い、1001が1993年に、1003は1994年にそれぞれ廃車となっている。番号の新旧対照は次のとおりである[29]

  • オハ12 84 → オハ1001
  • オハ12 102 → オハ1002
  • オハ12 142 → オハ1003
  • スハフ12 42 → スハフ1101
  • スハフ12 56 → スハフ1102

わたらせ渓谷鐵道

サロン・ド・わたらせ

わたらせ渓谷鐵道へは、1998年にJR東日本から「トロッコわたらせ渓谷号」用としてスハフ12形2両、2001年に「サロン・ド・わたらせ」用としてスロフ12形2両、2003年に同列車の増結用としてオロ12形1両の計5両が入籍している。そのほかにオハ12 198、オロ12 853・854・856の4両が譲渡されているが入籍されなかった。入籍車の番号新旧対照は、次のとおりである[5]

  • スハフ12 150 → わ99 5010
  • スハフ12 151 → わ99 5080
  • スロフ12 827 → わ01 827
  • スロフ12 828 → わ01 828
  • オロ12 853[注 13] → わ01 855

2009年度に「サロン・ド・わたらせ」用のわ01形3両が廃車、売却された。2017年度の時点でわ99 5010・わ99 5080の2両が現存している[5]

秩父鉄道

「SLパレオエクスプレス」として走る12系

秩父鉄道へは、2000年にJR東日本から「SLパレオエクスプレス」用としてオハ12形2両、スハフ12形2両の計4両が譲渡された。譲渡直後はダークグリーンに塗装変更され、2012年に現在の赤茶色へ変更している。そのほかに部品取り用としてオハ12 363が譲渡されている。番号の新旧対照は、次のとおりである[5]

  • オハ12 32 → オハ12-112
  • オハ12 34 → オハ12-111
  • スハフ12 149 → スハフ12-101
  • スハフ12 152 → スハフ12-102

若桜鉄道

若桜鉄道の元JR四国12系

若桜鉄道へは、2011年にJR四国からオロ12形2両、スロフ12形2両の計4両が譲渡された。いずれも鉄道車両としては未入籍である[5]

スロフ12 3
もっとも傷みが激しかった車両。青色の本塗装をすべて剥がした後、錆止め下塗り剤を塗り、パテ付け、研磨、プラサフ塗装、本塗装(青色→白)の順で塗装された[30]
オロ12 9・スロフ12 6
スロフ12 3よりは傷みの程度は浅かったため、錆のある部分の塗装のみが剥がされた上でスロフ12 3と同じ塗装が施された[30]
オロ12 6
2011年7月7日に隼駅で留置され[29]、「ムーンライトはやぶさ」というライダーハウスとして使用されている。

東武鉄道

オハテ12 1
オハテ12 2

2016年、14系とともにJR四国から譲渡[16]された。譲渡当初は車籍がなく[5]、14系への部品供出を目的として南栗橋車両管区にて留置状態が続いていた[31]

その後、「SL大樹」およびSL大樹ふたら用に展望車として改造され復籍し、2021年令和3年)10月17日から営業運転を開始した[32]

オロ12 5・10→オハテ12 1・2

東武鉄道南栗橋車両管区で改造製作された、展望デッキ付き客車である[33]。元JR四国のオロ12 5(元サイエンストレイン→カーペット車)とオロ12 10(元座席グリーン車)を種車として2両が改造された。

外観は既存の14系客車と混成されることから一体感が図られるようになった。オハテ12 1はオロ12 5を種車としぶどう色2号に赤帯を配し、窓枠は茶色となり、オハテ12 2はオロ12 10を種車とし青15号に緑色の帯を配し、窓枠は灰色になった[33]

内装では元の座席やカーペット等をすべて撤去し、ボックスシートへの交換とフック付きの大型テーブルの設置、トイレの撤去と乗務員室への用途変更、下今市寄りをオープンデッキ構造として、ドアを埋めた。車両下部には車外向けスピーカーが設置され、沿線からのおもてなしに対して感謝を伝えるためにメロディーホーンを鳴らすことが可能となっている[33]。定員は64人[33]

大井川鐵道

大井川鐵道へは、旧来から保有している旧型客車の運用負荷分散のため、2018年にJR西日本から「SLやまぐち号」で使用されていた客車5両が譲渡された。2022年現在も千頭駅の留置線に置かれているが、営業運転開始時期は未定[24][25]。2020年12月、2021年2月には留置中の車両の鉄道部品の盗難の被害を受けている。

タイ国有鉄道

タイ国鉄でエアコン付き二等座席車として運用されている元JR西日本の12系
左側の両開き扉が昇降用リフトを備えた車いす対応の客室扉
3列リクライニングシートが並ぶ車内

1997年に、JR西日本が廃車とした28両がタイ国鉄に譲渡された[34]。タイの鉄道は1 m軌間であるため、導入に当たって台車の改造を行っている。当初は冷房列車として使用されたが、発電用機関の不調により冷房の使用は停止され、扇風機が取り付けられて在来車と混結して使用されているほか、3列リクライニングシートおよび車いす対応の両開き扉と昇降用リフトを備えた改造車が2013年11月ごろからバンコク・チェンマイ間の第1列車と第2列車にエアコン付き二等座席車として1両連結されている。

譲渡車の番号は、次のとおりである。

  • オハ12形 - 50・218・245・252・1001・1004・1005・1011・1016
  • スハフ12形 - 4・38・39・45・106・141・146・1009・1010・1011・1012
  • オハフ13形 - 36・54・65・1002・1005・1006・1008・1009

フィリピン国鉄

1999年2001年にJR東日本より26両、2002年にJR九州より10両が、フィリピン国鉄に譲渡された[17][35]。同鉄道の軌間は日本の在来線と同じ1,067 mmのため、台車の改造は行われていない。

主に "Commuter Express" や "Bicol Express" などの名称を持つ冷房使用の通勤列車や長距離列車として運用されていたが、2012年までに運用を離脱している。

塗装は変更され、大半の車両に対し、いたずら目的の投石によるガラス破損の防止や、乗降扉以外からの無賃乗車の防止のため、窓に金網が取り付けられたほか、後年に一部車両は金網を撤去してガラスをポリカーボネートに交換している。

形式は、JR東日本所属車が "7A-2000" (A=Air conditioned)、JR九州所属車が "NR" (North Rail)であり、後に一部車両が "CAR" に変更された[36]

譲渡車の番号は次のとおりである [要出典]

  • オハ12形 - 124・125・231・232・233・234・278・279・325・326・360・361・362・365・370・372・373・374・801
  • スハフ12形 - 110・111・114・116・118・153・159

注釈

  1. ^ 10系以前の客車は普通車についてはその多くがボックスシート製造。一方で定員重視で製造された鋼体化改造車である60系の普通車以外は長距離優等列車への使用を想定して製造され、優等列車への使用は程度の良い車両の使用が優先され、後継車の置換えにつれて捻出された中堅車や経年車は普通列車にも使用されるようになっていた。なお、国鉄の現場では「一般形客車」「在来型客車」と便宜的に呼称していたが、明確な意味で採用された区分ではない。
  2. ^ 戦前に特急「富士」用の三等車として製造されたオハ34形の座席間隔(1,600mm)とほぼ同じ寸法である。
  3. ^ 20系は既に110 km/h運転可能だったが、鋳鉄制輪子で可能としたことから、高速域で高いブレーキシリンダ圧力を必要とするため、機関車が編成増圧ブレーキ制御のできる電磁ブレーキ制御機構と、元空気だめ管引き通しを持つ必要があった。
  4. ^ 10系客車までの在来型客車は、暖房を使用する時期には、電気機関車ディーゼル機関車により牽引される場合に牽引機関車が限定される問題があった。暖房用蒸気を供給するボイラー(蒸気発生装置)付旅客用機関車で牽引するか、別にボイラーを搭載した暖房車を連結する必要があり、電気暖房の場合は暖房電源供給設備 (EG) のある機関車が必要だった。
  5. ^ 仙台鉄道管理局所属の一部の43系客車には1970年ごろに「12系緊急対策工事」「12系恒久対策工事」を施した車両があるが、具体的な工事内容については記録がないため不明。
  6. ^ これは14系がシステム上寝台車と座席車が同一の系列に属していたため、運用面で有利だったこともある。
  7. ^ 昭和45年度第1次債務負担分。
  8. ^ のちに、これまでに製造された12系にも同様の対策が施された。
  9. ^ 50系は非冷房車だったが、運用されていた東北地方北部はやませの影響を受けやすい気候だったことから、影響は少なかった。同様の理由で当時は盛岡支社で運用されている気動車も非冷房車が多かった
  10. ^ 多度津工場の担当者によると「塗料が余ってたので」とのこと。実際に12系が来るまでに四国島内にいた客車の色は全て青15号であった
  11. ^ 重量記号が1ランク下がっているのは、定員0のため。定員80人分=計算上4t積車重量が軽くなる。
  12. ^ 静岡鉄道管理局に同名の和式列車が存在したが、両者に関係はない。
  13. ^ オロ12 855ではない。

出典

  1. ^ a b 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、p.47。
  2. ^ JTBパブリッシング『幻の国鉄車両』p132
  3. ^ 『鉄道ピクトリアル』2005年2月号、1990年7月号[要ページ番号]
  4. ^ “SLばんえつ物語”にオヤ12 1が連結される|鉄道ニュース|2013年11月25日掲載|鉄道ファン・railf.jp”. 鉄道ファン・railf.jp. 2020年10月5日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、p.53。
  6. ^ 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、pp.48 - 50。
  7. ^ 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、pp.50 - 51。
  8. ^ 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、pp.51 - 52。
  9. ^ 第61回研究発表大会セッションID: A6-01 サイエンストレインエキスポ号と転用のデザイン”. 日本デザイン学会 (2014年7月4日). doi:10.11247/jssd.61.0_30. 2017年8月30日閲覧。
  10. ^ a b c 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、p.52。
  11. ^ ジェー・アール・アル編 (2016) (日本語). JR気動車客車編成表2016. 交通新聞社. pp. 159-161. ISBN 978-4330690162. http://shop.kotsu.co.jp/shopdetail/000000001876/005/004/X/page1/order (JR車両 番号順別配置表)
  12. ^ a b c JR旅客会社の車両配置表」、『鉄道ファン』57巻(通巻675号(2017年7月号))、交友社 pp. 39(廃車分、別冊付録)
  13. ^ a b c JR旅客会社の車両配置表」、『鉄道ファン』58巻(通巻687号(2018年7月号))、交友社 p. 40(廃車分、別冊付録)
  14. ^ a b c 鉄道ファン2023年7月号(別冊付録)
  15. ^ 鉄道ファン (雑誌) (2011年7月3日). “JR四国の12系客車4両が若桜鉄道へ”. railf.jp(鉄道ニュース) (交友社). http://railf.jp/news/2011/07/03/055300.html 2016年5月6日閲覧。 
  16. ^ a b 蒸気機関車(SL)復活運転の車両・施設計画概要について』(PDF)(プレスリリース)東武鉄道、2016年4月21日http://www.tobu.co.jp/file/pdf/b1aa63bbdbbedc2f1f8e1b16523e14e7/160421_3.pdf2016年5月6日閲覧 
  17. ^ a b c 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、pp.54 - 55。
  18. ^ “SL北びわこ号”,2019年夏季の運転が開始される 鉄道ニュース(railf.jp)、2019年9月9日。
  19. ^ SL北びわこ号 平成28年度 春季運転のお知らせ』(プレスリリース)西日本旅客鉄道、2016年4月27日。 オリジナルの2016年4月27日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20160427061231/http://www.westjr.co.jp/press/article/2016/04/page_8649.html2016年5月6日閲覧 
  20. ^ DD51と12系による訓練列車運転 鉄道ニュース(railf.jp)、2019年11月1日。
  21. ^ 【JR西】網干訓練列車、運転実施 RM News(鉄道ホビダス)、2019年11月29日。
  22. ^ 「あすか」展望車2両と「トワイライトエクスプレス」用24系1両が吹田へ”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2016年7月7日). 2016年7月8日閲覧。
  23. ^ 12系レトロ客車が幡生へ”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2017年9月8日). 2018年1月7日閲覧。
  24. ^ a b 12系客車の入線が決定しました!!』(プレスリリース)大井川鐵道、2018年2月26日http://oigawa-railway.co.jp/archives/116832018年2月26日閲覧 
  25. ^ a b 大井川鐵道,JR西日本から12系客車5両(もと“SLやまぐち”号用)を譲受”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2018年2月26日). 2018年2月28日閲覧。
  26. ^ 曽根悟(監修) 著、朝日新聞出版分冊百科編集部 編『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄』 26号 長良川鉄道・明知鉄道・樽見鉄道・三岐鉄道・伊勢鉄道、朝日新聞出版〈週刊朝日百科〉、2011年9月18日。 
  27. ^ 樽見鉄道社史編集委員会 編『樽見鉄道10年史』樽見鉄道、1994年10月、74頁。 
  28. ^ 樽見鉄道社史編集委員会 編『樽見鉄道10年史』樽見鉄道、1994年10月、74頁。 
  29. ^ a b 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、p.54。
  30. ^ a b 清水 薫、2012、「若桜鉄道・観光列車運転に向けて」、『鉄道ファン』52巻(通巻615号(2012年7月号))、交友社 p. 58
  31. ^ 宮田寛之、2018、「特集 C11 207・D51 200」、『鉄道ファン』58巻(通巻681号(2018年1月号))、交友社 pp. 24 - 25
  32. ^ “11月4日(木)から、SL大樹の客車として 12系「展望車」を2両(ぶどう色・青色)導入します!!” (https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/releases/20210924164858G9ezLD6NypWgXQh45oCVVg.pdf).+東武鉄道. (2021年9月24日) 
  33. ^ a b c d 『鉄道ファン』2022年1月号 No.797 p58
  34. ^ 鉄道ファン2017年12月号,解説・12系客車 〜その略歴と現況〜、p.55。
  35. ^ “比国鉄に車両譲渡”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 1. (2001年5月8日) 
  36. ^ https://prhsociety.wordpress.com/pnr-freight-stock/pnr-passenger-stock/






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