国民健康保険
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被保険者
被保険者証の保険者番号は、6桁の番号からなる(被用者保険と異なり、国民健康保険の保険証には「法別番号」が付されないため、被用者保険の8桁番号より「法別番号」の2桁分が少なくなる。)。
農林水産業 | 3.1% | |
---|---|---|
自営業 | 15.5% | |
被用者 | 35.3% | |
無職者 (40.8%) |
うち60歳以上 | 32.4% |
30歳 - 59歳 | 7.0% | |
- 29歳 | 1.4% | |
その他 | 5.2% |
市町村国保
都道府県の区域内に住所を有する者で、適用除外に該当しない者はその意思のいかんにかかわらず[注 1]、全員が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険の被保険者とされる(第5条)。外国人であっても、90日以上の在留期間が決定された中長期在留者(施行規則第1条)や、資料上90日以上の国内滞在者であると認められる者は、国保への加入義務が発生する[11]。
市町村国保の被保険者は、当該都道府県の区域内に住所を有するに至った日又は適用除外のいずれにも該当しなくなった日から、その資格を取得し(第7条)、その日から14日以内に市町村長に所定の事項を記載した届出をしなければならない(施行規則第2条)。
ただし、学校等に修学のため他市町村に居住する学生については、自ら生活している場合や結婚して配偶者の所得で生計を維持しているような場合を除き、親元の市町村の国民健康保険の適用を受ける(第116条)。また、病院、介護保険施設等に入院・入所することにより他市町村からその病院等のある市町村に転入した場合は、入院・入所した際に現に住所を有していた従来の市町村の国民健康保険の被保険者とされる(住所地特例、第116条の2)。この規定により住所地特例の適用を受けて従前の住所地の市町村の国民健康保険被保険者とされている者が75歳到達等により後期高齢者医療に加入した場合には、特例を引き継ぎ、従前の住所地の後期高齢者医療広域連合の被保険者とする(平成27年5月29日保発0527第1号)。
市町村国保の対象となるのは、具体的には農林水産業従事者、自営業、被用者保険に該当しない非常勤労働者、退職者、無職者であり、被扶養者という概念は国民健康保険にはない(家族も「被保険者」となる。ただし退職者医療制度に係る場合をのぞく)ため、専業主婦・専業主夫、学生や未成年者等も被保険者となりうる。かつては自営業者を加入者の代表例とする場合が多かったが、最近は退職者など無職者が加入者の4割を超える[2]。
国民年金と異なり、日本国内に住所を有しない者の任意加入の制度はない。
国民健康保険組合
国民健康保険組合は、同種の事業又は業務に従事する者で当該組合の地区内に住所を有するものを組合員として組織する(第13条1項)。世帯主が適用除外に該当しても、その者の世帯に適用除外に該当しない者(他の国保組合員である者を除く)がいれば、組合員となることができる(第13条3項)。組合に使用される者(他の国保組合員である者を除く)も、適用除外に該当しなければ組合員となることができる(第13条4項)。
国民健康保険組合の組合員及び組合員の世帯に属する者は、適用除外に該当しない限り当該組合が行う国民健康保険の被保険者となる(第19条1項)。ただし、規約で定めることにより、組合員の世帯に属する者を包括的に被保険者としないことができる(第19条2項)。
国民健康保険組合の被保険者は、当該組合員となった日又は適用除外に該当しなくなった日からその資格を取得する(第20条)。
適用除外
次の各号のいずれかに該当する者は、上記の規定にかかわらず国民健康保険の被保険者としない(第6条、第13条3項)。
- 健康保険の被保険者(日雇特例被保険者を除く)
- 船員保険の被保険者
- 国家公務員共済組合・地方公務員等共済組合の組合員
- 私立学校教職員共済制度の加入者
- 健康保険の被扶養者(日雇特例被保険者の被扶養者を除く)
- 船員保険・国家公務員共済組合・地方公務員等共済組合の被扶養者
- 日雇特例被保険者手帳の交付を受け、その手帳に健康保険印紙をはり付けるべき余白がなくなるに至るまでの間にある者及びその者の被扶養者(厚生労働大臣の承認を受けて日雇特例被保険者とならない期間内にある者及び日雇特例被保険者手帳を返納した者並びにその者の被扶養者を除く)
- 後期高齢者医療制度の被保険者(市町村国保のみ)
- 公的扶助を受けている世帯(扶助が停止されている世帯を除く)に属する者
- 国民健康保険組合の被保険者(市町村国保のみ)
- その他特別の理由がある者で厚生労働省令(施行規則第1条)で定めるもの
- 日本国籍を有しない者であって、住民基本台帳法に規定する外国人住民以外のもの(出入国管理及び難民認定法(入管法)に定める在留資格を有する者であって既に被保険者の資格を取得しているもの及び厚生労働大臣が別に定める者を除く。)
- 日本国籍を有しない者であって、入管法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣が定める活動のうち、病院若しくは診療所に入院し疾病若しくは傷害について医療を受ける活動又は当該入院の前後に当該疾病若しくは傷害について継続して医療を受ける活動を行うもの及びこれらの活動を行う者の日常生活上の世話をする活動を行うもの(前号に該当する者を除く。)
- 日本国籍を有しない者であって、入管法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣が定める活動のうち、本邦において1年を超えない期間滞在し、観光、保養その他これらに類似する活動を行うもの(18歳以上の者に限り、第一号に該当する者を除く。)
- 日本国籍を有しない者であり、かつ、前号に規定する者に同行する配偶者であつて、入管法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動として法務大臣が定める活動のうち、本邦において1年を超えない期間滞在し、観光、保養その他これらに類似する活動を行うもの(第一号及び前号に該当する者を除く。)
- その他特別の事由がある者で条例で定めるもの
前期高齢者医療制度
65歳 - 74歳の高齢者を前期高齢者(准高齢者)と呼ぶ[12]。受給サービスは同じであるが、これらの加入者財政については保険者間にてリスク構造調整がなされている[12]。被用者保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合)から国保に対して計3兆円規模の財政移転となる[12]。
退職者医療制度
国民健康保険は、医療費の必要性が高まる退職後に、健康保険・共済組合等を抜けて加入する者が多いため、健康保険・共済組合等よりも医療費の負担が大きい。そのため、こうした医療保険制度間の負担を公平化するために退職者医療制度が設けられてきた。一連の医療制度改革により、平成20年度からは退職者医療制度への新規加入は廃止され、65歳未満の者に限る経過措置となった。さらに平成27年度からは制度自体が廃止となり、平成27年3月以前から継続して国保に加入し、平成27年3月末時点で対象となる条件を満たす者のみを引き続き対象とする[12]。
対象者は、被保険者のうち、厚生年金や共済年金などの被用者年金制度の老齢(退職)年金を受給している65歳未満の者(退職被保険者)、及びその65歳未満の被扶養者(退職被保険者本人と同一世帯・同一生計であり、年間収入額が130万円(60歳以上又は障害者の場合は180万円)未満である配偶者および3親等内の親族。被用者保険とは異なり、配偶者や直系尊属であっても「同一世帯」に属していなければならない)である[12]。
なお、通算老齢(退職)年金受給者については、被用者年金に20年以上又は40歳以後10年以上加入している者が対象になる[12]。被保険者証の保険者番号は、67から始まる8桁の番号となる。
退職者医療制度はあくまでも国民健康保険の中に含まれる[12]。一般の国民健康保険と比べると
- 診療時の一部負担金:一般、退職者医療制度ともに3割で同じ
- 保険料額の計算方法:一般、退職者医療制度ともに同じ
- 財源:退職者医療制度では、一部負担金と保険料の他に、職域の健康保険などからの拠出金が財源
- 被保険者証:世帯内の一般の被保険者とは別に発行
となっている。対象者に直接の利益はないが、リスク構造調整により財政安定につながるという意味がある。
注釈
- ^ 東京地裁平成10年7月16日判決では、在留資格のない外国人に被保険者資格を認めた。なお控訴審中に原告は在留特別許可を受け、被保険者資格を取得している。
出典
- ^ “国民健康保険制度”. www.mhlw.go.jp. 2023年9月30日閲覧。
- ^ a b c 国民健康保険中央会 2012, pp. 5.
- ^ a b c 国民健康保険実態調査 平成29年度 (Report). 厚生労働省. 12 March 2019.
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- ^ a b c 厚生労働白書 2011, p. 35.
- ^ 角川村で国民健保組合の初認可『東京朝日新聞』1938年(昭和13年)8月20日.『昭和ニュース事典第6巻 昭和12年-昭和13年』本編p730 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
- ^ “岸信介政権研究 新安保条約成立と国民皆保険創設の功罪”. NEWSポストセブン. 2023年9月30日閲覧。
- ^ 国民健康保険事業年報 平成22年度, e-stat , (GL08020101)
- ^ a b c 全国高齢者医療・国民健康保険主管課(部)長及び後期高齢者医療広域連合事務局長会議 国民健康保険関係資料 (PDF) (Report). 厚生労働省. 6 February 2012.
- ^ “東京都弁護士国民健康保険組合”. 2014年12月4日閲覧。
- ^ 保険局長『国民健康保険法施行規則及び高齢者の医療の確保に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の施行について(保発0120第2号)』(PDF)(プレスリリース)厚生労働省、2012年1月20日。 オリジナルの2014年2月20日時点におけるアーカイブ 。
- ^ a b c d e f g 国民健康保険中央会 2012, pp. 29.
- ^ 国民健康保険事業年報 平成29年度 (Report). 厚生労働省. 31 March 2016.
- ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 12, 17.
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- ^ a b c d e 国民健康保険中央会 2012, pp. 15.
- ^ 厚生労働省 2014, p. 12.
- ^ 厚生労働省 2014, p. 5.
- ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 25.
- ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 31.
- ^ 厚生労働省 2014, p. 4.
- ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 4.
- ^ OECD Economic Surveys: Japan 2009 (Report). OECD. 13 August 2009. pp. 104, 118, 126–128. doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2009-en. ISBN 9789264054561。
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- ^ 第189回国会 閣法 189回28号 持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案
- ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 12.
- ^ “国保納付率88%、最低更新 09年度、景気悪化で”. 47NEWS. 共同通信 (全国新聞ネット). (2011年2月4日). オリジナルの2011年11月26日時点におけるアーカイブ。
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- ^ 国民健康保険中央会 2012, pp. 8.
- ^ 厚生労働省 2014, p. 1.
- ^ “従業員を採用したときの手続き” (2020年6月16日). 2020年8月24日閲覧。
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