国勢調査 (日本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/23 09:13 UTC 版)
目的
国勢調査の基本的な目的は、日本国内(ただし、北方領土及び竹島は除かれている[注釈 1])の人口・世帯の実態を把握し、各種行政施策の基本資料を得ることとされているが、国勢調査の利用は政治や行政などの公的な目的にとどまらず、民間企業の経営判断や研究活動などにも広く活用されている。
国勢調査の主な目的・意義を挙げると、およそ次の3点に整理することができる。
一つは、政治や行政など公的な目的での基準となる統計数字を与えることである。国勢調査では、人口数だけではなく、年齢別、配偶関係別、就業状態別、産業・職業別などの詳細な人口や、世帯構成別の世帯数など様々な人口・世帯の統計結果が得られ、様々な目的で広く活用されている。国勢調査の人口の代表的な利用目的には、法律に基づいて地方交付税の配分や衆議院議員選挙区の画定などの基準を与えることなどがあり、このため国勢調査の人口は「法定人口」とも呼ばれる。
二つ目は、民間・研究部門における利用である。民間企業では、市場の規模や需要の動向を見積もったり、出店戦略を立てたりする場合に、国勢調査から得られる人口構成や人口の地域分布に関する統計データが用いられる。また、大学や学術研究機関では、社会や経済の動向を分析する目的で国勢調査の統計データが用いられる。また、国勢調査のデータは、学校教育においてもしばしば引用される。
三つ目の利用としては、他の様々な統計を作成する基盤となる基礎データを与えることである。国勢調査の各種の統計は、労働力調査、家計調査、国民生活基礎調査など様々な世帯を単位とする標本調査を設計する上での「フレーム」としても用いられている。また、将来人口推計の基礎データとして用いられており、日本の統計体系の基盤を与えることも国勢調査の重要な目的とされている。
このように、国勢調査の統計は官民ともに広く用いられているほか、統計の推計・分析の体系の基礎となっている。また、国際的にみても、国勢調査は少なくとも10年ごとに実施することとされており、日本のように5年ごとに実施する国も多く見られる。これは、国際連合が、世界の人口・経済の動向を一斉に把握することを目的として、西暦の末尾が「0」の年を中心に「世界人口・住宅センサス計画」The 2010 World Population and Housing Census Programmeを提唱し、世界各国に国勢調査を実施することを勧告しているためである。日本の国勢調査もその一環として位置付けられている。
統計法の第1条(目的)では、公的統計(行政機関等の作成する統計の総称)を「国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報である」と位置付けており、統計法に基づいて「公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与する」ことを目指すこととされている。国勢調査は、このような統計法の目的を達成するために行われるものと言える。
国勢調査に代表される統計についての利用ニーズは時代とともに変化している。国勢調査の創設以前の明治時代には、人口統計に関するニーズは宗教及び人種に著しい差異がないため、外国と異なり戸籍情報によって事足りているという状況にあった[7]。このような事情から、明治時代から国勢調査に関する提言がありながらも、実際に実施されるのは大正時代をまたなければならなかったと考えられる。
今日の社会では、統計に対するニーズは官民ともに多様化しており、また、客観的なデータに基づいて公平・公正な行政を行わなければならないことから、国勢調査の統計には、正確な総人口の数字はもちろんのこと、人や世帯の属性の別に詳細に分類集計した統計が必要とされている。国勢調査は、そのようなニーズに応えることが期待されている。
国勢調査の意義・役割等の詳細については、『平成22年国勢調査実施計画』(総務省統計局)を参照のこと。
注釈
出典
- ^ 総務省統計局. “統計用語辞典 か行|なるほど統計学園”. 2020年9月23日閲覧。
- ^ 3ヶ月以上滞在予定がある、または永住権がある外国籍
- ^ a b c d e “国勢調査が「存亡の危機」に!?” (日本語). NHK NEWS WEB. 2020年10月6日閲覧。
- ^ “「国勢調査、無視しよう」はダメ。避難者の数を予測しづらくなったり、企業があなたの街に出店をやめるかも? | ハフポスト”. www.huffingtonpost.jp. 2020年10月6日閲覧。
- ^ 平成27年国勢調査の調査項目について(調査項目の意味、記入方法) 総務省
- ^ 統計法(平成十九年法律第五十三号)
- ^ a b c d e f g 『近代統計制度の国際比較』安本稔編集 2007年12月 日本経済評論社 ISBN 9784818819665
- ^ 樋畑雪湖『日本郵便切手史論』、2020年1月31日閲覧。
- ^ 統計図書館ミニトピックスNo. 22 第1回国勢調査の記念切手をデザインしたのは? - 国勢調査に係る統計史料を訪ねて【その7】 (PDF) - 統計局、2020年1月31日閲覧。
- ^ #横山雅男、p.p.20「内国統計史」
- ^ 『平成22年国勢調査の実施に向けて(検討状況報告) 』 総務省統計局 2009年4月
- ^ a b 統計法を参照。
- ^ a b c d 国勢調査、勤務先やマンション階数、なぜ言わないといけないの? 総務省に聞いてみた - 毎日新聞
- ^ “令和2年国勢調査の概要”. 総務省. 2020年10月1日閲覧。
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- ^ “平成27年国勢調査(簡易調査)で追加・廃止を検討する調査事項(案)”. 総務省. 2015年10月1日閲覧。
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- ^ [4]
- ^ 新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた令和2年国勢調査の実施について - 統計局
- ^ 国勢調査の回答率 4割に届かず 武田総務相が協力呼びかけ - NHK
- ^ 国勢調査のネット回答、20日まで延長 - 共同通信
- ^ “国勢調査回答率80.9% ネットと郵送、19日時点 総務省(時事通信)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2020年10月20日閲覧。
- ^ a b c d 国勢調査が「存亡の危機」に!? - NHK
- ^ 国勢調査のイメージキャラクター紹介
- ^ “第一回国勢調査記念品(統計資料館)”. 総務省統計局. 2020年10月5日閲覧。
- ^ “第一回国勢調査記念章(統計資料館)”. 総務省統計局. 2020年10月5日閲覧。
- ^ 「国勢第一回の任命書」『中国新聞』2020年(令和2年)10月6日備後版22面
- ^ 国勢調査、「手間省ける」と自治会の集会で回収 読売新聞 2010年10月6日
- ^ 国勢調査:管理人が勝手に記入…マンション50世帯分 毎日新聞 2015年10月10日
- ^ 背伸びやめ 胸を張る 読売新聞 2007年9月1日
- ^ 羽幌町人口水増し事件
- ^ 市制施行の見送りについて(PDF)
- ^ “人口水増しで前副町長逮捕 市政移行目指した愛知・東浦町”. msn産経ニュース (2013年2月22日). 2013年2月22日閲覧。
- ^ 市昇格を狙い人口を水増しか 愛知・東浦町、国勢調査で - asahi.com,2012年2月26日
- ^ 愛知・東浦町長、意図的な人口水増しを否定 - 日テレnews,2012年3月2日
- ^ 平成22年国勢調査にかかる不適切な事務処理について - 東浦町サイト,2012年3月2日
- ^ 人口水増し疑い、前副町長を逮捕 愛知・東浦町 - 日本経済新聞,2013年2月22日
- ^ 東浦町前副町長を逮捕へ=人口水増しの疑い-愛知県警 - 時事ドットコム,2013年2月22日
- ^ マンション管理者のみなさまへ - 国勢調査2020総合サイト
- ^ 【独自】国勢調査で住基情報転用…15年 8市区集計ルール違反 読売新聞 2020年8月12日
- ^ 毎日新聞の読者投稿欄『みんなの広場』2010年10月9日版に、居留守を使われた調査員の嘆きが記載されている。
- ^ “国勢調査100年”. 日本郵便. 2020年9月28日閲覧。
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