四万十川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/05 23:52 UTC 版)
四万十川源流の森
不入山北麓に広がる四万十川源流のを中心とした森林で四国カルスト県立公園の指定区域にあり、四万十川源流の森として水源の森百選に指定されている[12]。
山岳 | 面積(ha) | 標高(m) | 人工林(%) | 天然林(%) | 主な樹種 | 制限林 | 種類 | 流量(m3/日) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
不入山 | 215 | 740 - 1336 | 20 | 80 | スギ・ヒノキ・モミ・アカマツ・ツガ・ブナ・コウヤマキ | 水源かん養保安林、保健保安林、学術参考林 | 流水(四万十川) | 1万5000 |
樹齢200年に近い自然林と国有林が管理する針葉樹林の人工林が茂る。源流はv字谷を刻み岩肌と森林の緑と清流と石灰岩質の岩肌で渓谷美を形成している。
- 所在地
- 高知県高岡郡津野町大字船戸(データは指定年1995年(平成7年)7月)
主な支流
この節の加筆が望まれています。 |
漁業
四万十川は水質も良く日本有数の清流で、古くから漁が盛んに行われてきた。天然ウナギ、アユ、ゴリ(チチブ、ヌマチチブ)、ツガニ(モクズガニ)、テナガエビなどの魚介類のほか、青海苔の産地として知られている。四万十川は川漁で生計を立てている人が多いことでも日本有数の河川といえる。
アユ
四万十川は全国屈指のアユの産地であり、かつては四万十川のアユ漁獲量は高知県全体の6割以上を占め、そのため高知県のアユ漁獲量は全国第1位を記録することも珍しくなかった[13]。1986年までに漁獲量を6,000t台後半を記録しながら推移し、いったん減少したものの増加して1991年には935tでピークを打ち、その後漁獲量を減らし2004年には50tまで激減した[14][15]。2004年8月には、この事態に危機感を持った四万十川中央漁協(岡山静夫代表理事)などの漁師らが「四万十川にアユをとりもどすシンポジウム」を開き、アユの保護策を検討した。アユの入荷量を流域別の比較では、流域によって減少傾向が異なり、最も入荷量が多かった下流域の幡多公設市場(中村)の落ち込みが顕著で、かつ回復傾向がみられていない。アユの激減の理由には、ダム建設による汚染、川砂利採取(現在は禁止)、海に下りたアユの稚魚が海水温上昇で死んだ、釣り人・漁師の増加や漁具の発達による乱獲などと、それらが複合的に絡み合っていると考えられているが[13][16]、橋下克彦は砂利採取による河口から中流域の川床の荒廃、とりわけ河口付近の浅瀬の産卵場、ふ化場の減少と流域全体のヒノキやスギといった針葉樹の植樹による山林の保水力の低下、卵を持つ落ちアユの乱獲を挙げている。砂利採取には、漁協の許可と保証金や見返りとなる金銭が必要であるが、この場合の漁協は必ずしも四万十川で川漁を専業とするものではない。砂利採取の跡は、法律で埋め戻しが義務付けられているが、山土を使うため、泥水が発生し川床の小石を覆うことでアユの餌となる苔が生えず、餌不足に陥る。また、落ちアユは群れをなして流れを下り、冷たい湧き水を好むが、その噴出口を山土がふさぐ。こうしたことと天候不順が重なり、漁獲量の激減につながったと橋下は結論付けている[15]。
テナガエビ
四万十川に生息する主なテナガエビは、ミナミテナガエビ、ヒラテテナガエビ(ヤマトテナガエビ)、テナガエビの三種類。四万十川でのテナガエビ類の年間漁獲高は30トン前後あり、ウナギや藻類に次いで多く、漁師にとって重要な水産資源となっている。高知県内の主要8河川と比較すると、四万十川が30トン前後なのに対し、他の7河川は2トン以下と少ない。
ミナミテナガエビとヒラテテナガエビは両側回遊を行う種で、河川で孵化した幼生は河口の塩度の濃い場所、または海まで下り、稚エビとなって川を遡上してくる。その期間は約1ヶ月。テナガエビは『汽水域』と『河川静水域、湖沼』に分布する2つのグループがあり、『汽水域』のテナガはミナミとヒラテ同様の孵化、遡上をするが『河川静水域、湖沼』のテナガは、卵の中でゾエアまで成長してから放出され、親エビと同じ環境で育つと考えられている。
流長196kmの四万十川の流れの中で、テナガエビ三種の流程分布は以下の通り。
- ミナミテナガエビ - 河口から江川崎までの範囲。河口から50km。
- ヒラテテナガエビ - 不破から大正までの範囲。河口から100km。
- テナガエビ - 不破より下流域。河口から8km。
伝統漁法
四万十川では、以下のような伝統漁法が行われてきた。
- 柴漬け
- テナガエビ、スジエビ、ウナギ、魚
- 葉の付いたままの枝を束ね、水中に沈める。何日か置くと枝や葉の隙間にテナガやウナギ、カニ、魚等が住み着くので、柴漬けを上げ、大きな受け網の上で振るうと、獲物が落ちてくる。
- コロバシ
- テナガ、ウナギ
- テナガ用とウナギ用があり、現在では塩ビ製の筒状の仕掛けを使う。テナガ用は径10×40cmくらい、ウナギ用は径4×70cmくらいの物を使い、入り口には戻し、出口には網を張ってあるので一度入れば出られないようになっている。セルビンと同じ原理。
- 石黒
- ウナギ
- 岸近くに1.5mほどのすり鉢状の穴を掘り、その中に20cmくらいの石を隙間を作りながら、2、3段積み上げる。更にその上に5~10cmくらいの小石をピラミッド状に積む。こうしてできた石の山を『石黒』と呼ぶ。満潮時に石黒を解体し、囲い網に獲物を追い込む。
- ゴリガラ曳
- ヌマチチブ
- 四万十川流域ではハゼ科のチチブ、ヌマチチブの稚魚を「ゴリ」と呼ぶが、そのゴリを狙った漁法である。サザエの貝殻を何百個も吊るしたロープを両端の人が上流から下流に向けて曳き、サザエの光と音に驚いたゴリを網に追い込んで漁獲する。ゴリは佃煮や卵とじにして賞味する。
- 火振り
- アユ
- 夜間、火の着いた松明(たいまつ)を川面近くで振りながら網に鮎を追い込む。同時に櫂で水面を叩き、火と音に驚いて逃げようとするアユが網にかかる。
注釈
出典
- ^ a b 国土交通省 水管理・国土保全局 日本の川 - 中国 - 四万十川 2019年10月17日閲覧。
- ^ 渡川水系河川整備基本方針 - 国土交通省河川局
- ^ 四万十川 - 名水百選 Archived 2011年9月26日, at the Wayback Machine. - 環境省
- ^ 渡川水系河川整備基本方針 P4.
- ^ “日本の川の名の由来を教えてください”. 株式会社建設技術研究所. 2019年9月7日閲覧。
- ^ a b “川と人との歴史のものがたり 四国地方の古地理に関する調査報告書”. 四国地方整備局 - 国土交通省. p. 91. 2019年9月7日閲覧。
- ^ “梼原の清流~四万川川~│ゆすはら応援隊が行く!!│雲の上の町 ゆすはら ─高知県梼原町─”. www.town.yusuhara.kochi.jp. 2019年9月7日閲覧。
- ^ Company, The Asahi Shimbun. “高知のおもしろ駅名めぐり(下)~南国土佐よ、また今度 - ことばマガジン:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2019年9月7日閲覧。
- ^ 国土交通大臣表彰 手づくり郷土賞 - 国土交通省
- ^ 「アサヒカメラ」2012年9月号 76P-78P 雨の沈下橋 椎名誠(朝日新聞社)
- ^ 「四万十川に電源開発計画 年間に十二億キロ 規模は信濃川に匹敵」『朝日新聞』昭和25年11月2日3面
- ^ 四万十川源流の森 - 水源の森百選 - 林野庁
- ^ a b “2-2 川の生物・水産資源 - 四万十町役場”. 2020年5月30日閲覧。
- ^ 東健作「四万十川におけるアユの長期的な漁獲変動と近年の特徴」『水産増殖』第58巻第3号、日本水産増殖学会、2010年、401-410頁、doi:10.11233/aquaculturesci.58.401、2020年6月1日閲覧。
- ^ a b 『Bises』2005年冬号 NO,39 橋下克彦「危うし、最後の清流四万十川」
- ^ “日本共産党2004年10月11日(月)「しんぶん赤旗」”. 2020年5月30日閲覧。
- ^ “NHK特集 土佐・四万十川~清流と魚と人と~”. NHK. 2022年4月4日閲覧。
- ^ “NHKクロニクル 1983年9月12日 総合 番組表”. NHK. 2022年4月4日閲覧。
- ^ “NHK特集「土佐・四万十川〜清流と魚と人と〜」”. NHK (2021年5月4日). 2021年5月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月6日閲覧。
- 1 四万十川とは
- 2 四万十川の概要
- 3 四万十川源流の森
- 4 四万十を扱った作品
四万十川と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
- 四万十川のページへのリンク