噴火
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 16:05 UTC 版)
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火山活動(かざんかつどう、英: volcanic activity)の一つで、マグマの性質によって、規模や様式に様々なものがある。
気象庁では、火口から固形物が水平あるいは垂直距離でおよそ100 - 300mの範囲を越したものを「噴火」として記録することになっている[2]。
噴火様式
噴火様式一覧
噴火は、様々な条件下で種々の様式をとる。
火山学者は、これを、代表的なタイプに分類し、命名している。
様式名 | 英名 | イメージ | 激しさ | 噴煙頂部の高さ | 時間スケール | 主な噴出物 | 主な形成される地形[注 1] | 主な岩石[注 2] | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
水蒸気噴火 | phreatic eruption | ![]() |
爆発的 | 10km以下程度 | 数時間~1日 | 水蒸気・水・火口周辺の固形物 | マール | - | 火山活動によって熱せられた地下水や水蒸気が、地表の固形物を吹き飛ばして急激に放出され、本質物を含まないイベントを水蒸気噴火・或いは水蒸気爆発という。しばしば火口噴出型のラハールを伴う。 |
マグマ水蒸気噴火 | phreatomagmatic eruption | ![]() |
爆発的 | 数km~10km以上 | 数時間~数日 | 水蒸気・火口周辺の固形物・火山豆石・ベースサージ | マール・タフリング | 玄武岩~流紋岩 | 火山活動によって熱せられた地下水や水蒸気が、地表の固形物を吹き飛ばして急激に放出され、本質物をある程度含むイベントをマグマ水蒸気噴火・或いはマグマ水蒸気爆発という。ウルトラブルカノ式噴火(英: Ultravulcanian)、スルツェイ式噴火(英: a Surtseyan)とも呼ばれ、特に大規模なものは水蒸気プリニー式噴火(英: Phreatoplinian)と呼ばれる。 |
ハワイ式噴火 | a Hawaiian | ![]() |
非爆発的 | - | ~数十年 | 溶岩流 | スパター丘・溶岩流 | 玄武岩 | 苦鉄質マグマで堆積物が溶岩流主体のものを指す。火口が点状ではなく、線状なものは割れ目噴火(英: fissure eruption)と呼ばれる。複成火山の場合は楯状火山を形成する。噴出量・噴出率が極めて大きいイベントは洪水玄武岩と言われる。 |
溶岩ドーム | lava dome | ![]() |
非爆発的 | - | ~数年 | 溶岩ドーム・火砕流 | 溶岩ドーム | 流紋岩・デイサイト | 珪長質マグマがゆっくりと噴出・火口上に蓄積しドーム状に成長したもの。しばしば一部或いは全部が崩壊してblock-and-ash flowタイプの火砕流が発生する。頂部が平坦なものは溶岩平頂丘と言われる。 |
ストロンボリ式噴火 | a Strombolian | ![]() |
爆発的 非爆発的 |
数十~数百m 数千m以下 |
数秒 断続的 |
スパター スコリア・溶岩流 |
スコリア丘 | 玄武岩 安山岩 |
狭義では、苦鉄質マグマの火山で赤熱溶岩片が火口から瞬間的かつ周期的に放出にされ、火山灰はほとんど伴わない噴火を指す。広義では、噴煙の高さが1000m程度以下でスコリアや溶岩流を主体としてスコリア丘を形成するような噴火を指す。 |
ブルカノ式噴火 | a Vulcanian | ![]() |
爆発的 | 10km以下 | 数秒~数分 | 火山砕屑物 | 火砕丘・降下火砕物 | 安山岩 | 噴煙を形成するよう爆発的な噴火が瞬間的に、一定の間隔で発生する。 |
準プリニー式噴火 | Subplinian | ![]() |
爆発的 | 10km以下 | 数時間~数日 | 火山砕屑物 | 火砕丘・降下火砕物 | 安山岩・デイサイト | 連続的で爆発的な噴火が数時間~数日継続する噴火。噴煙は成層圏には達せず、プリニー式噴火と比べると噴出率は低い。ベスビオ式火山(英: a Vesuvian)とも呼ばれる。 |
プリニー式噴火 | Plinian | ![]() |
爆発的 | 10km以上 | 数時間~数日 | 火山砕屑物 | 降下火砕物・火砕流台地 | 流紋岩・デイサイト | 連続的で噴煙が成層圏に到達するような爆発的な噴火が数時間~数日継続する噴火。しばしば噴煙柱崩壊型の火砕流が発生する。プリニー式の中でも特に大規模(噴出率が高い)なものは、超プリニー式噴火(英: ultraplinian)、破局噴火(英: super-eruption)などともいわれる。 |
マグマ噴火
- マグマ(本質物質)が直接地表に噴出する噴火をマグマ噴火という。
- ハワイ式噴火
- キラウエア山、マウナ・ケア山など、ハワイ島の火山でよくみられる噴火様式。流動性が高く、揮発性成分が少ないマグマが起こす噴火。爆発は起こらず、大量の溶岩が高速で流出する。
- ストロンボリ式噴火
- イタリアのストロンボリ火山でよくみられる噴火様式。ハワイ式噴火より少し流動性の低いマグマが、間欠的に小爆発を繰り返し、スコリアや火山弾を放出する。液体状の溶岩流も見られる。
- ブルカノ式噴火
- ストロンボリ火山に近いブルカノ火山でよくみられる噴火様式。流動性が低い粘性が高い安山岩質マグマの場合に多く、近年における桜島や浅間山の噴火に相当。爆発に伴って、火山灰、火山礫、火山岩塊を大量に噴出する。溶岩流は、半ば固化した塊状溶岩(ブロックラバー)となって、流動速度は遅い。ブルカノという名称は、英語の Volcano(火山)の語源となった。ちなみに、日本の火山はこの噴火が最も多い。
- プレー式噴火(プリリー式噴火)
- 成長中の溶岩ドームがプリニー式噴火など爆発的な噴火によって破壊され、block-and-ash flowタイプの火砕流が発生する噴火。ムラピ山(2006年)、セント・ヘレンズ山(1980年)など。語源となったプレー山(1902年)はプリニー式噴火。
- プリニー式噴火
- ローマ時代のポンペイ、ヘルクラネウムなどを埋めたことで有名な、79年のヴェスヴィオ火山の噴火の様式。この噴火を詳細に観察し、後世に記録を残したプリニウスにちなんで、プリニー式と命名された。基本的には、ストロンボリ式噴火の大規模なものである。火山灰や軽石などから構成される噴煙柱は、成層圏に達する。この噴煙柱が崩壊すると、巨大な火砕流(中規模火砕流)が発生し、広範囲に被害を及ぼす。富士山(宝永大噴火)、浅間山(1783年天明噴火)など。
- 準プリニー式噴火
- プリニー式噴火とストロンボリ式の中間のような噴火を準プリニー式噴火といい、間欠的に軽石の降灰や空振を伴う噴火を繰り返す。
- ウルトラプリニー式噴火(カルデラ噴火、破局噴火)
- プリニー式噴火の中でもVEI6以上の噴火を指す。発生頻度はそれほど多くないが数十万年~数百万年周期で発生し、火山の噴火としては最大級。VEI6レベルの噴火で最も最新の噴火は1991年のフィリピンの、ルソン島にあるピナトゥボ山であり、VEI7~8クラスの噴火を起こした火山は、トバ湖、イエローストーン、鬼界カルデラ等がある。カルデラ噴火と呼称されることもあるが、爆発的ではないハワイ式噴火でもカルデラは形成されることがある。
- 洪水玄武岩
- 洪水玄武岩は、数千万年に1回程度発生する。地表が大規模に割れ、大量の溶岩が短期間に地表に供給される。例えば、インドのデカン高原の玄武岩面積は、日本全土の約1.5倍に相当する。発生原因について、最近、プルームテクトニクスで議論されている。
註釈
出典
- ^ 奥野充、降下テフラからみた水蒸気噴火の規模・頻度 金沢大学文学部地理学報告 第7号 (1995) p.1-24, hdl:2297/1514
- ^ “[防災メモ] 噴火の記録基準について (PDF)”. 火山活動解説資料:月間火山概況(2005年). 気象庁 (2005年5月9日). 2015年5月30日閲覧。
- ^ “Glossary”. volcanoes.usgs.gov. アメリカ地質調査所 火山ハザードプログラム. 2020年7月4日閲覧。
- ^ Vic Camp. “How Volcanoes Work”. http://sci.sdsu.edu/. Project ALERT. 2020年7月4日閲覧。
- ^ R.A.F. Cas; J.V. Wright (1987) (英語). Volcanic Successions, Modern and Ancient: A Geological Approach to Processes, Products, and Succession. Unwin Hyman. p. 528. ISBN 978-0045520213
- ^ 防災メモ 噴火の定義と規模 (PDF) 気象庁
- ^ 松田時彦、中村一明、水底に堆積した火山性堆積物の特徴と分類 鉱山地質 20巻 (1970) 99号 p.29-42, doi:10.11456/shigenchishitsu1951.20.29
- ^ 島村 2017, p. 33.
- ^ 早川由紀夫、「噴火マグニチュードの提唱」 『火山』 1993年 38巻 6号 p.223-226, doi:10.18940/kazan.38.6_223
- ^ a b “日本の火山 - データ表記法”. 産総研. 2017年12月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k アメリカ地質調査所; 国際火山学及び地球内部化学協会; 都市火山委員会; ニュージーランド地質核科学研究所. 火山灰の健康影響. インターナショナル・ボルケニック・ヘルス・ハザード・ネットワーク (IVHHN) 2016年1月22日閲覧。
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