噂
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噂は口コミ、また歴史的には落書(落し文)[3]、現代ではインターネットなどの媒体を通じて流布される[4]。
定義
流言・飛語
流言(りゅうげん)とは、正確な知識や情報を得られず、明確な根拠も無いままに広まる噂のこと。俗説、風説、流説ともいう。ある一部での話が連鎖的に広まり、それがやがて全体に広がっていく形態を取る。白川静によれば、中国の古代の歴史書書経に既に流言の例が見られるという[5]。日本での流言の古い歴史は1600年ごろまでさかのぼる。
飛語(蜚語・ひご)も、根拠のない無責任な噂を意味する言葉で、流言と合わせて流言飛語(流言蜚語)という四字熟語を構成する。
デマ
デマとはデマゴギー(独: Demagogie)の略で、本来は政治的な目的を持って意図的に流す嘘のことであり、転じて単なる嘘や噂、流言などを指すこともある。前者の意味のデマを流す人物のことをデマゴーグ(独: Demagog)という。
噂や流言は、しばしば(前者の意味での)デマゴギーだったのではないかと捉えられることがある(陰謀論の項も参照)。1990年代後半以降は、インターネットにあるブログや電子掲示板やSNSから広まる事例も増えている。
ゴシップ
ゴシップ(gossip)とは、巷で伝聞される興味本位の噂話のことを指すが、特にマスメディアにおいては芸能人などのゴシップを、「不祥事」・「醜聞」(しゅうぶん)を意味する「スキャンダル」(scandal)という表現で伝えることが多い。この類のネタにした記事を「ゴシップ記事」、さらにこのゴシップ記事の類を多数掲載している新聞・雑誌のことを「ゴシップ紙」「ゴシップ誌」と呼ぶことがある。
流言・デマの発生条件
流言の発生は、「情報の重要さ」と「情報の不確かさ」(嘘と本当の間に極大値を持つ)の積で与えられるとされる。
- どうでもいいこと(重要性低)が嘘に決まっているあるいは本当に決まっている(不確かさ極小)なら、流言発生はない。
- 大切なこと(重要性高)が嘘に決まっているあるいは本当に決まっている(不確かさ極小)なら、流言発生は噂話や伝言に留まる。
- 大切なこと(重要性高)が嘘か本当か分からない(不確かさ極大)ときに、流言が発生する。
流言や噂が発生する動機は、曖昧な状況に対する主観的解釈(自己の内的世界の投影)であり、発生そのものを抑止するのは原理的に困難である[6]。
さらに、流言が発生するにはある条件を満たしているとより広がりやすくなる傾向があるとされる。
噂が広がる要因の一つに“話をする人”が挙げられる。その人に信用がある、または情報をよく知っているなどの条件が重なれば、聞き手はそれが本当であると信じてしまう(検証せずに鵜呑みにしてしまう)、次々と伝播していく。さらに、「これはためになる」と思い込むことから、良かれと思って(=善意で)自分の周囲の人や知人に広く伝播させてしまう傾向が強い。パソコン通信時代、「LHAにウイルスが混入」「○○地方から当たり屋グループが」「輸血で必要なためB型Rhマイナスの人を探しています」などといった書き込みが伝播したこともある。いずれも善意の情報を装ったものであり、のちのチェーンメールのプロトタイプとも言える。
流言の伝え手、受け手側の心理的な要因として、「不安」と「批判能力」が重要である。一般に、人々の不安が高い状態(例:災害発生直後など)では、流言に対する被暗示性が高くなり、流言は受け入れられやすくなり、また伝達されやすくなる。また、受け手側でも、不安が強い人ほど流言を信じやすくなるという傾向がみられる。一方、流言を受け取っても、批判能力の高い人の場合には、他の情報源にあたってチェックするなどの情報確認行動をとることにより、真偽を見分け、流言の伝播を食い止めることができる。1938年10月にアメリカでSF「宇宙戦争」のラジオドラマ放送をきっかけとして起こったパニック騒ぎでは、批判能力(ここでいう批判とは日本のネット上で用いられる「無責任な誹謗中傷」の意味ではなく、自分の判断が正しいかを確認する能力を意味する)の低い人ほど、番組で連呼された「火星人襲来!」を事実と勘違いしてパニックに陥りやすかったという調査結果が報告されている(実は聴いている放送を他局に変えればそのような事実はないことがすぐに確認できたのである)。
また、社会的情勢が不安定である場合、噂が広がりやすいとされる。例えば、石油ショック・不況といった何らかの社会情勢の不安定化、大地震などといった天変地異、伝染病の流行などがその契機になると見られており、人間の、危機や不安に対する自己防衛本能、最悪の場合を想定してそれに備えようとする本性との関連が指摘される。
インターネット社会になると、社会に衝撃を与える大事件や社会的に耳目を集める事件が発生した場合、「義憤」に駆られた人物の強い「正義感」によって容疑者自身や親族、所属する団体の情報を暴いて公表する事例が多数みられるようになる。しかし、それらの情報は限られた情報からの憶測と思い込みの積み重ねで推測されたもので、誤った情報であることも多く、全く無関係な人物や団体に抗議のメールや電話が殺到し、新たな事件となり「正義感」に駆られた人物が逮捕される事案もみられるようになった。
噂を抑制するには、当事者以外の信頼できる第三者によって正しい情報を報じる方法が有効とされており、箝口令のような言論統制は逆効果になる例が多い[6]。しかし、「事実よりもウソを好む」人間もおり、噂の性質によってはこの方法にも限界がある[6]。
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- ^ “不妊、実験用ネズミ全滅、遺伝子組み換え等の“偽情報”出回る… ワクチンで横行するデマ 投稿した人が問われ得る罪(関西テレビ)” (日本語). Yahoo!ニュース. 2021年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月11日閲覧。
- ^ “落書とは” (日本語). コトバンク. 2021年11月1日閲覧。
- ^ “噂の拡がり方” (日本語). 株式会社 化学同人 (2007年7月1日). 2021年11月1日閲覧。
- ^ 白川『字通』の「流言」の項目参照。周の武王が死亡した後、後継者の成王を補佐していた大臣の周公旦に対して、謀反を起こした管叔らが「周公旦が王位を奪おうとしている」という流言を行ったというもの。
- ^ a b c 木下富雄 日本心理学会(編)「うわさのコントロールは可能か」『心理学ワールド:50号刊行記念出版』 日本心理学会 2011 pp.221-226.
- ^ 加藤直樹『九月、東京の路上で―1923年関東大震災ジェノサイドの残響』
- ^ 山岸秀『関東大震災と朝鮮人虐殺―80年後の徹底検証』早稲田出版、2002年
- ^ 広井脩『流言とデマの社会学』文春新書、2001年
- ^ 桑原真瑞『吁人間』霊肉統一団、1924年
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- ^ a b “佐賀新聞創刊125周年タイムトリップ1973(昭和48)年”. 佐賀新聞 2018年6月18日閲覧。
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- ^ “<外国人犯罪デマ>被災地半数聞き86%信じる”. 河北新報. (2017年1月16日). オリジナルの2018年1月13日時点におけるアーカイブ。 2017年1月16日閲覧。
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- ^ AERAdot.トイレットペーパーも消えた 安倍首相が「冷静な購買」呼びかけもうデマが止まらない 2020年2月29日20:34更新 同日閲覧。
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- ^ 通天閣に「射っちゃダメ」 デマ画像拡散に怒り 産経新聞 2021年211月5日
- ^ 村上義人「手拭いの旗暁の風に翻る」より、当時の社会状況描写
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- ^ 茨城新聞 昭和37年4月1日号掲載
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- ^ Jean-Noël Kapferer。HEC経営大学院教授。ブランドマーケティングの研究者。
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