和菓子 材料

和菓子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 16:42 UTC 版)

材料

豆類と餡

小豆餡(粒あん)

和菓子の材料には様々なものがあるが、基本となるものは類、米粉などの粉類ならびに砂糖類である[34]。特に豆類から作られるは、和菓子の基本と言われるほど重要視される。よくみられる黒い餡は赤あんと言い、主に小豆によって作られる。餡を作る際、漉して豆の皮を取り去ったものがこしあん、豆の粒を残したものが粒あん、皮ごとすりつぶしたものがつぶしあんと呼ばれる。また水飴を多く加えたものをネキあんまたは飴あんと言う[35]

白あんは手亡(てぼう)、大福豆(おおふくまめ)といったインゲン豆の種類から作られるこしあんであるが、高級品として白小豆から作るものもある。青エンドウは甘く煮ることでうぐいす豆となり、また青色のこしあんであるうぐいす餡の原料となる[34]

白あんからは、ぎゅうひ等をまぜて作る練り切り小麦粉米粉をまぜて作るこなしなどが作られる。また各種の餡を漉し器で漉してそぼろ状にしたものをきんとんまたはそぼろという(薯蕷で作るものもある)。上生菓子ではこれらを組み合わせ、着色や細かな細工を施して季節の風物が美麗に表現される[36]

豆類はこれらの餡のほか、炒って炒り豆としたり、砂糖液を絡めたりしてつくる豆菓子の材料にもなる[37]

粉類・米粉

米粉

粉類は米粉小麦粉が中心となるが、蕎麦などを挽いた粉も使われる[38]。米粉は餅や団子、ぎゅうひ、煎餅等の材料であり、小麦粉は各種の焼き物菓子の生地などに使用される。以下は米粉を中心に解説する。

米粉は粘り気の多いもち米によるものと、比較的粘りの少ないうるち米によるものとに大別される。もち米を生のまま粉にしたものを餅粉(または求肥粉)と言い、餅菓子やぎゅうひ団子(上新粉と混ぜる)の材料となる。もち米を水を加えながら潰し、乾燥させたものが白玉粉(または寒晒し粉)であり、これもぎゅうひや、白玉団子の材料となる[38]。なお「ぎゅうひ」は水飴を混ぜるもので、配合によって求肥餅とも求肥飴とも呼ばれ、各種の和菓子の素材として広く用いられる[39][40]

もち米を蒸したのち、乾燥させてつくる道明寺糒(どうみょうじほしい)をあらく挽いたものが道明寺粉で、道明寺桜餅やみぞれ羹の素材となる。同じものを細かく砕いて焼いたものが新引粉(しんびきこ)で、落雁や、菓子の仕上げに上からまぶして使うまぶし粉などに使われる。道明寺粉に似るが、餅を焼いてから挽いたものはみじん粉(または寒梅粉)と言い、これも各種の生地のつなぎ材などに用いられている[38]

うるち米を生の状態で加工したものを新粉上新粉上用粉と言う。これは粒の細かさによって呼び分けられるもので、新粉がもっとも粒が大きく、上用粉が粒が小さい。上新粉は草餅柏餅、また餅粉と混ぜて団子粉をつくり団子の材料とされる。上用粉からはういろうや、薯蕷をまぜた薯蕷饅頭などが作られる[38]

砂糖、その他

砂糖は菓子に甘味を付ける役割のほか、保水性により柔らかさを保ったり、保存性を高める役割を果たす。和菓子には一般の白砂糖(上白糖)、白双糖グラニュー糖なども使われるが、特に珍重されるのが高級品の和三盆で、やや黄みがかった色と独特の風味を持ち、そのまま押し固めて干菓子にすることが多い。黒砂糖かりんとうなどを作るのに使われている[38]

以上のほかにも様々なものが和菓子の材料になる。水飴は前述のように飴菓子を作る材料になるほか、豆などに掛けて掛もの菓子を作ったり、餡や生地のつなぎとして使われたりする。寒天は羊羹・水羊羹や金玉羹、みつまめなどの材料となり、他に葛切りなどを作る葛粉わらび餅を作るわらび粉などからも透明感のある涼味の和菓子が作られる。薯蕷(ヤマノイモ)は、白さを生かし薯蕷饅頭、軽羹、練り切りなどの材料とされる。


注釈

  1. ^ 茶が日本に伝わったのは奈良時代初期の729年で、遣隋使によってもたらされたものであったが、茶の栽培と喫茶の習慣が普及したのは栄西以降であった[13]
  2. ^ 「和菓子」が言葉として定着したのは第二次世界大戦の後である。それ以前には「日本菓子」や「本邦菓子」など様々な呼び方があった[19]

出典

  1. ^ 山本候充編 『百菓辞典』 278頁。
  2. ^ a b 和菓子」 世界大百科事典 第2版、2016年8月22日閲覧。
  3. ^ a b 早川幸男 『菓子入門』 16頁。
  4. ^ a b 早川幸男 『菓子入門』 46-47頁。
  5. ^ その2 季節と和菓子 | 全国和菓子協会”. 2021年6月14日閲覧。
  6. ^ a b 和菓子の歴史”. 農林水産省. 2024年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月22日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 駆け足でたどる和菓子の歴史”. 国会図書館. 2024年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月22日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g その1和菓子の歴史”. Japan Wagashi Association. 2024年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月22日閲覧。
  9. ^ 早川幸男 『菓子入門』 7-8頁。
  10. ^ a b c d 『和菓子の基本』 26頁。
  11. ^ 早川幸男 『菓子入門』 8頁。
  12. ^ 早川幸男 『菓子入門』 8頁。
  13. ^ a b 早川幸男 『菓子入門』 8-9頁。
  14. ^ 早川幸男 『菓子入門』 9頁。
  15. ^ a b c 早川幸男 『菓子入門』 10頁。
  16. ^ シュガーロードの砂糖文化とそのお菓子”. 独立行政法人 農畜産業振興機構 (2022年7月11日). 2024年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月23日閲覧。
  17. ^ 日本遺産 (Japan heritage)”. 長崎県. 2024年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月23日閲覧。
  18. ^ a b c 『和菓子の基本』 27頁。
  19. ^ 青木直己 『図説 和菓子の今昔』 13頁。
  20. ^ 早川幸男 『菓子入門』 11頁。
  21. ^ 早川幸男 『菓子入門』 12頁。
  22. ^ 早川幸男 『菓子入門』 12・16-47頁。
  23. ^ 『和菓子の基本』 30-31頁。
  24. ^ 全国菓子工業組合連合会. “和菓子の分類”. お菓子何でも情報館. 2021年3月16日閲覧。
  25. ^ 宮内昭、西浦孝輝、「菓子(その2)」 調理科学 17巻 (1984) 3号 p.156-164, doi:10.11402/cookeryscience1968.17.3_156
  26. ^ 早川幸男 『菓子入門』 45-46頁。
  27. ^ 『和菓子の基本』 42頁。
  28. ^ a b c 早川幸男 『菓子入門』 46頁。
  29. ^ 中山圭子 『事典 和菓子の世界』 121-124頁。
  30. ^ 中山圭子 『事典 和菓子の世界』 276頁。
  31. ^ 中山圭子 『事典 和菓子の世界』 274-275頁。
  32. ^ 早川幸男 『菓子入門』 47頁。
  33. ^ 『和菓子の基本』 22-25頁。
  34. ^ a b 『和菓子の基本』 28頁。
  35. ^ 『和菓子の基本』 33頁。
  36. ^ 早川幸男 『菓子入門』 34-37頁。
  37. ^ 早川幸男 『菓子入門』 44頁。
  38. ^ a b c d e 『和菓子の基本』 29頁。
  39. ^ ぎゅうひ【求肥】」 世界大百科事典 第2版、2016年8月22日閲覧。
  40. ^ 早川幸男 『菓子入門』 37頁。
  41. ^ 洋食欧米食と和食との融合 キッコーマン国際食文化研究センター 2018年5月13日閲覧
  42. ^ 日替りネオ和菓子 次世代のクリエーター特集(マイフェバ)
  43. ^ 話題の『ネオ和菓子』が気になる!(株式会社バウコミュニケーションズ、2016年2月2日)
  44. ^ 食べるアートだ ネオ和菓子10選日本経済新聞電子版、2017年3月5日)
  45. ^ 金沢駅で買える、大人可愛い和×洋コラボのネオ和菓子オールアバウト、2015年6月24日)
  46. ^ 注目は老舗二代目やスターパティシエの“ネオ和菓子”「手みやげベスト5」(ananweb、2018年11月2日)
  47. ^ 細田安兵衛『江戸っ子菓子屋のおつまみ噺』慶應義塾大学出版会、2009年5月25日、236頁。 






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