名字 概説

名字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/19 15:06 UTC 版)

概説

世界的にはイギリスドイツのように移民が集まる国では名字の数が多くなり、世界中の名字が集まる状態であるが[1]中国韓国では一文字姓が原則とされているので種類が少なく、特に韓国では約280種類しかない[1]

日本の名字

日本の名字は、元来「名字(なあざな)」と呼ばれ、中国から日本に入ってきた「(あざな)」の一種であったと思われる。公卿などは早くから邸宅のある地名を称号としていたが、これが公家武家における名字として発展していった。近世以降、「苗字」と書くようになったが、戦後当用漢字で「苗」の読みに「ミョウ」が加えられなかったため再び「名字」と書くのが一般になった[要出典]。以下の文では表記を統一するため固有名、法令名、書籍名を除き「名字」と記載する。

「名字」と「姓」又は「氏」はかつては異なるものであった。たとえば清和源氏新田氏流を自称した徳川家康の場合は、「徳川次郎三郎源朝臣家康」あるいは「源朝臣徳川次郎三郎家康」となり、「徳川」が「名字」、「次郎三郎」が「通称」、「源」が「(うじ)」ないし「姓(本姓)」、「朝臣」が「姓(カバネ)」(古代に存在した家の家格)、「家康」が「(いみな)」(本名、実名)となる。

日本での名字の数は、たとえば「斎藤」と「斉藤」を別としてカウントし、「河野」を「こうの」と「かわの」で区別して別にカウントするなどという方法をとれば、一説には20万種にも達するなどとも言われるが[1]、20万種は多すぎる、実際には10万種ほどだろう、という見解を示す意見もあり、正確な推定は難しい[1]。しかし世界的に見れば多いほうであることは事実である。これほど名字が増えた要因として、日本人は他国・他地域と比べて「同族」という意識よりも「家」の意識を重要視し、同族であってもあえて名字を変えて「家」を明確にしたり、地名を用いて「家」を明らかにしたからと考えられる。 また明治新政府が、国民に名字を持つことを義務付け、その結果庶民はそれまでもともと通称としていた名字を正式に名乗り出した例の他に、新たな名字を名乗った例もあり、明治時代に一気に名字の数が増えた、という意見がある[1]。一説によると、幕末期と明治期を比べると、一気に数倍に増えたという[1]

日本人の名字の由来は、様々な分類法があるが、次のように分類することもできる[1]

渡辺高橋佐々木石川長谷川三浦千葉など[1]
山本山田池田など[1]
西喜多辰巳、乾など[1]
服部鍛冶庄司東海林、犬飼、鵜飼公文など[1]
  • 藤原氏に由来[1](ただしその多くは藤原氏と血縁的関係にないと考えられる[2]
佐藤伊藤安藤加藤など[1]

注釈

  1. ^ 現行民法における氏の性格については「家の名」だけでなく、学者の間で議論がある。井戸田博史『夫婦の氏を考える』世界思想社、2004年 ISBN 4790710750
  2. ^ たとえば、s:太平記/巻第十四では新田義貞という表記が何度も現れる。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 高澤等、森岡浩 著『日本人の名字と家紋』プレジデント社、2017、p.8-10 ISBN 4833476509
  2. ^ 宝賀寿男藤原氏概観」『古樹紀之房間』、2007年。
  3. ^ 加藤晃「日本の姓氏」井上光貞ほか『東アジアにおける社会と習俗』学生社、1984年、109-111頁
  4. ^ 坂田(2006)32-34頁
  5. ^ 大藤(1998)191頁
  6. ^ 井戸田博史「序に代えて 夫婦別姓か夫婦別氏か」増本敏子・久武綾子・井戸田博史『氏と家族』大蔵省印刷局、1999年、5頁
  7. ^ 久武綾子『夫婦別姓 その歴史と背景』世界思想社、2003年、64頁、奥富敬之『名字の歴史学』角川書店、2004年、7-8頁、坂田聡『苗字と名前の歴史』吉川弘文館、2006年、43頁、豊田武『苗字の歴史』吉川弘文館、2012年、161-163頁、洞富雄『庶民家族の歴史像』校倉書房、1966年、160-180頁
  8. ^ 大藤(2012)190頁
  9. ^ 大藤(2012)53頁
  10. ^ 高橋秀樹『日本史リブレット20 中世の家と性』山川出版社、2004年、18頁
  11. ^ 細川涼一「女性・家族・生活」歴史学研究会・日本史研究会『日本史講座4中世社会の構造』東京大学出版会、2004年、204頁
  12. ^ 後藤みち子『戦国を生きた公家の妻たち』吉川弘文館、2009年、138-139頁
  13. ^ 大藤(1998)193頁、熊谷(1970)136-138頁
  14. ^ 井戸田博史「江戸時代の妻の氏 夫婦別氏」『奈良法学会雑誌』 2000年 第12巻 3・4号 , NAID 120005888631, 奈良産業大学法学会
  15. ^ 奥富敬之『苗字と名前を知る事典』東京堂出版、2007年、178頁
  16. ^ 大藤(2012)56頁
  17. ^ 坂田(2006)149頁
  18. ^ 大藤(2012)57頁
  19. ^ 柴桂子「近世の夫婦別姓への疑問」『総合女性史研究』21巻、130頁、総合女性史学会、2004年3月
  20. ^ 大藤(2012)58頁
  21. ^ 柳谷慶子「日本近世の「家」と妻の姓観念」『歴史評論』636号、校倉書房、2003年、14-21頁
  22. ^ 尾脇秀和『氏名の誕生』ちくま新書、2021年4月 297頁
  23. ^ 井戸田博史、国学院大学栃木短期大学史学会(編)「平民苗字必称令 : 国民皆姓」『法政論叢』第21巻p41、日本法政学会、1985年
  24. ^ 尾脇秀和『氏名の誕生』ちくま新書、2021年4月 257-262頁
  25. ^ 井戸田(2004)23頁
  26. ^ 尾脇秀和『氏名の誕生』ちくま新書、2021年4月 265頁
  27. ^ 丹羽基二『日本人の苗字 三〇万姓の調査から見えたこと』(光文社 2002年)193頁、201頁
  28. ^ 『法令全書(明治9年)』 内閣官報局1890年、明治8年11月9日の内務省伺 第十五、1453頁。井戸田(2004)52-3頁
  29. ^ 熊谷(1970)144頁
  30. ^ 井戸田(1986)152頁
  31. ^ 熊谷(1970)241-242頁
  32. ^ 尾脇秀和『氏名の誕生』ちくま新書、2021年、298頁
  33. ^ 民法草案. 第1-2編』、1877-1878年、106頁
  34. ^ 久武綾子『夫婦別姓 その歴史と背景』世界思想社、2003年、83頁
  35. ^ 井戸田(2004)58-59頁
  36. ^ 井上操「法典編纂ノ可否」星野通編著、松山大学法学部松大GP推進委員会増補『民法典論争資料集』復刻増補版、日本評論社、2013年、72頁
  37. ^ 近藤佳代子「夫婦の氏に関する覚書(2) 法史学的考察」『宮城教育大学紀要』50巻、宮城教育大学、2016年、363頁, ISSN 1346-1621, 宮城教育大学
  38. ^ 折井美耶子「明治民法制定までの妻の氏」『歴史評論』636号、校倉書房、2003年、30-32頁
  39. ^ 『官報 明治二十三年十月七日』45頁
  40. ^ 中村菊男『近代日本の法的形成』有信堂、1956年、277-278頁
  41. ^ 法典調査会『民法議事速記録 第四拾参卷』、62丁 明治27年
  42. ^ 梅謙次郎『民法要義 巻之四親族編』訂正増補20版、私立法政大學ほか、1910年、43頁
  43. ^ 奥田義人『民法親族法論全』4版、有斐閣書房、1899年、62頁
  44. ^ 洞富雄『庶民家族の歴史像』校倉書房、1966年、190頁
  45. ^ 帰化申請・良くある質問”. 行政書士菊池事務所. 2019年8月26日閲覧。
  46. ^ 森岡浩. “幽霊名字とは”. オフィス・モリオカ. 2019年8月26日閲覧。 - 『日本人の名字なるほどオモシロ事典』(森岡浩、日本実業出版社 ISBN 4534028660(1998) 98ページが初出
  47. ^ 森岡浩『名字のヒミツ 決定版!』朝日新聞出版、2009年、32-38頁。ISBN 978-4022505477 
  48. ^ 日本で一番長い名字は漢字5文字のもの 一番短い名は1文字”. NEWSポストセブン (2014年1月7日). 2019年11月25日閲覧。






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