古ノルド語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/16 06:05 UTC 版)
他言語との関係
古ノルド語の話者は、古英語や古ザクセン語、古低フランコニア語の話者と互いに意思疎通ができた、と主張する者もいる。しかし、この主張はやや誇張されているかもしれない。
現代のアイスランド語話者は古ノルド語で書かれた文章を理解することができる、とよくいわれる。なぜならば、アイスランド語は最も古ノルド語に近いとされ、現代アイスランド語の書き文字は、古ノルド語と現代アイスランド語の音素体系に基づいており、文法や語順・綴りにおいて、古ノルド語と現代アイスランド語との間にほとんど違いがないからだという。しかしながら、発音、特に母音の音素については、少なくとも他の北ゲルマン語群と同じくらい、変わってしまっている。
フェロー語は古ノルド語との類似点を多く残しているが、それでもデンマーク語やノルウェー語、ゲール語(スコットランド・ゲール語、アイルランド・ゲール語)の影響を受けている。
スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語は最もかけ離れてしまっているが、それでも未だに相互理解可能性 (mutual intelligibility) を保持しているという(端的に言えば、相手の言語を初めて聞いたときでも、ある程度理解できるということ)。なぜそれが可能かというと、これらの言語は互いに影響を及ぼし合っており、またいずれも中低ドイツ語の影響下で似たような発展を遂げてきたからだという[2]。
8世紀から10世紀にかけてヴァイキングがグレートブリテン島を侵略したことによって、古英語期の英語に影響を与えている。例えば、語頭に sk- をもつ単語(sky, skin, skirtなど)や、語頭に /gi-/, /ge-/ と発音する gi-, ge- をもつ単語(give, getなど)は、ほとんどが古ノルド語に由来する語である。また、三人称複数代名詞 "they" も古ノルド語由来の語である。
同じく東ヨーロッパに進出したヴァイキングも人名などで東スラヴ語群に影響を残している。ヘルギからオレグ、イングヴァルからイーゴリ、ヴァルデマールからウラジーミル等である。また、ルーシもノルマン人の部族ルーシ族から取られたとも言われている。
注釈
出典
- ^ たとえば三省堂『言語学大辞典』「古ノルド語」の項。ただし当項目では、8世紀以後の諸方言(古アイスランド語など)を古ノルド語、8世紀以前を「原始ノルド語」(ノルド祖語のこと)と呼ぶ事例についても触れている。
- ^ Harbert, Wayne. The Germanic Languages. Cambridge: Cambridge Univ. Press, 2007. 7-10.
- ^ a b c d e f g Old Norse Online: Lesson 1 - 1. The Alphabet
- ^ Málsnjallr-Máttigr; Mánuðr, alternated with mónoðr
- ^ 下宮・金子 (2006): p.21.
- ^ 例えばヘンリー・スウィート『An Icelandic Primer』(1895年、[1])など。
- ^ Old Norse Online: Lesson 1 - 2.1. Consonants
- ^ 下宮・金子 (2006): p.22
- ^ ウォルシュ, p. 21
- ^ 下宮・金子, p.27.
- ^ 下宮・金子, p.35.
- 1 古ノルド語とは
- 2 古ノルド語の概要
- 3 他言語との関係
- 4 音韻
- 5 文法
- 6 脚注
- 古ノルド語のページへのリンク