参議院 概説

参議院

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/28 16:20 UTC 版)

概説

日本国憲法では両議院ともに、全国民を代表する選挙された議員で組織される民主的第二次院型の二院制が採用された[3]

参議院議員の任期は、衆議院議員の任期(4年)より長い6年で、衆議院のような全員改選(総選挙)ではなく、3年ごとに半数改選(通常選挙)が行われる(憲法第46条)。また、衆議院と異なり参議院では任期途中での解散が生じない為、実際の任期の差は更に広がる。衆議院と参議院で同時選挙が実施されても、参議院議員の半数が国会の議席に残っているという特徴もある。

参議院だけに認められる権能としては、衆議院解散中における参議院の緊急集会憲法第54条2項)がある[4]

一方で、法律案の再可決(憲法第59条)、予算の議決(憲法第60条)、条約の承認(憲法第61条)、内閣総理大臣の指名(憲法第67条第2項)においては、衆議院の優越が認められている。予算については衆議院に先議権が認められているため、参議院は常に後議の院となる(憲法第60条)。また、内閣不信任決議内閣信任決議は、衆議院にのみ認められている(憲法第69条)。

もっとも、衆議院が可決した法律案について、参議院が異なる議決をした場合に衆議院が再可決するためには、出席議員の3分の2以上の多数が必要となり、議決のハードルは高い。また、参議院が議決をしない場合に、衆議院は否決とみなして再可決に進むこともできるが、参議院が法律案を受け取ってから60日が経過していなければならず、この方法を多用することは難しい。したがって、会期中に予算の他に多くの法律を成立させなければならない内閣にとって、参議院(場合によっては野党以上に与党所属の参議院議員)への対処は軽視できない。

なお、憲法改正案の議決に関しては、両院は完全に対等である。また、憲法ではなく法律に基づく国会の議決に関しても、対等の例は数多くある(国会同意人事等)。特に衆議院の多数会派と参議院の多数会派が異なる「ねじれ国会」では、内閣運営に大きな影響を及ぼす。

相対的に参議院は政権に対して一定の距離を保ち、多様な民意の反映政府に対するチェック機能といった機能を有するものと言われてきた。したがって、衆議院とは異なるプロセスで選挙や審議を行い、多元的な国民の意思を反映することが期待される[5]

しかし、参議院については衆議院と全く同一の意思を示すと「カーボンコピー」と揶揄され、衆議院と正反対の意思を示すと「決められない政治」と言われる難しい存在であるという指摘がある[6]

現行の選挙制度(参議院比例区)では、衆議院以上に全国的に見ても規模が大きい労働組合職能団体業界団体などの利益団体組織内候補や全国的な知名度が高い芸能人やスポーツ選手などの著名人(タレント候補)が当選しやすい状況があり、これも参議院の特色となっている[7][8]

河野謙三参議院議長の時代以来、参議院の性格・役割などにも関連して参議院改革の議論が行われてきており、一定の進展を見たものもある。正副議長の党籍離脱の原則、審議時間の確保、小会派への割り当て質問時間の増加、自由討議制の導入、決算重視の審査、押しボタン式投票の導入などが実現している。参議院改革論にはカーボンコピー論から来る参議院不要論に対抗するための「衆議院との差別化」の意図もある。

参議院の大きな特徴の一つとなっている押しボタン式投票は1998年(平成10年)の第142回国会から導入されたもので、利点としては「議事の迅速化(自席にあるボタンを押すことで投票を行うため、牛歩戦術のような抵抗ができない)」及び「議員個々の賛否を明らかにすることで議員の政治責任を明確化しやすい」の2点が挙げられている[9]。ただし出席議員の15以上の要求がある場合は、押しボタン式投票は行われず、衆議院同様の記名投票によって採決を行う(参議院規則第138条)[9]。このため、予算案や国務大臣に対する問責決議案など一部議案の議決については、慣例として野党から記名投票要求が出される[9]


注釈

  1. ^ 議長尾辻秀久(自由民主党)・副議長:長浜博行(立憲民主党)を含む[1]
  2. ^ 例えば、吉田武弘『戦後民主主義と「良識の府」-参議院制度成立仮定を中心に-』[18]にも由来は記載されていない。戦後、参議院設置を決めた日本国憲法の審議をした帝国議会の議事録には「良識の府」という語は登場せず、国会の議事録に初めて「良識の府」の語が登場するのは参議院設置後5年を過ぎた昭和27年7月2日参議院本会議の中田吉雄議員の発言である。

出典

  1. ^ 議員情報 会派別所属議員名一覧”. 参議院 (2022年8月5日). 2022年8月6日閲覧。
  2. ^ 会派別所属議員数一覧”. 参議院 (2023年1月18日). 2023年1月18日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i 田中 嘉彦 日本国憲法制定過程における二院制諸案 レファレンス平成16年12月号、国立国会図書館
  4. ^ 松澤浩一著 『議会法』 ぎょうせい、1987年、119-122頁
  5. ^ 前田 1997.
  6. ^ “参院に独自性は必要か 創論・時論アンケート”. 日本経済新聞. (2013年6月30日). http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASGH2700P_X20C13A6000000&uah=DF260620133648 2014年7月7日閲覧。 
  7. ^ いまさら聞けない参議院選挙の仕組み②選挙区と比例区 | 選挙ドットコム
  8. ^ [早わかり 参院選Q]組織内候補とは?…業界団体・労組の擁立候補”. 読売新聞 (2019年7月17日). 2022年6月12日閲覧。
  9. ^ a b c 押しボタン式投票 - 参議院
  10. ^ 児島襄 『史録 日本国憲法』 文春文庫 pp.152-154 (文庫版1986年5月,単行本1973年5月)
  11. ^ 日本国憲法の制定過程における各種草案の要点 衆議院憲法調査会事務局 (2000年)
  12. ^ 憲法改正要綱 - 国立国会図書館
  13. ^ 前田 1997, p. 8.
  14. ^ Record of Events on 13 February 1946 when Proposed New Constitution for Japan was Submitted to the Prime Minister, Mr. Yoshida, in Behalf of the Supreme Commander(「1946年2月13日に新憲法案が最高司令官に代理し吉田首相(実際は当時は外相)に提出された際の記録」チャールズ・L・ケーディス大佐ほか作成) "Dr. Matsumoto then said that most other countries have a two House system to give stability to the operation of the legislature. If, however, only one House existed, said Dr. Matsumoto, one party will get a majority and go to an extreme and then another party will come in and go the opposite extreme so that, having a second House would provide stability and continuity to the policies of the government. General Whitney then said that the Supreme Commander would give thoughtful consideration to any point such as that made by Dr. Matsumoto which would lend support to a bicameral legislature and that, so long as the basic principles set forth in the draft Constitution were not impaired, his views would be fully discussed."
    「松本氏はそして『他の多くの国は、立法府の活動の安定化のために二院制を取る。』と言った。『もし一院しかなければ、ある政党が多数を取れば一方の極に振れ、その後に別の政党が多数を取れば逆の極に振れるので、第2院が存在することにより政府の政策に安定性と連続性が与えられる。』と彼は言った。ホイットニー将軍は『最高司令官は、松本氏が出した二院制を支持する主張を熟慮するであろうし、憲法案にある基本原則が阻害されない限り、松本氏の考えは十分に議論されるであろう。』と言った。」
  15. ^ 二月十三日會見記略(松本憲法改正担当国務大臣の手記)
    「二院制の存在理由に付一応説明を為したる所先側に於ては初めて二院制の由来と作用を聴きたるかの如き観あり」
  16. ^ 憲法改正草案に関する想定問答(法制局)の「第4章第38条関係」(草案段階では第38条であったが、現行憲法では第42条に当たる)の3番目の問
  17. ^ 貴族院のなかの参議院 『歴史書通信』 2009 No.183 - 内藤一成
  18. ^ 吉田武弘「戦後民主主義と「良識の府」──参議院制度成立過程を中心に (PDF) 」 『立命館大学人文科学研究所紀要』第90号、立命館大学人文科学研究所、2008年3月、 155-176頁、 ISSN 0287-3303NAID 110009526362。“『立命館大学人文科学研究所紀要No.90』(2008年3月)目次ページ国立国会図書館サーチより
  19. ^ “「良識の府」は幻想か”. 読売新聞. (2007年6月13日). https://web.archive.org/web/20080220062211/http://kyushu.yomiuri.co.jp/news-spe/election07/kikaku2/k2_07061301.htm 2017年10月14日閲覧。  ※ 現在はインターネットアーカイブ内に残存
  20. ^ 竹中治堅『参議院とは何か』(中央公論新社) ISBN 978-4120041266
  21. ^ 後藤謙次「小沢一郎 50の謎を解く」(文春新書)
  22. ^ 参議院議員選挙制度の変遷(参議院関連資料集):資料集:参議院”.  . 2020年9月8日閲覧。
  23. ^ “選挙権年齢「18歳以上」に 改正公選法が成立”. 47NEWS. (2015年6月17日). https://web.archive.org/web/20150617032536/http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061701001110.html 2017年10月14日閲覧。  ※ 現在はインターネットアーカイブ内に残存
  24. ^ 会派名及び会派別所属議員数”. 参議院 (2022年10月7日). 2022年10月7日閲覧。
  25. ^ a b c d e 参議院役員等一覧”. 参議院. 2022年3月14日閲覧。
  26. ^ 参議院-今国会情報”. 2022年1月23日閲覧。
  27. ^ a b c 石倉賢一「国会会議録について」『大学図書館研究』第25巻、大学図書館研究編集委員会、1984年、 39-44頁、 doi:10.20722/jcul.769ISSN 0386-0507NAID 110004566590






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