印章
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/28 00:44 UTC 版)
類似の概念
署名
署名(しょめい)とは氏名を自書することであり、筆跡によってその署名した個人を特定することが可能である。
多くの場面で、署名が記名押印と同等のものとしてその効力を認められており、刑法の「印章偽造」やいわゆる「有印公(私)文書偽造」といった罪においても署名が印章と同等に扱われている。
なお、商法においては署名が本来の形で、その代わりとして記名押印が認められている。
花押
花押(かおう)とは、意匠化された署名の一種である。
爪印
爪印(つめいん)とは、爪の形を印章の代わりとして用いること。紀元前8世紀のメソポタミアの粘土版には、自署の代わりに爪印を用いた例が見られ、世界的にも広く風習としてみられる。拇印と同じ意味で用いられることもある。日本にも8世紀以降伝わり、天皇の裁可文書や庶民階層の吟味文書などに用いられた[145]。
拇印
その場に印章を持ち合わせていない場合、印章の代わりに拇印(ぼいん)を用いることがある。拇印とは、親指ないし人差し指の先に朱肉をつけて押す印のことであり、指紋により、押印した個人を特定することが可能である。別名は指印(しいん)。
ただし、署名が記名押印と同等のものとして広く認められていることもあり、警察での供述調書、被害届などの特殊な文書以外の公文書への拇印はあまり用いられない。
また、自らの指を切って得た血で拇印を押した誓紙や嘆願などを血判状と呼ぶ。
日本銀行券(紙幣)の印章
現在発行されている日本銀行券には、表側に「総裁之印」、裏側に「発券局長」という印章が印刷されている。詳細は日本銀行券#印章を参照のこと。
バリエーション
ゴム印
印面がゴム製の印章をゴム印という。ゴム製の印章とその印影は、その都度押した時の力や、熱、経年により変形するため、代筆やワープロによる印刷と同様記名として扱われ、公文書などで押印としての使用はできない。ゴム印はインク浸透印で代替されるケースが多い。ゴム印には以下のような用途のものがある。
- 日付印 - 日付を入れたゴム印。「#日付印」を参照。
- 回転印 - 一連の数字または日付のみのゴム印。自動で数字の繰り上げを行う回転印をナンバリングと呼ぶ。
- 住所印 - 住所を入れたゴム印。鯱雅印(こがいん)や風雅印と呼ばれる枠付きのゴム印も住所印の一種である。
- 科目印・項目印 - 簿記に用いるゴム印。
- 等級印 - 品質や大きさを表示するのに用いる(優、秀、良、並など)。
- 評価印 - 学校などで用いられる「よくできました」や「がんばりましょう」などの印面をもつもの。「よくできました」は桜花や月桂冠の枠で囲まれていたりする。
- 贈答用のゴム印としては「御祝」「内祝」「御中元」「御歳暮」「寸志」「粗品」などのゴム印が用いられる。
- 郵便用のゴム印としては「親展」「速達」「至急」「御中」「請求書在中」「納品書在中」「領収書在中」などのゴム印が用いられる。
- その他、文書用のゴム印としては「回覧」「重要」「極秘」といったゴム印が用いられる。
スタンプ
日本において、スタンプと言う場合は、判(またはゴム印)を指すことが多い。スタンプは観光地など記念用に設置されていて、鉄道駅(駅スタンプ)や道の駅、サービスエリアやパーキングエリア(サービスエリアパーキングエリアスタンプ)にも設置される。また、各地でスタンプラリーも企画されている。中には、紙などを差し込むことで電動で押印・印字されるスタンプもある。
- 「バリデーションスタンプ」 (Validation Stamp) は、運送チケット類に押印するスタンプ。航空券の発行会社名、地名、発行年月日等が刻印されており、このスタンプが押印されていない航空券は有効とみなされない。
日付印
日付印(ひづけいん)とは日付が入った印章またはスタンプのことであり、日附印、デート印、データー印とも呼ばれる。書類や金銭の収受・承認の日時を証明するために使われる。 日付欄以外に氏名や組織名、役職のほか「承認」「領収」[146]「受領」「収受」[147]などの目的に応じた印面が使われる。一般的には事務用品の部類に入り、印面はゴムで調製されることが多い。日付部分は回転式の他、差し込み式がある。
日付印の類型としては郵便局の通信日付印(いわゆる消印)、金融機関の収受印、コンビニエンスストアのストアスタンプ、鉄道会社の改札印・車内検札印、公証人・郵便認証司の印(「確定日付」を参照)、出入国等管理証印、ダッチングマシンなどがある。
関連用品
印章の関連用品として次のようなものがある。
- 朱肉
- 印章ホルダー(印鑑ホルダー) - 印章を予め装着しておくことで簡便に押印できるようにしたもの。
- 印章ケース(印鑑ケース) - 印章を入れておくためのケース。
- 印判ブラシ - 印章の先端の汚れを取るためのブラシ。
- 印矩(前述)
- 印褥(前述)、印鑑マット、捺印用マット
- 捺印器 - 多数の賞状や証書類を発行する場合などで、定位置に確実に捺印していく必要がある場合に使用される。
注釈
- ^ 1981年10月1日に常用漢字表が告示されると、行政指導により表外漢字を含む「印顆」は使わないようにという行政指導がなされたが、それ以前にはよく使われていた表現であった[5]。
- ^ ハンコを「判子」と書くのは当て字である[6]。
- ^ この意味における「印鑑」という語の用法としては公証人法第21条の「公証人ハ其ノ職印ノ印鑑ニ氏名ヲ自署シ之ヲ其ノ所属スル法務局又ハ地方法務局ニ差出スヘシ」などがある。
- ^ 例えば、かつて織田信長は「天下布武」の印章を純金で作らせようとしたものの、これが印材として適さず印影がうまく出なかったため、金と銅の合金を用いることによって解決したという[117]。その一方、金を印材とする金印は古代ギリシア末期や[85]古代ローマ末期[118]の印章、中国から古代日本へと伝わった漢委奴国王印など古くから例があり、その他にも明治時代に作られた大日本國璽など、様々な国の国璽の印材として用いられている。
- ^ なお、「印相学」は登録商標である[131][132]。
- ^ 例えば陰刻の登録を認めないことを明文化した条例がある自治体の一例として、埼玉県さいたま市[134][135]などがある。条例により明文化された根拠を確認できないものの、自治体のウェブサイトに掲示されたガイドラインで陰刻を登録不可としている自治体には、青森県青森市[136]、東京都北区 [137]、東京都新宿区[138]、長野県長野市[139]、愛知県名古屋市[140]、和歌山県和歌山市[141]、山口県山口市[142]、香川県高松市[143]、佐賀県佐賀市[144]などがある。外枠部分の有無の規定があるものの文字部分については明文化された規定がない自治体もあるため、外枠部分を設けることで陰刻印章による印鑑登録を認められる場合もある。
出典
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印章と同じ種類の言葉
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