南極大陸 研究

南極大陸

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研究

アムンゼン・スコット基地で撮影した満月オーロラの様子。基地は左遠方に見え、中央に発電所、右下に倉庫がある

毎年、28の国々から研究者たちが南極大陸に向かい、他の地域ではまねの出来ない実験に取り組む。その人数は夏には4000を超え、冬でも1000人以上が研究所に止まる[1]。南極大陸最大の研究所であるマクマード基地では、1000人を超える科学者や訪問者らが滞在可能である。

研究は、生物学地質学海洋学物理学天文学雪氷学気象学など様々な分野で行われる。地質学ではプレートテクトニクス宇宙空間からの隕石、ゴンドワナ大陸分裂の証拠探査が主に行われる。南極の雪氷学は浮氷・雪・氷河や氷床の履歴や氷床力学英語版研究が盛んである。生物学者の興味は、極寒の環境における野生生物の存在や、人間の存在が与える悪影響、そして有機体がどのように適応し生き残っているかに注がれる。医学者は、極端な環境温度下でのウイルスの拡散および人体への影響に注目する。アムンゼン・スコット基地の天文学者はドームで宇宙マイクロ波背景放射の調査を行う。多くの天体観測にとって、高地であるため大気が薄く、気温や大気中の湿度が低く、光害の影響も少ない南極大陸内陸部は、地球上でも鮮明な宇宙の画像を得られる稀な場所であり、より良い観測結果を得られる。アムンゼン・スコット基地の下1.5kmの氷の中にはアイスキューブ・ニュートリノ観測所があり、世界最大の遮蔽性と検出媒体となる性質の両方を持つ南極大陸の氷を活かしてニュートリノの観測が行われている[107]

1970年代から、南極大陸上空の大気圏にあるオゾン層の観測が行われている。1985年、ブラント棚氷英語版上のハリー研究基地で集められたデータを3人の科学者が分析し、この層に穴(オゾンホール)があることを発見した。最終的にこの穴は、人類が使用するフロン類(CFCs)によってオゾンが破壊され生じたものと判明した。1989年にオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書にてCFCsの使用が禁止され、オゾンホールは2065年頃には閉じるものと信じられた[108]。しかし2006年9月にアメリカ航空宇宙局の衛星が捉えたデータから、オゾンホールは2750万km2と、それまでの最大に広がっていることが判明した[108]

2007年9月6日、ベルギーを拠点とする国際極地財団は、気候変動を研究する初のゼロ・エミッション南極研究所プリンス・エリザベス基地英語版を公開した。国際極年英語版の一環として、1630万ドルを投じたプレハブ工法の研究所を2008年末までにベルギーから持ち込み、極圏における健康状態の調査を開始した。ベルギーの極地探険家アラン・ヒュバートは、「これはゼロ・エミッションを実現するために作られた最初の基地で、南極においていかにエネルギーが使われるべきかを示すユニークなモデルになる」と語った。気候学雪氷学および微生物学の研究は、所長であるヨハン・ベルケがプロジェクトの企画と管理の下で行われる[109]

2008年1月、Hugh CorrとDavid Vaughanが率いるイギリス南極調査研究所英語版(BAS)は、レーダーを用いた航空測量の結果から、2200年前に南極大陸の氷の下で火山の噴火が起こったという報告を、雑誌Nature Geoscienceに発表した。パイン島氷河英語版付近にあるハドソン山脈英語版氷床の下から、この1万年の中で最も大きな噴火の火山灰が発見された[110]

地質調査

フリクセル湖英語版を覆うブルー・アイス。南極横断山脈のカナダ氷河など複数の氷河から融水が流れ込んでいる

南極大陸の地質調査は、溶ける事が無い厚い層の氷に阻まれてきた。これに対し、リモートセンシング地中レーダー探査また衛星画像の使用など、新たな技術が導入される事で、氷の下に眠る構造が明らかになり始めた。

西南極の地質はアンデス山脈のそれと似ており[10]南極半島古生代終盤から中生代初頭に、海底沈殿物が隆起と変成作用を起こして形づくられた。これは火成岩の貫入および火山現象によって引き起こされたものである。西南極で一般的な岩はジュラ紀に形成された火山岩の安山岩流紋岩である。火山活動は氷床がつくられた後にも続き、その証拠はマリーバードランドアレクサンダー島にある。西南極で唯一変則的な部分はエルスワース山脈であり、ここは層序学的に大陸東部の様相に近い。

東南極の地質は変化に富み、30億年以上前の岩などを含む先カンブリア時代をさかのぼった頃に形成された。これらは楯状地を基礎とする変成岩火成岩の台地で構成される。この基礎の上には比較的近年に当るデボン紀やジュラ紀に積みあがった砂岩石灰岩頁岩などがあり、南極横断山脈が形成された。沿岸のシャックルトン山脈ヴィクトリアランドなどには断層が見られる。

南極大陸で採掘される主な鉱物資源は石炭であり[15]、記録上最初の発見はニムロデ探査においてバードモア氷河で見つけたフランク・ワイルド英語版に遡る。現在では低品位炭が南極横断山脈の様々な場所にある事が知られている。他にも、プリンスチャールズ山地英語版には豊富な鉄鉱石があり、ロス海の沖合には1973年に油田ガス田が発見された。これら鉱物資源は、環境保護に関する南極条約議定書英語版にて、2048年まで採掘が法的に禁止されている[111]

氷床コアボーリング

南極大陸の氷床をボーリングで取り出し、採取した氷床コアを分析すると堆積した時代の大気や気候を知ることができる[112][56]。また穿孔穴を利用した氷床の動きや歪みなども測定される[112]

地下のボストーク湖には微生物がいる可能性が指摘されており、2012年2月6日に湖面まで到達した掘削孔を利用した研究の結果が待たれる[56]。また、氷で閉ざされた湖の表面は木星の衛星エウロパとの類似性があり、ボストーク湖で生命が発見されればエウロパでも同様の可能性を検証する資料になりうる[112][56][注 2]。2008年2月7日、NASAのチームがアンタシー湖英語版の高アルカリ水の中に生きる極限環境微生物の調査に着手した。仮に発見されれば、メタンが中心成分をなす非常に冷たい環境における地球外生命の考察に影響を与えることが期待される[113]

隕石

火星から飛来し南極大陸で発見された隕石アラン・ヒルズ84001

南極大陸で発見される隕石群は、初期太陽系を構成した物質を知る上で非常に重要である。そのほとんどは小惑星起源のものであり、中には惑星から飛来したと考えられるものもある。最初の隕石発見は1912年に遡る。1969年には日本調査隊が9個の隕石を発見した。これらの隕石の大部分は100万年間にわたって氷の上に降り注いだもので、その上に雪が積もって埋まり、やがて何世紀もの期間をかけて移動する氷床が山地などとぶつかる所に溜まる。それが風食作用等で表面に浮き上がり発見される。南極大陸で発見される隕石は、他の地域で見つかるものよりも保存状態が良好である[114]

このような大規模な収集は、太陽系における隕石の種類や、小惑星や彗星との関係に対する理解を深める。新しいタイプや珍しい隕石も発見された。この中には衝撃によって月や火星から飛び出し飛来したものもあった。これらのうち、特に南極隕石探査英語版にて発見されたアラン・ヒルズ84001などは、火星に微生物が存在したかどうかの論争を喚起した。隕石は宇宙空間で浴びた宇宙線の履歴を残すため、地球に落下してからの経過時間を実験室の分析で明らかにできる。この経過時間、すなわち地球上に存在した時代の解析は、南極氷床の環境を知る上で有効な情報になる可能性を秘めている[114]

2006年にオハイオ州立大学の研究チームは、NASAのGRACE衛星を用いて行った重力測定の結果から、大きさ約480kmのウィルクスランドクレーター英語版を発見した。これは、約2億5000万年前に形成されたと考えられる[115]




注釈

  1. ^ 元々は/k/を発音しなかったが、語源への忠実さに即し"c"が加えられ、やがて綴り字発音英語版が一般化して発音されるようになった[2][3]
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