南アフリカ共和国 交通

南アフリカ共和国

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/22 10:08 UTC 版)

交通

ビクトリア&アルフレッド・ウォーター・フロントはテーブル湾に面した港で、ショッピング・センター、レストラン、ホテルなどが集まるケープタウンの新しい観光スポットである

道路

鉄道

トランスネット(Transnet)・南アフリカ旅客鉄道公社

旅客輸送量(人kg)=13億7,000万人kg

貨物輸送量(kt)=1,027億,700万kt

(旅客・貨物ともに2000年のデータ)

海運

空運

国民

人口

南アフリカ共和国の人口分布図

2009年の推計によると、人口は4,932万人。後天性免疫不全症候群 (AIDS=エイズ)による死者や白人層の国外流出が多いため、ほかのアフリカ諸国に比べると人口増加率は低く、2008年には人口が減少している。平均寿命も年々低下しており、かつて60歳代であった平均寿命は、現在では40歳代(2009年推計で48.98歳) にまで低下した。黒人層に限ればさらに低くなる。

民族

人種構成
バントゥー系民族黒人
  
79.4%
白人
  
9.2%
カラード
  
8.8%
アジア系
  
2.6%

2009年の推計によると、人種の割合は黒人(79.3%)、白人(9.1%)、カラード混血)(9.0%)、インド系(印僑)(2.6%)[22]

黒人はズールー人コサ人ツワナ人ソト人(南ソト人)、ペディ人英語版(北ソト人)、スワジ人ヴェンダ人英語版ンデベレ人英語版ツォンガ人バントゥー系民族で非常に多様であり、アパルトヘイト撤廃後は民族間の対立が深刻化している。

カラードは中央部から西部にかけての広い範囲に分布し、多くがアフリカーンス語を母語としている。ほかにコイサン人種の先住民であるサン人コイコイ人がいるが、多くは混血したため数は少ない。

白人の大半はイギリス系とアフリカーナーで、そのほかにポルトガル系やユダヤ系、フランス系ドイツ系などがいる。白人は1940年ごろには全人口の約20%を占めていたとされるが、1994年には13.6%、2009年には9.1%にまで低下した。アパルトヘイトの廃止以降、逆差別や失業、犯罪などから逃れるために国外への流出が続いており、1995年以来、国外に移民した白人はおよそ80万人に及ぶ[23]。2009年、白人人口447万人の約10%にあたる約40万人[24]が貧困層となっており、プアホワイトと呼ばれる層が出現している。アフリカーナーが急減する一方、イギリス系は増加傾向にある。

アジア系南アフリカ人の大多数はインド系(印僑)で、100万人に達し、多くがクワズール・ナタール州に住む。近年は中国系南アフリカ人英語版(およそ10万人)が急増し、黒人との対立を引き起こしている。最近はジンバブエから300万人が流入するなど、周辺国から約500万人の不法移民が流入し、治安悪化の原因となっている。

言語

母語話者(南アフリカ共和国)[25]
英語
  
9.6%
ズールー語
  
22.7%
コサ語
  
16.0%
アフリカーンス語
  
13.5%
北ソト語
  
9.1%
ツワナ語
  
8.0%
ソト語
  
7.6%
ツォンガ語
  
4.5%
その他
  
9.1%
南アフリカに於ける言語の分布
アフリカーンス語英語コサ語の3か国語による表記

公用語英語アフリカーンス語バントゥー諸語ズールー語コサ語北ソト語ソト語スワジ語南ンデベレ語ツォンガ語ツワナ語ヴェンダ語)の11言語。しかし、実質的には公用語として機能しているのは英語のみといえる。

1994年の現憲法制定以前はアフリカーンス語と英語が公用語であり両言語が政府、国会、経済、教育、標記、メディアにおいてもほぼ平等に使われていた。1994年の新憲法ではアフリカ諸語の保護育成のための多言語主義を掲げ、バントゥー諸語9言語が公用語に追加されたが、それまで共通語として機能していたアフリカーンス語を含め公用語の地位は形骸化している。エリート層主体で英語一本化の傾向が強まった結果、多言語主義の理念とはかけ離れつつあり[26]、多言語主義を推奨する機関である汎南アフリカ言語委員会 (PANSALB)もほとんど機能不全に陥っている。

宗主国イギリスから見た場合に対立する被支配者階層でもあった貧しいボーア人(アフリカーナー)に政治的実権を握らせ、アパルトヘイト政策を行わせることで黒人に対して優位に立たせ、支配階級であるイギリス系への憎悪を軽減させていた。そのアフリカーナーがアパルトヘイトの象徴として政治から失脚したことでアフリカーンス語の地位は低下。一方、宗主国イギリスの言葉である英語の地位はアパルトヘイト撤廃後には大きく上昇と対照的な様態をなしており、英国は宗主国であったにもかかわらず途中からアパルトヘイト反対へ転じたことで、アパルトヘイトの責任を免れ英語が黒人層にまで浸透した。実質的に公用語から剥奪されたアフリカーンス語は公共の場や公的機関、メディア、教育での使用が制限されたことで家庭内や同一コミュニティ内で使われるに過ぎない言語にまで地位が転落するなど、南アフリカ西部の大半の地域において最大の話者数でありながら、その地位は危機的状況にあるとされ、このままいくと言語としては消滅の危機にあるとされる。

英語

英語圏であるとされる南アフリカであるが、実際には英語はおもにヨハネスブルクケープタウンダーバンを代表とする大都市を中心に、イギリス系を中心とした白人やインド系など全人口の9.6%の人の第一言語に過ぎず、90%前後の大多数の国民にとっては教育で学ぶ言語である。しかし、イギリス植民地時代に普及した英語が共通語的役割を果たし国会や政府の公式言語として全土で使用されているが、貧困層を中心に十分に理解できない層も多く、ある程度の英語を理解できる層は全人口の半数程度に過ぎない[27]。全人口に占める割合は2011年のセンサス統計では9.6%と、2001年のセンサス統計の8.2%より大幅に増加しており、第一言語話者数は2001年の367万3,000人から2011年には489万2,623人まで増加した。おもに黒人層の間で社会的価値の低いバントゥー諸語話者から社会的成功のために必須な英語話者へと変化していることが大きいとされる[28]

人種別にみると、インド系の86.1%(109万4,317人)、白人の35.9%(160万3,575人)、カラードの20.8%(94万5,847人)の母語となっており、黒人の母語話者(116万7,913人)は黒人人口の2.9%に過ぎないが、近年は急増傾向にある。

アフリカーンス語

オランダ語を元にマレー人奴隷の持ち込んだマレー語や英語、バントゥー諸語の影響を受けたゲルマン語派の言語である。英語よりも第一言語話者が多く、北ケープ州西ケープ州を中心にアフリカーナーカラードが在住する地域で広く話されている。南アフリカの国土の半分ほどを占める西部地域はアフリカーンス語地域となっており、特に農村部での広がりが目立つ。南アフリカの地名にはボーア人(アフリカーナー)が開拓した土地が多いためにアフリカーンス語のものが多い。

以前はアフリカーンス語も英語と並んで共通語としての役割を担っており、事実上の二言語国家体制を敷いていたが、アパルトヘイト撤廃後は、ソウェト蜂起に代表されるようにアパルトヘイトという負のイメージの象徴としてのアフリカーンス語[注釈 4]への逆差別も発生しており、それまで政治的に支配していたアフリカーナーが失脚したことで、その地位は急速に低下している。

アフリカーンス語の地名や通りの名は英語やバントゥー諸語の名に変えられ、以前は二言語併記であった政府の公式文書のほか、南アフリカ航空南アフリカ旅客鉄道公社など企業名からも排除された。政界ではかつて国民党が支配していたためアフリカーンス語が政界の中心言語であったが、現在は完全に排除されている。国営の南アフリカ放送協会のテレビ放送も、以前は半分の番組がアフリカーンス語で制作されていたが、現在ではほとんどが英語に変わった。教育機関などにおいても、それまでアフリカーンス語で教育を行っていた学校の閉鎖や英語化が行われ、アフリカーンス語話者にとって母語での教育という選択肢も奪われている。国内の多くの大学でもそれまで行われてきたアフリカーンス語による教育が廃止・削減され、英語へと変わっており、国内最高学府でありアフリカーンス語のみで教育が行われていたステレンボッシュ大学においても、英語の使用が認められアフリカーンス語使用率はどんどん縮小している。それに対して、アフリカーンス語話者は教育の地位を奪われていると反発しており、新たなアフリカーンス語の大学の設置運動に対しても黒人がアパルトヘイトの復活であると激しく反発しているなど社会問題となっている。

このように、白人のアフリカーナーのみならず、カラードや一部の黒人などの白人以外の母語でもあり、それまで共通語としても機能していたアフリカーンス語の排除は問題となっており、結果としてアフリカーンス語話者の英語化や海外への大量流出を引き起こしている。このままいくと、およそ国内に第一言語として約600万人、第二言語として約1,000万人もいるアフリカーンス語話者も将来的には国内から絶滅することが危惧されている。

上記の事情にもかかわらず、2011年センサスによると、人口に占める割合は13.5%と2001年のセンサスに比べ0.2%増加した。第一言語話者数も2001年の598万3,000人から2011年には685万5,082人へと増加した。人種別にみると、カラードの75.8%(344万2,164人)、白人の60.8%(271万0,461人)の母語となっており、黒人の母語話者(60万2,166 人)も全体の黒人人口の1.5%に過ぎないものの実数では決して少なくないなど、母語話者数ではカラードが最大を占める等、白人だけの言語とは言えなくなっており、アパルトヘイトを行った白人の抑圧の言語というレッテルが間違いであると分かる。

バントゥー諸語

新言語憲法で公用語にバントゥー諸語で南バントゥー語群に属するズールー語コサ語スワジ語南ンデベレ語北ソト語ソト語ツワナ語ツォンガ語ヴェンダ語の9言語が指定された。実際、ほとんどの黒人にとっての第一言語・日常言語となっている。中でもズールー語は国内でもっとも多くの人に話されているが、それでも全体の22.7%に過ぎず、それも東部に限定される。コサ語、スワジ語、ンデベレ語、南ンデベレ語もズールー語と同じングニ諸語に属し意思疎通には問題ない。また、北ソト語ソト語ツワナ語はソト・ツワナ語群に属し類似性が高い。

鉱山労働者によって生み出されたファナガロ語英語版というズールー語を基盤に英語やアフリカーンス語を混ぜたバンツゥー系のピジン言語リングワ・フランカ)もあるが、近年は政府により英語が共通語として強化されているために衰退傾向にある。実際に、2011年のセンサスでは2001年センサスと比較すると、南ンデベレ語ツォンガ語ヴェンダ語のみが増加し、それ以外の割合はすべて低下したことから、バントゥー諸語から英語話者へと変わりつつある傾向が見られる。バントゥー諸語話者の黒人層の間では貧困から抜け出すためには英語の習得が必要不可欠となり、その結果、黒人言語の衰退を招くと言う悪循環を招きつつあり、一向に黒人言語の地位は低いままで、状況は改善されていない。黒人エリート層ほどバントゥー諸語を軽視し、英語を重視する傾向が強くなっており、その点では植民地支配を脱してもなお宗主国の言語をより一層重視しているほかのブラックアフリカ諸国と共通した問題がある。

言語統計

南アフリカで使用される言語(2011年統計)[29][30]

言語 話者人口 % 話者が多い州(州全体の中の割合)
ズールー語 11,587,374 22.7% クワズール・ナタール州77.8%、ムプマランガ州24.1%、ハウテン州19.8%
コサ語 8,154,258 16.0% 東ケープ州78.8%、西ケープ州24.7%、フリーステイト州7.5%、ハウテン州6.6%、北西州5.5%、北ケープ州5.3%
アフリカーンス語 6,855,082 13.5% 北ケープ州53.8%、西ケープ州49.7%、フリーステイト州12.7%、ハウテン州12.4%、東ケープ州10.6%、北西州9.0%、ムプマランガ州7.2%
英語 4,892,623 9.6% 西ケープ州20.2%、ハウテン州13.3%、クワズール・ナタール州13.2%、東ケープ州5.6%
北ソト語 4,618,576 9.1% リンポポ州52.9%、ハウテン州10.6%、ムプマランガ州9.3%
ツワナ語 4,067,248 8.0% 北西州63.4%、北ケープ州33.1%、ハウテン州9.1%、フリーステイト州5.2%
ソト語 3,849,563 7.6% フリーステイト州64.2%、ハウテン州11.6%、北西州5.8%
ツォンガ語 2,277,148 4.5% リンポポ州17.0%、ムプマランガ州10.4%、ハウテン州6.6%
スワジ語 1,297,046 2.5% ムプマランガ州27.7%
ヴェンダ語 1,209,388 2.4% リンポポ州16.7%
南ンデベレ語 1,090,223 2.1% ムプマランガ州10.1%
その他の言語 106,2913 2.1%
合計 50,961,443 100.0%

都市圏で使用される言語(2011年統計)[31]

都市圏名 人口 母語話者の割合%
ヨハネスブルク 4,434,827 ズールー語23.41%、英語20.10%、ソト語9.61%、ツワナ語7.68%、アフリカーンス語7.28%、北ソト語7.26%、コサ語6.83%、ツォンガ語6.58%
ケープタウン 3,740,026 アフリカーンス語35.7%、コサ語29.8%、英語28.4%
エテクウィニ 3,442,361 ズールー語62.82%、英語26.77%、コサ語3.91%、アフリカーンス語1.72%
エクルレニ 3,178,470 ズールー語28.81、英語11.99%、アフリカーンス語11.92%、北ソト語11.40%、ソト語10.02%、コサ語8.02%、ツォンガ語6.63%、ツワナ語2.87%
ツワネ 2,921,488 北ソト語19.91%、アフリカーンス語18.83%、ツワナ語15.05%、ツォンガ語8.64%、英語8.58%、ズールー語8.51%、南ンデベレ語5.74%、ソト語5.28%
ネルソン・マンデラ・ベイ 1,152,115 コサ語53.92%、アフリカーンス語29.34%、英語13.46%
バッファローシティー 755,200 コサ語78.83%、、英語11.00%、アフリカーンス語7.17%
マンガウング 747,431 ソト語53.27%、アフリカーンス語16.23%、ツワナ語12.64%、コサ語9.91%、英語4.31%

おもな地区・旧都市で使用される言語(2011年統計)

地域・都市名 人口 母語話者の割合%
ヨハネスブルク 957,441 英語31.14%、ズールー語19.60%、アフリカーンス語12.11%、コサ語5.23%、南ンデベレ語4.95%、北ソト語4.45%、ソト語4.51%、ツワナ語4.10%、ツォンガ語3.28%
ダーバン 595,061 英語49.75%、ズールー語33.12%、コサ語5.92%
ケープタウン 433,688 英語67.68%、アフリカーンス語22.53%
サントン 222,415 英語63.91%、アフリカーンス語7.40%、ズールー語6.29%
プレトリア 741,651 アフリカーンス語47.67%、英語16.38%、北ソト語8.02%、ツワナ語5.44%
ポート・エリザベス 312,392 アフリカーンス語40.19%、英語33.25%、コサ語22.24%
ブルームフォンテーン 256,185 アフリカーンス語42.53%、ソト語33.36%、英語7.47%、コサ語7.10%、ツワナ語5.87%
ステレンボッシュ 155,733 アフリカーンス語67.66%、コサ語20.78%、英語7.22%
キンバリー 96,977 アフリカーンス語55.48%、ツワナ語18.74%、英語15.56%
ネルスプロイト 58,672 アフリカーンス語40.19%、英語33.25%、スワジ語20.2%
ソウェト 1,271,628 ズールー語37.07%、ソト語15.53%、ツワナ語12.87%、、ツォンガ語8.86%、コサ語8.68%、南ンデベレ語4.95%、北ソト語5.14%、ヴェンダ語4.48%
ピーターマリッツバーグ 223,448 ズールー語57.03%、英語28.94%
ポロクワネ 628,999 北ソト語80.36%、アフリカーンス語5.45%
ルステンブルク 549,575 ツワナ語53.93%、アフリカーンス語9.91%、コサ語9.60%、ツォンガ語5.60%、英語5.35%
イースト・ロンドン 267,007 コサ語61.77%、英語21.21%、アフリカーンス語13.25%

宗教

2015年のセンサスによれば、人口の約86%がキリスト教徒、アニミズム祖先崇拝・伝統的なアフリカの宗教が5.4%、イスラム教徒が1.9%、他の宗教が1.5%、無宗教が5.2%であった。[32]。その他の宗教としてインド系南アフリカ人のヒンドゥー教や、ユダヤ系南アフリカ人のユダヤ教などが存在する。

結婚

一夫多妻の習慣がある部族に限って複数の女性と婚姻関係を結ぶことが認められており、第12代大統領のジェイコブ・ズマは3人の妻がいることでも有名である。

伝統的に慣習法では、結婚した女性はその夫の家族姓を称することができるが義務ではなく、夫婦別姓を選択することも可能である。

2006年からは、同性同士の結婚(同性婚)も認められるようになった。

教育

アパルトヘイト時代には黒人は事実上義務教育の対象ではなく、今日まで続く深刻な貧困の原因となっている。アパルトヘイト撤廃後、膨大な国家予算を教育費に充て、黒人への教育が強化され就学率は95%まで上昇した。しかしながら、成人の過半数はまともな教育を受けてこなかったために、深刻な失業率などをもたらす原因として大きな問題となっている。

教授言語は、初等教育は各民族語で受け、3年次より外国語としての英語教育が開始され、初等教育4年次より、中等・高等教育まで基本的にすべての科目の教授言語は英語(少数はアフリカーンス語)となる。社会参加に必要な英語やアフリカーンス語を十分に理解する層は全人口の半数以下に過ぎず、アフリカ諸語しか話せない層への社会参加を阻んでいるなど、大きな問題となっている。

2017年の推計によれば、15歳以上の国民の識字率は87.0%(男性:87.7%、女性:86.5%)である[32]。2018年の教育支出はGDPの6.2%だった[32]

大学は全部で23あり、ケープタウン大学プレトリア大学ステレンボッシュ大学、ウィットウォータースランド大学などが著名である。ステレンボッシュ大学、フリーステート大学、北西大学、プレトリア大学ではアフリカーンス語でも授業が行われている。しかし、ソウェト蜂起に発するようにアパルトヘイトの象徴ともされるアフリカーンス語による授業は縮小傾向にあり、英語にとって代わられつつある。特に経済的解放の闘士(EFF)のような黒人過激派政党によりアフリカーンス語で行う学校への襲撃等も頻発し社会問題となっている[33]。その対象は初中等教育にも及び、それらの過激派はアフリカーンス語学校の存在は黒人差別であるとしてアフリカーンス語学校の英語化を主張している。このような動きから国内のアフリカーンス語による教育は衰退の危機にあり、人口規模では白人を超え最大話者数のカラードの大半の母語ともされるアフリカーンス語の教育からの排除は新たな分断の懸念をもたらしている。

治安及び保健

医療

南アフリカ共和国は医学において、世界で初めて心臓移植を行った国でもある。1967年12月、黒人の女性ドナーより提供を受けて心臓病の白人の男性に移植を行った。背景には南アフリカに横たわる黒人と白人の差別があった[34]

HIV/AIDSの蔓延

HIVの陽性率は非常に高く、15 - 49歳女性のHIV感染率が2019年で22.83%(STATISTICAL RELEASE P0302 Mid-year population estimates 2020(南アフリカ統計局)[35] )、妊産婦HIV感染率が2011年で29.5%(The 2011 National Antenatal Sentinel HIV & syphilus prevalence survey in South Africa(National Department of Health of South Africa)[36] )となっており、2020年時点で国民全体の約13.01%(約776万人)がHIVに感染している[35]。感染経路として成人は性交渉による感染が多い。

エイズの蔓延によって、2010年までに国民全体の平均寿命は40歳以下に低下すると予想されていたが、エイズによる死者数が2006年(27万5,100人、死者に占める割合:約39.6%)をピークに減少したため、2020年の平均寿命は男性で64.6歳、女性は71.3歳となっている[35]

また、HIV感染患者が爆発的に増加した80年代、「処女とコンドームを使わずに性交をすれば完治できる」といった悪質なデマ(「悪い病気は健康な他人に伝染せば病魔が身体から出ていく」というシャーマニズムから由来した呪術的迷信)が流布したため、非白色人種、特にまだ10代前半の黒人少女がHIV感染患者から強姦され感染するケースが多発した。また2004年以降の近年、同様に「童貞(あるいは貞淑な男性)とコンドームを使わず性交すればエイズや性病が治る」と言う呪術的迷信およびデマや、性病やエイズに罹ったために男性自体に無差別報復行為と見られる理由により、数人の娼婦が誘拐グループとしての手引き人(運転手や拘束役など)を雇い、1人の男性を拉致あるいは軟禁して輪姦(かわるがわる逆レイプメイル・レイプする)してから解放する事件も多発している。また、そのほかにも同様の行為を行うためのメイル・レイプ組織が散在する(※→事例は逆レイプ#実際の事件の例、法律についてはメイル・レイプ#法律を参照)。

犯罪問題

アパルトヘイト廃止後に起きた失業問題により、南アフリカでは急速に治安が悪化した。現在、ヨハネスブルグをはじめとして南アフリカの都市では、殺人、強盗、強姦、強盗殺人、麻薬売買などの凶悪犯罪が昼夜を問わず多発している。凶悪犯罪においても、軒並み世界平均件数と比べて異常に高い犯罪率となっている。

2018年9月11日に公表された南アフリカ政府公式統計によると、2017年4月から2018年3月までに殺害された人々の数は計2万336人で、2016年4月から2017年3月まで前回の統計における1万9,016人から増加し、1日に57人殺害されている。犯罪発生率は前回の統計から6.9%増加し、アパルトヘイト廃止後の24年間で最悪となった。ベキ・ツェレ警察相は2018年9月に「南アフリカでは戦争も起きていないが、戦争に近い域にある」「毎日乗り物を乗っ取られたり、強盗に遭ったり、殺害される 」と平時にもかかわらず戦争中レベルの治安であることが普通になっていることへの危機感を述べている[7]

その発表後の南アフリカ犯罪統計(南アフリカ警察当局発表)[37]によると、2019年4月 - 2020年3月までに警察が把握しただけで2万1,325件の殺人既遂事件が、未遂事件は1万8,635件が発生しており、発表後も既遂事件は増加している(前年統計に比べ既遂は1.4%増加、未遂は1.8%減少)。1日に既遂は約58.4件、未遂は約51.1件が被害が発生している計算である。更に人口10万人当たりは、未遂を含め68.24件と日本(950件、0.75件/10万人[2019年][38][39])の約91倍となっている。
強盗認知件数は19万5,815件であり、1日の強盗発生数は約536.5件に上った。その内、武器を使用した強盗は14万3,990件で7割以上が拳銃などの武器が使用されたと発表されている。中には、全員が自動小銃で武装した強盗グループといった、現場の警察官では対応が困難なケースもある。さらに犯罪者は発砲をまったく躊躇しないケースもあり、きわめて危険である。
強姦については、認知件数は4万2,289件であり、発生率についても72.22件/10万人となっており、日本(1,405件、1.11件/10万人[2019年][38][39])の約65倍である。更に、強姦以外の性犯罪を含めた場合、5万3,293件であり、発生率は91.01件/10万人となっており、日本(6,305件、5.00件/10万人[2019年][38][39])の約18倍である。

南アフリカの男性の4人に1人を上回る27%が、「過去に成人女性または少女をレイプしたことがある」と回答するという調査結果もある[40]。また、比較的安全と思われる高級ホテルの中ですら、従業員が鍵を開けて客室に侵入し女性旅行客をレイプするといった事件も発生している。2010年11月26日に発表された、ヨハネスブルグやハウテン州などで南アフリカ政府によって行われた調査によると、男性は3人に1人を上回る37.4%が過去に女性をレイプした経験があると回答(男性の7%が集団レイプの経験があると回答)、さらに女性は25.3%がレイプされた経験があると回答した[41]

警察当局では治安改善を図るため、警察官の大量採用や防犯カメラの設置などの対策を実施しているが、依然として治安の悪い状態が続いている。近年では、強姦件数はわずかに減少傾向にあり、2011年の強姦報告件数は6万件強で、2008年の7万件よりは減った[42]

白人への攻撃激化

2017年11月時点には72人の白人の農民が殺害されている。2011年から毎年増加し始めているこの問題への対策を求めて、南アフリカ政府に数百人がデモを行っている[43]。2017年12月には与党アフリカ民族会議(ANC)の新議長に就任したシリル・ラマポーザ副大統領が国民の8割を占める黒人のために、ジンバブエで農地を荒廃させて経済も崩壊させた「白人の土地の取り上げ」をすることを表明した[44]。1998年から2016年末までに農家,1187人、その家族490人、農場従業員147人、農場にいた24人、合計1,848人が殺害されている。2010年に有名な経済的解放の闘士(EFF)のジュリアス・マレマ(Julius Malema)は、「一度革命的な歌だが、今は大量虐殺を宣告する」と、「農民を殺す」と謳っている。南アフリカが白人農家がすべて追い出されたもうひとつのジンバブエになることが危惧されている[45]

これを受け、スィドランダーズ(Suidlanders、「南の民」の意味)なる白人の互助団体がインターネット上で誕生したほか、南アフリカ共和国(の白人社会)と伝統的に関係の深いイスラエルの元軍人などから、イスラエル発祥のクラヴ・マガなる格闘技や射撃といった護身術のトレーニングを受けるなど、白人が政府に頼らず自衛を進めていく動きが出ている。




注釈

  1. ^ このほか、国際経済研究所による「The United States and the World Economy(2005年1月)」では、BRICsおよび南アフリカの5カ国にアルゼンチンインドネシア韓国メキシコサウジアラビアトルコを加えた計11カ国が今後の世界経済に大きな影響を及ぼす「LEMs(Large Emerging-Market Economies)」として取り上げられた。また、BRICs経済研究所の門倉貴史はBRICsに続くグループ「VISTA」として、ベトナム (Vietnam)、インドネシア (Indonesia)、南アフリカ (South Africa)、トルコ (Turkey)、アルゼンチン (Argentina) の5カ国を、HSBCは同じく「CIVETS」として、コロンビア (Colombia)、インドネシア (Indonesia)、ベトナム (Vietnam)、エジプト (Egypt)、トルコ (Turkey)、南アフリカ (South Africa) の6カ国を取り上げている。
  2. ^ むしろ反発したこの背景には、ボーア戦争トラウマとも言うべき諸外国への根強い不信感が指摘されている。
  3. ^ 南アフリカはアフリカ統一機構 (OAU) への加盟を認められなかった。
  4. ^ これをきっかけに、人種差別の圧政言語の象徴としてのアフリカーンス語に対して白人層が使用していたに過ぎない植民地支配の象徴でもある英語がより自由な解放言語との印象を根付かせたことが現在の英語一本化へとつながっている。

出典

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