十和田湖 概要

十和田湖

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 22:13 UTC 版)

概要

1936年に周辺の奥入瀬渓流、八甲田火山群とともに十和田八幡平国立公園に指定。青森県を代表する観光地となっており、「十和田湖および奥入瀬渓流」として文化財特別名勝及び天然記念物の指定も受ける。

西湖一帯はみなとオアシスに登録しており、十和田湖観光交流センターぷらっとを代表施設とするみなとオアシス十和田湖として観光拠点ともなっている。これは、全国唯一の湖を登録したみなとオアシスである。冬季を除き、遊覧船が就航している[4]

内水ながら、国の地方港湾に指定されている港が2つある。奥入瀬渓流入り口の子ノ口(ねのくち)港と、十和田湖南岸の中山半島西側付け根にある休屋(やすみや)港である。

国会議事堂中央広間の四隅を彩る日本の春夏秋冬を描いた油絵のうち、夏の題材とされている(田中儀一作『十和田湖と奥入瀬』)[5][6][7]

地理

十和田湖を擁する山地は、その北に位置する八甲田山と同じく、カルデラを有する火山群である。約20万年前から約15万年前の十和田火山の噴火活動で中央部が陥没した地形となり、3万5000年〜1万5000年頃の巨大噴火で水が流入してカルデラ湖が形成された[8]。最大深度326.8mは日本で3番目の深さである。湖を真上から見ると胡桃を半分に割った断面図のような形をしており、南岸には西寄りに中山半島、東寄りに御倉(おぐら)半島が突き出している。中山半島の西側付け根近くには恵比寿大黒島という小島がある[9]

東岸からは唯一の流出河川である奥入瀬川が太平洋に向けて流れ出ている[8]。十和田湖への流入河川は銀山川、大川岱(おおかわたい)川、鉛山川、宇樽部(うたるべ)川、神田川などがある[10]

御倉山(溶岩ドーム)のある御倉半島と中山半島の間にある中湖(なかのうみ)とよばれる水域が最深部であり、御倉山の東側の東湖(ひがしのうみ)や中山半島の西側の西湖(にしのうみ)と呼ばれている水域の水深は50 - 100m程度である。

衛星写真

なお、江戸時代よりの境界が不明確で、明治維新後も十和田湖面上の青森県と秋田県との境界は長らく決まっていなかった。2008年8月29日に青森市で開かれた北海道・北東北知事サミットにおいて、青森・秋田両県と沿岸の関係市町が、湖面の境界線を青森県6:秋田県4という割合で県境を画定することで最終合意した。同年11月14日に確定し、12月25日官報告示された。これにより、1871年廃藩置県以来、137年目にして県境が決定した。

具体的には、湖の北側にある御鼻部山の頂上から、西側の尾根に当たる桃ノ沢河口と87林班東端の中間点を直線で結び、南側は神田川河口を県境とする。これにより61.02km2の十和田湖は、青森県十和田市に36.61km2、秋田県小坂町に24.41km2が割り振られ、その分の地方交付税交付金(年間総額約6700万円)も増額分配される。なお増額分の交付金は、十和田湖の環境対策や観光振興に使われる。

「十和田火山」の噴火史

十和田カルデラの地形図
カルデラ壁

十和田湖は火山の山頂部に水がたまったカルデラ湖である。中世以降は噴火の記録がないものの、「十和田火山」として防災行政の監視対象になっている[11]。大規模な噴火が将来起きた場合、火砕流岩手県北西部を含む最大30km圏内に到達し、火山灰噴石はさらに広範囲に被害を与えるとのハザードマップが公表されている[12]

先十和田火山の活動が約160万年前~60万年前以前に見られる。約40万年の活動空白期を挟んで、十和田火山が約22万年前から活動を開始した。 その活動ステージは22万年前~6.1万年前の先カルデラ期、6.1万年前~1.55万年前のカルデラ形成期、1.55万年前~現在の後カルデラ期に分けられる。

22万年前から6.1万年前の先カルデラ期は、安山岩の溶岩流や軽石・スコリアを噴出した。

約10万年前からマグマの噴出量が増加し、約6.1万年前の噴火エピソードQ(奥瀬火砕流, 4.76 DRE km3以上)から低頻度で、流紋岩の大規模な火砕流を伴うカルデラ形成期となった。この活動期のうち、約3.6万年前の噴火エピソードNと(大不動火砕流, 17.87 DRE km3)、約1.55万年前の噴火エピソードL(八戸火砕流, 20.34 DRE km3)は特に規模の大きな噴火で、大不動火砕流や八戸火砕流は現在の青森市街まで到達している[13]

噴火エピソードLから現在は後カルデラ期と定義されている。この後カルデラ期では、カルデラ形成期と比べると噴火の発生が高頻度で、1イベントの噴出量が数km3DRE以下の活動となっており、デイサイトプリニー式噴火溶岩ドーム形成が主となっている[14]

約1万年前に十和田カルデラの東南部で噴火によってカルデラ内部に五色岩(または五色台)火山が形成された。五色岩火山は初期に玄武岩を噴出し山体を成長させた。その後、安山岩・デイサイトを経て流紋岩を噴出するようになった。それに伴い爆発的噴火が多発し火口を拡大していった。そして、約6,200年前の噴火エピソードC(中掫軽石, 2.52 DRE km3)で火口壁が崩壊し第一カルデラの湖水が火口に流入した。これにより中湖ができたと考えられている。

有史以降

915年延喜15年) 大噴火(噴火エピソードA)を起こした。マグマ噴出量は2.1 DRE km3[15]火山爆発指数はVEI5。この際に御倉山溶岩ドームが形成された。この噴火は過去2000年間、日本国内で起きた最大規模の噴火であったと見られる[16]。この噴火を直接記録した文献記録は現地では見つかっていないとされている[16]。京都で著された『扶桑略記』には朝日に輝きがなく月のようだったという記録がある[8]

この噴火により大規模な火砕流(毛馬内火砕流)が生じ周囲20kmを焼払った[16]。噴出物(主に火山灰)は東北地方一帯を広く覆い、甚大な被害をもたらしたと推定される。十和田火山の噴出物は通常偏西風に乗り十和田湖の東側に流れるが、この年の噴火では十和田湖の西側に流れている。これは夏のこの地方の気象現象であるやませが原因であると考えられている[17]。東の三本木原は昔の十和田火山の噴出物でできているが、やませのため西側に降下した噴出物はラハールとなって米代川を流れ下り、流域の人家を埋没させた。胡桃舘遺跡は、この折に埋没した住居址である。これら大災害を人々は三湖伝説として語り継いだと考えられている。一方で、噴出物により広大な砂地が形成された結果、人々の居住に適した環境が整い居住者の増加に影響を与えた[18] と考える研究者もいる。

常時観測火山

2016年12月1日より十和田は気象庁の常時観測火山に指定されることとなった[19]


  1. ^ 国土地理院 (2015年3月6日). “平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積 (PDF)”. 2015年3月8日閲覧。
  2. ^ 国土交通省「日本の主な湖沼」
  3. ^ 国土地理院 (2015年3月6日). “平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積(20傑) (PDF)”. 2015年3月8日閲覧。
  4. ^ 十和田湖遊覧船 十和田観光電鉄ホームページ(2018年2月4日閲覧)
  5. ^ 図書館コンシェルジュの本と街の案内所見聞調録”. 千代田区立千代田図書館 (2010年7月1日). 2021年10月15日閲覧。
  6. ^ 国会議事堂案内 中央広間:参議院”. www.sangiin.go.jp. 2021年10月15日閲覧。
  7. ^ 壁の四隅の壁画 - こくみんうさぎ国会トリビア”. 旧・国民民主党 (2018年5月〜2020年9月). 国民民主党. 2021年10月15日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i 広報とわだ 2016年(平成28年)10月号”. 十和田市. 2020年6月5日閲覧。
  9. ^ 溶岩の島「恵比寿大黒島」休屋周辺みどころ 一般社団法人・十和田湖国立公園協会(2018年2月4日閲覧)
  10. ^ 十和田湖 青森県産業技術センター内水面研究所(2018年2月4日閲覧)
  11. ^ 十和田火山防災協議会 青森県防災ホームページ(2018年2月3日閲覧)
  12. ^ 十和田火山 ハザードマップ、火砕流30キロ先到達『毎日新聞』朝刊2018年1月25日
  13. ^ 十和田湖周辺域における浅部地震活動 (PDF) 弘前大学大学院理工学研究科附属地震火山観測所
  14. ^ 火山影響評価に係る科学的知見の整備”. 原子力規制庁 長官官房技術基盤グループ (2019年). 2020年11月22日閲覧。
  15. ^ 十和田 気象庁
  16. ^ a b c 早川由紀夫、小山真人:日本海をはさんで10世紀に相次いで起こった二つの大噴火の年月日 : 十和田湖と白頭山 Bulletin of the Volcanological Society of Japan 43(5) pp.403-407 1998-10-30, ISSN 0453-4360
  17. ^ 「鷹巣地方史研究」、鷹巣地方史研究会、2005年4月第56号、p.30
  18. ^ 小野映介ほか、十和田火山AD915噴火後のラハールが及ぼした津軽平野中部の堆積環境への影響 第四紀研究 Vol.51 (2012) No.6 p.317-330
  19. ^ 八甲田山、十和田、弥陀ヶ原を常時観測火山に追加します”. 気象庁. 2016年11月18日閲覧。
  20. ^ 十和田湖の湖底堆積物の地球化学的特徴 (PDF) 日本地球惑星科学連合
  21. ^ 御前ヶ浜の鳥/休屋周辺みどころ 一般社団法人・十和田湖国立公園協会(2018年2月4日閲覧)
  22. ^ a b c 十和田湖に棲息,している魚類 (PDF) 水産庁による調査
  23. ^ 徳井 利信:十和田湖の湖水型サクラマス (Oncorhynchus masou) について 水産増殖 Vol.10 (1962) No.2 P133-136
  24. ^ 十和田湖に於けるスヂヱビLeander paucidcns (de Haan)の生態学的研究 陸水学雑誌 Vol.7 (1937) No.1 P31-44
  25. ^ 十和田湖での釣りはルールを守って楽しみましょう!! 十和田湖増殖漁業協同組合(2018年2月3日閲覧)
  26. ^ 漁獲されたヒメマスの殆どが放流魚と思われた昭和52年(1977年)と昭和53年(1978年)の話 (PDF) 社団法人 日本水産資源保護協会
  27. ^ 十和田神社 一般社団法人・十和田湖国立公園協会(2018年2月4日閲覧)
  28. ^ 十和田神社/休屋周辺みどころ 一般社団法人・十和田湖国立公園協会(2018年2月4日閲覧)
  29. ^ a b c 『霊山十和田』、斉藤利男、文化出版、2018年
  30. ^ 大町桂月(おおまちけいげつ)が交流の縁結び 十和田市ホームページ(2010年4月1日)2018年2月3日閲覧
  31. ^ 『十和田国立公園』、森田五成、十和田文化研究所、昭和57年改訂版発行
  32. ^ “再生 十和田観光 ―国立公園80周年― (1)開発の代償”. デイリー東北. (2016年4月1日). http://feature.daily-tohoku.co.jp/web2/kikaku/towada/towada01.html 2017年3月27日閲覧。 
  33. ^ 平成24年 青森県観光入込客統計 (PDF)”. 青森県観光国際戦略局. 2017年3月27日閲覧。
  34. ^ 平成27年 青森県観光入込客統計 (PDF)”. 青森県観光国際戦略局. 2017年3月27日閲覧。
  35. ^ 十和田観光ホテル、湖畔荘、十和田湖ホテル休屋桂月亭、旅の宿カントリーロード等
  36. ^ a b “<十和田湖遊覧船放置>行政手詰まり長期化も”. 河北新報. (2017年3月27日). http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201703/20170327_23023.html 2017年3月27日閲覧。 
  37. ^ 国立公園満喫プロジェクト”. 環境省. 2017年3月27日閲覧。
  38. ^ 十和田八幡平国立公園 ステップアッププログラム2020 (PDF)”. 十和田八幡平国立公園 満喫プロジェクト地域協議会 (2016年12月22日). 2017年3月27日閲覧。
  39. ^ 東京2020オリンピック聖火リレー”. 十和田市. 2021年10月15日閲覧。
  40. ^ 【聖火リレー アーカイブス(76)】 青森リレーに伊調馨さん アートのまち十和田巡る”. 47NEWS. 共同通信 (2021年6月15日). 2021年10月15日閲覧。
  41. ^ 十和田ビジターセンター 環境省ホームページ(2018年2月4日閲覧)
  42. ^ 青森県内博物館等施設一覧(2018年2月4日閲覧)
  43. ^ 十和田プリンスホテル(2018年2月4日閲覧)
  44. ^ 景観が台無し… 国立公園に「廃虚ホテル」|日テレNEWS24”. 日本テレビ (2019年11月19日). 2021年12月1日閲覧。
  45. ^ a b “<十和田湖遊覧船>企業組合が廃止届”. 河北新報. (2016年2月24日). オリジナルの2016年2月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160224084604/http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160224_23017.html 2016年2月24日閲覧。 
  46. ^ 国が強制執行、解体工事に着手/十和田湖畔のホテル”. デイリー東北 (2020年10月8日). 2021年12月1日閲覧。
  47. ^ 十和田湖冬物語2018開催 一般社団法人・十和田湖国立公園協会(2018年2月4日閲覧)
  48. ^ 大館能代空港⇔十和田湖 大館能代空港⇔八幡平・玉川温泉方面予約制乗合タクシー「愛☆のりくん」”. 大館能代空港ターミナルビル株式会社. 2018年7月19日閲覧。






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