北大西洋条約機構 介入した紛争

北大西洋条約機構

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/25 05:23 UTC 版)

介入した紛争

NATOが介入したのはボスニア・ヘルツェゴビナ紛争コソボ紛争マケドニア紛争アフガニスタン紛争2011年リビア内戦である。

2011年リビア内戦においては、2011年3月17日にリビア上空の飛行禁止区域を設定した国連安保理決議1973が採択されたことを受け、3月19日よりNATO軍が空爆を開始し[33]、反体制派のリビア国民評議会を支援。リビアが崩壊する最大の要因となった。

加盟国

NATOには北米と欧州を中心に30か国が加盟している。これらの国々の中には、複数大陸に領土を持つ国もあり、南方は北大西洋条約第6条に基づくNATOの「責任領域」を定める大西洋の北回帰線までしかカバーすることができない。当初の条約交渉で、アメリカベルギー領コンゴなどの植民地を条約から除外するよう主張した[34] [35]。しかし、フランス領アルジェリアは、1962年7月3日の独立まで対象となった[36]。この30か国のうち12か国は1949年に加盟した原加盟国であり、残りの18か国は8回の拡大ラウンドのうちのいずれか1回で加盟している。

国防費GDPの2%を超える加盟国はほとんどなく[37]、アメリカがNATOの防衛費(国防費)の34を占めている[38]

特別な取り決め

NATOの設立メンバーとして加盟したデンマークアイスランドノルウェーの北欧3か国は、自国領土に平時の恒久的な基地、核弾頭、連合国の軍事活動を(招待しない限り)認めないという3つの分野で参加を制限することを選択した。しかし、デンマークはグリーンランドにある既存の基地、チューレ空軍基地の維持をアメリカ空軍に許可した[39]

1960年代半ばから1990年代半ばにかけて、フランスは「ド・ゴール=ミッテラン主義」と呼ばれる政策のもと、NATOから独立した軍事戦略を追求した[40]。2009年にニコラ・サルコジが統合軍司令部と防衛計画委員会への復帰を交渉し、翌年には防衛計画委員会が解散した。フランスは依然として核計画グループから外れた唯一のNATO加盟国であり、アメリカやイギリスとは異なり、核武装した潜水艦を同盟に参加させることはない[41] [42]

拡大

NATOは、ドイツの再統一と冷戦の終結以来、14か国を新たに加盟させた

NATOへの加盟は、個々の加盟行動計画によって管理され、現加盟国の承認を必要とする。現在、NATOには唯一の加盟候補国としてボスニア・ヘルツェゴビナがあり、加盟の手続きをしている。北マケドニアは、NATO加盟国になるための加盟議定書に2019年2月に署名し、2020年3月27日に加盟国となった最も新しい国家である[43] [44]。その加盟は、マケドニア名称論争により、長年ギリシャに阻まれていたが、2018年にプレスパ協定により解決された[45]。その過程で互いに支え合うために、この地域の新規加盟国と加盟候補国は15年に「アドリア海憲章」を制定した[46]ジョージアも加盟希望国として名を連ね、2008年のブカレストでの首脳会議で「将来の加盟」を約束された[47]が、2014年にアメリカ大統領のバラク・オバマは、同国が加盟への「道筋を現在示していない」と述べている[48]

ウクライナと欧州やNATOとの関係は政治的に議論を呼んでおり、2014年に親露派大統領のヴィクトル・ヤヌコーヴィチを追放した「ユーロマイダン」抗議デモでは、こうした関係の改善が目標の1つとされた。ウクライナは、東欧で「個別パートナーシップ行動計画(IPAP)」を持つ8か国のうちの1つである。IPAPは2002年に始まり、NATOとの関係を深める政治的意思と能力を持つ国々に開かれている[49]。2019年2月21日、ウクライナ憲法が改正され、EUとNATOへの加盟に向けたウクライナの戦略的方向性に関する規範が、基本法の前文、3つの条項、暫定規定に明記された[50]。2021年6月のブリュッセル・サミットで、NATO首脳は、ウクライナが加盟行動計画(MAP)を不可欠のプロセスとして同盟の一員となり、ウクライナが自国の将来と外交政策を決定する権利を、もちろん外部の干渉を受けずに持つという2008年のブカレスト・サミットでの決定を改めて表明した[51]。2021年11月30日、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンは、ウクライナにおけるNATOのプレゼンスの拡大、特にロシアの都市を攻撃できる長距離ミサイルルーマニアポーランドと同様のミサイル防衛システムの配備は、ロシアにとって「レッドライン」の問題であると表明している[52] [53] [54]。プーチンは、アメリカ大統領のジョー・バイデンに対し、NATOが東方へ拡大したり、「我々を脅かす兵器システムをロシア領土の近くに設置したりしない」という法的保証を求めた[55]。NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグは、「ウクライナがいつNATOに加盟できるかを決めるのは、ウクライナとNATO30カ国だけだ。ロシアには拒否権も発言権もなく、ロシアには隣国を支配しようとする勢力圏を確立する権利もない」と答えた[56] [57]

ロシアは、ソ連指導者のミハイル・ゴルバチョフと米欧の交渉担当者の間で交わされた、ドイツの平和的統一を可能にする非公式な理解と矛盾すると考え、さらなる拡張に政治的に反対し続けた[58]。NATOの拡張努力は、モスクワの指導者プーチンからはロシアを包囲し孤立させようとする冷戦時代の試みの継続と見られることが多い[59]が、西側諸国からも批判されている[60]。2016年6月のレバダ世論調査によると、ロシアに隣接する旧東欧圏の国々であるバルト三国とポーランドにNATO軍を配備することは、ロシアにとって脅威であると考えているロシア人が68%もいることが判明した[61]。一方、2017年のピュー・リサーチ・センターのレポートで調査したポーランド人の65%がロシアを「大きな脅威」とし、NATO諸国全体で平均31%がそう答え、2018年に調査したポーランド人の67%が米軍のポーランド駐留に賛成している[62]。2016年にギャラップ社が調査した非CIS東欧諸国のうち、セルビアモンテネグロ以外は、NATOを脅威ではなく保護同盟とみなす傾向が強かった[63]。雑誌『セキュリティー・スタディーズ』の2006年の研究では、NATOの拡大は中東欧の民主主義の定着に貢献したと論じている[64]中国もまた、さらなる拡大に反対している[65]

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて

ロシアのウクライナ侵攻に反対する2022年2月の集会で、ヘルシンキの元老院広場にある皇帝アレクサンドル2世の像の前を行進するデモ参加者たち

2022年、ロシアがウクライナに侵攻した後、フィンランドとスウェーデンの世論はNATO加盟に大きく傾き、初めてNATO加盟に反対した国民よりも、加盟を支持する国民の方が多くなった。2022年3月30日の世論調査では、フィンランド人の約61%がNATO加盟に賛成し、反対16%、不明23%であったことが明らかになった。4月1日の世論調査では、スウェーデン人の約51%がNATO加盟に賛成し、反対は27%であった[66] [67]。4月中旬、フィンランドとスウェーデンの両国政府は、NATO加盟の検討を開始し、両国政府はこのテーマに関する安全保障報告書作成を命令している[68] [69]。北欧2か国が加わることで、北極圏北欧バルト海地域におけるNATOの能力が大幅に拡大する[70]

2022年5月15日、フィンランド政府は5月17日に188:8の賛成票を投じた同国議会の承認[71]後、実際にNATO加盟を申請すると発表した[72]。スウェーデン首相のマグダレナ・アンデションも5月17日にNATO加盟を申請すると発表[73]し、フィンランドとスウェーデンは5月18日に正式にNATO加盟の申請を行った[74]。しかし、トルコは、フィンランドとスウェーデンが、トルコがテロ組織に指定しているクルディスタン労働者党(PKK)と人民防衛隊(YPG)を両国が支援しているとして、両国のNATO加盟に反対の声を上げてきたが、同年6月28日にマドリードで開催されたNATO首脳会議でトルコはフィンランドとスウェーデンがPKKとYPGへの支援を取り止めることなどを条件に、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請を支持することで合意した[75] [76]

2022年7月6日、フィンランド、スウェーデンのNATO加盟に関する議定書が調印され、北欧二ヶ国のNATO加盟が事実上内定した。2022年10月末現在、ハンガリーとトルコを除くNATO加盟国が批准を完了している。2022年11月25日、ハンガリーは来年の早い時期に北欧2カ国の加盟を批准すると表明した。
2022年10月1日、ゼレンスキー大統領がウクライナのNATOへの加盟申請を表明した[77]

第三国とのパートナーシップ

平和のためのパートナーシップ(PfP)プログラムは1994年に設立され、各パートナー国とNATOとの間の個別の二国間関係に基づいており、各国はその参加範囲を選択することができる[78]独立国家共同体の現・旧メンバー国が加盟している[79]欧州・大西洋パートナーシップ理事会(EAPC)は、1997年5月29日に初めて設立され、50の参加国すべての間で定期的に調整、協議、対話を行うためのフォーラムとなっている[80]。PfPプログラムは、EAPCの運営部門とみなされている。アフガニスタンなど、他の第三国もPfPの枠組みのいくつかの活動への参加を打診されている[81]

EUは2002年12月16日、ベルリン・プラス協定に基づき、NATOとの包括的な取り決めパッケージに調印した。この協定により、EUは、国際的危機において独自に行動しようとする場合、NATO自身が行動を起こさないことを条件に、NATOの資産を利用する可能性、いわゆる「優先交渉権」を与えられた[82]。例えば、1982年のリスボン条約第42条7項には、「ある加盟国がその領域において武力侵略の犠牲となった場合、他の加盟国はその加盟国に対し、自国の権限であらゆる手段を用いて援助および支援を行う義務を負う」と規定されている。NATOは第6条により、北回帰線以北での活動に限定されているのに対し、条約は特定の地域に全世界的に適用される。この条約は、PfPプログラムに参加しているEU諸国にも「二重の枠組み」を提供するものである。

さらに、NATOはNATO以外の多くの加盟国と協力し、その活動について議論している。地中海ダイアローグは1994年に設立され、イスラエル北アフリカの国々と同様の方法で調整を行っている。イスタンブール協力イニシアチブは、地中海ダイアローグと同じ路線の中東の対話の場として、2004年に発表された。参加4か国は、湾岸協力会議を通じてのつながりもある[83]。2018年6月、カタールはNATOへの加盟希望を表明した[84]。しかし、NATOは、NATOの設立条約第10条に基づき、欧州の国々のみが加盟できるとし、加盟を断念した。NATOとカタールは、2018年1月に安全保障協定を共に締結した経緯がある[85]

日本との政治対話は1990年に始まり、それ以来NATOはこれらの協力イニシアティブのいずれにも属さない国々との接触を徐々に増やしてきた[86]。1998年、NATOは、関係の正式な制度化を認めないものの、協力関係を強化したいというNATO各国の意向を反映した一般的なガイドラインを制定した。広範な議論を経て、2000年には「コンタクト国」という用語がNATO各国によって合意された。2012年までにNATOはこのグループを拡大し、海賊対策や技術交流などの問題を話し合うために、「地球上のパートナー」または「グローバルパートナー」という名称で会合を開くようになった[87] [88]。コンタクト国であるオーストラリアニュージーランドも戦略同盟「AUSCANNZUKUS」のメンバーであり、コンタクト国とNATO加盟国との間の同様の地域協定や二国間協定も協力を後押ししている。NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルグは、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国と緊密に協力することで、「中国の台頭に対処する」必要があると述べている[89]コロンビアはNATOの最新パートナーであり、コロンビアはNATOがパートナーに提供するあらゆる協力活動を利用することができる。コロンビアはNATOと協力する最初の、そして唯一のラテンアメリカ国となった[90]

日本

自衛隊では在日米軍が使用する武器・弾薬の相互運用性を確保するために、小銃NATO弾[注釈 4]を使用しているほか、兵器にさまざまなNATOとの共通規格を採用している。近年では、2005年にNATO事務総長が来日、また2007年には内閣総理大臣安倍晋三が欧州歴訪の一環としてNATO本部を訪問しており、人的交流の面でも新たな関係が構築され始めた。このとき、安倍が来賓として演説を行った北大西洋理事会やNATO加盟各国の代表との会談の中で、加盟各国が軒並み日本との緊密な協力関係を構築することに賛意を表したことが注目された[91]。これ以降、NACの下部組織である政治委員会と自衛隊との非公式な協議が開催されたり、ローマにあるNATO国防大学の上級コースへ自衛官が留学するようになったり、NATOの災害派遣演習へ自衛官がオブザーバーとして参加するようになったり、実務レベルでの提携も行われるようになったりした。2014年5月6日にも、安倍が欧州歴訪の際にNATO事務総長のラスムセンと会談[92]海賊対策のためのNATOの訓練に自衛隊が参加することや、国際平和協力活動に参加した経験を持つ日本政府の女性職員をNATO本部に派遣することなどで合意[92]。さらに日本とNATOとの間で具体的な協力項目を掲げた「国別パートナーシップ協力計画 (IPCP)」に署名した[92]

またNATOはアフガニスタンにおける活動の中で、現地の日本大使館が行っている人道支援や復興活動に注目しており、軍閥の武装解除を進める武装解除・動員解除・社会復帰プログラムの指導者的立場にある日本との連携を模索している。

さらには、日本をNATOに加盟させようとする動きもある。これはNATOを北大西洋地域に限定せずに世界規模の機構に発展させたうえで、日本のほかオーストラリアシンガポールインドイスラエルを加盟させるべきだという意見である。元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニブルッキングス研究所シニアフェローのアイボ・ダールダーなどが提唱している。

2018年5月、北大西洋理事会は、ブリュッセルの在ベルギー日本大使館にNATO日本政府代表部を開設することに同意[93]。2018年7月1日、NATO日本政府代表部を開設した[94]

2021年時点で、日本は「グローバル・パートナー国」と位置付けられている[95]

2022年6月29日にスペインのマドリードで開催された北大西洋理事会には総理の岸田文雄が日本の総理として初めて、同じくグローバル・パートナー国のオーストラリア、ニュージーランド、韓国の首脳と共に参加し、以降も定期的な参加の意向を表明した。

具体的な協力

2008年10月時点、日本政府はアフガニスタンで国際治安支援部隊ISAF)を展開するNATOに対し財政支援を行っており、NATO・ISAF側は広報センターを通じてこの事実をファクトシートの形で公表している[96]。日本の対NATO協力の変遷は次のとおり。

  • 2007年3月、アフガニスタンでの人道支援プロジェクトのために約20億円の財政支援を実施
  • 2007年12月、NATO文民代表部との連絡促進のため常勤の連絡調整員を指名[97]
  • 2010年6月25日、「日・NATO情報保護協定」を締結(日本が情報保護協定を結ぶのは、「日米軍事情報包括保護協定」(2007年にアメリカとの間で締結)に次ぎ2例目である)[98]

NATOのアフガニスタンでの活動に対する日本の財政支援は、政府の「草の根無償・人間の安全保障資金協力 (GAGP) スキーム」[99]の範囲内で行われている。2008年10月2日時点で、日本政府はGAGPの方針に従い29のプロジェクト支援を実施しており、その総額はおよそ260万ドル[注釈 5]に及んでいる。NATOによれば、政府はさらに39のプロジェクトへの追加資金協力を検討しているという。

国際サイバー防衛協力への参画
  • 2015年~2016年、NATO主催サイバー演習ロックド・シールズにオブザーバ参加。
  • 2021年4月、NATO主催サイバー演習ロックド・シールズ2021に日米共同チームで正式参加(初参加)[100]
  • 2022年4月、NATO主催サイバー演習ロックド・シールズ2022に日英共同チームで正式参加[101]
  • 2022年10月、日本がNATOサイバー防衛協力センターに正式加盟[102]

韓国

韓国はNATOパートナーであり、またNATO以外の主要な同盟国として複数分野で協力してきた。近年の協力ではアフガニスタン戦争後の復興、アデン湾における商船の海賊護衛がある[103]

2022年、韓国はNATOの補助組織であるサイバー防衛協力センター(CCDCOE)に貢献国として参加した[104]


注釈

  1. ^ : Keep the Americans in, the Russians out, and the Germans down.
  2. ^ 第二次大戦後のドイツ問題は、 1.ドイツを復興させてソ連の影響力を排除する 2.再びドイツがヨーロッパを蹂躙することがないように歯止めをかける 3.ドイツを誰が守るのか という3点に集約された。上記のイスメイの言葉は、ロシアを排除してアメリカによってドイツを守らせ、同時に歯止めをかけるという処方箋を端的に示している。
  3. ^ 同時に東ドイツも、1952年に編成された兵営人民警察を格上げする形で、1956年に正式に国家人民軍を創設した。
  4. ^ 一般には7.62x51mm NATO弾のこと。
  5. ^ 264万7927米ドル。
  6. ^ : North Atlantic Council
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出典

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