化石 示準化石

化石

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 02:09 UTC 版)

示準化石

三葉虫の化石(ロシア産)

放射性同位体による年代推定法が確立するまでは、地層のできた時代を知る手がかりは、化石のみであった。そのなかでも、特定の地質時代に限り生息していた特定の種の化石は示準化石と呼ばれ、それぞれの地層の年代決定に用いられる。これは、イギリスのウィリアム・スミスの研究により確立された方法である。示準化石として好ましい条件には、以下のようなものがある。

  1. 進化が速かった、すぐに絶滅した、などの原因で、生息していた期間が短い。
  2. 広い範囲に渡って分布している。
  3. 数多く産出する(当時の生息数が多い)。

示準化石の例としては三葉虫古生代)、フデイシ(古生代)、アンモナイト(中生代)、ビカリア新生代)などがある。

示相化石

八重干瀬サンゴ礁

特定の環境気候水深水温地形など)に限って棲息していた特定の種の化石は示相化石と呼ばれ、地層が堆積した古環境の検討や特定に用いられる。示相化石は、サンゴ(暖かく澄んだ浅い海)やシジミ河口付近)などがわかりやすい例であるが、実際にはすべての化石が多かれ少なかれ示相化石としての意味をもつものであり、とくに植物化石は、古気候などを知る重要な資料となっている。こんにち、第四紀における気候の変遷はそれぞれの種の植物化石の消長によって詳細にたどられている。

人間との関わり

化石(サメの歯)を利用したアクセサリー
フズリナを含んだ石灰岩大垣城石垣

恐竜アンモナイト等の古生物の化石は古生物に関する知識を与え、太古の生物へのロマンを感じることができる。アマチュア古生物マニアも数多く存在し、稀少な化石はとくに高値で売買される。博物館でも、特別展や企画展の目玉となることが多いので、高額でやりとりされる場合が少なくない。「」も恐竜の化石からイメージされたのではないかと考えられることがあり、恐竜化石は人気が高い。最近では珍しい化石の発掘が商業ベースで進んでおり、有名になった化石が産地を離れて遠隔地のコレクターの手に流れることもあり、研究者たちも頭を痛めている。裏ルートで高額に売り出されてしまうケースも少なくない。

また、古い時代から漢方薬として用いられたり、アンモナイトの化石には魔力が宿るなどとされたりといったかたちで、長く利用されてきた歴史がある。中医学では大型ほ乳類の骨の化石を「竜骨」、歯牙を「竜歯」、角を「竜角」と呼び、いずれも鎮静不眠などに用いられ、これらの遺物は正倉院薬物中にもみえる。また、甲骨文字の発見は末の金石学王懿栄が持病のマラリアの治療薬として「竜骨」を求めたことに端を発するといわれている。

現在でも、三葉虫やアンモナイトなどの美しい化石はアクセサリーに用いられている場合がある。特殊な化石では、宝石や美しい鉱物の成分に置き換わっているものがあり、それ自体が宝石として流通するものがある。琥珀は樹木から分泌された樹液の化石であり、一種の生痕化石であるが、多くの場合宝飾品となり、特に中に昆虫などが封入されたものが珍重される。世界的にはバルト海沿岸の琥珀が特に良質とされ、日本では岩手県久慈市が代表産地である。マイケル・クライトン原作の小説およびその映画化ジュラシック・パーク」では琥珀中のの体内に恐竜の赤血球が残され、そこから恐竜のDNAが抽出されるという設定になっているが、現実にはDNAが保持していた遺伝情報は失われているはずである。また、日本で勾玉の素材などとして愛好されてきた碧玉の多くは放散虫の遺体で形成されている。

なお、石炭石油天然ガスは古生物の遺骸が化学変化を受けたものであることから化石燃料とよばれる。

古生物の遺骸がそのまま堆積して岩石化したものとしては石灰岩苦灰岩チャート珪藻土がある。そのほか、海鳥の糞が堆積・固化してできるグアノを起源とするリン鉱床、鉄バクテリアにより生成された鉱床など、人間生活にとって有用な地下資源となっているものも少なくない。

著名な化石研究者


注釈

  1. ^ これにより、少なくとも27億年前までには3ドメインが成立していたと推定されている。
  2. ^ ハンソンは、「進化の研究にたいして特殊の寄与をする資料」としてと化石を掲げている。

出典

  1. ^ 寿男, 安藤 (1988年). “小集会報告「タフォノミーを考える会」”. 化石. pp. 35–38. doi:10.14825/kaseki.45.0_35. 2023年3月23日閲覧。
  2. ^ 6800万年前の恐竜化石から細胞・血管 米で発見(朝日新聞2005年3月25日)
  3. ^ Cretaceous Small Scavengers: Feeding Traces in Tetrapod Bones from Patagonia, Argentina (Silvina de Valais:2012)
  4. ^ 生痕化石”. www2.city.kurashiki.okayama.jp. 2023年9月14日閲覧。
  5. ^ 国立大学法人千葉大学 生痕化石から探る古生物の行動生態とその進化”. www.chiba-u.ac.jp. 千葉大学. 2023年9月14日閲覧。
  6. ^ オンライン展示>大型化石”. geo.sc.niigata-u.ac.jp. 新潟大学. 2023年9月14日閲覧。
  7. ^ Oxford Dictionary of Word Histories, 2002.






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