労働組合 歴史

労働組合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/06 10:01 UTC 版)

歴史

労働組合(以下、単に「組合」と略することがある)の歴史は18世紀にさかのぼり、産業革命によって女性・児童・農民労働者・移民労働者が多数労働市場に参加するようになった時代である。こういった非熟練労働者の集団が自主的に組織を編成したことが起源であり[1]、後の労働組合として重要な役割を果たした。

カトリック教会などの承認を受けた労働組合は19世紀の終わりに登場した。ローマ教皇レオ13世回勅レールム・ノヴァールム」を公布して、教会としてこの問題にはじめてコミットし、労働者酷使問題について取り組み、労働者が妥当な権利と保護規制を受けられるようにすべきだと社会に要請した[2]

国際条約

労働組合の基本的原則として、1948年(昭和23年)の結社の自由及び団結権の保護に関する条約(ILO第87号条約)により、労働組合を組織する権利(団結権)および組合活動をする権利(団体交渉権)は、2人以上の労働者が組合結成に合意することにより[3]労働組合を結成でき、いかなる届出も認証許可も必要ではない。

日本はこの条約を1965年(昭和40年)6月14日に批准している。

ショップ制

労働組合と使用者との労使関係には、様々な形態がある。ここで言う「ショップ」とは、労使間で様々な約束事や取り決め事を交わす「協定」の意である。

日本では、その事業所で組織される労働組合が同事業所の労働者総数の過半数を代表する場合において、その組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することができる(労働組合法第7条第1号但書)。

英国ではEU指令が出される以前に、1980年代のサッチャー政権によってクローズドショップ制とユニオンショップ制が規制された。

オープンショップ制

使用者が労働者を雇い入れるに際し、特に組合員であることを雇用条件としていないものである。基本的に組合員とそうでない者との労働条件等の処遇の違いは無い。

日本では、国家公務員地方公務員の「職員団体」(民間企業の労働組合に相当)については、オープンショップでなければならないとされている(国家公務員法第108条の5第2項、地方公務員法第55条第2項)。

クローズドショップ制

使用者が労働者を雇い入れるに際し、組合員から雇用しなければならないとする制度である。労働者が組合員である資格を失った時は使用者はその労働者を解雇しなければならない。この制度は産業別労働組合が存在する国々に見られるが、日本では見られない[4]

アメリカ合衆国では、タフト・ハートレー法によってクローズドショップ制を禁止している。

ユニオンショップ制

使用者が労働者を雇い入れるに際しては、組合員であってもそうでなくても構わないが、労働者は入社後、組合規約で定めた期間内に組合員にならなければならないとする制度である。期間内に組合員にならなかったり、あるいは後に組合員たる資格を失った時は、使用者はその労働者を解雇しなければならない。日本の大手企業に存在する主な組合に見られる。通常は当該組合を労働者の唯一の交渉代表として承認する「唯一交渉団体条項」と一緒に締結されることが多い(これにより、当該組合は使用者によって、全労働者が当然に加入する当該企業で唯一の組合としての地位を認められる)[5]。但し、実際はいわゆる「尻抜けユニオン」という体制が敷かれていることが多く、組合員である資格を失っても雇用については別途労使間で協議し、決定することが多い。従って、組合を脱退したからと言って必ずしも退職しなければならないことはない。

日本においては、過去の判例で、ユニオンショップ協定下において組合から脱退した場合において、労働者の組合選択の自由及び他の組合の団結権を侵害する場合には、使用者の解雇義務は公序良俗に反し無効とされ、他の組合に加入した労働者は解雇されない[6]。また、過去に組合を辞めない旨を特に合意していた場合でも「組合員は脱退の自由を有する」とされている[7]。したがって組合の内部抗争において執行部派が解雇をちらつかせて反執行部派を抑え込むことは、事実上できなくなっている。

アメリカ合衆国では、州によっては労働権利法(Right-to-work law)を適用し、ユニオンショップ制を禁止している。

エイジェンシーショップ制

労働組合への加入は労働者の意志によるが、組合員でない者でも、団体交渉にかかる経費と苦情処理にかかる経費を会費として支払わなければならない。ただし、組合員でない者はそれ以外の経費(ロビー活動にかかる経費や、組合員のみに与えられる特権の経費など)を支払う必要はない。

構成形態

組合がどの範囲の労働者を組織対象とするかは歴史的な変遷がみられるし、現在でも多様である。組合員資格をどのように定めるかについては、法的な諸々の保護の関係で一定の制約を受けるほか、原則として組合の自治に委ねられている[8]。主たる組合員の構成によって、以下のように分類される。

職能組合

職能組合(craft union)は労働組合の最も古典的な形態で、同一職種の熟練工によって組織される。

初期の職能組合は、地域的もしくは全国的な熟練労働力の独占によって、労働条件の引き上げを図る点に特徴があった。そこでは、具体的な労働条件について組合員間で協定を結び、それを強い統制によって労働者に遵守させると同時に、その条件に同意しない使用者のもとでの労働を拒否することが、労働条件引き上げの主たる手段であった。きわめて強力な組織形態であるが、産業の発展により大量の未熟練工が輩出するようになると、労働力の独占を維持しにくくなる[9]

今日の欧米諸国における職種別組合は、職能組合の発展したものであるが、団体交渉争議行為を労働条件改善の主たる手段としている。

産業別組合

産業別組合(industrial union)は職種別組合が次第に統合され、職種のいかんを問わず、同一産業に属する労働者をすべて組織対象にするようになったものである。今日の欧米諸国における最も代表的な組織形態である。

産業別組合では争議行為を含む団体交渉が目的達成の主たる手段となる。団体交渉は様々な次元で行われるが、最も代表的な形態は産業別組合と産業別使用者団体との地域的もしくは全国的な交渉である。この場合、団体交渉での合意を記録した労働協約は、通常、当該産業における一種の法規範のような役割を果たす。それを最低基準として、各企業単位で上積みを図るのが通常であり、協約賃金と企業別賃金との格差は賃金ドリフトと呼ばれる[9]

日本における代表的な産業別組合としては全日本海員組合などがあるが、日本では産業別組合は例外的な存在でしかない。

企業別組合

企業別組合(enterprise union、company union)は事業所もしくは企業を単位として、職種に関わらず、そこに属する労働者を一括して組織する形態である。

日本では大部分の組合がこの形態をとっている。欧米諸国では使用者が組合に対抗するために結成した企業別組織(黄色組合)との闘争という歴史から、企業別組合はほとんどみられない[9]。産業別組合と比較すると、当該企業の実態に合った労使交渉が行われる反面、団体交渉の成果が当該企業内のみに留まるため、交渉に企業間競争を促す力が弱い。組合が企業意識に支配されやすく、企業間競争が激化するにしたがって、他の労働組合と連帯して行動するよりは、使用者と協力して企業の繁栄に努めるという行動をとりがちになる。その結果、労働条件の平準化という組合本来の機能の発揮において大きな限界をもつことになる。また、企業別組合においては、失業者を含む産業分野の労働者全体への関心が稀薄になる[10]

日本の企業別組合においては、組合員の資格を当該企業の従業員(特に、正社員であって一定以上の役職者でないこと)に限るとすること(いわゆる逆締付条項)を規約で定める組合が多い[11]

ジェイムズ・アベグレンが著書『日本の経営』(1958年)で、企業別労働組合を終身雇用年功序列とともに、「日本的経営の三種の神器」であると示した。

アメリカでは、ワグナー法によって、企業別組合(=御用組合)が禁止されている。

単位産業別労働組合

企業別組合では対応できない課題に対応するため、企業別組合が産業別に集まった連合体。通称、単産(たんさん)。

一般組合

一般組合(general union)は職種・産業のいかんを問わず、すべての労働者を組織対象とするものである。

19世紀末以来、イギリスにおいて非熟練工を組織するための形態として発展してきた。日本においては、零細企業に分散している労働者や、パートタイム労働者派遣労働者管理職など、企業別組合から事実上排除されている労働者を組織化するためにとられる形態である[9]

合同労働組合

合同労働組合は企業別組合に組織しにくい労働者を地域ごとに個人加盟原則によって組織する点に特徴があるが、その組織形態は多様であり、産業別組合、職種別組合、一般組合などの形態をとる。一般組合の中にも、主要な産業別の労働者を主たる組織対象としつつそれ以外の労働者にも広げるものと、文字通り職種・産業を問わず広く労働者を組織する組合が存在する[12]

一般に中小零細企業では使用者の権力が強く、企業別組合さえ組織しえない場合が多い。1955年(昭和30年)の総評大会では、このような中小零細企業における組織化を方針として掲げ、それ以来合同労働組合の結成が推進されてきた[12]


  1. ^ a b Webb, Sidney; Webb, Beatrice (1920). History of Trade Unionism. Longmans and Co. London  ch. I
  2. ^ Rerum Novarum: Encyclical of Pope Leo XIII on Capital and Labor”. Libreria Editrice Vaticana. 2011年7月27日閲覧。
  3. ^ 組合契約は、「複数の当事者」が出資をして共同の事業を営むことを約することを指すため(日本法においては、民法第667条ほか)、いわゆる「一人労働組合」は法の要件を満たさない(「一人労働組合」を否定した判例として、友浦鉄工所事件(岡山地判昭和39年7月7日))。
  4. ^ 労働省はクローズドショップ制を「「既に一定の労働組合に加入している労働者でなければ採用せず、且つ当該組合を脱退した時は解雇する」という協定である。」と定義している(昭和22年10月13日鳥取県教育民生部長あて労働省労政局労政課長通知)。もっとも当時においても「今日かかる協定が純粋に締結されている実例は日本では皆無であり外国においても、土建業における大工左官等の職業別組合の一部に存するのみである。」としていて、当初から極めて例外的な形態であると認識されていた。
  5. ^ 平成27年 労使間の交渉等に関する実態調査 結果の概況厚生労働省の調査によれば、労働協約を締結している企業のうち約31.5%が唯一交渉団体条項を結んでいる。ただし、唯一交渉団体条項には法的効力はないので、別組合ができた場合、条項を盾にその別組合との団体交渉を拒否することはできない。
  6. ^ 「三井倉庫港運事件」最高裁判所第1小法廷1989年12月14日判決 労働判例552号6頁
  7. ^ 「東芝労働組合小向支部事件」 最高裁判所第2小法廷2007年2月2日判決 労働判例933号5頁
  8. ^ 横浜地裁平成元年9月26日判決
  9. ^ a b c d 西谷敏「労働組合法第3版」有斐閣 2012年、p.4~5
  10. ^ 西谷敏「労働組合法第3版」有斐閣 2012年、p.8
  11. ^ もっとも、労働組合は、組合員の範囲について逆締付条項によって拘束されるものではなく、組合が従業員以外の者を加入せしめても、債務不履行の責は負わない(昭和32年10月8日兵庫県商工労働部長あて労働省労政局労働法規課長通知)。
  12. ^ a b 西谷敏「労働組合法第3版」有斐閣 2012年、p.9
  13. ^ 厚生労働省「労働組合基礎調査」の企業規模別統計のうち、「その他」を企業横断的組織(企業別労働組合でない労働組合)と捉えた場合、民営企業の労働組合のうち9割超が企業別労働組合ということになる。
  14. ^ 東京管理職ユニオン
  15. ^ 名古屋地裁昭和33年11月21日判決
  16. ^ 広島地裁昭和42年2月20日判決
  17. ^ 最高裁判所昭和62年10月29日判決 労働判例506号7頁
  18. ^ 「東芝労働組合小向支部事件」 最高裁判所第2小法廷2007年2月2日判決 労働判例933号5頁
  19. ^ 最高裁判所第2小法廷1969年5月2日判決 集民第95号257頁
  20. ^ 西谷敏「労働組合法第3版」有斐閣 2012年、p.8
  21. ^ [1]
  22. ^ 平成29年4月以降は、特定適用事業所(被保険者数500人以上が見込まれる事業所)以外の適用事業所の事業主は、同意を得たうえでこの申出をすることが出来る。なお特定適用事業所の場合は申出の有無にかかわらず強制適用となる。
  23. ^ 「日産自動車事件」 最高裁判所第2小法廷1987年5月8日判決 労働判例496号6頁
  24. ^ 昭和21年6月1日労発325号、昭和25年5月8日労発153号
  25. ^ 「東京ヘップサンダル工組合事件」中労委1960年8月1日労委年報15号30頁
  26. ^ 「CBC管弦楽団労組事件」 最高裁判所第1小法廷1976年5月6日判決 民集30巻4号437頁
  27. ^ 日本放送協会(名古屋駅前センター)不当労働行為再審査事件 2016年 12月22日『中央労働委員会』
  28. ^ NHKの業務委託スタッフは「労働者」不当労働行為認定…裁判所の判断のポイント 2017年05月04日『弁護士ドットコム NEWS』
  29. ^ 公文教育研究会事件命令書交付について 東京都労働委員会 2019年7月31日
  30. ^ F事件(平成24年不第96号事件)2015年4月16日 『東京都労働委員会』もっとも、中央労働委員会は
  31. ^ コンビニ店主は「労働者」 都労委、ファミマに命令書 2015年4月16日 『日本経済新聞』
  32. ^ https://www.mhlw.go.jp/churoi/futouroudou/dl/shiryou-31-0315-1z.pdf
  33. ^ 東京高裁2004年9月8日決定 労判879号90頁
  34. ^ 「推定」の語を用いるのは、組織率算定の分母となる雇用労働者数として総務省統計局「労働力調査」の結果を用いているため、と説明される。
  35. ^ 平成30年労働組合基礎調査の概況1,労働組合及び労働組合員の状況 厚生労働省
  36. ^ 平成30年労働組合基礎調査の概況2 パートタイム労働者の状況 厚生労働省
  37. ^ 平成30年労働組合活動等に関する実態調査結果の概況 3 労働組合の組織拡大に関する状況【単位労働組合】 厚生労働省。なお「前回」は平成28年同調査。
  38. ^ 平成30年労働組合基礎調査の概況4,企業規模別(民営企業)の状況 厚生労働省
  39. ^ 都留康「現代日本の労働組合と組合員の組合離れ」猪木武徳・樋口美雄編『日本の雇用システムと労働市場』p194、日本経済新聞社、1995年
  40. ^ 平成24年労働争議統計調査の概況 厚生労働省
  41. ^ 平成30年労働組合活動に関する実態調査1 労使関係についての認識【本部組合及び単位労働組合】 厚生労働省「前回」は平成29年同調査。
  42. ^ 平成26年労使コミュニケーション調査 2 重視する労使コミュニケーション事項 厚生労働省「前回」は平成21年同調査。
  43. ^ 平成26年労使コミュニケーション調査 3 労使協議機関に関する事項 厚生労働省平成26年労使コミュニケーション調査 4 職場懇談会に関する事項 厚生労働省「前回」は平成21年同調査
  44. ^ 平成26年労使コミュニケーション調査 3 労使協議機関の有無、協議内容及び結果の認知度 厚生労働省「前回」は平成21年同調査
  45. ^ 上尾事件首都圏国電暴動など。
  46. ^ 日産自動車における労組の専横は高杉良の小説『破滅への疾走』(『覇権への疾走』とも)、『労働貴族』のモデルとなった。一方、日本航空の一部労組の反会社強硬路線には、職場実態を無視した会社側の態度も一因との指摘がある。
  47. ^ なお、記事の掲載終了後はJR東日本グループでも「週刊現代」が発売されている
  48. ^ 平成14(ワ)20443  街頭宣伝活動禁止等(通称 旭ダイヤモンド工業街頭宣伝活動禁止)”. 最高裁判所事務総局広報課. 2018年11月20日閲覧。
  49. ^ 連合、偽装請負で経団連に是正要請へ(朝日新聞)
  50. ^ 雇用を復興を 宮城・岩手・福島の労働者と共同行動 全労連など対策要求 2011年4月15日(金)「しんぶん赤旗」
  51. ^ Bernstein, Aaron (1994年5月23日). “Why America Needs Unions But Not the Kind It Has Now”. BusinessWeek. http://www.businessweek.com/archives/1994/b337360.arc.htm 
  52. ^ Card David, Krueger Alan. (1995). Myth and measurement: The new economics of the minimum wage. Princeton, NJ. Princeton University Press.
  53. ^ Friedman, Milton (2007). Price theory ([New ed.], 3rd printing ed.). New Brunswick, NJ: Transaction Publishers. ISBN 978-0-202-30969-9. http://books.google.com/books?id=EhcI5-D9wREC&pg=PA164 
  54. ^ 給料はなぜ上がらない−−6つの仮説を読み解く【下】」『東洋経済』2008年3月30日。[リンク切れ]
  55. ^ ミルトン・フリードマン 『資本主義と自由』 日経BP社〈Nikkei BP classics〉、2008年、234-235頁。ISBN 9784822246419 






労働組合と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「労働組合」の関連用語

労働組合のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



労働組合のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの労働組合 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2021 GRAS Group, Inc.RSS