労働安全衛生法 計画の届出

労働安全衛生法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/19 05:39 UTC 版)

計画の届出

事業者は、特定機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の30日前までに、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない(第88条1項)。この届出は、所定の様式に当該機械等の種類に応じて必要事項を記載し、図面等を添付して行う(規則第86条)。ただし、上記の危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置並びに労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針に従って事業者が行う自主的活動の措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、届出は免除される(規則87条)。この免除の認定は、3年ごとにその更新を受けなければ、その期間経過によって効力を失う(規則第87条の6)。

  • この認定を受けるためには、認定を受けようとする事業場が、以下の要件を満たしていなければならない(規則第87条の4)。
    • 労働安全衛生マネジメントシステムを適切に実施している。
    • 労働災害の発生率が当該事業場の属する業種における平均的な労働災害の発生率を下回っている(メリット収支率75%以下相当)。
    • 認定申請の日前1年間に重大な労働災害が発生していない。

事業者は、建設業に属する事業の仕事のうち重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の30日前までに、所定の様式によって厚生労働大臣に届け出なければならない(第88条2項)。「厚生労働省令で定めるもの」とは、具体的には以下の仕事である(規則第89条)。

  • 高さが300メートル以上の塔の建設の仕事
  • 堤高(基礎地盤から堤頂までの高さをいう。)が150メートル以上のダムの建設の仕事
  • 最大支間500メートル(つり橋にあつては、1,000メートル)以上の橋梁の建設の仕事
  • 長さが3,000メートル以上のずい道等の建設の仕事
  • 長さが1,000メートル以上3,000メートル未満のずい道等の建設の仕事で、深さが50メートル以上のたて坑(通路として使用されるものに限る。)の掘削を伴うもの
  • ゲージ圧力が0.3メガパスカル以上の圧気工法による作業を行う仕事

事業者は、建設業及び土砂採石業(建設業に属する事業にあっては、前項の厚生労働省令で定める仕事を除く)で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の14日前までに、所定の様式をもって労働基準監督署長に届け出なければならない(第88条3項)。「厚生労働省令で定めるもの」とは具体的には以下の仕事である(規則第90条)。なお2項、3項については、1項のような免除認定を受けることはできない。

  • 高さ31メートルを超える建築物又は工作物(橋梁を除く。)の建設、改造、解体又は破壊(以下「建設等」という。)の仕事
  • 最大支間50メートル以上の橋梁の建設等の仕事
  • 最大支間30メートル以上50メートル未満の橋梁の上部構造の建設等の仕事(規則第18条の2の場所において行われるものに限る。)
  • ずい道等の建設等の仕事(ずい道等の内部に労働者が立ち入らないものを除く。)
  • 掘削の高さ又は深さが10メートル以上である地山の掘削(ずい道等の掘削及び岩石の採取のための掘削を除く。以下同じ。)の作業(掘削機械を用いる作業で、掘削面の下方に労働者が立ち入らないものを除く。)を行う仕事
  • 圧気工法による作業を行う仕事
  • 建築基準法第2条第9号の2に規定する耐火建築物又は同法第2条第9号の3に規定する準耐火建築物で、石綿等が吹き付けられているものにおける石綿等の除去の作業を行う仕事
  • ダイオキシン類対策特別措置法施行令別表第一第五号に掲げる廃棄物焼却炉(火格子面積が2平方メートル以上又は焼却能力が一時間当たり200キログラム以上のものに限る。)を有する廃棄物の焼却施設に設置された廃棄物焼却炉、集じん機等の設備の解体等の仕事
  • 掘削の高さ又は深さが10メートル以上の土石の採取のための掘削の作業を行う仕事
  • 坑内掘りによる土石の採取のための掘削の作業を行う仕事

届出があった計画のうち、厚生労働大臣は高度の技術的検討を要するものについて、都道府県労働局長は高度の技術的検討を要するものに準ずるものについて審査をすることができる。この審査を行うに当たっては、学識経験者の意見を聴かなければならない。審査の結果必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、あらかじめ届出をした事業者の意見をきいたうえで労働災害の防止に関する事項について必要な勧告又は要請をすることができる(第89条、第89条の2)。労働基準監督署長又は厚生労働大臣は、計画の届出に係る事項が法令に違反すると認めるときには、当該届出をした事業者に対し、その届出に係る工事若しくは仕事の開始を差し止め、又は当該計画を変更すべきことを命ずることができる。

なお、平成26年改正により、「一定規模以上の事業場における建設物・機械等の設置・移転・主要構造部分の変更」における計画の届出の規定は廃止された(改正前の第88条1項)。


  1. ^ 労働安全衛生関係法令集 平成23年度版
  2. ^ 労働災害防止計画について厚生労働省
  3. ^ 「労働安全衛生法のはなし」p.85
  4. ^ a b c 労働安全衛生法第29条に基づく指示・指導は、元方事業者が関係請負人の労働者に対して直接行ったとしても、労働者派遣事業の要件としての「業務の遂行に関する指示」には該当せず、労働者派遣法等に違反するもの(いわゆる偽装請負)とはされない。労働省告示及び適正な請負・業務委託に係る参考資料
  5. ^ 「労働安全衛生法のはなし」p.210
  6. ^ 「労働安全衛生法のはなし」p.213
  7. ^ 「労働安全衛生法のはなし」p.214






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